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769 名前:アイアムアシューター 一話(裏)  ◆WiyiZjw89g[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 17:26:51 ID:rQXrD262 [2/5]
[Chapter01|Reverse| - 現実 - Reality]


《参加者募集中》

《》

《援軍求む!!》

画面に映る文字が切り替わると、彼は席を立った。いつも通りならばこれから99秒の間、彼はここに戻ってこないだろう。
周りに人はいないみたいだ。
決心した。
これまで約1ヶ月、彼がプレイする様子を隠れて見ていたけれど。
私は隠れていた格闘ゲームの筐体の影から出て、コーヒーを買いにいく彼に見つからないよう、そっとこのゲームの3P席に座った。100円を投入する。
彼はその日1回目は4P席に座る。今日も画面の4P部分に彼の使う機体が映っている。
だから私は3P席だ。
隣に座るというのは、彼に私を意識してもらう為。ただ一緒にプレイしたいだけの人ではないという事をほんの少しでもわかってもらえたらと思う。
私も機体の選択をする。そして下に映る残り時間を見ると、まだ50秒あった。
緊張しているからなのかやけに時間が長い。

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「はい、これ。調べてきたよ」
正面に座る由里(ユリ)はそう言うと私に四つ折にされたメモ用紙を差し出してきた。
「調べてきたって何を?」
「何って藍(ラン)が昨日言ってた『彼』の事だけど」
私は思いっきり表情に出して驚いた。何に驚いたかって、たった1日でいろいろ調べた所とか、調べた方法の事とかあるけれど。
それよりも、だ。
『彼』の事は、私は昨日ほんの少し話題に出しただけだ。由里はその時「へぇ」くらいしか言ってなかったはず。
「えええええ、ほ、ホントに?」
「落ち着け、本当だよ。藍が一目惚れしただの、好きすぎて死にそうだの言うから調べてみたんだよ。メモ、開いてみなよ」
「そんなに言ってたっけ…」
「言ってた。しかもそこそこ大きな声で。周りに人がいなかったからいいけどさ」
それが事実なら結構恥ずかしい。私は謝りながらメモを開いてみた。

メモを斜め読みすると彼の名前、年齢のような基本的な事から、住所に家族構成、趣味や近況なんてものまで書かれていた。
だから1日でどうやって調べたのさ、とは聞かなかった。由里がこの手の事に通じているのは昔から知っていたし。
そんな事を考えつつ一通り見てみてると、気になる点が複数あった。
「あのさぁ由里、趣味のSTGって何?あと、この好きな属性のヤンデレってのは一体……」
早速聞いてみる。
「STGってのはね、シューティングゲームの略称で、うーん……藍もインベーダーゲーム位は知ってるでしょ?ああいうゲームの事」
「インベーダーは知ってるよ、あの砲台みたいので敵を撃つやつでしょ。…じゃあヤンデレは?」
ツンデレなら多少知ってる。普段、人前では気が無いかのようにツンツンしてて、二人っきりになると途端にデレデレしてしまうとかなんとか。
ヤンデレも同じような感じなのだろうけれど。普段ヤンヤンって何だ。
「普段ヤンヤンってなんじゃそりゃ(心の声は読まないで!)。ヤンって言うのはだね、彼の事が好きすぎて好きすぎて精神的に病んでしまうようなことね、ヤンは病んってこと。もちろん二人っきりになればデレる。合わせてヤンデレ」
「ふーん……」
好きすぎて精神的に病むってすごいって。
「病んでいくとストーカーしちゃったり監禁しちゃったりとかあるみたいよ」
「とても怖くない?それ。」
「私も怖いと思うねぇ。でもジャンルとしてそういうものがあってそれが好きな人がいる。で、『彼』はその中の1人って事。……もしかしてちょっと引いた?」
「いや、そんな事はないんだけど」
そんな事はないんだけど、難しそうだ。STGはともかく、ヤンデレみたいなタイプの人はリアルにはいないし。それに、いくら私が『彼』の事が好きだといってもヤンデレまでいくことはないだろう。
引いたりはしていない。『彼』は男だし、そういうものが好きになる事はあるだろう。
まだ私は、『彼』の事が好きだ。
「とりあえずさー、シューティングについて勉強してみるよ」
「それなら更にお得な情報が。最近『彼』はゲームセンターでSTGをプレイしているみたいなんだけど、その店の名前と場所を教えてあげようじゃないか。あと『彼』の出没する時間とか」
「由里、ありがとう。私のためにそんなに調べてくれて…」
「いーのいーの、私たち親友でしょ。それより、藍が喜んでくれて良かったよ」
「じゃあ今日ここに行ってみるね」
「音でかいから気をつけてね」
「うん」

770 名前:アイアムアシューター 一話(裏)  ◆WiyiZjw89g[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 17:28:11 ID:rQXrD262 [3/5]
そんな事があったのは確かちょうど2ヶ月前だったはず。あのあとこの店に来て彼を見つけたりとか、由里からXXBOX360とSTGを何本か借りて延々練習してたりとか。ホケモンみたいなゲームはやった事があったけれど、STGに関しては全く触った事がなかったから大変だった。今ではイロモノSTGでなければそこそこできるようにはなっている。
1ヶ月前からは彼のことを影から観察して行動のパターンを調べたり。彼がいない時間にはこれを練習したり。
そして今日。私はついに彼とこのゲームをプレイする。
と、長いと思っていた時間がいつの間にか残り10秒を切っていた。
そして3秒を切ったとき、彼は勢いよく座席に滑り込んできた。瞬間、彼と私の肩がぶつかる。心拍数が一気に跳ね上がるのを感じる。
「あ、あの、援軍求むになってたから入っちゃったんですけど、大丈夫ですよね?」
「あー大丈夫大丈夫」
緊張して舌を噛みながら言ったものの、彼は私がいるというのをまだちゃんと把握していないようだ。適当に言っている。
カウントは0になった。
「って、ぅえ?」
私に気づいた。そしてまた少し心拍数が上がる。
シューン アー、アーアー

始まった瞬間、クラっとした。が、私はなんとか意識を保った。一方彼は振り向きボタンを押しつつBurstボタンを押していた。


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「すいません、突然入っちゃったんでもしかして調子狂わせちゃいましたか?」
「い、いやうん、俺がへ、下手くそなだけだから大丈夫、というか俺がミスしたせいでピラニア前で終わっちゃったんだからこっちが謝る方かと…」
彼はそう言うが、下手ではない。私が言ったように調子が狂っただけだ。異性に対して免疫が無いのに、腕が触れるほどの距離しかなかったら、狂わないほうがおかしい。
と分析しているが、私も同じだ。男の人になんて免疫はない。彼ほどではないにしろ同様に調子を狂わせ、普段なら突破できている場所でムダに被弾したりしてしまっていた。
で、終わった事はいい。重要なのは次だ。
「えーと、もう1回同じルートやりません?リベンジしましょう!次はあのデブリマフラー地帯だって二人で突破できますよ」
そう、2回目をプレイすること。
せっかくのチャンス、ここで終わりにするのはもったいない。私は彼からの反応を待つ。
が、彼は意識ここにあらずといった感じだった。
「あのー」
もう1度声をかける。
「は、はい?」
「聞いてました?なんかボーっとしてましたけど」
「す、すいません聞いてませんでした」
「私が言ったのは、もう1回同じルートやりませんか。リベンジしましょうよ!次はデブリマフラーも突破できますよ、多分…って事です!」
「あーそうですねー」
最後、ちょっと強めに言い過ぎたかもしれない。彼は少しびくっとしていた。
でも、彼は肯定した。断りはしなかった。
「じゃあ待ってる人もいないみたいなんで始めましょう」
「そうですね」
「先に席決めてもらっていいですよ」
「そうですねー…」
慣れていない会話のせいか、さっきからそうですねとしかこたえてない気が…ここはアルタ前にあるスタジオではないよ!
なんて考えていると、彼は1P席に座った。
それを見て私も座る。
もちろん、私は2P席だ。

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彼との2回目のプレイ。
やっぱり今回も私も彼もがちがちに緊張してしまい、彼は機体選択の時点で普段使用しているのとは違うものを選んでしまっていたり、地形激突したりマフラーにぐるぐる巻きにされたり、私のほうもミスこそ無かったもののデブリ地帯で突っ込んでアームが消し飛んだり、アイテムをとり損ねたりとぜんぜん駄目だった。
終わった後に彼が全力で「すいませんでした!」と言ったのは少し笑ってしまった。
「えー、時間とかがあれなんで、自分帰りますね」
突然彼は帰るというのを私に伝えてきたので、まだやろうとしていた私は内心慌てつつ同じように帰るというのを言う。
「じゃあ外出るまで一緒に行きませんか」
これは私。カップルでもないのにこれはどうかと思ったけれど言ってしまったものはしょうがない。
「あ、はい」
彼の返答。特に嫌がるそぶりは無かった。ちょっと安心。

外に出て彼と別れる。ただし外見上。
彼が店の横にある駐輪場から出てくるのを確認して、私も急いで自転車をだす。そして彼の後方30メートル程の位置につく。
これから彼を尾行して、家の場所を探るつもりだ。あまりスピードをだして追いついてしまわないようにしないとね。

771 名前:アイアムアシューター 一話(裏)  ◆WiyiZjw89g[sage] 投稿日:2011/09/06(火) 17:29:38 ID:rQXrD262 [4/5]
彼が門扉と思われるものを開けて中に入るのを確認。
私はゆっくりとそこへと向かう。
彼は一戸建てに住んでいるみたいだ。車も置いてあり、家族で住んでいるのだろう。
とりあえず、今日は彼の家の場所を突き止めた。ヤンデレ風にいくならここでベルを鳴らすのだr「それは別にヤンデレじゃないと思うけど」
「♪×¥○&…!!」
突然耳元で声がして驚き、叫びそうになった口を手で押さえられた。口を押さえられた状態で横目で見てみるとそこに由里がいた。
「ぷはぁ……ゆ、由里、何でここに…」
「いや、ちょっと藍に見てもらいたいものがあってですね。それにしても叫ぶ事はないじゃないか。私が押さえてなかったら彼に見つかっちゃうし、よくても不審者出現の情報が町内に回る事になっちゃうよ」
「そもそも驚かそうとしなければ…」
「面白いじゃん?」
ふぅとため息をつく。少し呆れたのと、落ち着くためだ。まだちょっと息が荒い。
と、さっき由里が言っていた事を思い出した。
「ところで、私に見せたいものって?」
「ちょっとこっちに来て」
そう言うと由里は彼の家の前から離れ、横の路地へと入る。ついていくと、由里のカバンとその上に彼女のノートPCがあった。
「で、これですよこれ」
PCの画面を私に見せてくる。そしてそこに映っているものを見て私は驚きを隠せなかった。
「え。これ一体どういう」
「ちょっと目立たないようにカメラをつけさせてもらったの。もちろん無断でだけど」
そこには部屋でベッドに寝転がる彼の姿があった。今はその状態で携帯を弄っている。それが2つのアングルから映っている。
「大丈夫なの?これ」
「おそらく見つからないと思うよ。」
「それも心配だけど。これって犯罪じゃあ」
「うーん。もし見つかったら私が責任を取るから藍は心配しないで、ね」
そういう問題じゃないと思うんだけど。でも。でも、この映像はとても興味をそそられる。彼のプライベートでの様子を簡単に見ることができるなんて。
「ちなみにこれ家の中につけておいたから夜でもカーテンに邪魔されずばっちり見えるよ」
「え!それこそ見つかっちゃうんじゃないの。しかもどうやって室内に」
「いやー最初は外に設置するつもりだったんだけど、よく見たら窓が開いててさー、無用心だよねー」
「それこそ犯罪じゃない」
そんなリスクが大きい事をどうして……
「私は藍の為なら何だってできるって。で、はいこれ。物欲しそうな顔をしている藍さんにプレゼントです」
差し出されたのはUSBメモリだった。
「この中にカメラの映像を見るソフトと、使い方を書いたメモがあるから。いくらでも見てもらって結構だよ」
「い、いいの?」
「もちろん」
ゴクリと音がする。思わず唾を飲み込んでいたようだ。
このUSBメモリをもらってしまったらもう普通に彼と付き合おうとするのは無理な気がする。だけど。


決めた。
そっと手を伸ばし、私は由里からUSBメモリを受け取った。
「ありがとう由里」
「どういたしまして」
「じゃあ……帰ろう?」
「そうね、もう暗くなっちゃったし」