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463 :ヤンデル生活 第4話 きっと誰だって光を求めていた。:2011/07/27(水) 23:41:13 ID:M.S7dqtk
ヤンデル生活 第4話 投稿します。

 この世はよくある安っぽいドラマだ。
一部の優良遺伝子の主人公が、シンデレラみたいに階段を駆け上がり幸せを手にする。
大抵それは、美男美女。
俺の妹やつかさの妹もその優良遺伝子の一人。
そして、俺はそんな安っぽいドラマの通行人A。
ほとんどの人は、その通行人Aだ。
テレビで輝く、あの世界や周りで一際異彩を放っている美男美女、あるいは天才。
選ばれたに等しい、その人材がこの世を動かしてるといってもいい。
けど俺は、ただの通行人A。
別にすごくもなく、とくに突出したところもない。
俺はそんな通行人Aだと思っていた。
俺はこの世を動かすためのほんのミクロの歯車だと・・・。
実際、それは本当だった。
それで幸せだった。
妹に告白された時も、だからといって何も変わらない。変わるはずがないと思っていた。
一つの石ころが、たまたま歯車にあたった。
それまで順調に回転していた歯車は、外れて転がってしまった。
俺はみんなと違う方向に転がってしまったんだ。
転がって。転がって。
最後は、横たわり倒れる。
その時俺は・・。
一つだけ違う方向に転がって行った歯車は、自分が望まなくとも目立つ。
目立ってしまった歯車は、一つの物語の主人公になってしまった。
だが、主人公は必ずしも幸せになることはない。
たぶん俺はその一人だ。
俺が外れたせいで、止まってしまった歯車のためにも幸せになっちゃいけないんだ。


 その日のホームルームは、俺にとって忘れられないものとなった。
みんなは気づかない。そりゃそうだ。
テレビにはばっちりモザイクがかけられていた。
隣の男子がひそひそ声で、あの子かわいくね?なんていってる。
残念ながら本当の姿を知る者はいない。
兄を殺した妹なんて誰も気づかない。
俺以外。
ふと気づいた。
比真理は俺より1つ下のはずだ。
なぜ、俺と同じクラスに入れたんだ?
兄を殺した犯人と誰かに気づかれないように年齢を偽ったとか?
だから、俺と同じ学年に入らないといけなくなったのか?
どちらにしろ、親がかかわっている。
いったい、どんな親だよ

「じゃあ、前川さんは赤木君の隣の席でいいかな?」

よりにもよって俺の隣の席かよ。

「別にいいですよ。」

そうそっけなくいうと、誰も見ずに静かに俺の隣に座った。

俺は横目で比真理の顔を見る。
顔は童顔でいかにも可愛いという顔立ちだ。
だけど、目は虚ろで色がない。
ただひたすら虚空を眺めてるといった感じだ。
最後にまだ人殺しになる前の比真理を見たのはいつだったか。
8月のセミがわんわん鳴いていたときだったかな。
つかさの家に遊びに行ったんだよな。


「あっつー・・・。何でお前ん家クーラ壊れたんだよ。」

「しらねーよ。こっちが聞きてぇーよ。」

「それより・・例のもの持ってきたんだろうな。」

「おいおいつかさ・・・俺が約束を破ったことなんてあるか?」

「テスト・・・カンニングしたときお前だけバックれたよな?」

「あはは・・・あれはあれだよ。天の声が聞こえたんだよね~。そこに行ってはいけませんてさ。」

「赤木ぃぃ・・・。まあいいさ。それよりも・・・。」

「わかってるさ。買ってくるの苦労したぜ・・・。これで、テストのことはチャラな。」

「ああ。それより早く出せよ。」

「わかったわかったって。」

俺はゆっくりカバンの中から男の夢のアイテムを引っ張り出す。

「おおおお!!!これが・・・これが!」

「そうだ!青春三種の神器の一つ。」

エロ本だ。

「にぃにぃぃぃ。あっついよ~。」

「ひっ・・・ひまりゅい!?」

「ん~?にぃに何もってるの?」

俺たちは必殺○事人もびっくりな手さばきで、つかさから俺、俺からカバンへと俺たちのパトスを移動させた。

「あれ~?確かにあったんだけどな~??」

「何の話だよ?比真理?俺たちは最初っから何にも持ってなかったぞ。な?赤木?」

「もちろんだとも。な?つかさ?」

俺たちはアイコンタクトをした。ふふふ。エロ本ひとつ死守できずに男が務まるか!

「えいっ!」

そういうと比真理は、俺たちの涙と汗と青春の結晶になるはずのものが入ったバッグをひったくった。

「なんか不自然に膨れてるんだよね~。」

まずい・・・まずいですぞ隊長!!

慌てるな・・・まだ策はある。

「比真理。」

そういうと、つかさは菩薩のような顔で足を組んで座って膝をぽんぽんとたたいた。
すると、おや?・・・比真理の様子が?


464 :ヤンデル生活 第4話 きっと誰だって光を求めていた。:2011/07/27(水) 23:42:55 ID:M.S7dqtk
「う・・・うにゅぅぅ・・・。だって・・・にぃに絶対何か隠してるもん。」

「比真理。いい子だからおいで。」

「う・・・ぅぅぅぅにゃあああ!!にぃにのバカぁぁぁぁ!」

そう叫ぶと比真理はつかさの膝に悔しそうな顔を浮かべて座った。
ふ・・・さすがだな。自分の妹さえも手なずけているとは。
俺たちは心の中で安堵の笑みを浮かべた。
だが、現実はそんなに甘くないのであった。

「お兄ちゃん。」

第2の刺客!?まさか・・・。

「この袋何ぃ?」

俺の妹だああああ!!

「す・・ずいつの間に来てたんだ?」

「ン~?いつぐらいかな?」

ばかな!?後ろはちゃんと確認したはずだ!
うちの妹のストーキング能力にはたびたび驚かされる。

つかさがアイコンタクトで訴えてくる。くそっ!俺が何とかするしかないのか。

「ほら、それを返しなさい・・。いい子だから。」

「お兄ちゃんがかまってくれないから悪い子になったもん。」

そういうと、袋のチャックを開けようとした。

「まてっ!そ・・そんな袋どうして開ける必要がある?それにそれは俺のカバンだぞ?」

「それがどうしたの?」

「いいか!もし俺がお前の部屋にはいって勝手にバッグを漁ったらどう思う?」

「ふぇ?うれしいかも。」

そういって顔を赤らめる。ああ、もう。

「じゃあ、じゃあ、タンスを開けて下着を漁ったらどうする!!」

俺は力強く諭すように言った。

「ふぇぇぇ!・・・。」

しばらく、戸惑ったように顔を振りながら顔を下に向けた。
やっとわかってくれたか。

「うん・・・。いいよ。」

そういって俺の目を見つめだした。
なんてこった。
どうすればいいんだ。言葉で諭すのはもう無理だ。
俺たちは目の前で楽園が消えるのを黙ってみてるしかないのか・・・。

俺たちにはまだ希望がある。
つかさの目からそういっているような熱いまなざしが帰ってきた。
けど・・・どうすればいいんだ?
俺は訴えかけるように目で合図した。
すると、急に比真理が立ち上がった。
なんか様子がおかしい・・ぞ?

「にゃへにゃへにゃへ・・・。」

顔がほんのり赤く、ぼーとしているような目でふらふら立っている。

「やれ!比真理!」

そういうと、比真理は俺の妹めがけて突進していった。

「お前が時間を稼いでくれたおかげだ。」

そう、誇らしげにつかさはいった。
一体何があった!?

「な・・なにすんのよ!離れなさいよ!」

二人は取っ組み合いになった。
だが、少し俺の妹の方が身長が高い。
状況は不利か。
助けてやらないと。
つかさは足がしびれて動けないみたいだ。
だったら俺がぁぁぁぁぁぁあ!
俺は、すずの背後にまわり、隙をついて奪い取った。
よし!!あとは逃げるだけ!いくぞつかさ!・・・。つかさ?

俺はもうだめみたいだ。足がしびれて動かねえ。

なっ・・・なにいってんだよ!!ここまで苦労して勝ち取ったんだろうが!
お前があきらめてどうする!

すまねぇ。俺の分までテッシュを使ってくれ。

そういってそうな目を向けると最後の力を振り絞って俺に自転車のキーを渡した。

「いけぇぇぇぇ!!」

そうつかさは叫んだ。

ばかやろう。

俺は目にこみ上げてくる熱い何かを感じながら。もうダッシュで玄関に向かって走って行った。

「おにいちゃん!まってぇぇぇ!」

妹の叫びを背中に受けながら俺は玄関を飛び出した。

青春万歳。

その後の展開はというと、必死の形相で妹をまいてきたつかさと公園で合流しまんまと青春を味わったのだった。
ん?受験?なにそれおいしいの?


465 :ヤンデル生活 第4話 きっと誰だって光を求めていた。:2011/07/27(水) 23:44:02 ID:M.S7dqtk
そんなこともあったっけ・・。
まさか、こんなことになるなんて誰が予想した。
お前の妹は今、こんな光のない目で生きてるのか死んでるのかもわからなくなってしまっているんだぞ。
いつもみたいに、お前の悪知恵でなんとかしてくれよ。

現実は急に突きつけられる。

その日の昼休み俺は比真理に話しかけた。
多分無視される。
そう思いながらも話さずにはいられなかった。
俺は一言、久しぶりと話した。
しばらく沈黙が続いた。
やっぱり無視されたか。
そう思ったとき、比真理は口を開いた。

「久しぶり。」

その一言だけだった。
すぐに、比真理はどこかに行ってしまった。
久しぶりに聞いた声だった。
その声はひどく弱弱しく、か細かった。
比真理も比真理なりに苦しんでいるんのか。
俺のやっていることは、傷をより広げるだけかもしれない。
けれど・・・。

ぽつりぽつり、小雨が降った。

俺はいつもの通り屋上で食べる。
雨が顔にあたる。
だけどいやじゃない。
ふと、外の手すりの方に人影が見えた。
きっと見間違いだ。そう思いたい。
けど、見間違いじゃなかった。
ふわっと、薄い金髪が見えた。
風に揺られてふわふわ見え隠れする。
何でおれは否定から入るんだろう。見間違いなんてあるわけないじゃないか!
まさか、なんてものはもうないように思えた。
俺は弁当を放りなげてそこに向かっていった。
知らない振りもできただろうに。
なんで助けようとしたんだ俺は。
どうしてもなぜ兄を殺したか聞きたいから?
いや、違う。
最初からわかってたんだ。
自分は違うって思いたかったんだ。
俺も同じ目に会うんじゃないかって恐怖して。
どこかにでも違う可能性を見つけたかったんだ。
逃げてたんだ。
妹からも。
死からも。
知っていたのに知らない振りをした。
やっぱり俺はただの人間だった。
主人公でもない。
外れて転がって行った歯車でもない。
ただ現実を見せつけられて。
ただそれが怖くて。
通行人Aという立場に安心していただけの。
只の赤木 九鷹だ。
今、目の前にいる自ら死のうとしている少女は、選ばれた人間なんかじゃなく、ただか弱い、ただの、どこにでもいる女の子だった。


466 :ヤンデル生活 第4話 きっと誰だって光を求めていた。:2011/07/27(水) 23:45:15 ID:M.S7dqtk
ぎりぎり間に合った。」

俺は比真理の手をがっちりつかんだ。
小さく震えているその手は、兄を殺したとは思えないほど繊細で今にも壊れてしまいそうだった。

「どうして・・・なんで・・・。」

「言いたいことはわかってる。どうして助けたのか?だろ。てか、今時屋上から飛び降りるなんてナンセンスだろ。」

俺はそういって苦い笑顔を向けた。
比真理は俺を見上げた。
その顔は人殺しの顔でも兄を殺して自分も死のうとしている顔でもなくて。
只の。只の、か弱い15歳の少女の泣き顔だった。
わかってるさ。好きになったのがたまたま兄だっただけだってことも。
本当に兄のことを愛していたということも。
殺したくなかったってことも。
でもどうしようもなかったってことも。

「さわらないでよっ!私に触っていいのはにぃにだけなのぉ・・にぃにだけ・・・。」

「暴れんなよ!手が・・・滑る・・。」

手に汗がたまってすべる。まずいな・・・。

「ああ・・・いやぁ・・・落ちちゃう・・・死んじゃう!・・・。」

「それって死にたくないってことだよな?」

「う・・ああ。」

「いえよ!死にたくないって!助けてほしいって。言わなきゃわかんないこともあるだろ。」

「・・・。」

「言ってくれたら、俺はお前の事全力で助けるだから・・。」

くそ・・・。もうすこしもてよ俺の腕!

「どうして・・。私の事助けようとするの。だって・・・わたし・・・わたし。」

「もう、理屈で考えるのやめにしたんだよ!俺はお前の事助けたい。ただそれだけだ。それに、あいつだってきっと・・いや絶対死んでほしくないって思ってる。」

「わたし・・・わたし・・・。」

「いえよ!死にたくないって言えぇぇぇぇぇ!!」

「・・!?・・・。わたし、死にたくない。死にたくないよぉぉ・・・。」

「よし!・・・。うぉぁぁぁぁあ!!」

今だけ、この瞬間だけ、俺に力を貸してくれ。
神でもなんでもなんだっていい。
俺の右腕よ、もってくれぇぇぇ!!


間一髪。俺の右腕が持ってくれた。
俺の右腕は限界をとっくに超えてたみたいで痙攣が止まらない。

「ばかじゃないの・・。」

「バカと天才は紙一重っていうだろ?」

「てんさいはてんさいでも天災のほうだよ。」

雨が止んだ。