365 名前:狂宴高校の怪 第17話(激動編)[sage] 投稿日:2011/07/23(土) 10:23:10 ID:/Ur.YmkE [2/13]
「お兄ちゃん!おはよー!」
朝、シャワーを浴び終えてリビングでうとうとしていると、ノマルが後ろから抱きついてきた。
「朝ごはん一緒に食べよー!今日はお兄ちゃんの大好きなものたくさん作ったんだよー!」
・・・今気づいた。ノマルは俺より早く起きてリビングにいたんだ。そうじゃないと、テーブルの上の豪華な朝飯の説明がつかない。
ふらふらの状態で教室に入る。
あんな量を朝から食うのはさすがにきつかったし、俺一人では絶対に完食は出来なかっただろう。
「はい!お兄ちゃん!あーん!」
こんな感じで口に詰め込まれたら、嫌でも完食してしまう。
「それで朝からそんなにふらふらなんですね。」
事情を聞いたシドウが俺の背中をさする。出来ればやめてほしいが、口が痺れてきて言葉がでなくなってきた。
「こんな状態では体育に参加できないですね。」
だんだんと言葉に笑いが含まれていくのがムカつく。振り払おうにも体にも痺れが回ってきて体が動かせない。
何もできない状態のまま、チャイムが鳴って、ホームルームが始まった。
「なるほど、それでサボるってわけか。」
「サボりじゃねぇよ。」
次の時間の体育は、体調が優れないと言って保健室で寝ることにした。今は、先客に保健室に来た理由を話しているところだ。
「お前は根性が無いんだよ。体育は食べ過ぎても休まずに、吐く覚悟で望むものだぜ?」
こいつはそれを体現しているから、反論が出来ない。昼休みに三段重ねの弁当を完食し体育に参加する男だからな。
そんな化け物じみた体の男、辻疾ケンゴウはさらに笑いだした。
俺もとりあえず笑ってみたが、心はどうしても晴れない・・・。いったいどうしてしまったんだろう・・・。
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「そろそろかな・・・。」
チバタ君が笑いながら呟いた。
「もしかしてあなたは全てを知っているのですか?」
「えぇ、ノマルに関してはね。何故なら私は・・・いえ、私達はあの日、あの場に居合わせていたのですから。」
「あれ?葉久保!コイルは?」
「・・・シドウとお呼びなさい。一番に帰っていきましたよ。」
「えぇ?今日はマナカから逃げようと思ったのに!」
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家に帰って最初に目に入ったのがこれか・・・。
「お帰りなさい!お兄ちゃん!」
よりによって裸にエプロンかよ・・・。見てみたいとは思っていたが、身内のだけは見たくなかった。
・・・傷は相変わらず痛み続けている。
「お兄ちゃん!今日の夕飯はお兄ちゃんの大好きなものばかり作るからね!」
そういってスキップ混じりにキッチンに向かうノマル。自然と目が下半身に行ってしまうが、今はそれどころじゃない!
昼の一番のモヤモヤを・・・解消するんだ!
366 名前:狂宴高校の怪 第17話(激動編)[sage] 投稿日:2011/07/23(土) 10:23:57 ID:/Ur.YmkE [3/13]
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朝、腹痛以外にも違和感があった。毎朝じゃれてくる子猫と優しい包容力のある人が・・・いない?
「あれ?ナオとクドは休みか?」
すると、シドウが顔をしかめた。
「・・・朝から流れている噂なんですが・・・。」
シドウは目を俺に合わせないで言った。
「行方不明だそうですよ・・・。」
それを聞いた日、どうしても違和感が俺に付きまとってきた。
夜中に見たあの夢・・・。何か関係があるのか?まさか正夢?
不安になって家に直行したが、ノマルは別に血にまみれてはいない。思い過ごしかな・・・。
色々と思案する頭を落ち着かせ、俺はノマルの部屋のドアノブに手をかけた。
ガチャッ!
久々に入ったノマルの部屋。最後に入ったのは・・・いつだったろうか。
当時とは多分内装が変わってしまっているのだろうが、わかったことがある。
誰もいない・・・。
「なぁんだ!そうだよな!」
一気に肩の力が抜けた!膝が抜けそうになった。高鳴っていた鼓動がゆっくりとなっていく!
そりゃそうだろうな!俺が知っているノマルは監禁して殺したりなんかしない!ましてや相手は仲が良いナオとクドだ。殺す動機なんか無い!あるわけがない!
「お兄ちゃん!ご飯だよー!」
時計を見ると、まだ五時だ。ずいぶんと早い夕食だな?
しかし、今ならいくらでも食べられそうだ!フルコースでもなんでも来いだ!
あれ?足が動かない?何でだ?
付きまとっていた違和感が後ろから抱きついてきた。
顔の傷が一際強く疼く。
何だ?何だこの違和感?
ガタッ!
367 名前:狂宴高校の怪 第17話(激動編)[sage] 投稿日:2011/07/23(土) 10:24:54 ID:/Ur.YmkE [4/13]
今・・・何か鳴った?
後ろから確かに聞こえた音。何かが一瞬動いたような音。後ろから?
後ろを振り返る。
「ノマルの・・・クローゼット?」
ガタッ!
まただ!しかもクローゼットがちょっと揺れた!
何だ?この中に何が入ってるんだ?
―――!―――!
誰か・・・いるのか?
恐る恐るクローゼットに手をかける。そしてゆっくりと開けてみた。
「―――!―――!」
声がでない・・・。目の前の現実に圧倒されている自分がいる・・・。
何故ノマルのクローゼットに・・・。
ナオとクドがいるんだ?
俺は両手両足を縛られて、ガムテープで口を塞がれている二人を、クローゼットから救いだした。
ナオとクドの頭が赤く染まっている。これは・・・血だ!近くにあったティッシュでとりあえず処置。
ナオは・・・気絶している。声はクドが出していたようだ。俺は二人のガムテープをはがした。
「ぷはぁ!」
どうやら長い時間入れられていたみたいだな。クドが深く呼吸している。
「大丈夫か?クド。」
「はぁはぁ・・・大丈夫・・・ありがとう・・・。」
クドはかなり消費している。とりあえず一番の疑問をぶつけてみた。
「どうして二人とも・・・こんな状況になったんだ?」
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頭に衝撃が走ってから・・・どれくらい経ったのかな?ゆっくりと目を開けてみた。
誰かの部屋?置いてある物からして、女の子の部屋のようだけど・・・。
周りを見渡してみると、私の左隣に人影が映った。
「・・・ナオ・・・さん!?」
隣にいたナオさんは頭から血を出していた!そして両手両足を拘束されていた!
私も状況は同じのようだ。何か液体が顔をつたって口に入る。鉄臭い・・・。血だ!
ガチャッ!
誰かが入ってきた!
「あれ?目が覚めちゃったかな?」
色の無い目が私達二人を映している。
間違いない!彼女だ!
「これはどういうこと?ノマルちゃん!!!」
368 名前:狂宴高校の怪 第17話(激動編)[sage] 投稿日:2011/07/23(土) 10:25:40 ID:/Ur.YmkE [5/13]
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マジかよ・・・。ノマルが二人を・・・。
「これは昨日の話。そのあとは何も言わずにガムテープで口を塞がれてクローゼットに入れられたわ。」
昨日から入れられているナオはまだ目を覚ましていないのか!?ヤバイ!早く病院に!
「何でお兄ちゃん・・・私の部屋にいるの?」
ヤバイ・・・ノマルだ。
「あ!夕飯の前に私を食べたいのね!それならそうと早く言ってよー!」
目に色が無い・・・。何でノマルがこんなになったんだ?
「でもちょっと待ってねー!今から邪魔な虫を殺しちゃうからねー!」
ハッ?
一瞬頭が働かなかった。その一瞬で、ノマルは持っていた包丁を二人の前で構えた!ヤバイ!
「やめろ!ノマル!」
俺は今にも降り下ろそうとしていた手を掴む!
すげぇ力だ!ノマルはここまでして二人を恨んでいるのか!?
普段のノマルからは考えられない。包丁で人を殺そうとしているノマルなんて・・・。こんなの始めてだ・・・。
始めて?
あれ?離れていた違和感がまた抱きついてきた。傷がさらに疼く!
やがて違和感が形となって現れた!
懐かしい・・・?
認めた瞬間、頭の中がかき回される感覚に陥った。
俺の頭が何かを・・・思い出そうとしている!?
「いやぁ!こんなの!思い出したくなかったのにー!」
ノマル!?ノマルも俺と同じ!?
頭に流れてくる衝撃が映像となって流れ込んできた!
間違いない!四年前の記憶だ!
最終更新:2011年09月25日 13:46