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449 名前:私の王子様 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/18(月) 04:01:38.94 ID:9Y3RlXN9 [3/10]
自分こと、戦武公国第二皇子は、現在政略結婚を申し渡されている。
相手は幼き頃より親睦深い、北方の神魔王国の第一王女……カテリーナ王女様である。
我が国は現在、南方の蛮族より断続的な襲撃を受け、
隣国との親交をより深いものにするために云々……

つまり簡単に言うと、明日自分の結婚式なのである。

「爺……じいぃぃー!!!」
渾身の力で爺を呼ぶ。
納得できん。納得なんてする気も無いが、納得できない!
なんで視察から帰ってきたら結婚なんだよ!!
しかも兄上を差し置いてっ!
馬鹿かっ!?この国の大臣共は揃いもそろってうつけだらけか!?
イラつく心を抑えつつ、テーブルを指でたたきながら爺を待つ。

…大体、カテリーナ王女は王位継承者だろうが!
神魔王国の王位は誰が継ぐんだ?第二王女のマイヤ姫か?
断じて言おう。マイヤはバカだから絶対無理だ。
「えへへ、お兄ちゃんこれなにー?食べてもいいの?」
とか言って、テングダケを食べようとするほどの猛者だ。
あんなのに継がせたら、神魔王国はひと月持たないだろう。

「……殿下、お呼びでしょうか?」
執事服に身を包んだ、白髪茶眼の老人がいつの間にかドアの前にいる。
「…爺、入るときはノックをしろといっただろう。」
「散々ノックをしておりますよ、殿下。
 人を呼ぶときに、考え事をするのはおやめください。」
ぐぬぬ、もっとも過ぎて何も反論できん。
「そんなことより、自分の縁談について何か聞いてるか?」
「ええ、カテリーナ王女とのご成婚おめでとうございます。」
爺…お前だけは味方でいてくれると思ってたんだが……
「……まだ結婚してない。あとこの結婚おかしいとは思わないか?」
「…何がでございますか?殿下が神魔王国へ婿入りするのでございましょう?」
え?聞いた話が違う。婿入り?なにそれおいしいの?
「じ、自分はカテリーナ王女が嫁入りすると聞いたんだが……」
すると爺は怪訝な顔で自分を見た。

「……やはり嫁入りなのですか?私は信じられませんで………
 婿入りの間違いかと思っていました。」
うん、そりゃそうだよな。自分だって信じられないしね。
「第一王女が嫁入りなど、神魔王国は何を考えているんだ?
 普通は婿をもらうなりなんなりして、第一王女が継ぐべきだろう。」
「まさにその通りです殿下。ましてや第二王女が…その……」
爺が言いよどんでいる。気持ちは分かる。
「いい、言わんでも分かる。ところでカテリーナ王女はもう皇都にきているのか?」
「はっ、皇居に近いホテルにてご宿泊なさっておられます。」
……結婚する気満々じゃないか、どうなってんだ王女………
「分かった。身だしなみを整えたら王女に会いに行ってくる。」
「はい、では失礼いたします。」
爺が下がり、ドアが静かに閉められる。
自分は静かに鏡の前にたった。


450 名前:私の王子様 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/18(月) 04:02:04.95 ID:9Y3RlXN9 [4/10]
団子のような鼻、ぷっくりとした顔、糸目。
そして全体的にふくよかな体。
正直皇子という柄のスタイルじゃない。酪農がよく似合いそうな気がする。
なんで王女が自分と結婚するのかよく分からないが、
我が国と結婚することへの考えられる理由は3つほどある。

1つは、我が国は有数の武力保持国だということ。
先々代、もとい初代国王は一代にして広き西方の地を統一した。
そして我が国を代表する鉄騎部隊の強さは凄まじく、
歴史を重ねた今でも色褪せることがない。

1つは、我が国は財力に富んでいること。
もともと豊かだった西方だが、度重なる戦争にて人々の生活は貧しくなっていた。
だが、初代の統一によって戦争は無くなり、現在天をつく勢いで成長を続けている。

1つは、我が国は武によって統一をしていること。
神魔王国と違い、知と魔によって統治を行っていない。
よって文化、知識レベルになると幾分かレベルが劣る。
なので戦武公国にとって、神魔王国は無くてはならないパートナーに成り得るのだ。
無論、それは神魔王国にとっても同じ。

では何故結婚相手が自分なのか?
これは一番簡単だ。
兄上は賢く、強く、優しい。まさに王となるべき模範の人だ。
よって、神武王国から后を取ったとしてもいいように操られたりなぞしない。
しかし僕は愚鈍な凡人だ。おまけに外見まで醜悪ときている。
自慢じゃないが、おそらく自分はお嫁さんに逆らえないだろう。
だって……嫌われたくないものな…

簡略式の礼装に着替え、カテリーナ王女の居るホテルへ馬車で向かう。
馬車の外は、雨。
今は春先だから、この雨は恵みとなるのだろう。
だが、その雨のように僕の心は曇ったままだった。

なぜ、カテリーナ王女なのだろう。
さっきも考えたが、普通政略結婚をするなら自分を婿に迎えるか、
あるいはお馬鹿のマイヤ姫を嫁によこすかのどちらかしか考えられない。
カテリーナ王女は神魔王国を潰すおつもりなのか?
それとも、何か他に策が………


「殿下、到着いたしました。」
お付きが、僕に到着したことを告げる。
僕は黙って降り、ホテルを見上げた。
いつもなら美しく感じる一流の高級ホテルだが、
今の僕には伏魔殿にしか見えなかった。





451 名前:私の王子様 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/18(月) 04:02:59.06 ID:9Y3RlXN9 [5/10]
「殿下、ご機嫌麗しゅう……」
カテリーナ王女がドレスの端を持ち、丁寧に挨拶をする。
「カテリーナ王女も、お元気そうで……」
僕も一礼をする。顔を上げると、カテリーナ王女は満面の笑みを浮かべていた。
「カテリーナ王女、先ほど聞いたのですが…
 私と結婚するというのは本当でしょうか?」
「ええ、我が国と貴方の国が仲良くするためにはそれがいいと思いまして。」
王女は非常にご機嫌である。鼻歌でも歌いそうなほどに。
こんな状況で言いにくいが、言わないと結婚してしまう……
ええい!根性出せ自分っ!
「王女、誠に申し上げにくいのですが……
 急な話の上に、私はまだ了承をいたしておりません。」
キリッ
生涯のベスト3に入ったな…今の顔……
「…う言うことかしら?」
べきべきという音で王女を見ると、王女の持っていた扇子が
扇子という形を諦めているところだった。
しかも王女、笑顔が崩れてない。人はここまで恐怖を与えることができたのか。

「どういう事かしら?と聞いているのですが?」
大切な事なので、2回目を言ったんですよね。分かります。
「わ、私は貴方との結婚を承諾していないということですよ。
 大体、失礼だとは思いませんか?
 本人に許可も取らず、勝手に話を進めるなど……」
次の瞬間、僕の脳みそは左右に揺れた。
気づいたときには床に伏せ、左右の頬が痛かった。
――往復ビンタされたらしい。見えない速度で。

「結婚の約束なら既にしてありますわよ?
 覚えてらっしゃるかしら、今から10年ほど前のことを。」
…覚えてるわけ無いじゃないですか。
自分はこう見えても、未来に生きる男なんです……
既にビンタで心がボキボキに折れているが、弱音を見せられない。
取り敢えず虚勢を張ってみよう。
「覚えているわけ無いじゃないですか。10年前といえば子供です。
 そして、子供の約束など大した約束じゃ…」
ゴクリ、とつばを飲んだ。
自分は勘違いしていた。
目の前にいる人は、礼節を知り、義を重んじる賢女だと思っていた。
だが、今目の前にいるのは、どう見ても……修羅。
東方に伝わる殺意のなんとかを覚えた格闘家のようだ。

「大したことない……ですか。
 私はその約束を胸にここまでやってまいりました。
 その私に、そのような事を言うのですね。」
怒りで髪が持ち上がるとしたら、今、すべての髪が持ち上がっていることだろう。
怒髪天を衝くとはよく言ったものだ。
……怖すぎてちびりそうだ。
「大体、なんで急ぐ羽目になったか、貴方は分かりませんか?
 …貴方が王位継承権を棄て、田舎に隠居しようとしているからです。」
「な…何故そのことを!?」
つい先ほど視察に行っていたのは、自分の隠居先を探すため。
王は二人いらない。それは争いの種になるから。
そして、それは誰にも教えてないはずだが……っ!


452 名前:私の王子様 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/18(月) 04:03:49.09 ID:9Y3RlXN9 [6/10]

「あなたの性格なら分かります。私の将来の夫ですもの。」
胸を張って、誇らしげに王女は言う。
何が誇らしいと言うんだろうか……兄上に嫁ぐわけでもないというのに。
「私の性格をお読みになられるとは、さすがの慧眼です。
 しかし、私の性格を分かっておられるならば、そっとしておいて欲しいのですが。」
そう、僕は農地を耕し、牛や馬や豚を育てて、のんびりと暮らすんだ。
そのための勉強はしてきた。
代わりに帝王学とやらは合わないので捨てたけど。

「なるほど……貴方は無辜の民を捨てて、
 一人隠遁生活をしたいとおっしゃるのですね?」
へ?何を言ってるんだ?
王女が指を鳴らすと、メイドが恭しく書類を持ってきた。
「これをお読みください。あなたの兄上からです。」
兄上の手紙を何故持っているのかを聞きたかったが、
内容を呼んで全部吹き飛んだ。



「愛する弟へ。
 私は、神魔王国へ婿入りする。
 マイヤが結婚してくれるらしく、ハーレムを作ってもいいそうだ。
 男として、夢を叶えざるを得ない。
 哀しいかな、嫌がるお前に王位を譲らねばならぬが、許してくれ。
 男は、引けない時があるのだ。
 兄より。」



兄上えええええええええええええええええええええっ!!!
何考えてんだ!何考えてんだよぉお!
自分の国よりハーレムが大事か!
っていうかマイヤはまだ~才だぞ!このロリコンめが!
自分の尊敬を返せ!返してくれっ!



453 名前:私の王子様 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/18(月) 04:04:21.98 ID:9Y3RlXN9 [7/10]
プルプルと震えながら手紙を読む自分を、
王女は後ろから抱きしめた。

「別に私は、貴方が苦しいなら逃げても構わないと思います。
 二人で逃げましょうか?遠くへ。
 私は貴方が入れば地位も名誉も財宝も何も要りません。」

自分を抱きしめながら、恍惚とした声で囁く。
…我が国の不始末は自分でやるとして、王女に背負わせるわけにもいかんだろう。
やっぱり、帰ってもらわねばな。
「いえ、私が王位につかねばこの国はまた分裂するでしょう。
 私は王位につきます。
 …しかし王女、やはり貴方は国に帰らねばなりません。」
そう、兄に政治の才能があるとはいえ、やはり外の者。
権力と説得力のある人がそばにいなければ意味が無い。
しかし、王女はきっぱりと言った。
「いいえ、私は帰りません。私の国はここです。
 もっと言うなら、あなたの隣こそが私の居場所なのです。」
王女はスタイルもよく、顔の造形も神の寵愛を受けている。
そんな人にここまで言われると、非常に赤面である。

「貴方にはもっとふさわしい方がおります。
 私は、このとおり凡愚な男です。
 それに……容姿も醜悪ですしね。」
ここまで言えば諦めるだろう。
本音だしね。カテリーナ王女は自分にはもったいなさすぎる。

パァン!と、さっきより明らかに大きい音がした。
また自分の頬を叩かれたのだ。
グラグラする頭とヒリヒリする頬を押さえて王女を見ると、
泣いていた。

「貴方は、この世に二人といない逸材です。
 貴方は皆に惜しみない愛情と、別け隔てのない優しさをくださいました。
 隣国から人質として、この国にいた時にも貴方は…優しかった。
 それ以上自分を卑下するというなら、私は何度でも貴方を叩きます。
 そして、貴方が望まれるなら、この罪深い手を焼きましょう。」
う、うぐ…昔の自分はそんなことをしていたのか。
「いえ、自分が浅はかでした。お許しいただけますか?」
「許すも何も、貴方は私に何も悪いことをしていませんわ。
 ……約束を忘れていた以外は…」
昔の自分は結構軽々しく約束してたようだ。しかも人生を左右するような約束を…
「申し訳ないですが、私は貴方とどのような約束を致したのでしょうか?」
王女は少しむくれた後、夢見るような顔で約束について教えてくれた。
端的に言うと、結婚の約束である。
具体的に言うと1時間をかけても終わらないので、申し訳ないが割愛させていただこう。


454 名前:私の王子様 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/18(月) 04:04:52.99 ID:9Y3RlXN9 [8/10]
しかし、ここまで一途に想われているとは想わなかった。
これで断るというのも男として情けないもの。
不本意だが王位を継承し、カテリーナ王女と添い遂げることにしよう。
しかし、ホント容姿は釣り合わないよなぁ……

「うふふ…今、貴方は私と容姿が釣り合わない。とか考えていませんでしたか?」
なんでバレた。

「実は私、貴方に呪いをかけましたの。
 ……人に醜く見えてしまう呪いを。」
な、なんだってー!?
じゃあ今まで容姿で苦しんでたのは改善されるというのか!?

「でも、その呪いは今解いて差し上げますね。
 ―私のくちづけで……」
そう言うと、王女に抱きしめられ、ゆっくりとキスをした。
あまりにも甘い快感に気をやってしまいそうだったが、すぐに正気を取り戻し
自分の顔を見る。

……変わらない。全然変わっていない。
「王女、私の姿は何も変化しておりませんが……」
王女はコロコロと笑う。
「ふふっ……変わってますわよ?貴方は今、世界で一番美しい御方。
 ……私にしか、見えませんけどね?
 愛してます。私だけの王子様………」