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184 :弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 9:2011/04/18(月) 15:09:30 ID:KrQclMBs
なんだか、みんなおかしい
僕に何も言わずにエリスちゃんを連れて行ったエレキインセクトたちも
なにか……何と言っていいのか分からないけど、無理に背伸びしようとしている姫も、なんだかおかしい
さっきまであんなに元気だった姫が突然医務室に運ばれたという報告を受けたのも、何かおかしいと感じたことの一つだ
確かに何も相談無くエリスちゃんを連れてきたのはちょっとまずかったかもしれない
まだ結婚なんて露ほども考えていないし、隠し立てするつもりも無い
けれども、みんなは何かを僕に隠している
ポイズンタイガーたちはみんな口が堅いし、隠していることを喋らせるのは到底無理だろう
唯一口の軽いエレキインセクトも、ミリルさんが横にいればお手上げ。何を隠しているのか聞き出すのは困難
だったら、お見舞いついでに聞き出そうと思って、今僕は医務室の前にいる
伝令烏の言うには軽い貧血のようなものみたいだし、大丈夫だとは思うんだけどね

「姫、僕だよ」

軽くノックをして、返事が無いのを確かめてから入る
案の定、姫は眠っていた。人も魔族もちゃんと眠れているのは健康な証拠だと言うし、ちょっとだけ安心する
聞き出す事はできないにしても、愛娘がちゃんと休めているのは親として素直に嬉しい
それに急ぐことも無いだろう
僕の仕事は今のところ無いし、ここで姫が起きるのを本でも読みながら待っていてもいい

「…………?」

いや、変だ。何かおかしい
前髪を少し撫で付けた時に感じた姫の寝息が不規則と言うか、妙に荒い
僕は何の力も無いから、有事の際はせめてみんなの邪魔にならないようにと、ちょっとした救護の方法くらいは心得てる
もっとも魔族専門の方法だから人間の姫に当てはまるのかは分からないけれど、姫が狸寝入りしてるんだってことはわかった

「姫ー、寝たふりしても分かるよー。起きなさーい」

柔らかいほっぺたをぷにぷにつついてみる
あ、ちょっと笑った。間違いなく起きてるよ
そういえば、最近色々と忙しくてこんなふうに二人でいる時間っていうのはあんまり取れなかったな
よく手入れされて指通りのいい髪に触れながら、ぼんやりと思う

そんな時だ、急に上体を起こした姫が、僕に口付けてきたのは


185 :弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 9:2011/04/18(月) 15:09:59 ID:KrQclMBs
いけないとは思いつつも、姫と唇を重ねるのは珍しいことじゃない
いや、むしろしない日のほうが少ないかもしれない
ちょっと前までは、いつまでも甘えん坊だなあと思って許されていたこと
だけど姫ももう16歳だ
もう自分の意思で好きな人を決められる年齢だし、もしかしたら僕自身も結婚するかもしれない
もうそろそろ、この過ぎたスキンシップをやめにするべきだろう

「離れなさい」

キスを終えても、僕を見つめたまま背に回した腕を放そうとしない
こんなふうに命令するように言ったのは初めてかもしれない
大事な愛娘だからとちょっと甘やかしすぎちゃったかな
優しく素直で、みんなに愛されている姫
その姫にこんなことは言いたくないけれど、もうそろそろ父親である僕から自立しなきゃいけないんだ
それでも僕から離れようとしないから、ちょっと無理矢理肩をつかんで引き離す
……みんなからは僕は姫よりも弱いと思われてるみたいだけど、力は僕のほうがあるらしい
女の子と比べてる自分に情けなくなるけれども、ほんの少しだけ安心している僕がいた

「姫、もうこんなことはやめよう」
「こんなことって何? 抱き合うこと? キスすること? それとも……こういうこと?」

突然強く僕の腕を振りほどいた姫の顔が僕の肩に乗る
そして尖った八重歯が首筋の皮膚を破り、痛みが走る

「イッッ!!」
「やるもんか、やるもんか……魔王様の髪の毛一本血の一滴だって、あんな女にあげるもんか……」
「痛いよ! 姫やめなさい!」
「ボクのだ……魔王様は、お父様は全部ボクのなんだ。ボクだけのお父様なんだっ!」

血が流れだすと歯が首筋からはなれて、かわりにぴちゃぴちゃとその血を舐めとる音がする
その背徳的な淫靡さに、僕は動くことができないでいた


186 :弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 9:2011/04/18(月) 15:10:24 ID:KrQclMBs
「……姫、どうして、エリスちゃんのことを知ってるの?」
「お父様の鞄に入っていた手紙を見たの。あの女の父親からの」

うかつだった
そんなものが入っている鞄を姫に渡した僕のミスだ
できるものなら数十分前の自分を殴って気づかせてやりたいくらい
それでも、そんな後悔をしても事態が好転するはずも無く、無常にも姫の言葉は続いていく

「ねえ、お父様はなんであんな女を連れてきたの?
 ボクがいるのに。僕はお父様のためだったら何でもできるのに
 娘がほしいのだったら、ボクがなってあげる
 結婚したかったのなら、ボクがお嫁さんになってあげる
 自分の子供がほしかったのなら、ボクがお父様の子供を生んであげる
 それとも、あの女じゃなきゃ駄目なの?
 誰よりもあなたを愛している、ボクじゃ駄目なの?」

首に舌を這わせながらの声に、何も言い返せない
僕の自慢の可愛いお姫様。それでも、この娘を怖いと思ったのはこれで二度目だ
最初はそう、姫が自分の本当の父親と姉を殺した5年前、血に染まったエントランスホールでの出来事
あの時と同じ感情を、今の姫に対して感じていた

「落ち着いて。僕たちは、父娘なんだよ」
「うん。ボクはお父様のこと大好きだよ
 でも、お父様としても、男性としても、ううん、あなたの全てを愛しているの
 だからあの女は許せない。お父様をボクから奪おうとする、あの女だけは」

そう言って、スカートの中から何かを取り出してくる
ほんのりと光を帯びた乳白色の短剣
昔、一度だけ見たことがある短剣
ああ、もう二度と見たくないと思っていたあの短剣
それは、ポイズンタイガーの牙から削り出した、あの猛毒短剣だった


187 :弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 9:2011/04/18(月) 15:11:02 ID:KrQclMBs
「お父様、抱いて 
 お父様にボクを女にしてほしいの。そうすれば、お父様はボクとずっといっしょにいてくれる
 死が二人を分かつまで。死んでからもずっと、離れることはなくなる
 そうでしょ? お父様は、初めて女の子になった娘の、責任とってくれるよね?」
「……………………」

僕は、どうすればいいのだろう
姫の手には、ほんの毛筋ほどの傷で死に至らしめる短剣
それが忌々しいくらいキラキラと光っている
結局のところ、僕に許された選択肢は二つだけ
ここで姫といっしょに死ぬか、姫を抱くか、そのどちらかしかないみたいだ
正直に言えば、どっちも嫌だ
死ぬのは論外だし、今までずっと娘だと思っていた子を僕の手で女にするなんて許されるはずも無い
……僕としても、初体験が娘となんてちょっと……その……あの、ねぇ……
たしかに、姫は女の子としての魅力はある
細い体と綺麗な金髪、おっぱいもお尻も小さいけれど、それでも美しい姫だと思う
これが娘でさえなければ、僕だってこんなに葛藤することも無かったろうに
そして姫は下を向いて悩む僕に抱きついたまま、片手で器用に僕のシャツのボタンを外していく
それがいけないことだと思いつつも、その手を払う勇気はどうしても出せなかった

「はぁ」

最後に僕ができる精一杯の抵抗は、わざと大きくため息をつくことだけ
もっとも、姫がそんなものを意に介するとは思えないんだけれどもさ