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460 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:19:43 ID:nWopuHto [2/14]
『かずなりくんかんさつにっき こんどうさくら』

かずなりくんは、私のとなりに住む男の子で、幼馴染です。
かずなりくんは私と同じ中学校の同じクラス。でもあんまり喋りません。
小学生のころはとても仲が良かったけど、中学生に上がった頃から遊ばなくなってしまいました。
でも、私はまだかずなりくんのことが好きです。
幸いなことに、私とかずなりくんのへやは向かいにあるので、窓からよく様子が見えます。
だから、最近の私は暇さえあれば、ずっとかずなりくんの部屋を眺めています。

なので、今日からかずなりくんの一日を観察・記録することにしました。
その観察結果を、不定期に記録していきたいと思います。

461 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:20:31 ID:nWopuHto [3/14]

○月12日・・・晴れ

今日は土曜日。
かずなりくんが起きたのは、休日にもかかわらず午前六時でした。
かずなりくんはサッカー部に所属していて、だから休日の日も朝練習があるのです。
青のアーガイルチェックのパジャマから学校指定のジャージへ着替えると、かずなりくんは朝ご飯を摂って、学校へ出かけて行きました。
サッカーをするかずなりくんはとても格好良くて、よく女の子が応援に来ています。
そのこっちの気持ちも、よくわかります。かずなりくんは本当に格好いいのです。
午後三時に部活が終わると、かずなりくんは部活友達と一緒に、そのままファーストフード店に寄りました。
駅前できた、新しい店舗です。
結局そのあとゲームセンターにも行き、かずなりくんが家に帰って来たのは午後六時ごろでした。
今日のかずなりくん家の夕ご飯は、かずなりくんの好きなハンバーグのはずです。
かずなりくんの喜ぶ顔が目に浮かぶようで、私はくすりと笑いました。
かずなりくんは夕ご飯を食べてお風呂に入ったあと、ゲームを三十分ほどやって十時ごろに寝ました。
眠くなってきたので、今日の観察は、これまでしたいと思います。
おやすみなさい、かずなりくん。

462 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:21:13 ID:nWopuHto [4/14]

○月15日・・・晴れ

今日は火曜日。
最近、かずなりくんは長谷川さんと一緒にいることが多いです。
長谷川さんはとなりのクラスの女の子で、可愛いと有名です。
勉強も出来て、体育も得意で、よく告白されているそうですが、なぜか全て断っているそうです。
長谷川さんは、最近昼休みに私の教室に来て、それからかずなりくんを呼び出します。
二人は同じ委員会なので、活動の打ち合わせをしているのです。
かずなりくんは、長谷川さんといるとよく笑います。そして、ちょっと顔が赤くなります。
なぜでしょうか。不思議です。

463 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:21:56 ID:nWopuHto [5/14]

○月18日・・・くもり

今日は金曜日。
かずなりくんはいつも通り六時に起床しました。
今日は、サッカー部の朝練が無い日なので、かずなりくんはゆっくり仕度をし、学校へ出かけました。
登校途中に同級生の須山くんと合流し、八時ごろ、かずなりくんは学校へ到着しました。
それから午前の授業でかずなりくんは3回発言し、給食を食べ終え、昼休みになりました。
かずなりくんが次の授業の準備をしていると、他のクラスの女子がかずなりくんを呼び出しました。長谷川さんです。
今日の長谷川さんは、いつもと様子が違いました。委員会の打ち合わせでもなさそうです。
長谷川さんとかずなりくんは中庭に行き、二人で向き合って何かを話しました。
ここからでは、会話がよく聞き取れません。
なんて言っているのか分からないけど、長谷川さんの顔は赤くなっていました。
そして緊張した面持ちで、何かを伝えています。
かずなりくんは、真剣な顔でそれを聞いて、それから照れたように笑いました。
結局、なにを話していたのか、私にはよくわかりませんでした。
二人は別れると、かずなりくんは午後の授業を終え、部活をして帰宅しました。
今日のかずなりくんは、ちょっと早めに九時ごろ眠りました。
おやすみなさい、かずなりくん。

464 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:23:02 ID:nWopuHto [6/14]
○月21日・・・くもり

今日は月曜日。
かずなりくんは五時半に起床して、朝の支度をして、早めに家を出ました。
今日はサッカー部の朝練習があるのです。
かずなりくんは家の前の十字路にさしかかると、急に手を振りました。
その先にいたのは……なんと、長谷川さんでした。
待ち合わせをしていたのでしょうか。長谷川さんは、かずなりくんと並んで歩き出しました。
二人は学校に着くまで、笑い話をして、楽しそうに歩いていました。
これはどういうことなんでしょうか。なんで、長谷川さんが?
私は考えて、ふと思い当たる節があったことを思い出しました。
金曜日の昼休み。あれは、今日待ち合わせすることを約束していたのではないでしょうか。そうです。きっとそうです。
長谷川さんの家はかずなりくん家の近所だし、長谷川さんは陸上部に所属しているから朝練習があるのです。
かずなりくんと長谷川さんは学校の門で別れて、それぞれ部活動へ向かいました。
かずなりくんは、その日一日普段通りに過ごして帰宅しましたが、心なしか嬉しそうでした。
十時半、かずなりくんが就寝しました。
おやすみなさい、かずなりくん。

465 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:23:42 ID:nWopuHto [7/14]

○月23日・・・くもり

最近、妙な噂が流れています。
かずなりくんと長谷川さんが、付き合っているというのです。
そんなの嘘ですよね。嘘に決まっています。
クラスの男子がかずなりくんをひやかしても、かずなりくんは曖昧に笑うだけでした。
嘘、ですよね。

466 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:25:40 ID:nWopuHto [8/14]

○月24日・・・晴れのち土砂降り

今日は木曜日。
朝登校する時は快晴だったのに、下校時になって急にひどい雨が降り出しました。
かずなりくんは、朝、お母さんに折り畳み傘を持っていくように言われていたので、きっと雨にぬれることはないでしょう。
今週の土曜日にサッカー部の練習試合を控えているかずなりくんが風邪でも引いたら、それこそ大変です。よかった。
一方私は、天気予報には雨マークなんて一つも無かったから、折りたたみ傘も持ってきませんでした。
私が昇降口近くで土砂降りの空を眺めていたら、なんと、かずなりくんが私に話しかけてきました。
なんと、かずなりくんは、一緒に傘に入って帰らないか、と私に言ってきたのです。
最近は全然喋っていなかったのに。どうして。
私は平静を装って、いいよ、そんなの悪いし、と伏し目がちに言いました。
それでもかずなりくんは引きません。
結局私は折れて、傘に入れてもらうことになりました。
ざあざあ音を立てて降る雨。かずなりくんの肩がこんなに近くにあります。
うそみたいです。それこそ、手を伸ばせば届く距離。
私は緊張して、自分がどんな顔をしているのかさえ、よくわかりませんでした。
ひとしきり沈黙が続いた後、唐突にかずなりくんが話を切り出しました。

――ひさしぶりだな、一緒にかえるの。むかしは……ほら、小学生くらいのときは、よく一緒に帰っただろ?
えっと、突然ごめんな。戸惑っただろ。最近あんまり喋ってないからな、俺たち。

かずなりくんのこえは小さかったけど、不思議と激しい雨音の中でもよく聞えました。


――あのさ、おれ…………彼女、できたんだ


え。
私は実際にそう呟いていたかもしれません。
どこかで予想はしていました。だってかずなりくんは、最近妙に長谷川さんと一緒にいることが多かったから。
でも、それをかずなりくん本人の口から告げられるとなると、想像以上に辛かった。
私はその事実を認めることができませんでした。無意識に、事実を心が否定する。
うそ、うそ、うそ。……うそでしょ?
めまいがしました。みみなりもしました。ずつうもしました。
外の世界が、だんだんとおくなっていきます。
かずなりくんのこえが、だんだんとおくなっていきます。

467 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:26:03 ID:nWopuHto [9/14]

――相手は、2組の愛子……じゃなくて、長谷川さん。
向こうから告白してきたんだ。実は前から気になってて……それで、付き合うことになった。

うそ……うそ、うそ、うそ、うそ。

――今日は、それを言いたかったんだ。
さくらとは幼馴染だし……お前とは付き合い長いから、やっぱりちゃんと言っておきたくてさ。

うそ、うそ、うそ、うそ、嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!
呪詛のように否定を唱えます。
私はそんなこと、信じたくない。だって、嘘でしょ。かずなりくんが、かずなりくんが、かずなりくんが…………

――嘘よそんなの、信じないッ!!!

――…………さくら……?
え、なに、お前、なに言ってるんだよ……?

かずなりくんが驚いた顔で私をみています。雨は依然として強く、私の肩を濡らします。
嘘。嘘なのです。だって、ありえない、そんなの。嘘よ。嘘に決まってるでしょう?

――ねぇ。なんで。なんで。なんで。なんでよ。ねぇ。

――は? なあ、どうしたんだ、さくら。ちょっと落ち着けよ。なあ。

――なんで。なんで、なんで、なんで、なんでなんでなんでなんでッ!!?
お願い。答えて。教えて。かずなりくん、本当のこと言って? ね、言って。

――お、おい! さくら!?

――言ってよ。かずなりくん。言ってってば。言えよ。言え!!

――さく、ら……

――違う、違う違う違う違う全然違うよ!!昔のかずなりくんはそんなんじゃなかった!!
なんで!? なんで嘘ですって言ってくれないの!?
かずなりくんが付き合うなんて嘘! かずなりくんが誰かのモノになるなんて嘘!
私そんなの信じないから!!

――さくら!!!

かずなりくんが叫んで、私ははたと我に返りました。
私は混乱すると、いつの間にか思考が口に出ているのです。歯止めが利かなくなるのです。いやな癖です。
かずなりくんの手にしていた傘が、ぱたりと足元に落ちました。
たちまち二人の全身を雨がびしょぬれにします。

――さくら。今までお前に黙ってたのは、悪かった。ごめん。
でも、おれ、決めたんだよ。だから、

――かずなりくん。

私とかずなりくんは雨に打たれながら、向かい合って立ちつくしました。
奇しくもあの日の……18日の、かずなりくんと長谷川さんのように。
私はかずなりくんの言葉を遮るように、改めてもう一度、その愛しい名前を呼びます。

――ねえ、かずなりくん。
もういちどたずねるから、よくきいて。

……長谷川さんとつきあうって、そんなの、うそだよね?


おびえたような表情で、それでも私を真っ直ぐに見据えて。そんなかずなりくんの口が、言葉を形作ります。
そして、かずなりくんが導き出した、その答えは――――

468 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:27:02 ID:nWopuHto [10/14]

○月27日・・・雨

かずなりくんは、毎朝長谷川さんと登校するようになりました。
二人の部活がない水曜日は、帰る時も一緒です。
今度の休日、二人は水族館に遊びに行くそうです。
長谷川さんが、楽しみだねって笑って、かずなりくんも、嬉しそうに笑いました。


○月29日・・・くもりのち雨

朝、七時半。かずなりくんが、家を出る時間です。
きっとあの十字路には、長谷川さんが手を振って待っているのでしょう。
私はかずなりくんを追いかけるのをやめました。
私のかずなりくんは、もういないのだから。


○月1日・・・小雨

クラスのおとこのこに いじめらめれていた わたしを、
かずなりくんは、いつもたすけてくれた。
あのひの かずなりくんは、もういない。わたしのとなりに、かずなりくんは、いない。


○月3日・・・土砂降りのち雷

かずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくんかずなりくん……………………どうして。

469 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:27:46 ID:nWopuHto [11/14]

○月5日・・・くもり

――え。あの、なにか用ですか?

長谷川さんが、怪訝そうな顔で私を見る。
肩で切りそろえられた黒髪。清楚そうな可愛い服。細くて引き締まった身体。長谷川さんはやっぱり可愛かった。

――えっと、あなたは……ああ、近藤さくらさん。たしか、かずなりくん家のとなりに住んでる人、だよね?

……気安く呼ばないでよ。

――え?

うるさいうるさいうるさい黙れ、そんな顔で私を見るな。

――かずなりくんなんて、あんたなんかが気安く呼ばないで!!

――こ、こんどうさ……

――かずなりくんは私のなのに……幼稚園の時、結婚しようねって約束したのに……小学生の時、いじめられてた私を助けてくれたのに……夏休み、一緒にいっぱい遊んだのに……なんで、なんであんたがッ!!!
死んじゃえ!!!
あんたなんかあんたなんかあんたなんか――――――――――しんじゃえばいいのよ。

長谷川さんが、目を見開いて、落ちる。
長谷川さんの大きな瞳に、私の顔が映っていた。
私の瞳にも、ひきつった長谷川さんの顔が映っているのかな。


……ねえ、長谷川さん。階段の最上段から落ちたら、痛い?

470 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:28:42 ID:nWopuHto [12/14]



かずなりくん。

もうあの忌まわしい女は消えたの。

だから、かずなりくんは私と、ずっと……


きゃあっ!!?


…………

………………痛い。

…………………………どうして?


どうしてかずなりくんは、私を殴ったの?

どうしてかずなりくんは、泣いているの?

どうしてかずなりくんは、赤い長谷川さんを抱きしめてるの?

どうしてかずなりくんは、私を睨んでるの?

どうしてかずなりくんは…………私に死ねなんて言うの?

471 名前:かずなりくんかんさつにっき[] 投稿日:2011/05/15(日) 18:29:32 ID:nWopuHto [13/14]

――だいすきなだいすきなだいすきな、
おおの かずなり様へ。

これは、私からかずなりくんへのラブレターで、そして、遺書です。
突然ですが、私は死ぬことにしました。
だって、かずなりくんが私に死ねって言ったから。
かずなりくんがのぞむなら、私は死にます。
かずなりくんだけには嫌われたくないから。私は、かずなりくんが好きだから。
でも、ごめんなさい。
死ぬ前に、この想いだけは伝えたかったの。
かずなりくんは、昔から私を守ってくれました。
小学生の時、いじめられていた私を、かずなりくんはいつもかばってくれた。ありがとう。
人見知りで友達が少なかった私だけど、かずなりくんはずっとそばにいてくれた。
幼稚園の年長組の4月24日、覚えてる?
かずなりくんは忘れちゃったかもしれないけど……かずなりくんが、大きくなったら結婚しようって私に言ってくれた日です。
でも、小学生のあの日、私は転校しちゃって。
それから戻って来た後も、私とかずなりくんはなんとなく気まずくなっちゃって。
でも、私はずっとかずなりくんが好きでした。
だから、この日記の最後のページは、私からかずなりくんへの手紙で締めくくろうって決めたんです。
ごめんね、いろいろごめんね。そして、ありがとう。
私はやっぱりかずなりくんが好きです。だから私は、かずなりくんを好きなまま死にます。
本当に本当に、かずなりくんが好き。
さようなら、かずなりくん。

――こんどう さくら より





「…………かずなりくん、この日記、見てくれるかな……見てくれたら、いいな。

……なんで、こんなことになっちゃったんだろ……怖いよ。落ちるの、怖い……。

……ごめんね、かずなりくん。ごめんね、はせがわさん。


  

ばいばい。みんな、ばいばい」





私は、泣きながら笑って、学校の屋上のフェンスを蹴った。