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667ヤンデレの娘さん 観点の巻(女子) ◆yepl2GEIow:2011/08/26(金) 21:02:43 ID:rcML5ZKE
 「うなー」
だらりと自宅のダイニングテーブルの上にジャージ姿の上半身を横たえ、明石朱里はうなった。
「宿題難しー、だるーい、やりたくなーい」
寝癖がついたままの姿(ノーメイク)で、だらしなく朱里はうなる。
彼女の横には数学の問題集とノート。
その様子を、正面に座る緋月三日が苦笑交じりに見ていた。
彼女の服装は、地味目のジーンズにシャツ。
いかにも、家にあったものを適当に組み合わせてきましたと言った風。
長い髪は後ろで無造作に括っている程度。
最近、三日は御神千里の父親であるプロのメイクさんのアドバイスを受けて、髪・肌のお手入れやメイクの腕が上達していた。(ただし、校則違反にならない程度)
平たく言って、かわいさ急上昇中だったのだが、今日はほとんどノーメイク。
両者ともにいささか女子力の低い服装で、朱里にいたってはだらしのないことこの上無かったが、それを指摘する者はこの場にはいない。
現在、この家には共働きである朱里の両親がいない上に、男子の目が無いからこそ見せられる姿だった。
「・・・この辺りは、とっかかりさえ見つかれば、公式を上手く応用していけますよ」
「そのとっかかりがねー」
明石朱里は数学が苦手だ。
日本史のような丸暗記なら圧倒的に強いのだが、数学だけはどうにも苦手だった。
「・・・他の科目ですと、そんな不得手というわけでも無いのですのに」
「他の科目って、授業中に先生の言ってたこと覚えてヤマ張れば結構いけるでしょ?あと暗記」
「・・・あまり、実になるタイプの学習法とは思えませんけど」
「『作者の心情を述べよ』とか分かっても、将来実になるとか思えないけどねー」
国語教師が聞いたら怒り出しそうなことを言う朱里。
ちなみに、三日は現在数学の教師役。
久々に多量に出された数学の宿題を一緒にやろう、と朱里が三日を誘ったのだ。
否、頼んだのだ。
一緒に宿題をやるのではなく、数学の勉強を三日が朱里に教える形になっている。
「みっきーはすごいよねー、ある意味。マジメに勉強してて、頭良くて」
「・・・病院暮らしも長かったですから。・・・勉強くらいしかやること無いんです、そういう時」
その時に身に付けた勉強する習慣づけが、現在の学力に反映されているらしい。
「何でそれが成績に出ないの、みっきー?」
朱里に言わせれば、三日はかなり頭が良い。
教え方も上手だし、勉強の内容をきちんと理解している。
ヘタな学年上位の成績の持ち主よりも、先生役に適任だった。
それにも関らず、テストの順位は中ほどを行ったり来たり。
「・・・テストって緊張するじゃないですか」
「あー、なるほど」
朱里にも経験のあることだった。
無言の教室に、独特のプレッシャー。
テスト中の、あの独特の雰囲気に三日は押され、実力を発揮できないのだろう。
「・・・いつ後ろから刺されるかと思うと」
「それは疑いすぎ」
だらけた姿勢のまま、朱里はツッコミを入れた。
幼馴染の影響か、どちらかと言えばツッコミ気質の朱里だった。
「あー、だるー」
「・・・だったら、一息入れましょうか」
だるすぎてヒロインにあるまじき表情になってきた朱里に、三日が提案した。
「マジ!?」
「・・・勉強なんてモチベーションが低いまま続けても、あまり身につきませんし。・・・休憩も大切です」
「やっほーい!」
三日先生の言葉に諸手を上げる朱里。
そのまま大きく伸びをする。
「そー言えば、正樹たちは今頃どうしてるかしらね」
お茶とお煎餅を用意しながら、朱里は言った。
完全にリラックスモードだった。
「・・・確か、千里くんが葉山くんと2人で今日映画を見に行くと仰っていましたが」
「結婚しちゃえYO!ってくらい仲良いわね。・・・・・・死ねばいいのに」
最後の一言でドス黒いオーラを纏う朱里。
「・・・ええっと、あ、そうだ!・・・折角ですから、聞いてみます、二人の様子?」
「聞いて・・・・・・って声とか拾えるの?ココから?」
元の表情に戻り、聞き返す朱里。

668ヤンデレの娘さん 観点の巻(女子) ◆yepl2GEIow:2011/08/26(金) 21:03:21 ID:rcML5ZKE
 「・・・はい、この携帯電話の機能を使えば」
朱里の言葉に首肯する三日。
「ケータイかー。アタシ、キライなんだよね、ケータイ」
「・・・私とは、よく長電話をしますのに」
「あれはトクベツ」
お煎餅をバリバリ食べつつ、そんな話をしながら、三日が鞄の中から携帯電話を取り出す。
説明書を参照しつつ、携帯電話を充電器とスピーカー(本来は携帯オーディオプレイヤー用)に繋げる。
そして、待ち受け画面でキー入力。
「・・・9、1、3、と」
その後、通話ボタンを押す。
『Standing by…』
嫌な予感しかしない、くぐもった電子音声が響き、隠し機能(の1つ)、盗聴機能が起動していく。
「ズイブンと変わった機能があるのね」
「・・・このような便利機能(ワザ)が計2000個あります」
「今となってはタイムリーとは言いがたい個数ね」
『…Complete』
そうこうしている内に、三日の電話の盗聴機能が、御神千里の携帯電話と繋がる。
『ところで、はやまん的に、何ていうか・・・・・・、女の子観ってどうなの?』
千里の声がスピーカーから響く。
「キター!」
いきなり葉山の恋愛観に切り込む千里の言葉に朱里は目を輝かせて叫んだ。
叫んだ勢いで三日の顔におせんべいの食べカスが飛ぶが、そんなものは見えていない。
ティッシュで顔を拭く三日の横で、朱里はスピーカーに耳を近づける。
『オンナノコって、みかみん。いきなりどーしたよ』
『んー、何ていうか、俺には、その、三日がいたりいなかったりするワケじゃん?それで、時々はやまん的に妬ましいというかそんなんじゃないかとか、そういう風に感じちゃったり』
『ないないないない。あんな女返品しちゃえよって位ない』
『それじゃあ、他の女子とは?その、そういう関係になりたいとか思ったこと無いの?』
御神千里の言葉に、スピーカーに更に更に耳を近づける朱里。
『しょーじき、今の俺は、ボールが友達、ボールが恋人ってカンジかねぇ』
『サッカー漫画じゃん、ソレ』
と、千里からツッコミを入れられて笑いあう2人。
『ま、今はバスケ位しか考えられねぇわ。正直、リアル女子と付き合ってる自分の姿とかマジ想像つかねぇ』
ちなみに、正樹はスポーツのみならず、漫画からゲームまで趣味は幅広い。
・・・・・・中にはゲームはゲームでも18禁のモノまであったりするのだが。(朱里がどうしてそんなことを知っているのかはヒミツです)
『んじゃぁ、好きなコとかは居ないわけだ、まだ』
『好きなヤツなら居なくは無いけどな』
『だれー?』
「誰よ!」
千里と唱和する形でスピーカーに向かって叫ぶ朱里。(通話ではないので男子組に声は聞こえません)
『みかみん』
「「ちょっとー!?」」
正樹の一言に、朱里のみならず三日までが叫んだ。
「やっぱり、ホモ?ホモなのね、2人は!!」
「・・・葉山くん、私に対するネガティブキャンペーンが凄まじいと思ったら、そういうことだったのですね?」
室内の黒いオーラが二倍、いや二乗される。
『あとは九重もだし、バスケ部のみんな、クラスの奴らもだな』
『友達として、ってことねー』
スピーカーからもれ出る千里の声は、苦笑だろうか。
その言葉に、女性陣も安堵のため息を漏らす。
「正樹、今のはマジで心臓に悪いわよ」
「・・・正直、今のはかなり・・・・・・」
ようやく黒いオーラから開放される2人。

669ヤンデレの娘さん 観点の巻(女子) ◆yepl2GEIow:2011/08/26(金) 21:03:52 ID:rcML5ZKE
 『ま、その中でも俺の名前を最初にあげてくれたのはコーエイというかニンテンドーというか』
『そら、一番の親友だからな』
『・・・・・・』
「照れてんじゃねーわよ」
正樹の言葉に無言となった千里に、黒オーラが再発する朱里。
『まぁ、そんなはやまんの攻略難易度を設定するとしたら中の上くらいってところー?』
『アン、何故そーなる?』
『恋愛ベクトルに誘導できないとお友達エンドになりそうだから』
『モーションかけられりゃ、俺も気づくと思うけどなぁ』
「ぜってー嘘だ」
「・・・同感です」
頬をかきながら言ったであろう正樹の言葉にツッコミを入れる女子2人。
『ハハハハハ・・・・・・』
女性陣と内心同意見なのだろう。御神千里は苦笑しているようだった。
『ンじゃあ、そう言うみかみんはどうよ』
『俺ねぇ・・・・・・』
考え始める千里に、今度は三日がワクワクした様子でスピーカーに耳を近づける。
対する朱里は興味なし、という顔をしていた。
『しょーじき俺さ、去年辺りなら、女の子にとってはすっごいチョロかったと思うよー。ギャルゲーなら攻略難易度下の下くらい』
『そうかぁ?』
『寂しがり屋さんだもん、こー見えて』
冗談めかして、千里は言った。
『兎じゃああるまいし』
『寂しくて死ぬトコだったよ?』
『マジで兎かよ!』
正樹がツッコミを入れた。
「・・・私的には、千里くんは大型犬のイメージなんですよね、大人しくて毛がモフモフのグレートピレニーズ辺り」
「デカいってところには同意」
朱里としてはデカくて鈍い河馬やら象辺りを押したい所だが。
ちなみに、三日のイメージは飼い主にじゃれ付く子犬。
正樹はやんちゃな虎の子。
自分は―――何だろう?
蛇辺りが似合いだろうか。
ずるい女だから。
「・・・朱里ちゃん?」
見ると、三日が気遣わしげに朱里の方を見ていた。
「ああ、何でもない何でもない」
笑顔を作り、三日を安心させる朱里。
そうして、改めてスピーカーに耳を傾ける。
『だから、少し優しくされるだけでその娘にまいっちゃったと思う。甘えちゃったと思う』
『そう言うモンかねぇ』
納得しかねる様子の正樹。
恋愛経験が無いとそんなものだろう。
『でも、今は三日がいるから、難易度は無限大かなー』
『緋月ねぇ』
声音だけでも苦々しげな様子が感じられる。
『やっぱ、はやまん的に仲良くやれないかな、三の字と』
『三日だから三の字って・・・・・・。そりゃ、ストーカー被害を目の当たりにすりゃーな』
『過去は水に流してさ。俺は気にしてないのに』
『・・・・・・いや、気にしろよ!ドンっだけ危険にドンカンなんだよ!!』
『んーいや、気にしてないって言うか、なんと言うかその・・・・・・』
ゴニョゴニョと呟く千里。
嚥下する音は、照れ隠しにペットボトル飲料でも飲んでいるのか。
「あによ、はっきりしない男ね」
「・・・千里くん、可愛い」
「うそぉ!?」
千里の声に本気でときめいているらしい三日に本気で引いている朱里。
三日の親友をやって1年以上になるが、未だに彼女の男の好みは分かりかねる部分のある朱里だった。

670ヤンデレの娘さん 観点の巻(女子) ◆yepl2GEIow:2011/08/26(金) 21:04:28 ID:rcML5ZKE
 『お前、ぶっちゃけ緋月のドコが好きなわけ?』
『ブ!』
苦々しげな正樹の声に、千里が飲料をむせる声が聞こえる。
「汚いわね」
「・・・」
ツッコミを入れる朱里を不満げに見る三日。
先ほど飛んできた煎餅の食べかすをぬぐったハンカチは彼女の手元にある。
『いや、何でそんなこと今更急に聞くわけ?』
『いやー、今まで聞こうと思って聞けなかったからなぁ。今までは隣に緋月がいたし』
『好きとか嫌いとかさ、ストレートに言われても困るって』
攻略難易度なら良いらしい。
『でも、お前ら付き合ってるんだろ、俺的には不本意だがよ』
『そりゃ、向こうから頼まれたしね』
「そんな理由!?」
スピーカーからの声に、思わず叫ぶ朱里。
『それだけでくっつかねーだろ、お前なら特に』
朱里と同じような意見を、正樹も持っていたようだった。
こう言う時、朱里は正樹と精神的な部分で繋がっているような感覚を覚え、嬉しくなる。
『まぁ、マジな願いにはマジに答える主義ではあるけどね。それが相手の意に沿わないとしても』
付き合いたくなかったらそう言っている、ということらしい。
『で、緋月の場合は意に沿ったワケだ。どういうわけか』
『それが納得いかないと?』
『そう言う事だ』
『九重のこととは無関係に?』
『そのネタはもうやったからな』
『しっかし、好きなところねぇ・・・・・・』
そこで言いよどむ千里。
「ホントはっきりしないわね。迷う所、フツー?」
「・・・千里くんかわいいです千里くん。・・・千里くんは私の婿!」
同じリアクションでも真逆の対応を取る2人。
特に、三日は椅子から床の上に寝転び、ゴロゴロと身悶えていた。
『嫌いなところからでも良いぞ。むしろそっちからの方が』
『嫌いなところねぇ。時々、って言うか結構俺に何も言わないで動く所とか?ソレぐらいしか思い浮かばないや』
千里の言葉に、ゴロゴロを止めてかなり本気で考え出す三日。
『フツー気にするところだろ。明らかにイジョーじゃねぇか』
『たかだか、それ位の異常性に目くじら立ててもねぇ』
「あ、異常なのは否定しないのね」
「・・・どこに異常性があるのかが分かりませんけど」
「さぁ?」
朱里と三日は今までの自分達の行動を思い返した。
・・・・・・何一つ異常な点は見受けられなかった。
悲しいかな、この場に常識人はいないのだ。
『百歩譲ってみかみんに実害が無いとしよう、今現在は。だがよ、この先もそうとは限らねーだろ』
『それが一番心配なわけだ、はやまんとしては』
「・・・私は千里くんに幸福しかもたらした覚えはありませんけど」
「幸せの青い鳥か、アンタは」
「・・・むしろ、私の幸せは千里くんの幸せ。・・・そうでしょう?」
「まったく持ってそのとおりだわ!」
一瞬は不満そうだった朱里だが、三日の言い換えに手を握って同意した。
『親友の隣にバクダンが転がってると思うと、おちおち夜も眠れやしねぇ』
『そこは見解の相違って奴だねー』
口調はおどけたまま、冷たい声音で千里は言った。
「・・・この台詞、白衣とメガネかけて言って欲しいです」
「誰得よ、それ」
「私得です!」
「納得」

671ヤンデレの娘さん 観点の巻(女子) ◆yepl2GEIow:2011/08/26(金) 21:05:05 ID:rcML5ZKE
 『アイツはただ、恋に必死なだけの女の子だよ。爆弾なんかじゃ、ない』
『とてもそうは思えねぇけどなぁ・・・・・・』
「昔の偉い人は言ったわ。恋愛はバクハツだー!、と」
「・・・名言だとは思いますけど、本当にそれ、昔の偉人が言ったんですか?」
そんな馬鹿トークをしている間にも、スピーカーからは千里の言葉が続いていた。
『どれほど不安や嫉妬や怒りや悲しみに駆られても…・・・!例え心が病もうとも…・・・!恋をすることをやめない。そう言う奴だよ、アイツは!そう言うのって―――」
『ヤバいよ』
言葉に熱が入ってきた千里を、正樹が冷たく留めた。
彼の言葉に、何故か朱里の心もヒヤリとする。
『どんなになっても、ンな風に手前の意思を押し通そうとするエネルギーが、ほんの少し矛先がズレたら、本気でヤバいことになる。そう言う想いって、むしろ―――怖いよ』
その言葉に、朱里は以前正樹が話してくれたことを思い出した。
小学校の頃、バスケットボールの試合でとんでもない選手に当たったらしい。
相手のプレーからは、バスケットにとんでもない情熱を燃やしていることが伝わってきて、そしてそれ以上に試合に負けてはならないという切迫感が伝わってきた。
その選手と相対して、正樹は恐ろしかったという。
バスケットに向ける、その暴力的なまでの力の矛先が一度他へ向かうとどうなるか、それを思うと恐ろしい、と。
『怖い、ね。まぁ、それぐらいの方が相手する甲斐があるって言うか『お前も、怖いよ』
正樹の内心も知らずに暢気に続けた千里の言葉は、やはり遮られる。
『いっくら中等部時代に滅茶苦茶な連中を相手してきたからって、いや相手してきたのにも関わらず、未だにそう言う滅茶な連中を受け入れちまう。それは怖いしヤバいし―――危うい』
『怖くてヤバくて危うい、ね。じゃ、はやまん、そろそろ俺と友達止めとく?俺らのとばっちり受ける前にさ』
『バカ言うな!今更、ハイさようなら、なんてなってたまるかよ。これでもお前のコト結構好きだしよぉ』
軽口とはいえ、好き、という言葉は自分に向けて欲しいと願う朱里だった。
『ウン、俺も同じ』
恐らくは笑みさえ浮かべ、千里は正樹の言葉を受け止める。
それは、朱里にはただヘラヘラしているとしか見えないが、三日にとってはどうなのかは分からない。
『はやまんのことも好きだし、誰かの危うさも、自分の危うさも、みんな好きなものだから。だからみんな自分で背負ってく』
千里はいつもの軽い調子でそう続けたが、
『本気でヤバくなったら、本気で止める。止めてみせる……!』
と、いつになく真剣な声でこう言った。
「・・・・・・」
意外な言葉に、思わず朱里は息を呑んだ。
『だから、そんな心配しないでよー』
『ゼンブ分かってんじゃねぇか。けどよ、俺の考えは変わんねーぜ。緋月みてーな奴はヤバいと思うし、奴がマジでヤバくなったらマジでお前を引き離す』
「・・・引き離す、ですか」
正樹の言葉に苦々しげな顔をする三日。
彼女にとっては敵対宣言をされたようなものだ。
『ン、覚えとく』
と、しかし一方の千里は静かに受け止めた。
その声の後ろからは、喧騒が聞こえる。
どうやら、目的の映画館に辿り着いたらしい。
「御神のヤツ、一応三日ちゃんとの付き合いのこと、マジメに考えてたのね」
「・・・元々、千里くんって結構真面目な方なのですよ」
「そーかしら?バカやってる印象の方が強いけど」
「・・・真面目な部分、あまり表に出さない人ですから」
そう言う物だろうか、と朱里は思った。
「・・・慣れると、少しずつ内心が見えてきてたまらなく可愛いんですけどね」
そう言って微笑を浮かべる三日の顔は、ほのかに朱に染まり、本当に幸せそうで。
「良いわね、みっきーは」
本当に羨ましく思い、朱里は言った。
「殺したいくらいに」
本当に、妬ましく思い、朱里は続けた。
「・・・ごめんなさい、無神経でした」
「良いのよ、みっきーと御神千里をくっ付けるのは、アタシの計画だったし」
朱里としては、三日を利用して、御神千里の関心を正樹以外の方向へ向けさせる手はずだった。
そのまま御神千里を正樹から引き離せなかったのは、むしろ朱里自身の不手際だと自己分析していた。
「いーえ、計画(笑)ね」
策士の才は自分には無いな、と朱里は自嘲した。

672ヤンデレの娘さん 観点の巻(女子) ◆yepl2GEIow:2011/08/26(金) 21:05:37 ID:rcML5ZKE
 「・・・その計画に、私は助けられました」
「みっきーを利用するための計画よ、ぶっちゃけ。アタシの成果にならなきゃ、手伝った甲斐は無いわ」
甲斐も無いし、意味も無い。
「・・・でも、朱里ちゃんと葉山くんの距離は」
「近づいたわね、トモダチとしては。でもまー、小さかった頃ほどじゃないけど」
結局、緋月三日に協力したことは、自分の恋愛にとってどれ程有益だったのだろうかと朱里は考える。
親しい関係には戻れたが、御神千里の言う『お友達エンド』に近づいただけのような気もする。
『プラマイゼロ、って所か』
朱里の心の冷たい部分がそう分析し、それから嫌な気分になる。
親友を完全に自分の道具として観た発想だった。
『って言っても、利用し合うために結んだ友情だけどね』
心の冷たい部分が、再度事実を突きつける。
そう。
御神千里と正樹の心を射止めるために、朱里と三日は友情を結んだ。
その打算的な事実は厳然と変わらない。
恐らくは、今もなお。
「・・・朱里ちゃん、朱里ちゃん、どうしたんですか?」
気が付くと、三日が朱里の顔を心配そうに覗き込んでいた。
どうやら、思いのほか長く考え事をしていたらしい。
「ああ、ゴメンゴメン。何でも無い」
大げさな動作で手を振り、否定する朱里。
その動作すら、打算的な友情のための空々しい行為に思えてくる。
空々しく、空しい、行為で好意。
「・・・勉強をさせすぎてしまったでしょうか」
「や、そーゆーんじゃ無いんだけど」
いやにマジメに考え込む三日にツッコミを入れる朱里。
基本ボケ同士の三日と御神千里に、基本ツッコミな正樹と朱里。
カップリングとしてはかなりバランスが悪いんじゃないかと思えてきた朱里だった。
と、いけないいけない。
冷たい考えに引っ張られている暇は無い。
学生の本分は学業だし、乙女の本分は恋愛だ。
それ以外のことにかまけている余裕は無い。
「やっぱ、正樹をコッチに引き寄せる策を考えなきゃ駄目よねー」
半ば無理やりにいつものペースに自分を戻し、朱里は言った。
「・・・それなんですけど、朱里ちゃん。・・・とても今更なことをお聞きしてよろしいでしょうか」
大真面目な顔で、三日が問いかけてきた。
「別にいいけど、なに?」
ゴクリ、と嚥下する音を立てたのは、朱里か三日か。
「・・・どうして朱里ちゃんは、葉山くんにストレートに告白してしまわないんです?」
その言葉に、朱里は息を呑んだ。






『ヤンデレの娘さん 朱里の巻part1』へ続く








おまけ
後日
「どうしたの、三日。こっちの方見てニヤニヤして」
「・・・いえ、やっぱり千里くんはかわいいなって」
「いや、ゴメン。高校生男子に『かわいい』って形容詞は止して。マジ恥ずかしいから」
「・・・そう言う所が可愛いのですのに」
「ったく、まいったなぁ・・・・・・カンゼンにまいってる、俺」
「・・・何か、おっしゃいました?」
「・・・・・・何でもない」
「・・・やっぱり、可愛いです」