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650 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/05(日) 03:32:25 ID:lXA2OcXg

○北嶺皇女


お兄ちゃんと再会してから早五日。
目的地である「凱苑の都」まで、あともう一歩。
今私たちは、都に一番近い村のお茶屋さんで休憩を取っています。

今でこそ、何事もなく穏やかな旅を続けていますが、
盗賊の方たちに襲われた日はとても大変でしたね。
実を言いますと、私、あの日の記憶がほとんどなくって、
頑張って思い出そうとするとお兄ちゃんに必死で止められます。
お兄ちゃんの勇姿を思い出したいだけなのに、どうしてなのでしょうか?
理由を尋ねると「ちょっとだけ流血沙汰があったんで鬱になる」と答えます。
でも、お兄ちゃんがそう言っているので、そうなんだと思います。
なのでもう気にしない事にしました。

「おい、ぼーっとしてどうしたんだ?ミューも食わないと」

「ちょっと、お兄ちゃんこと考えていただけ。
 ・・・・・・・先生どうしているのかな、私のせいでこんな・・・・・・」

「先生の強さと生命力があれば近いうちにふらっと姿現すだろ。
深く考えんなよ、信じろって」

「・・・・・・うん、そうだね、先生だもんね、早く会いたいなぁ~」

隣で美味しそうに団子餅を食べています。
お兄ちゃんの微笑ましい姿を見ていたら、なんだかお腹が膨れてきました。

「私の分も良かったら食べて、はいっ」

「いや、ミューも好きだろ、ミューが食べなって」

「ううん、自分で食べるよりお兄ちゃんに食べて貰う方がいいの」

「道中お腹すくかもよ」

「大丈夫、お兄ちゃんから元気貰ったから」

「そ、そうか・・・・・・そこまで言うなら・・・・・・貰うぞ!」

嬉しそうに口へ運んでいきます、とっても和む光景です、癒されました。

食べ終えたのでお会計を済ませ、店を出ます。
出て間もなく、お兄ちゃんは、厠に行きたくなったと言ってまた店の方へ戻りました。
なので、多種多様な人々が行き来するのを興味深く眺めながら、
目立つところで待っておくことにします。



急にしょんべんしたくなったなぁ、まったく、頻尿体質は困る。
そう心の中でぼやきながら、厠の戸に手を掛けたとき、後ろから呼び止められる。
盗賊の一件もあって、警戒しつつ振り向く。
そこには、深紅の長い髪に、くっきりした顔立ちの、褐色肌の綺麗な女が立っている。
直剣を帯刀し、北嶺風の軽装と何かの紋章を付けており、
おそらく国直属の兵士ではないだろうか。

「悪いわね、お急ぎのところ、先に済ませてからでも宜しいわよ」

「あっ、いやぁ大丈夫ですよ。で、何か?」

「そう。では、少しじっとしていて貰えるかしら?」

そう注文をつけられたため、
俺は手を柄に置き、いつでも抜刀できる状態にした。

「あら・・・・・・貴方に何ら危害を加える気はないわ。
ただ、少しの間あなたにこの石をかざしたいだけなの」

女は、俺の返事を聞くまでもなく、水色透明な宝石の付いた首飾りをかざす。
するとどうであろうか、やや強い光を放つ。
この色を見ていると、ミューが頭に浮かんでくる、瞳の色にそっくりなのだ。
不思議がる俺をよそに、女は、やっぱりか、といった納得の表情で宝石を見つめていた。

ここだけの話、俺は女の魅惑的な顔立ちと表情に心底見とれていた。
くっきりした目鼻輪郭に、程よく厚みのある唇、小麦色の健康的な肢体、
規則的に波をうった深紅の髪・・・・・・どれをとっても、俺には美しすぎた。

「どうしたの、そんなに驚くこと?それとも私に見とれていたとか?ふふっ・・・・・・。
冗談よ、この石が何で光ったか聞きたいんでしょ?」

「あ・・・・・・ああ!そうだ、それですよ、教えてください」

「わたくしたちが探してるある女性に対してだけ、最高の輝きを放つの。
それってどういいことか分かるでしょ、ステキな剣士さん?」



651 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/05(日) 03:33:32 ID:lXA2OcXg

「え~と、つまり俺を探していたということですか?」

「違うわ・・・・・・あなた男でしょ、全然分かってないじゃないの。
石が強く光る、
それは彼女の「気」の残滓が貴方に残り香としてまだ残っているという証拠よ。
それも、たっぷりとね・・・・・・まるで抱き合ったことがあるみたい」

「いやぁ~俺全く女性に縁遠いんですよ。
付き合いしても突然振られるんですよ~、何か変な力でも働いているんですかね、ハハハ」

「身の上話は申し訳ないけどどうでもいいわね。
もう単刀直入に言うわ、水色の髪をした北嶺系の娘を知らない?」

水色の髪、北嶺、女の子、探している・・・・・・そうか!
こいつら先生の言ってたアレか・・・・・・なんて鈍感なんだ俺は!
心の急激な揺れを隠し通そうと思ったが、
俺はあいにく、思ったことが顔に出る人間なので、鋭そうな奴には簡単に感ずかれる。

「知っているのね、貴方。
隠し立てはしないほうがいいわ、もう手遅れよ。
さぁ、どこにいるのか教えなさい」

「知りません・・・・・・」

「さっきからこの茶屋にいるだけで、石が光を放ってるいるの。
もうすぐそこに姫が居られるのは間違いないわ。
否定しても彼女のためにはならないわ、ただ単にもとの鞘に収まるだけ。
もちろん、貴方には莫大な金銭が王から下賜されるわ」

「俺はその娘を知らないんで関係ないですけどっ、
ひとつ言わせてもらえば、現状に満足して戻りたくない、
という場合もあるんじゃないですか」

「あら、なんでそう思うの?
ふふっ、思ったより深く彼女のことを知っているようね」

「さぁ?・・・・・・そもそも!勘違いははっきり言って迷惑です。
では他をあたってください、これにて」

立ち去ろうと後ろを向いた瞬間、やわらかい感触が背中に伝わる。
なんと俺に後ろから抱きついてきた。
美人に抱きつかれて無表情な男がいるだろうか、むろん、俺は全身が紅潮した。

「ねぇ、もし居場所を教えてくれたらわたくしのこと好きにして構わないわ。
それに剣士さんなかなかわたくしの好みよ、
剣士さんもこういうこと嫌いじゃないでしょ?
あっ・・・・・・もしかして、姫にこんな感じの事されたりしたのかしら?」

女性特有の包容感と匂いで自律心が狂いそうになるが、
迫り来る誘惑を振り払い、彼女を突き放す。

「初対面で急に抱きつくなんて・・・・・・おかしいですよ、もう行きます」

彼女はごく自然といった足取りで、俺の後についてくる、それも上機嫌に。
ミューは軒下の入り口付近で待っているのであろうから、
このままだと二人を鉢合わせにしてしまう。
変な宝石持っていたしな、どうしたものか・・・・・・。

幸い裏口があるようなので、まずそこから出て、人ごみの中を駆け、そこで撒けばいい。
かなり浅はかだが、考える時間がないので仕方がない。

裏口の扉まであと五歩というところで、後ろが急に騒がしくなった。
喧騒の所在に目を向けると、女が男数人に荒っぽく絡まれているではないか。

「おいお前!『エル・メア国』の犬だろう?よく澄まし顔でうろちょろできるな」

「・・・・・・いったい何なの貴方。
無礼にもほどがあるわ。
貴方のような、いかにも卑賤の出のような人種に知り合いはいないわね」

「なんだとっ、お前らが俺たちに何をしたか知ってるだろ!」

「ごめんなさい、思い出せないわ」

「なんだと・・・・・・ふざけるのも大概にしろ!」

「ふふっ、冗談よ。
一年位前から、私たちが導いてあげることになった劣等部族の方々でしょう。
なぁに?反乱のための準備?ふふっ・・・・・・可愛いわね」

「導いてあげるだと!?
互いに調和を持って平穏に生活していた数多くの部族を、
暴力で従わせ、分別なく破壊し、全てを奪っていっただけでなく、
北方の平原に住む我らが同胞たちを今だに奴隷のように酷使し続けている!
血に飢えた獣のような貴様らを、同胞に代わって天罰を下しているのだ!」

「意見発表会はこれで終わり?
ふふ、私はやることがあるのでくつろいでいて頂戴ね。
優秀な者が民草を率いるのは太古からの理、これ覚えておきなさい」

「おい、どこに行く?
逃げる前に貴様は・・・・・・我らの積年の痛みを知れ!」

女は彼らを見下すように一瞥し、立ち去ろうとする。
しかし男たちは、刀を抜き臨戦態勢に入っている、間違いなく女を殺す気だ。

場の殺気立った雰囲気でしばしの間動けずにいたが、
逃げる隙が出来たと考え、扉を蹴って裏口へ駆け出す。
案の定、女の足音は聴こえず、代わりに金属の激しい衝突音が辺りに響く。


652 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/05(日) 03:34:27 ID:lXA2OcXg

店の前に続々と集まる野次馬たちを掻き分けて、ミューの姿を探す・・・・・・居た!

「ミュー、おいで、もうこの村を出よう」

「うん、なんだかお店の中が騒がしかったけど・・・・・・なにか起きたの?」

「なーに、酔っ払いがいちゃもん付けてるだけだよ・・・・・・さっ、笠被って」

ミューの髪色はあまりに目立つ、なので麦藁の笠を被るように指示する。

「でも今日は曇りだよ、日はあまり強くないよ、さすがの私でも大丈夫」

「念には念を入れて被っておけ、ぶっ倒れても知らんぞ」

「うん・・・・・・見捨てられたくないから被る」

ミューは日差しの弱い寒冷地帯で生まれたためか、
日差しと暑さに弱く、すぐに肌が赤くなる。
普段はこれを理由に被り物をすすめるが、今の場合は単なる方便であって、
北嶺の使いに見つからないようにするがためである。

村を抜けて舗装された道をしばらく歩いていたら、
ミューがためらいがちに尋ねる。

「お兄ちゃん・・・・・・あのね、何か変なもの触った?」

「え、いやぁ特に。たぶん俺の加齢臭と思われ」

「違うよ、お兄ちゃんの匂いはいい匂いだよ。
なんかね、お兄ちゃんの匂いとは別に、良くない匂いがするの。
ねぇ、もうちょっと近くで嗅いでみていい?・・・・・・くんくん・・・・・・」

いつも思うんだが、ミューって犬っぽい。
従順かつ献身的で寂しがり屋、甘え方とか癖もそれとなく犬っぽい。
そんな犬っぽいことをしているミューの表情が突然曇る、そんなに臭うのか。

「やっぱり女の人の匂い・・・・・・。
いつ、どこで、どうして、なんで、だれに、どうやって・・・・・・?」

「いやいや・・・・・・匂いじゃそんなこと分らんでしょ」

「私ね、お兄ちゃんのことならなんでも分るんだよ。
心の内以外は全部知ってるよ。
だから、お兄ちゃんのとそれ以外の人の匂いは明確に区別できるんだよ」

「そ、そっか・・・・・・。でも俺、女の人に触れてない、ホントだって」

「・・・・・・お兄ちゃんがそう言うならそうだよね。
てっきり、女の人に後ろから抱きつかれたのかと思ったぁ」

「ハハ、そ、そんな、お、おいしい場面に出くわすわけないじゃんっ、ないない」

正直冷やっとした。俺と女子のことに関しては鋭い。

ミューが俺の袖を引っ張りながら、上目使いで見つめてくる。
これは最近恒例のおねだり。
俺にギュッと強く抱きしめてほしいらしく、なんでも病みつきになってしまったたとか。
妹とこんなことするのは良くないと思いつつも、悪い気はしないんで甘やかしてしまう。

「私の夢はお兄ちゃん専用の抱き枕なの、
だからお兄ちゃんの跡が付くくらい強く抱いて・・・・・・」

思えばミューは昔っから、俺が紅子以外の女の子と仲良くするのを快く思わないどころか、
ささやかで控えめな妨害行為(俺的にはそう感じる)にまで手を伸ばしていた。
最初のうちは、そんなやきもちを焼くミューが可愛く思えて仕方が無かったが、
ミューが成長するにつれ、依存度を増し、行きすぎじゃないかと思い始めた。
ミューが十二歳のころから徐々に距離置き、その結果まぁまぁ落ち着き、現在に至る。

「見つけましたよ、姫!」

なっ!?嘘だろ!後方からあの妖艶な声がする。
心臓を矢で射抜かれた心地になった。振り向くとそこにあの女がいた。
ミューは突然声をかけられたことに怯え、俺の後ろに隠れる。



653 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/05(日) 03:34:51 ID:lXA2OcXg


「ハハ、あの人数でよく無事でしたね」

女は俺の存在など空気であるかのように無視し、
怯えるミューの足元で膝をつき、へりくだった姿勢になる。

「お目にかかれて至極光栄であります。
わたくし、姫ご生誕の地であらされるメア国の近衛兵長、セン・ルカと申します。
姫を永らく捜しておりました」

「いやいや、だから人違いなんだって」

「貴方は黙りなさい、しらを切るつもり?
わたくしは姫に話しかけているの。
姫、さぁ参りましょう、今すぐにも馬車の手配を致します。
王は都の特級区に滞在しておられるので、すぐ会えるかと」

ルカはスッと立ち上がり、右手を空に掲げると、手のひらから紫色の光が伸びた。
これはあっちでも見た事がある、のろしの代わりに合図に用いる光術である。

「姫、なぜご返事して下さらないのです?怯えることはありませんよ。
むしろ安心して良いのですよ、よく頑張りましたね、
東方の辺境の地での質素な生活、辛かったでしょうに
これからは何不自由ない明るい生活が待っていますよ」

!?なんで東方だなんて分かるんだ。

「剣士さん、さっきは分からない振りして悪かったわね。
実は数カ月前から姫が陽ノ国の大琉ノ町にいることは分かっていたの。
ふふ・・・・・・南夏(みなつ)竜史さん。
そして、我らが姫君は射師橋(いしはし)深優。
なんという運命的な偶然、姫の母君も『ミユウ』というお名前でした」

こいつは何でも周知しているらしく、俺は開き直った。

「だったら何なんだ、深優の意見が大事なんだろうが。
なぁミュー、怖いのは分かる、
でも勇気を出して気持ちを俺とルカさんに教えてくれ」

「子なら親に会いたいに決まっているわ。
それにしても、本当に美しくなられた、ミユウ様にそっくりです」

ミューは良く耳を澄まさないと聴き取れないような声で、ゆっくりと発言する。

「私、ひ、陽ノ国人だから・・・・・・もう、戻ることは考えていません。
ただ、お父さんお母さんの顔は見たいけど・・・・・・」

ルカは、いけません、とでも言うように首を横に振り、迫るような勢いで説得する。

「血の繋がった温かい両親、兄弟がいなくて寂しかったでしょう?
あんな貧乏な家に拾われ、その上放りっぱなしに雑用の毎日、
そして、見た目の違いから周囲に後ろ指を指されてきたそうですね。
私の幼少時代も、姫の苦痛に及ばずながら似た経験をしました。
姫・・・・・・もう、このような苦行を甘んじる必要はありません」

「辛いこともいっぱいあったよ・・・・・・でもね、生まれて今日までずっと幸せなの。
だって、お兄ちゃんが傍にいてくれるから、そう、これからもずっと一緒に生きていくの」

ミューの俺の袖を引く力が一段と強くり、俺の顔を瞳をまっすぐ見つめる。
強い愛情深さを感じるような笑みで。

「兄代わりの男をとても慕っているとは聞いたがこれ程までとは・・・・・・。
 ・・・・・・・分かりました、
取り合えず王への謁見をなさってくれるということで宜しいのですね?」

「はい・・・・・・あ、あのぉ、お兄ちゃんも良いんですよね・・・・・・?」

「王の部屋に他国の者は原則として立ち入り禁止なのですが」

「・・・・・・お兄ちゃんと一緒じゃなきゃ怖くて・・・・・・お願いします」

姫であるらしいミューの願いを断れるはずもなく、ルカは渋々了解する。
しばらくして、壮麗な馬車がやって来てそれに乗り込んだ。
ミューは目的の地まで終始、手を握って離さなかった。

772 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/19(日) 01:57:13 ID:2hVCGM7g

財の限りを尽くした絢爛な館で、父親である北嶺王とミューは、
十六年振りの再会を果した。
ただ残念なことに母親はすでに逝去したらしい。
王は再会に非常に感激していたが、ミューはあまり嬉しそうではなく、
国に戻るようにとの要請も頑なに拒んだ。
ミューは王にそれはなぜかと訊かれ、こう答えた。

「私は陽ノ国人、だからぁ、つまりね・・・・・・これからもお兄ちゃんのとなり・・・・・・」

ミューは自らが特権的な高い地位にあることを知っても、
なんらためらいもなく今までの自分であることを望んだ。
そして、どうしても俺と離れたくないらしく、
しきりに俺の名前を持ち出しては嬉しそうに今までとこれからを語っていた。
とても頑固なミューに王も折れて、帰化の話は頓挫した。

王との会話が一段落した頃、ミューと俺はここに泊めさせてもらうことになった。
で、今は“そふぁー”とかいうふわふわした椅子で、ミューと向かい合ってくつろいでいる。

「すげぇ食事だったな、ミューがこんなにいいところの出だったなんてね」

「そうだね・・・・・・何もかもが新しいし、唐突すぎてちょっと信じられないなぁ・・・・・・」

「ま、そのうち慣れるよ。ここが本来の居場所だったわけだし」

「そうかなぁ・・・・・・いつまで経っても慣れるような気がしない・・・・・・。
だってもうすでに陽ノ国が恋しくなっているもの」

「はは、そうか?俺はここが刺激いっぱいなんで、帰りたいとは全然思わんな」

「でもいつかは帰るんだよね?
そのときはお土産もいっぱい持って、一緒に帰ろうね・・・・・・」

「おいおい、今日お父さんに会ったばっかりだってのに、
帰化する気まったく無しってのは、お父さんに気の毒過ぎるって」

そう言ったためか、ミューの表情が曇る。
席を立ち、隣に座って密着してくる。

「ちょ、ちょっと、まずいって。
王の娘とこんなことしてたら、お父さんに首刎ねられるって!
ただでさえ部屋をこっそり抜け出してきたんだろ。
国同士の問題にも発展しかねないぞ」

引き離そうとするが、しっかりと腕を抱え込まれていて動けない。
上目遣いで俺を見つめ、声の調子を落として尋ねてくる。

「お兄ちゃんが私の出自を知った日から、ずっと気にかかっていることがあるの。
それはね、お兄ちゃんが私への態度を変えてくるんじゃないかって。
でも、そんなこと無いって信じたい・・・・・・だから、今のは照れ隠しなんだよね?
私はいつまでも変わらず、お兄ちゃんだけの深優だよっ」

深優の重要性を大いに知って、態度を全く変えないなんて無理がある。
しかし、素直に心内を明かすなんて、酷なので出来ない。
ミューは北嶺へ戻るべきなのかも知れない、と思っていることも当然に。

実は王と個別で会話したんだが、そん時どれだけ深優が必要か聴かされた。
唯一の後継ぎで、何よりずっと思い続けていた、我が娘を。
まぁ、俺の行動一つで国が左右されるなんてあってはならない事、
だから俺は深優が北嶺へ戻る気になるよう協力する決心をした。

謁見後、仲の良ささが度を過ぎると王の怒りを買うので、
距離を置いて欲しい、とルカさんに頼まれた。
なので、さっさと有言実行しなきゃいけないが、今日はやけに甘えてくる。

「もちろん、いつもの甘えん坊な深優に写っているぞ、俺の目には、な・・・・・・」

「えへへ、じゃぁもっと甘えちゃうよっ・・・・・・お兄ちゃんが苦手な攻撃!うりゃ!」

なぜか俺のふとももをさすってきた、
くすぐったい・・・・・・相変わらず次の手が読めないなミューさんは。
でも、こういう戯れは今日で終わりだ、ミューももう大人にならなきゃな・・・。


773 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/19(日) 01:58:49 ID:2hVCGM7g

「こら、変な気分になるだろっ」

「お仕置きにどこでもさすっていいよ・・・・・・変な気分に私もなりたい・・・・・・」

「どこでも良いっていったら、おっぱいでも良いってことになんぞ!」

変な気分になったせいか、ついつい失言してしまった。
ミューの前では模範者たれって思っているのだが、やっぱり俺には無理だわな。

「はぁ・・・お、お仕置きなんだから仕方ないよねっ、あんまり痛くしないでね・・・・・・!」

ミューは赤らみながら目を閉じ、少しだけ胸を張る。
ほんとにノリが良いね、この子は・・・・・・えっ?もしかして冗談じゃない?

「で、でもやっぱり・・・・・・お兄ちゃんになら痛くされてもいいかなっ・・・・・・」

どうやら本気で期待しているらしい。
ん・・・・・・そうか、この状況を利用して逃げれるな、
ミューは絶対俺の頼みを聞くからな。

「いいかミュー、俺が開けろと言うまで目を開けちゃダメだぞ」

「はぁん、お兄ちゃんって焦らす人なんだね・・・・・・うん、いいよぉ・・・・・・。
兄妹の交流って絆を確かめる意味でもすごく大事だからねっ・・・・・・」

息が荒くなっているミューを横目に、心の中で「お休み」と呟き、部屋を出た。



う~ん・・・・・・まだかなぁ、五分くらい経ったかなぁ・・・・・・焦らしすぎだよぉ。
でもまさかぁ、お兄ちゃんがあんな大胆な発言するなんて。
私にとってはお仕置きじゃ無くてご褒美だよ、お兄ちゃん?
前々からこういう事されたいと思っていたから、とっても嬉しいよ。
はぁ・・・・・・早くお兄ちゃんの温もりを敏感なところで感じたい、早くぅ。

まだぁ?長いなぁ・・・・・・うぅ、どれだけ待てばいいのぉ・・・・・・
もぅ・・・・・・ちょっとだけ目を開けるよ?
ん、あれ?お兄ちゃんの姿、正面にはなし・・・・・・後ろかなぁ?

変だなぁおかしいなぁ・・・・・・いない、どうして?ああ、そっか!隠れているんだ!

「お兄ちゃんどこぉ?もしかして、かくれんぼ!?」

返事はありません。
きっと私に見つけて欲しいのだと思います、
かなり広いお部屋なのでちょっと手こずるかもです。

「そ、そうだよね、妹の胸を触るのはちょっと恥ずかしいよね、うん・・・・・・。
分った、よぉし、気持ちを切り替えてお兄ちゃん探すぞぉ~えいえいおー」

私の鼻はお兄ちゃん特有の甘美な匂いを正確に嗅ぎとれるので、
一発で見つけちゃいますよ?

くんくん・・・・・・ん?扉の方に匂いを感じる・・・・・・
まさかお兄ちゃん私に何も言わず出て行っちゃったの?

「お兄ちゃん~、今から三十秒以内に出てきたら、ミュー特製肩叩き券五百枚あげるよ?」

私の声が虚しく響くだけでした。こっそり出て行っていまったのでしょう。

お兄ちゃんと別れた後は、どんなに賑やかな場所であろうと、
暗く寒い寂しい空間に様変わりしたように写ります。変でしょうか?
この空間照らしている先ほどまで明るいと感じていたロウソクも、螢の光程度に感じます。
ドキドキから一転して、一気に気持ちが沈みます。

同じ館にいるのに、離れ離れというのはもどかしくて堪りません。
会いたい・・・・・・初めて泊る場所なのに一人は辛い、一緒に眠りたい。
そう思い、探すために部屋を出ましたが、
世話役として紹介してもらったルカさんに通せんぼされてしまいました。

「どこへ行かれるのですか?早くお休みなられた方が」

「あぅぅ、平気です・・・・・・それよりお兄ちゃん見てませんかぁ?」

「わたくしごときに敬語などおやめ下さい、普段通りにお声掛けを」

「分ったぁ、ルカさん。
あ、一つ言いたいんだけどぉ、自分を下げちゃダメだよっ。
あっ、これお兄ちゃんの口癖、えへへ」

「・・・ありがとうございます。
では、ご質問の件ですが、申し訳ありません、行方は存じません。
そもそも、彼と常に一緒にいるという事は控えて頂きたいのですが。
あなたはメア国唯一の後継ぎ、万が一のことが有りますから」

「お兄ちゃんは優しいよ、何もしないよ」

「いいえ、そう言う事では無くてですね、
もう依存する事自体をもう止めにすべきなのです。
彼も言っていました、ミューを宜しくと、決して嘘ではありません」


774 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/19(日) 01:59:15 ID:2hVCGM7g

「・・・・・・お兄ちゃんがそんな酷いことはずないよ・・・・・・。
そんな恐ろしい嘘言うのやめてよ、その言葉を聴くだけで胸がキリキリ痛むの・・・・・・」

ルカさん酷いです、そんな嘘でお兄ちゃんと私を裂こうだんなんて。
嘘でも少しだって聴きたくない、そう思い耳を押さえました。

「確かに長年連れ添ってきた兄と別れることは辛いでしょう、
しかし、姫を必要とし、待っている人々は数え切れないほどいます。
さぁ帰りましょう、姫の本当にいるべき場所へ、なにも怖くは有りませんよ」

「いやぁ・・・・・・離れたくない
 ・・・・・・離れ離れになるくらいなら死んだ方がまし・・・・・・」

「・・・さすがにその物言いは大げさでは」

「やっぱりルカさん分ってないっ!
私が軽い気持ちで、兄ちゃんと一緒に居たいとでも?それとも、ただの我がまま?
違うよ、私は物心ついたときから、
どんなことがあっても死ぬまで寄り添っていくと決めているの。
私はお兄ちゃんに一生を捧げる覚悟でいるの、真剣なの、本気なの!
それなのにルカさん、今日出会って今日離れて下さいだなんて、ひどいよ・・・・・・
私は、どんな苦難が立ちはだかっても、実のお父さんにお願いされようとも、
例え私の選択がみんなから見て間違っていようとも、どれだけの人を敵に回そうとも、
お兄ちゃんへの愛を貫く・・・・・・」

私が熱くなりすぎたため、ルカさんは大層驚いて、言葉を失ったようです。

「・・・・・・それほどまでに彼を愛していらっしゃいましたか・・・・・・」

「ねっルカさん、分ってくれたぁ?」

「はい・・・・・・と言う事は、南夏殿のお願いは絶対なのですか?」

「うん、お兄ちゃんがやれって言ったら何でもやるよ。
でも、お兄ちゃんってとっても優しくて妹思いだから、無理難題は頼まないよ」

「なるほど、姫の固いご意思、理解致しました。
ですが、姫の選択がどれだけの影響を我らが国に与えるかをご理解頂きたく存じます」

「うん・・・・・・そうだよね・・・・・・でも私、今はまだ心の整理がつかなくて。
だから、お兄ちゃんから離れる勇気なくて・・・・・・」

「はぁ・・・・・・南夏殿は中庭へ涼みに出て行きました」

「えっ、本当!?ルカさんありがとう~、じゃぁ行ってきます」

私とすれ違いざまにルカさんが、

「少しは王の御心情もお察しください・・・」

廊下を進み、中庭にたどり着きます。
そこで少し目を凝らし姿を探すと・・・・・・いました、
木製の長椅子で腕組みをしています。

「お兄ちゃん発見・・・・・・もう、いきなり居なくなっちゃうなんてびっくりだよ」

「・・・・・・ああ、すまんすまん、暑さで俺の体が勝手にここに導かれてよ」

「そんなに暑かったんだぁ・・・・・・隣に座るよ、よいしょっと」

「なぁミュー、すごく丁寧にされた中庭だな。
あの良くわからん置物もかなり値が張りそうだ・・・・・・さすが大国の主の別荘。
ふぅ・・・・・・なぁ、ミューに提案があるんだ、明日のことなんだけど」

「なぁに?」

「俺だけ道場に行くわ、ミューはしばらく残れ」


775 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/19(日) 01:59:49 ID:2hVCGM7g

「っ・・・・・・!どうして、嫌っ、急にそんなっ・・・!
誰かにそう言えって脅されたの・・・?」

「違う、完全に俺の考えだ」

「・・・・・・やだよぉ、お兄ちゃんのいない日々なんて拷問・・・・・・」

「せっかくお父さんと会えたわけだし、もうちょっと絆を深めろ。
それにミューはもともと北嶺の人間なわけだし、
なにより次期国王、いろいろ北嶺のこと学んで来い。
これはミューのためを思ってだ、分かってくれよ、な?
少しの間でいいから。
それに、なにも俺は消えてなくなるわけじゃぁないしな」

動揺する私の肩を掴み、落ち着かせようとしてくれます。
ぼろぼろ涙を流しながら首を何度も横に振る私を必死で説得します。
お兄ちゃんの真剣な眼差しを見ているうちに、
こうも頑固な態度を取り続けるのはとても良くない気がしてきて、
ついに首を縦に振ってしまいます。

「そうか、分かってくれるか、それでこそお兄ちゃんの妹だ」

「・・・・・・お兄ちゃんの言うこと聞きたいけど、
きっと、離れ離れになっているうちに、体がお兄ちゃんを求めてしまって、
おかしくなると思うの。
だからぁ、その、なんていうのかなぁ・・・「お兄ちゃん」をたくさん補給しておきたい」

「つまり・・・?」

「濃密な口づけをしてくれたら・・・・・・少しの間頑張れるかも・・・・・・」

お兄ちゃんは顔を真っ赤にして、身振り手振りで拒否します。

「だっ、ダメだ!兄妹の範囲を完全に超えてる。
それに俺が初めてだなんて、もったいない」

「何で・・・・・・?私たち世界で一番仲のいい・・・兄妹なんだから、
これくらいのことは想定内だよ・・・・・・・」

「急に大胆になったな・・・・・・どうしたんだ?」

「大琉にいた頃は、お兄ちゃんと微妙な距離があって、
どこまで踏み込んでいいのかがあまり分らなかった・・・・・・。
でも今回は、朝昼晩ずっと一緒に居られることになって、分ったの。
案外お兄ちゃんが私のこと嬉しそうに抱きしめてくれるってこと。
だから、今なら深いところまで迫れるかなって・・・・・・調子に乗ってごめんなさい。
したくないなら断っても全然平気だよ・・・・・・」

「ミュー・・・・・・そのさぁ・・・・・・まぁ、う~ん・・・・・・」

私は黙ってお兄ちゃんの決断を待ちます。
きっとこんなお願い、断るでしょうね。

「いいよ、ちょ・・・ちょっとだけだからなっ!」

予想外の返事に、嬉しさが込み上げてくると同時に胸の鼓動が急加速します。

「うそ・・・・・・嬉しい・・・・・・」

「ただし、二週間はいる事」

「・・・・・・お兄ちゃんの温もりをそんなに長く感じられないんだね、すごく怖いよ・・・・・・」

「もちろん、二週間我慢したら、俺のところに帰ってきていいからな」

「うん、分った・・・・・・あの、じゃあ早速・・・・・・」

「ああ、じゃぁこっちからな」


776 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/06/19(日) 02:00:08 ID:2hVCGM7g

!・・・・・・あっ、お兄ちゃんの顔がこんな近くに、はぁはぁ・・・夢みたい。

お兄ちゃんは一瞬だけ唇を触れさせると、離れようとしましたが、
私は強引にもお兄ちゃんの体を引き寄せて、再び唇同士を接着させます。

「っ・・・!ミュー、そんな強引に、洒落にならんぞっ・・・!」

「はむ、むちゅ・・・ぷはぁ・・・・・・たったあれだけじゃ満足できないよ。
すぐに気持ち良くしてあげるから、お兄ちゃんも舌をだしてぇ・・・・・・はぁむ・・・・・・」

お兄ちゃんの乾いた唇を私の唾液で湿り気を与え、
固く閉じられた唇の隙間を、舌でこじ開けるようにして進入します。
お兄ちゃんの歯ぐきを這うように何回も往復させ、裏側までしっかり舐めます。

「んん・・・・・・んっ、ぷはぁ・・・・・・
ミューはこんな淫らな子じゃ・・・・・・」

「えっ、何にも変じゃないよ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんが好き過ぎるから、一旦火が付いたら止まらないだけ・・・・・・。
お兄ちゃんの唾液美味しいよ、今まで食べたもので一番美味しい、すごく甘いの。
あっほら、私の唾液も飲んで?はい、交換」

お兄ちゃんの顔はとっても恥ずかしそうです。
その表情を見ていると、とっても可愛らしく思えて、ぞくぞくしてきます。
次第にお兄ちゃんは抵抗しなくなったため、一方的に口内を隅々まで貪ります。

「むちゃ、ぴちゅぷはぁ、くちゅ、お兄ちゃん大好きだよ、はむ、ちゅぱぁ、
いつまでも一緒に居ようね、くちゃ・・・じゅるぅ、ぱっ・・・・・・はぁはぁ・・・・・・
気持ちいい、お兄ちゃん?私は気持ち良すぎてどうにかなっちゃいそう。
まだまだ行くよ?お兄ちゃんも私を犯す感じでねっとりと口を奪って欲しいな・・・・・・」

気付けばお兄ちゃんを押し倒す形になっていました。
私はどちらかと言えば、
お兄ちゃんに押し倒されて激しくされたいと思っているたちですが。

ここぞとばかりに、お兄ちゃんの体に全身を擦りつけて体の疼きを沈めます。
だって、今回は接吻だけの約束だから、それ以上の行為に走ってしまったらまずいよね?
だからこれで抑えているの・・・・・・でも、これだけでも十分体が刺激される・・・・・・。

「はぁむ・・・んっ、じゅるっ、はぁんっむふぅ・・・・・・
お兄ちゃんのざらざら舌の感触が堪らないっ、最高だよ」

お兄ちゃんは舌を引っ込めて抵抗しますが、
そんなのお構いなしに、舌を執拗に絡ませます。
舌や唇、歯茎だけだはなく口内の肉壁も丁寧に念入りに、
滑り気を洗い去るような舌使いで、熱い吐息をもらしつつ、巡回します。

「ねぇねぇ、お兄ちゃんの朝晩の歯磨きは、私の接吻でいいんじゃないかな?
私のほうが歯磨き道具より、綺麗に歯垢もぬめり気も隅々まで磨きとるよ?
お兄ちゃんの口が不衛生な方が私的に嬉しいからっていうのも有るけど」

目を閉じて何も言ってくれなかったお兄ちゃんが、やっと口を開いてくれます。

「ちょっと愛情表現が行き過ぎじゃないのかな、気持ちは嬉しいけどさ・・・・・・」

「うんん、逆だよ、まだまだお兄ちゃんへの愛が足りない。
はいっ、だからもう一回・・・・・・」

「おっ、俺さぁ、疲れちゃったから寝室戻るわ」

「疲れてるんなら仕方ないね。うん、じゃぁどっちの部屋で眠る?」

「いや、別々だよ・・・・・・」

「・・・・・・私お兄ちゃんと明日から会えなくなるんだよ?
だからお兄ちゃんの体温を感じさせて・・・・・・?隣で眠るだけ、なにもしないから」

「じゃぁ、俺の部屋で・・・・・・」

「うんっ、いこいこっ!」