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126 名前:neXt2nExt ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/07/08(金) 20:21:23 ID:ZWSCozaM [3/5]
――目が覚めると、朝日が顔を出していた。
どうやら、意識を失ったまま寝てしまったようだ。
自分の体を見ると、寝間着に着替えられている。
…スズねぇが着替えさせてくれたんだろうか?
あと、口の中がなんか甘い気がする。多分、気のせいだろうけど。

寝間着から外着に着替え、朝日を浴びながら軽く運動することにした。
そして運動しながら、僕はボーッと今日の予定を考えた。
―ごはんを食べたら、その足でカメラを持って山に行こう。
朝の神社は、確か綺麗だったはずだ。
準備運動を軽く終わらせ、家に入るとスズねぇが朝食を作り始めていた。
時間は朝6時。世間的には週末だというのに、スズねぇはホントに出来る人だ。

「あ、コーちゃん?ご飯もうちょっとで出来るから、そこに座っててー!」

「スズねぇ、僕も手伝おうか?」

「ふふっ、なら向こうで待っててくれるかな?早く食べたいのは分かるけど…ね……♪」

グウゥ…とお腹が鳴った。僕の胃袋は僕の口よりも実に機敏だ。
ちょっと恥ずかしい気持ちのまま、テーブルに座って待ってることにした。
そしてカップ麺ができるか出来ないかの時間で、朝ごはんが食卓に並んだ。
量といい、作っているモノといい、スズねぇは料理の魔法使いなんじゃないだろうか………



「……ふぅ、ごちそうさまでした。」

「ごちそうさま。食器下げちゃうね。」

満腹の腹を慣らすために、少し座ったまま窓の外を見る。
時間はまだ朝。ゆっくりしてもバチは当たらないだろう。
……と、ここで僕はあることに気づいた。
叔父さんと、叔母さんにまだ挨拶してないのだ。
というか、朝ごはんをのうのうと食べてる場合でもなかったのだ。
スズねぇの雰囲気に流されていたが、一晩倒れていて心配かけなかったわけもない。

「…す、スズねぇ!叔父さんと叔母さんは!?」

自分でもビックリするくらい大きい声が出てしまった。やっぱり焦っているのだろうか。

「え…えぇ……、夫婦旅行中だけど………」

「はぁ!?」

僕は確か、叔父さんと叔母さんに電話で今日の計画を伝えたのに、家族旅行!?
もしかして、言った日にちを間違ったのか!?

「すすスズねぇ!叔父さんと叔母さんに、僕今日の予定伝えてたよね!?」

「知らなかったら迎えに行かないでしょ?
 何言ってるんだか。」

僕の焦りとは裏腹に、スズねぇは呆れたような声で言った。
どうやら、僕のお守り……もとい世話はスズねぇ一人でOKという結論を叔父と叔母は出したらしい。
いくらなんでも無用心すぎるだろう……

「ふぅ……山に行ってくるね。」

安心したら、僕は今日の予定を思い出した。
神社に行って写真を取らなきゃ………

「…山に行って、何するの?
 まだ朝もさ、早いんだし……ゆっくりして……いったら………?」

なぜか、スズねぇが抑揚のない声で僕を引き止めた。
まるで、切羽詰っているような……

「い、いや僕は神社に写真を取りに行かないとダメなんだ。
 コンクールにだそうと思って………」

僕もまた、雰囲気に押されるように言い訳じみた理由を言っていた。
しかし、僕はよほど困った顔をしていたのだろう。
スズねぇは僕の顔を改めて見るなり、急に意見を変えた。

「そ、そうだよね!コーちゃんにはコーちゃんの都合があるよねっ!
 …あ…あの……引き止めたりして……ごめんなさい………」

何かに怯えるかのような言い方。
――僕はこの人に何かをしてしまったんだろうか?
じつは意識を失った後、野生の本能が云々して…スズねぇを襲ったとか……
……ないな。
僕は気を取り直し、スズねぇに声をかける。

「よかったら、スズねぇも一緒に行かない?
 自分が向こうに行って日にちが経っているから、道が変わってるかもしれないし……」

スズねぇはそれを聞くと、今度は目を輝かせた。

「うん!うんうん!
 私が案内するね!コーちゃんの頼みなら何でも聞くよ!」

――乙女心は移ろいやすいとはよく言ったもの。
正直、スズねぇの感情の変化についていけない。
昔のスズねぇは……もっと落ち着いた人………だったような?
でもまぁ、スズねぇが喜んでるしこれでいいや。

僕とスズねぇは、服を着替えて山に向かった。

127 名前:neXt2nExt ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/07/08(金) 20:22:05 ID:ZWSCozaM [4/5]
「~♪~~♪♪」

少し古い、でもセンスのいい歌を鼻歌でスズねぇが口ずさむ。
曲名は思い出せないが、前に聞いたことがあるような、ないような。

「スズねぇ、その曲いい曲だね。なんて曲だっけ?」

スズねぇは少しムスっとした感じで、僕に言った。

「この曲はもともと、コーちゃんが私に教えてくれた曲なのに………
 私はコーちゃんが好きな曲しか歌わないもの。」

肝心の曲は、昔大流行したバンドの曲だった。
僕も当時ハマって、よく歌っていた気がする。

街並みは多少変わったが、住んでいる人はあんまり変わっていなかった。
いつまでもゆったりとした時間で、歩くように時が過ぎていく。
僕は、この空気が大好きだった。


山の中の神社に着くと、そこは昔と全く変わらなかった。
変わったものといえば、ここにいる僕とスズねぇだけ。

スズねぇは参道をステップするかのように歩き、僕のほうを向く。

「ねぇ!コーちゃん覚えてるかな?」

心当たりが多すぎて、何を覚えているのかがわからない。
夜遅くまで、スズねぇと、僕の友達と、僕でここで遊んだことだろうか。
お百度参りすると願いが叶うって聞いて、スズねぇと朝から一緒にお参りしたことだろうか。
鳥居にこっそりらくがきして、神主さんに大目玉を食らったことだろうか。

「……一緒に、遊んだこと?」

「んーん、惜しいけど違いますー。
 ………あのね、コーちゃんは昔ここで、私とある約束をしたんだよ。」

スズねぇは少し遠くを見る。
表情はまるで、夢見る乙女のようだ。

「……なんだろう?」

「…覚えてないのかぁ………まぁ、コーちゃんは小さかったしねー………
 ……あのね、コーちゃんは私に、結婚の申し込みをしたのでしたー!」

そうか、そんな昔があったのか………

「私、嬉しかったなぁ……まだ覚えてるよ。
 『僕が大きくなったら、スズねぇと一緒になるんだ!』…ってね。
 コーちゃんは、その約束を守ってくれる……かな?」

クラっときた。
思わずその場で「是非喜んで!」と言いたくなったが、
いきなりそんな事言って、スズねぇにドン引きされたら元も子もない。

――冷静だ。冷静になれ孝太郎………

「……その返事は、4日後で…いいかな?」

キザったらしく、かつ冷静沈着な男孝太郎は、クールに答えた。
稀代の美女、スズねぇは満面の笑みで朗らかに応える。

「うん、待ってるね!」

クールな男は、思わず鼻血を垂らした。
不覚………


その次の日も、その次の次の日も、僕はスズねぇと一緒に回った。
あちこちの土地をめぐるたび、スズねぇは僕との思い出を語ってくれた。
僕はすごく、嬉しかった。
スズねぇはまるで宝物を見せてくれるかのように、僕との思い出を語ってくれるのだ。
しかし、いつも帰り際になると切ない表情を浮かべていた。
……何か心配事でもあるんだろうか。


3日目の夜、つまりスズねぇの約束から二日目
僕はふと気になったので、スズねぇに聞いてみた。

「ねぇ、叔父さんと叔母さん、家に全く連絡入れないね?どうしたんだろう。」

僕はこの時、サラッと軽く聞いたはずだ。
しかし、スズねぇは皿を落とすぐらいのリアクションを返してくれた。

「そ、それは…夫婦旅行……だからよ。」

おかしい。
僕の覚えている叔父さんも叔母さんも、スズねぇを大事にしていた。
だから、いくら夫婦旅行だからといって、一日でも連絡を欠かすことはないと思う。
なのに二日。気を失った日も連絡がないとしたら三日だ。

「スズねぇ……僕になんか…隠してない?」

スズねぇの目が泳ぐ。明らかに動揺している。

「べ、別に隠し事なんてない……
 それよりもほら!お風呂沸いたから急いだ急いだ!
 早くしないとおねーちゃんが先に入っちゃうぞー!」

スズねぇの使用後のお風呂……
ありかもしれない……と考えた僕は、普通に先に入ることにした。
後戻りできなさそうだったからだ。性癖的に考えて。

――はぐらかされてしまった。
風呂に入りながら、考え事をする。
―今日……いや、スズねぇに聞くのはもう無理だろう。無理して聞くことでもないし……
幸い、明日は何も予定を入れてない。
ちょっと周りの人の話でも聞こうかな……

……でもまず、今から入りに来ようとしているスズねぇを止めよう。
全力で止めよう。何してんだあの人は。