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439 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:04:05 ID:4ZDyBFqM
“本気”と書いて“マジ”と読むなんて誰が考えたのだろうか?
そんな考えが浮かんだのはこの状況に対しての俺の言葉。

「本気(マジ)でまずいだろ」

目の前には肩から血を流した男A。(名前言うのメンドイ)
前方の廊下には刃先が血に染まったナイフを持っている大空。
そしてその前に立ち塞がっている風魔・・立ち塞がっていると言うより今は
ただ立ち尽くしているだけだな、さっきまでは気迫みたいなのを
感じられたけれど、いまのあいつは抜け殻みたいだ。

「待っててね。今、殺ってくるから」

大空が風魔を抜けて俺たちのほうに向かってくる。一歩、また一歩。
寄って来る速度は超最低速度なのに、もっと遅くなれ、いや、むしろ止まれと念じる。
それが通じたのか大空は止まった。しかし、距離的にはすぐ側だ。
できればもう少し遠くで止まってほしかった。

「消えてくれる・・・よね?」

最後の『よね?』で見せた表情は辞書には載ってないような笑顔だった。

「お前のその行動が、風魔を守らず苦しめていることを知ら「ダマレ」」

力を振り絞って出した言葉はたったの3文字でかき消された。
ナイフが振り上げられた。察するに一振りで俺たち二人を殺るつもりだ。
男Aに二人分の価値があれば俺は逃げられるのだが、
こいつには一人分の価値もないんだよな・・
そんな下らない思いにふけているときだった。廊下のほうから風が吹いてきた。
それも色のついた黒い風が。俺と大空が視線を向けると現実的には
ありえないような光景があった。風魔から黒い風が吹いていた。
風魔の体全体から吹き出していた。
さらに見ていると、魂が再び入ったのか立ち方が普段の状態に戻った。
それと同時に、風魔の白髪が根っこから赤く染まっていった。
髪が血を吸い上げているように見えた、そして赤く染まった髪は変色し黒くなった
振り返った風魔の瞳は赤くなっていた。このような生き物を見たことがある気がする。
カラスだ。それも群れのリーダー格のカラス。
仲間意識が強いゆえに仲間に手を出す輩は完璧に滅ぼすカラス
非現実な出来事に呆気にとられている俺に、ではなく大空に風魔は近づいていった。

「どうしたの翼?すぐに終わるから待っ」

大空の言葉はそこで終わった。
風魔が手刀で・・・大空の腹部を欠き切った。辺りに飛び散る血。
何が起こったのかわからず腹部を押さえ、うずくまる大空。動けない俺。

「え?つ・・ばさ?」

大空の言葉は少しばかり脅えていた。涙を浮かべていた。
けれども、風魔は戸惑うことなく手刀で・・・大空の・・・胸を・・・貫いた。

「つ・・・・・・ば・・・・・・・・・・さ・・・・」

その言葉が終わる前に風魔は手を胸から抜いた。同時に大量の血が噴出し、
風魔に降りかかった。そして、風魔は白髪に戻り、瞳もいつものように戻った。
これが大会のあった日に、この俺、高坂が体験した非現実的な現実の内容だ。


440 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:04:40 ID:4ZDyBFqM
時がたつのは早い。このあいだ終業式を体験したはずなのにもう始業式だ。
夏休みは宿題も無事に終わり、とてもよい日々を送れた、とでも言うと思ったか?
舞を殺ったあの日、俺は警察、裁判、これらのお世話になるんだろうなと考えていた。
けれども、現実は違った。あの後、救急車で意識のない舞と病院に向かった。
救急車の中では「なんなんだ、この傷・・」「血液足りないぞ!」といった
救急隊員の言葉が飛ぶたびに「俺が殺ったんだ・・・」と心の中で何度も呟いた。
病院に着き、緊急の手術が行われ、胸を貫かれた舞は一命を取り留めた
俺はというと、手術結果を聞き、家へと帰り、警察が来るのだろうという思いに
少しおびえて過ごしていた。けれどもいつになっても警察が来るような事は無かった。
そして今、始業式に至るというわけだ。
始業式が終わり、帰宅時間となった昼。俺は風屋根へと向かった。
そこには、終業式のときと同じ人がいた。

「驚かさないでくれ、教頭がきたのかと思ったじゃないか」
「校長先生が勝手に驚いただけですよ」
「やはり、年かのぉ~」
「やっと気づきましたか」
「永遠の18歳はやはり無理かのぉ?」
「(あんたは永遠の81歳だよ)」

こんな会話をし風に当たっていたときだった。

「あの事件は公にならずにすんで良かったのぉ」
「え?」
「なんじゃ?何も知らんのか?お前さんの所に警察が来なかったのは
 ワシのおかげなんじゃぞ」

そういい、無い胸を張った(男性だから当たり前か)
少々混乱している俺に校長先生は説明話を語りだした。
簡単に言うと校長があの事件を隠蔽したらしい。

「何でそんなことしたんですか!?」
「やはり校長にもなると警察にも顔が利くようになってな」
「そうじゃなくて「何で自分をかばったか、か?」」

いつも、ふざけ半分の校長の顔が真剣になった。

「あれはお前さんが殺ったんじゃない。そうじゃろう?」
「いや、あれは・・・俺が・・」
「『俺じゃない俺が殺った』なんて言ってもだれも信用はしないじゃろうな」
「なんで、知ってんだよ!?」

驚きのあまりタメ口になってしまった。

「え?当たってたのか?ふざけで言ったのじゃが」
「・・・・・」
「うそじゃよ。しかし、一番最初から気付いていたのはワシでは無いがの」
「じゃあ、誰?」
「隼じゃよ。さすがはお前さんの中学の担任じゃ。生徒を良く見ていたみたいじゃの」
「でも、もう一人が現れたのは、高校になってからだし・・・」
「その前兆みたいなのを感じていたのじゃろう。凄い奴じゃな」

信じられない。隼先生が気付いていたなんて、そして校長が事件を隠すことが
出来るほどの権力(?)を持っていたなんて。
なんだか、よく分からなくなってきた。この現実が・・・


441 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:05:11 ID:4ZDyBFqM
その後、校長は教頭に引きずられ(デジャブ?)風屋根から消え去ったので
一人寂しく風に当たっていた。そして、今までの2つの事件を思い返していた。
思い返したところで感じるのは罪悪感だけ。両方、俺が存在しているから起きた事件。
なら、俺がいなければ何も起きなかったのだろうか?
俺がこの高校に来なければ事件は起きなかった。なぜこの高校に来た?
いじめられていたからこの高校に来た。なぜいじめられた?
中学にそういう奴等が多く存在した。なぜその中学に入学した?
こんな自問自答を繰り返しながら過去に遡る事19回。
俺の両親が結婚しなければ、という考えよりも過去に行ったとき
運命ってたくさんの偶然で成り立っているんだなぁと変に感心してしまった(笑)
自分でも気づかないうちににやけていたらしく、吹いてきた風に一発殴られた・・・
殴られ我に返ったとき階段のドアが少し開いているのに気付いた。
その隙間からは・・・眼が見える(真昼間なのにホラー映画以上の恐怖を感じた)
気になったので、気付かない振りをしながらドアの死角になる屋上の南側に移動した。
すると、それにつれられドアも開いてくる。俺を見てる?
そして、ドアが90度以上開いたのを見て、俺は急速にUターンして
ダッシュで北側に戻った。ドアはついて来れてない。これなら相手を確認できる!
そう確信しドアの裏側が見えたときだった。いきなりドアが閉まりだした

「(ヤバイ、逃げられる!!)」

そう思いドアに接近し縁を掴んだ!そして、後悔した。
自分は犯人を捕まえるために世界を走り回っている刑事ではないのに
そこまでやる必要は無かった。・・・何が言いたいかって?
閉まるドアを掴んでそのまま指を・・・・挟まれた。

「~~~~~っ!?!」

声にならない悲鳴。ドアは開かない。それどころか挟む力が強くなってきている。

「ちょっ・・・やめ・・・何もしないから・・許して・・すいませんすいません」

自分は悪くないはずなのにいつの間にか連謝していた(連続で謝罪、略して“連謝”
・・・くだらねぇ)

「ごめんなさい!大丈夫ですか!?」

このまま指が挟み切られるのを覚悟したとき、この声と同時にドアが開いた。
挟まれていた指には内出血の痕がきれいに一本線になっていて
その線よりも上の部分の指が少しばかり青くなっていた。
痛みでうずくまりながらも顔を上げ声のほうをした方を見てみると
意外にも知っている人だった。

「咲・・先輩?」
「はい、咲・・です」

驚き(?)で少しばかりの沈黙が続いた。
なんて声をかければいいのろう?と考えていたときいたずらな風が沈黙を壊した。
風が咲先輩のスカートを・・・・・・めくった。
めくったと言ってもスカートの裾はそこまで上がらなかったが
うずくまっている俺からは十分に見えてしまった。
・・・これって実行した風が悪い?それとも見た俺が悪い?


442 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:05:37 ID:4ZDyBFqM
「とりあえず、笑顔が見れて良かったです」

俺がその場に両手を着き数えられないほど土下座をして謝った後に先輩が言った言葉。
俺、にやけてたのかな?

「最近、重く暗い表情しかしてなかったので不安だったんです」
「そんな表情してましたか?」
「それはもう、どんよりとしたオーラが見えるぐらいの表情をしてました」

ときどき吹き渡る風で揺れる髪を押さえながら話す先輩。
その髪に“ドキッ”としてしまうのは男の本能なのだろうか?

「夏休みの後半、部活には一度も来なかったのでてっきり辞めてしまわれたのかと
 思っていました」
「大会の後ですよね・・・」
「長期の旅行にでも行かれていたんですか?」

想像と違う言葉をかけられ少しばかり戸惑う。

「えぇ、まぁ」
「お土産は?」
「へ?」

その言葉に『あっ』と驚いた表情を先輩が見せた。

「すいません。なんか意地汚いですよね。お土産目当てで話しているみたいで・・・」
「いえ、そんなこと・・」
「本当にそんなつもりはないんです。だから、そういう人間なんだって
 思わないでください。私、翼さんにそういうイメージを・・持たれたくありません」
「そんなこと思いませんよ。誰だってお土産とかは欲しがるものだと思いますし」
「そう・・ですか?」

涙ぐんだ瞳で見つめてくる

「そうですよ。それに、もし他の人が先輩の悪いイメージを言いふらして
周りの人が先輩のことを嫌っても、俺は先輩の事、好きで居続けますから」
「!?!」

同じような境遇にあっている人を見捨てる気はこれぽっちも無い。

「・・・先輩?」

固まってる。瞬きもしない、どこも微動だにしない。

「先輩?」

本当に動かないな。何をやっても動きそうにない感じだ・・・。
ためしに背筋を指でなぞってみた。

「ひゃん!?」

やってみると意外といい声で鳴いた。
なんか、変体が言うような言葉を言った自分に少しばかり引いた。


443 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:06:06 ID:4ZDyBFqM
「いま、何て言いました?」
「『今日の部活に参加できますか?』って聞きました」
「今日、部活があることをいつ言いました?」
「始業式前ですから翼さんがいないときですね。
 ・・・もしかしてご存知ありませんでしたか?」
「ご存知ありませんでした・・・」

今日は、始業式だけだと思っていたから鞄の中身は筆記用具と
宿題しか持って来てないんだよな・・・。

「申し訳ありません。私がちゃんとお伝えしていれば
 こんなことにはなりませんでしたのに・・・」
「いや、別に「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」」

なんかのスイッチが入っちゃったかな?

「気にしてないから、俺の話を聞いてください」
「はい、文句でも罵倒でもすべてお聞きいたします」
「そうじゃなくて、今日の部活は何時からなんですか?」
「夕方の4時からです」

いまは11時。用事を済ませてから帰っても余裕で間に合うな。

「じゃあ、間に合うんで大丈夫ですよ」
「?」
「俺、家が近いんで再登校できるんですよ。だから一度荷物取りに行ってきます」
「・・・怒ってないんですか?」
「怒る要素は無かったと思うんですが」
「・・・・よかった」

胸に手を当てながら安堵の息を漏らす先輩。涙ぐみながらのその行為に
見惚れてしまう俺。・・・将来、悪い女性に引っかかりそうで不安になってきた。

「じゃあ、行ってきます」

と言って先輩に背を向けたときだった。背中に柔らかい感触を感じた。
驚いて顔だけ向けると先輩が俺に寄り添っていた。

「せん・・ぱい?」
「翼さんは優しいですし、私をいつでも助けてくれる。あなたに会えて
 いじめを受けてばかりだった私の人生は変わりました。だから・・・・」

最後が聞き取れなかった。もう少しこのままでいたかったけれど
対人恐怖症の発作で気持ち悪くなってきてしまった。
先輩の匂いが駄目な訳じゃないのに“人”の匂いには慣れる事ができない。
くっついてた先輩にしぶしぶ離れてもらい、俺は自宅に向かった。
いや、自宅よりも先に寄らないといけない場所がある。
“烏羽総合病院”そこに行って俺はあいつに会わないといけない。
別に会わなくてもいい、俺も本心会いたくない。けれど、それは甘えだ。
だから、会いに行くんだ。・・・・・舞。


444 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:06:42 ID:4ZDyBFqM
病院の5階、そこに舞がいる部屋があると受付に教えてもらった。
右手には途中の花屋で買った小さな植木鉢の中で輝いているちいさな花
選んだ理由は小物みたいで気に入ってもらえると思ったから。
・・・『気に入ってもらえると思ったから』じゃねぇよ。
それよりも、もっと大切なことがあるのにそのことをぜんぜん考えてこなかった。
・・・・なんて声をかければいいのだろうか。
舞にとって俺は殺人未遂者という名の加害者だ。
そんな奴が急に訪問でもされて落ち着いていられる奴なんてこの世にいないだろう。
5階へと向かうエレベーターの中、階を表すデジタル数字が増えていく。
その数字を見ながら念じる。「増えるな、止まれ」と。
その念じは機械に通用せず、一度も止まることなく目的地の5階へと着いた。
壁の案内図を見て舞がいる549号室の場所を確認して目的地へと進む。
538、539、540、541、542、進むごとに部屋の入り口の番号が
増えながら俺の横を過ぎていく。
548、549、そのまま通り過ぎたかったが体は素直に部屋の前で止まった。
目の前にあるスライド式の扉。開けようと手をかけたが体が扉を開けられない。
鍵もかかっていないのに重鋼鉄のように感じるドアを数センチ移動させたときだった。
中から何か声が聞こえる。「ザック、ザック」という音も聞こえてきた。
開けた隙間から中をのぞいてみると舞の姿があった。
けれども可愛さというか、女子らしさというか
そういう何かは消えていて、ただの黒さしか残ってなかった。

「つばさ・・・(ザクッ)つばさ・・・(ザクッ)つばさ・・・(ザクッ)」

俺の名前を呼び、手に持っている果物ナイフを何かに突き刺していた。
それはぬいぐるみだったらしく、残っている部分から推測するに・・・
分からねぇ。黒い糸や布、形的に・・・鳥?もしかしてカラスのぬいぐるみか?

「何をやっている」

突然後ろから声をかけられた。その声に俺だけでなく部屋の中の舞もこちらに気づく。

「・・・つ・・ば・さ?・・・・ツバサァァァァァァ!!」

さっきと取って代わって物凄い形相でこちらに駆けてくる。急いでドアを閉めたが舞の
猛攻が止まらない。静かな病院にドアの悲鳴が響く。

「ツバサ!ツバサ!!ツバサ!!!」

ドアを破いて出てきそうな勢い。ドアを押さえている手が震える。もしもここから
出てきたら俺は何をされるのだろうか!?そう考えているうちにドアが開かれた。

「!?!」
「どけ」

また、後ろから聞こえた声の人物に横に払われた。そしてその人物はポケットから
何かを取り出し、飛び出してきた舞にそれを当てた。一瞬、『バリッバリッ』という
雷のような音が聞こえた後、舞は気を失ったらしく、そのまま倒れて行った。
助かったとホッとした時だった。その人物は俺の首に先ほどの・・・スタンガン!?

「二度と大輔には会いに来るなと言ったはずだ」

この声に聞き覚えがある。聞き覚えがなくてもフレーズから誰だか簡単に推測できる。
俺たちの校医の・・・・。答えを出そうとしたが既に意識が消えていた。


445 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:07:15 ID:4ZDyBFqM
夢・・だと思うものを見た。広い花畑で奥のほうに濁った川が流れている場所に
俺はいた。

「いや、やめて!!」

声のほうを見ると、そこには舞の姿があった。それと誰かがいた。あれはクロウ?
よく分からないけどクロウが何かを振りかざした。
それがよく分からないけど俺は走り出していた。

「死ねぇ!」
「!?」

舞が驚きの顔をしている。クロウに何かされたのではなく、いきなり目の前に
人が来て自分のことを庇っている行為に驚いているみたいだ。
クロウの手は俺の数センチ目の前で止まっていた。その手は黒く染まっていて
刃物のような形状をしていて、手と言っていいのかどうか迷った。

「・・・どけよ」

落ち着いた口調で話すクロウ。そんなクロウに少しばかりの恐怖を感じた。

「やめろよ!っていうか何をやっているんだ!?」
「とどめを刺そうとしているに決まってんだろ。本当は奥のあの川を
 とっとと渡らせる予定だったのに、こいつが嫌がったから強行手段に
 及んでんだよ。どっちにしろ死ぬだけだけど」
「?。川を渡るのがなぜ・・・・・三途の川」

花畑に三途の川って・・・・・冗談じゃないぞ。

「お前、舞を本気で殺すつもりか?」
「殺したつもりだった。なのに病院に運ばれて一命を取り留めたとか意味不
 なんだよ!もしも、蘇って来たら、また同じことになるんだぞ!」
「だからって「はぁ!?何自分を巻き込んだ奴を庇ってんだよ!
 ヒーロー気取りかてめぇは!!」」

気取ってなんか・・・いない。確かに巻き込まれた。けれども今俺の後ろにいる
舞は泣いてんだぞ。死にたくないって思ってんだぞ。それなのに・・・

「邪魔だぁ!」

クロウは黙っている俺をゴミのように払いのけ、舞に照準を合わせる。

「消えろぉぉぉぉぉ!!」
「いやぁぁぁぁぁ!!」

振りかざされる刃物の手。俺は躊躇せずに舞を抱きしめ刃を背中に受けた。
夢のはずなのに感覚がリアル。痛いし、噴出した血が生暖かいし、眠くなってきたし。
視界が暗転したとき、かすかに舞とクロウが俺の名前を叫んだ気がした。
今思えばクロウの表情。殺人を快感と感じる殺人鬼のような表情じゃなくて
恐怖に脅えている顔だった。そんな気がする。


446 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:07:52 ID:4ZDyBFqM
物凄い衝撃を受け俺はこの世に生還(?)した。

「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

なんかバリバリしたぞ。っていうか現に耳元でそんな音したし!!

「チッ。死なずに蘇ったか。」
「何すんですか!美影先・・」

その犯人の名を言おうとしたとき口に何か詰め込まれた・・・
スタンガン以外考えられないよな。

「やめろ美影」
「・・・影美って呼んでくれたら・・・やめてあげる」
「・・・・影美」
「大輔がそう言うのなら、そうする」

横にいた隼先生との会話。頬を赤らめて笑顔の美影先生は可愛いのだけれど不気味だ。

「大丈夫か?ほら、気分治しにこれやる」

投げ渡されたのは酸素ボンベ(“富士山頂上の空気”って書いてあるけど。
薄すぎて逆に酸欠になりそうだ)

「廊下で倒れているお前を美影が・・・」
「影美って呼んでって言ったでしょ」
「・・・影美が見つけてお前を運んできたんだけど覚えているか?」
「その証言にはフィクションが組み込まれているとおもいますが」
「だよな。足をつかんで引きずって運んできたから影美がお前を助けたとは
 思えないし」
「(引きずられたんだ、俺)」
「大空の部屋に行ったのか?」
「・・・はい」
「別に悪さをしたんじゃないんだからハッキリ返事しろ」
「舞・・・・・大空の具合は?」
「意識が戻ってからはずっとあんな感じだ。朝から消灯時間までずっとあれだ。
 病んでるよな(笑)。だからお前にひとつ言っておくことがある」
「((笑)じゃねぇだろ!)なんですか?」
「大空には近づくな。理由は分かってんだろ?」
「・・・・・はい」
「できれば、退院してからも近づかないほうがいいかもな」
「退院はいつになるんですか?」
「未決定」
「そうですか・・・」

心のどこかで退院しないことを祈っている自分がいた。けれども自分が作った罪だ。
ちゃんと償わなければ、でもどうやって?
・・・・・わからない。

「償い方とかそんな難しいことは今考えないでいい。時間はたっぷりあるから
 あせらずにその時間を有意義に使え」

人の心を読んだ隼先生の言葉が少しだけ俺の背中を押した。そんな気がした。


447 :風の声 第12話「風の消沈」:2011/07/26(火) 16:08:23 ID:4ZDyBFqM
病院で気を失ったせいで、部活には余裕を持って参加することはできなかった。

「遅かったですね。翼さん」
「ちょっといろいろあって」
「・・・・・」
「?。どうしました?」
「翼さん、薬品のにおいが微かにするのですが、どこに行ってたんですか?」
「え・・・」
「病院・・・にでも行ってたんですか?」
「えぇ。知り合いに会いに」
「・・・そうですか」

言葉を返した先輩の表情はなんか悲しそうだった。

「ひっさしぶり~翼君」

声と共に後ろから飛びついてきたのは部長。倒れそうになりながらも何とか堪えた。
首に回された腕から“人”の匂いが。言っとくけど部長の匂いが変な匂いという
訳ではない。

「ちょっ、先輩・・・離れてください」
「おっ。照れちゃってんの?君、意外とカワイイなぁ」
「照れているん・・・じゃ・・な・・・・い」
「離れてください!!」

いきなり体育館に響き渡る声にすべての部員がふりむく。そして呆気にとられる。
普段からおしとやかな咲先輩がこんな大声を出すことは滅多に無いからだ。

「さっ・・・ちゃん?」
「!?。す・・・すみません。大声で怒鳴ったりして。翼さんが苦しそうなのに
 満さんが止めないから、ついカッとなってしまいまして・・・」
「う・・・うん、分かった。離れるから・・・離れるから」

物凄く驚いたらしく、部長の動きがすごくスローだった。

「大丈夫ですか?翼さん」
「は、はい。大丈夫です」
「すみません。はしたないところをお見せしてしまって」
「大丈夫です。大丈夫ですから気にしないでください」
「・・・はい」

涙ぐみながらの返事。けれどもあんだけのことで怒るのも少しばかり不思議に思った。
が、一応触れないことにし、その後の部活を楽しむこととした。
久しぶりの部活は楽しかった。けれども舞のことが存在していたために心にモヤモヤを
抱えたままの部活となってしまい。練習中に多くのミスをしてしまったりした。
充実感をあまり感じぬまま部活は終わり、帰ろうとした自分を待っていたのは
男子部員の天野と高坂の二人だった。



翼さんはあの子に会いに行っていた。私よりもあの子を心配している。
翼さんが他の女の子と話したり今日みたいにじゃれているのを見ただけで
胸の奥がつらくなる。翼さん、辛いのは嫌です。
だから他の女の子と戯れないでください。
辛くて、苦しすぎて、押さえ切れなくて。・・・私、何をするか分かりませんよ?