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496 :ヤンデル生活 第5話 彼女の名前は比真理。:2011/08/04(木) 12:53:33 ID:B3N5iShM
ヤンデル生活第5話 投下いたします。

「にぃに。あいたいよ、にぃに。すぐにぃにの所に行くはずだったのに。」

比真理は涙を流しながらそう呟いている。
兄を独占したい。
その欲望が引き起こした悪夢だ。

「もし、俺があの時つかさの家にいっていればこんなことにはならなかったのかな。」

「にぃに。にぃに・・。」

「実はさ。あの時俺、つかさの家に行く予定だったんだ。」

「・・・。」

「あの時、あいつ用事が出来たって言ってさっさと帰っていたんだ。」

「あいつ。本当は比真理のこと好きだったんだよ。」

「どういう意味?」

「あいつは、つかさは比真理の誕生日ケーキを買いに行ったんだ。」

「にぃ・・にが?」

そうあの時、つかさは比真理の誕生日ケーキを買いに行っていた。
兄弟同士結ばれることはなくても、俺があいつにしてやれる精一杯のことは比真理の誕生日を一緒に祝うことだけだ・・・なんてギザなこと言いやがって。

「あいつは本当に比真理のことを思ってたんだ。独占する必要はなかったんだよ。」

そうだ。
こんな悲劇、起きなくてもよかったんだ。

「でもにぃに。いつも女の人と会ってた。友達って言ってた。あの時も…私の誕生日の日も友達の所に行くって・・・だから・・・だから。」

「にぃには・・・私よりも・・・その友達が大切なんだって・・・私のこと忘れちゃうって。」

「にぃにが私から永遠に離れてくような気がして・・・怖かったの。」

「そうか。」

起きたことは変えられない。でも、もしあの時こうしたらとか、もっとできたんじゃないかなんて後悔する。
それは、無駄だとわかってもしてしまう。
今回のこともそうだ。
避けられるチャンスはいくらでもあったのに。
そう、いくらでも。
体を震わせて泣いている少女に俺はどんな慰めの言葉をかければいいのだろう。
俺はそっと震える手で比真理の頭を撫でた。

「ぅぅぅ・・うぁぁぁうぁぁぁぁぁぁぁああ!!にぃにぃぃごべんなざぁぁいいいごべんなさいぃぃぃぃ・・・。」

心の栓が取れたように比真理は泣いた。心のうちに貯めていた後悔と、兄に対する謝罪を吐き出すように彼女は泣き叫んだ。
それでいいんだ。
いっぱい泣いていっぱい後悔して、それで人は前に進んで行けるのだから。
俺は比真理が泣き止むまでひたすら頭を撫で続けた。

・・・

「お兄ちゃん?」

「どうして屋上からお兄ちゃん以外の人の声が聞こえるの?」

「そんなわけない。気のせいよね、だってお兄ちゃんに女性が近づかないように毎日監視してるんだもの。」

「そんなこと、あるわけない。」

「そうだ!今日もお兄ちゃんの寝室に入ろう。」

「お兄ちゃんが寒くならないように温めなくちゃ!」

・・・

それからしばらくして、俺は比真理を保健室に連れて行った。
さすがに授業に出れる状態じゃなかった。
けど、これで一つの区切りがついた気がした。
安心・・・とはさすがにいかないけど。
でも、妹とちゃんと話せばきっとわかってくれる。
なぜかそういう気がした。
逃げるだけじゃなく、向き合うことも必要だって、
気づかされたんだ。
比真理に。
いや、つかさに・・・かな?
ああ、でも怖かった。
今思い返しても体が震える。
もし、あの時間に合わなかったら・・・。
俺は親友に次いで親友の妹もみすみす助けられなかったということになるのだ。
それだけは嫌だった。
もう、人が亡くなるのは沢山だ。
葬式の雰囲気。耳から離れないお経、そして匂い。
みんながすすり泣き、喘ぎ泣く。
冷たい空気があたりに立ち込める。
現実が現実で無くなっていくような、不思議な感覚。
もう2度と味わいたくない。
今思い返しても、吐き気がするだけだ。
そんな思い、もう誰にもさせてたまるかよ。
だから、妹とちゃんと話さなくちゃならない。
わかってくれるとは思わない・・・けど。


俺は放課後まで待って妹と一緒に帰ることにした。

「めずらしいね。今日は一緒に帰ってくれるんだ。」

「ああ・・まあな。たまには一緒に帰ってもいいだろ。」

「ふーん。そっか。ふふふ。」

妹は嬉しそうに笑うと腕を組んできた。

「ちょ・・やめろって。誰かに見られるだろ。」

「たまにはいいでしょ?」

そうおねだりするような目で見てくる。
いつもなら断る予定だけど。

「今日は仕方ない・・か。」

「嘘・・・。本当にいいの?お兄ちゃん?」


497 :ヤンデル生活 第5話 彼女の名前は比真理。:2011/08/04(木) 12:54:50 ID:B3N5iShM
「ああ、いいよ。けど、今日だけな。」

「うふふふ。」

そういうと笑顔で一際強く、腕を組んだ。

「ねぇ。今日お兄ちゃんなにかあったでしょ。」

妹は帰り道の途中で聞いてきた。
やっぱり勘が鋭いな。

「いや、その・・・。」

俺はなんて言ったらいいかわからず言葉に詰まった。
なんて説明したらいいのか・・。

「屋上で誰かと会っていたよね。多分・・比真理・・さんかな?」

「なんでわかったんだ?」

「なんかね。声が聞こえたの。気のせいかなって思ったの。お兄ちゃんに女性がよりつくわけないって。」

「ずいぶんな言われようだな。確かにモテないけどさ・・・。」

「ううん。そういう意味じゃないの。それでね、その声どっかで聞いたことあるような声だったの。」

「そうなのか。」

妹は、俺と比真理のやり取りを聞いていたのか?

「それでね。思い出したの。今日転校生が来てたでしょ、お兄ちゃんのクラス。」

「な・・・なんでそんなことわかるんだ?」

「普通だよ。お兄ちゃんの事で知らないことなんてないんだよ?」

さらりと怖い事、言うなよ・・・。

「それでね。その転校生の名前、苗字は違うけど比真理って名前だったし、なんかね。雰囲気もにてるなぁ~って。」

「あったことあるのか?」

「ううん。すれ違っただけ。けどね、懐かしい香りがしたの。」

「香り?」

「うん!香り。私嗅覚すごいんだいよぉぉ!」

なんてことだ。俺の妹は犬並みの嗅覚をもっていた!

「それよりも、お兄ちゃんなんかあったでしょ。屋上で、比真理さんと。」

嘘をついたらすぐばれそうだな。
とりあえずここは真実を喋ろう。

「ああ・・実はな。その・・・比真理が自殺しようとしたんだよ。屋上から飛び降りようとしてさ・・・。」

「そうだったんだ。それで、お兄ちゃんが助けたの?」

妹は心配そうな顔をして訪ねてきた。

「ああ。他に誰もいなかったし。」

「そうなんだ。それで、比真理さんは大丈夫だった?」

「一応、保健室には連れてったけど大丈夫だよ。」

「そっか。それならよかったよ。」

そういうと妹は安堵の顔を浮かべた。

「お兄ちゃんが無事で・・・本当に良かった。」

「え?」

「ううん。何でもない。今日はお兄ちゃんの好きなカレーつくったげるね!」

「本当か!嬉しいな。」

カレーは俺の大好物である。
だから、あらゆる意味で俺は妹に大事なものを握られているのかもしれない。

「うれしそうなお兄ちゃん見ると・・・きゅんきゅんしちゃうよ。」

そういって妹は俺の腕に顔をうずめた。

「はは。そうか。」

俺は苦笑いするしかなかった。


498 :ヤンデル生活 第5話 彼女の名前は比真理。:2011/08/04(木) 12:56:03 ID:B3N5iShM
その日の夜。俺は風呂から上がると速攻でベットに入った。
久しぶりに疲れた気がする。
すべては勘違いから生まれた出来事だったのか。
けど、つかさも妹のことが好きだったなんて、今思い返しても奇妙な縁だったんだなって思う。

「友達に会いに行くか・・・。」

その一言がすべてを変えてしまったのか。ん?友達?女の人・・・?
そういえば、あいつと俺は女子とかかわれなかったはずだ。
昔からの友達か?
いや、つかさからその話を聞いたことはない。
俺に隠れてこそこそあっていた?
それもおかしい。
あいつは嘘はすぐに顔に出るタイプだった。
けど、そんなそぶりはなかった。
一体誰だ?
つかさの友達って。
いや、深く考えすぎだな。
とりあえず、解決したんだ。あとは、比真理が自分で何とかしていくしかない。
俺は、目を閉じて思い返した。
今日起こったこと、そして今まで自分に絡み付いていたしがらみを。
すると、すぐまぶたが重くなってきた。


「お兄ちゃん?」

「よし!返事なし。今日もお疲れ様!お兄ちゃんのご褒美もらっちゃうね。」

「ゆっくり・・。ゆっくり・・・。ふぁ・・お兄ちゃんの顔ちかいよう・・・。」

「お兄ちゃん、いい匂い。じゃあ、ご褒美いただきます。ん・・・ちゅ・・ちゅる。」

「ん・・・はぁ・・・。んちゅ・・ちゅ・・・ちゅ。」

「んん・・はぁ・・はぁ・・・甘いのぉ、お兄ちゃんのくちびる・・・ん・・・ちゅ・・。」

「ちゅる・・・舌・・いれていい・・よね?はむ、ちゅ・・・れろ。」

「れろ・・・ちゅ・・・ちゅ。れろぉ・・・はぁ、はぁ。お兄ちゃんもっと・・ちゅう。」

なんだろう、変な感覚だ。
生暖かくって、なんだかかゆい。
小さくぴちゃぴちゃっと音がする。
これは夢かな。
ぼーとしていた頭が少しずつさえてくる。
ん?妹?

「ひゃ!にゃ・・にゃんでもないからなんでもないから!」

そういって妹は俺の部屋を飛び出していった。
口がなんだか熱い。
まさか・・・。
明日、妹とちゃんと話さなければ・・・。
すると、携帯が鳴りだした。
誰だ?
時間を見ると、0時32分。
こんな時間に誰だ?
おそるおそる電話に出た。

「もしもし?」

「あの、赤木さんですか?えっと、比真理です。」

えっ・・比真理!?
なんで電話してきたんだ?

「俺、電話番号教えたっけ?」

「ううん。いつもにぃにの携帯みてたから。」

ああ、なるほど。

「そうか、それでなんかあったのか?」

「そうじゃないんだけど、今日は・・ご迷惑おかけしてすみませんでした。」

「い・・いやそんなに改めて謝らなくても。それにあれは俺が勝手に助けただけだし。」

「それと、にぃにのこともっと詳しく教えてほしいしそれに・・・学校の事まだよく知らないから、できれば案内してほしいんだけど・・・。」

「へっ?まあいいけど。」

「あ・・あのありがと。」

照れるようにちょっと焦りぎみでそういった比真理の声はちょっと可愛かった。

「別にいいよ。これも何かの縁だしな。」

「もうそろそろ切るね。お父さんに見つかっちゃうから。」

「ああ、また明日な。」

「うん。また・・・明日。」

そう少し照れ気味に言って比真理は電話を切った。
そうだ、遅すぎるなんてことはない。
過去や罪は消えないけど、これからのことは、未来はきっと変えられる。
今はそう信じたい。
その時、俺の部屋のドアの前にはうっすらと影が映っていた。
けど俺はそれに気が付かなかった。



「お兄ちゃん・・・誰と電話してるの・・・。」