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413 :青鬼の鬱日和  ◆OfnaLGvHtQ:2011/05/13(金) 23:57:25 ID:.g/yGQrw
  青鬼の鬱日和 第3話



 「で、どうだった?」

 理不尽極まる謹慎処分を受けた翌日午後4時半。
 俺はとある調査を依頼し、その調査報告を聞いていた。
 「昨日の件について俺はどういう扱いになっているんだ?」

 『最悪も最悪。酷い噂になってるな』

 電話越しに面白がっている風の声が届く。
 相手の名は木嶋 美樹。
 小学時代からの付き合いであり、今現在、同い年で唯一交流のある女子だ。

 どういう情報網をもっているか知らないが、コイツは自分の通う学校に関
するコトは裏の事情まで知っている。
 本人は趣味であると語るが、教頭の裏金やら教師の不倫、イジメを行って
いるグループの構成など幅広く知っている。

 『例のファンクラブだったかのメンバの何人かは君を退学にしろとかで担任に
直訴してるし、君が澤本絵里を強○したなんて噂も流れているくらいだ。』

 「誰がンな事するか!こっちから願い下げだあのアマぁ!」

 『まぁ君は素行こそ荒れてる所が目立つけど疎遠だったからといって実の姉に
手を出すほど道を踏み外しちゃいない筈だ。』

 調査を依頼するにあたって諸々の事情を説明したがコイツは俺と澤本絵里が
姉弟であることも既に知っていた。
 何を何処まで見通しているのか、底なしに恐ろしい女だ。


414 :青鬼の鬱日和  ◆OfnaLGvHtQ:2011/05/13(金) 23:58:21 ID:.g/yGQrw
『今頃、噂を信じた女子が目つきを鋭くして澤本絵里の送迎をしているだろうね。』

 「冗談抜きに俺の評価が地に堕ちてんじゃねーかよ、オイ」
 『ご愁傷様』
 「小学からの付き合いだろ!?少しはフォローしてくれてもいいんじゃないか?」

 『だが断る!』

 「バッサリ斬られた!?」
 『そんなわけで学校での評判は諦めて、君にはリアル・ストリートファイターとし
て名を馳せてもらおう』
 「どんなわけだコラァ!」
 不毛極まる言い争いが始まろうとした時、玄関の戸が開く音がした。
 途端に頭が痛くなってくる。

 「ただいまー」

 我が姉、帰宅せり。
 つい最近増えた住人の足音を聞き、俺は会話を打ち切り携帯電話をしまう。
 全く違う足音が二つ、三つか?
 帰ってきた姉の他に上がってきた人間が居る。
 木嶋の言っていた護衛だろうか。
 見つかったらややこしい事になるのは必至。

 俺様の厄日は、まだ終わっちゃいなかったZE!

 ……自分で言って悲しくなってきた。
 まさしく泣き寝入りといった感じにベッドへと身を沈め、考える。

 俺は無事に新学期を迎えられるのだろうか。
 異論はたくさんあるが、あれだけの事を仕出かして退学にならなかったことが
既に奇跡的だ。
 内申書には大きく傷がついただろう。
 智弘(及び自称・親衛隊一同)がしたことは恨んでも恨みきれん。
 だからといって暴力に物を言わせる報復行為は今度こそ退学になるだろう。

 呻きながら考察を続ける俺は、気付かなかった。
 災厄の足音はすぐそこまで来ていた事に。


415 :青鬼の鬱日和  ◆OfnaLGvHtQ:2011/05/13(金) 23:58:49 ID:.g/yGQrw
美樹・Side


 通話が切れたことを表示し続ける携帯電話を手に、私はため息をつく。
 電話越しに聞いた孝助の声は、ハリボテの威勢で悲しみと疲労を隠していた。
 外面の『青鬼』と違って弱々しい、私だけに見せてくれる内側の表情。
 だからこそ、私は自分自身の行いに後ろめたさを覚えずにはいられなかった。 

 孝助は私のことを信頼してくれている。
 その信頼に私は半分応え、半分裏切った。
 私が話した情報はほとんどが、事実。

 だけどな、孝助。
 噂を流したのは私なんだ。

 信頼はコツコツと積んで築いてゆく。だが一回の裏切りはそれを大きく壊してしまう。
 積み木の城を突き崩すように、砂場の山を蹴るように。
 99の信頼に1の裏切りが混ざっただけで信頼は大きく塗りつぶされてしまう。
 だから『半分、裏切った』。

 噂は尾鰭を付け、末端に至れば内容は別物になっている。
 半信半疑だろうがこのテの噂は人の信用を揺さぶる。
 荒々しい雰囲気をもつ孝助ならイメージも合うし、何よりただの噂だとキッパリ言い
切れるほど仲のいい者が孝助の周りにはいない。
 ……私とあの女を除いて。


416 :青鬼の鬱日和  ◆OfnaLGvHtQ:2011/05/13(金) 23:59:14 ID:.g/yGQrw
学校に戻っても孝助の周りに味方は居なくなっているはずだ。
 関わりの無かった者は今後も関わりを持たず、中には嫌悪を抱く者もいるだろう。
 関わりのあった者は尚更顕著に嫌悪感を表わす。
 そして唯一の味方として、私が残る。

 いつからか判らない。
 私は孝助に対して他の者には感じない不可思議な感覚と妙な独占欲を覚えるよ
うになった。
 ソレが世に言う恋心やら愛などという代物であると思い至るのには長い月日を要した。
 同時に孝助に対する独占欲も募ってゆく。

 「孝助、私はずっと孝助の味方だ」

 思わず笑みを浮かべてしまう。
 だがニヤニヤと笑っている場合ではない。

 この噂にしても孝助を孤立させるための第一手。
 あの女を退けるためには何か別の手を打たねばならない。

 孝助と添い遂げる未来を夢見、私は笑みを浮かべた。