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880 :サイエンティストの危険な研究 第二話:2011/10/04(火) 22:44:19 ID:VBe3Oamg

 俺はいつも、兄と一緒に学校に行くことになっている。それは別にいいのだが、必ず問題がついてくる。
 一つは、今俺が感じている異常なまでの身内からの殺意を秘めた視線だ。
 もちろん、これは妹が俺に向けているものだ。
 だからといって、妹が実際に殺意を目覚めさせることはない。それはもちろん、俺の横に強力なストッパーがいるからだ。
 それで当の本人は、
「どうしたんだ亮介?やけに顔が引き締まっているが。」
 イケメンはこういうことに鈍感な所も重要になってくるんだろうな・・・。



 学校に到着。とりあえず後ろからついてくる負の視線からは解放された。
 兄と違う列の下駄箱に向かう。俺の下駄箱は遠くからでも絶対にわかる。
「・・・・・・・・・。」
 臭い・・・。生ゴミ的な臭いが鼻をつく。下駄箱の一つにはハエがたかっている。
 やれやれまたか・・・。こんなことはほぼ毎朝あることで、もはや慣れてしまった。
 そして俺は、こんな状態を作った犯人を知っている。これは一人の人物の犯行ではない。複数人による犯行だ。
 そんなことを推理している内に、自分の教室に入る。

クスクスクスクスクス

 いつも通り聞こえる俺に向けられる女子の笑い。
 そして、下駄箱と同じような腐った臭いを放つ俺の机。さらには机には罵詈雑言の落書き。

 うん、いつも通りだ。


881 :サイエンティストの危険な研究 第二話:2011/10/04(火) 22:45:08 ID:VBe3Oamg

 軽く机の上を掃除する。もはやボロ雑巾も見慣れてしまった。
 そんな俺を見ながら、まだ笑いを続けている女子の集団があった。
 公共の場にはあまりにも似合わない派手な衣装とハチマキとウチワ。そこには白抜きの文字で、「昭介先輩LOVE」とでかでかと書かれてあった。

 言うまでもない。あれは兄の親衛隊だ。
 前にも話したが、親衛隊は俺のことを敵視している。まぁ学校一のイケメンと身内と言われたら、嫉妬に狂われても不思議ではない。
 しかし、向こうは俺本人に直接傷つけるようなことはしない。
 それは、親衛隊条項第八条によるものだ。そしてそれを作ったのが、



「ごめんなさいね、亮介君。」
 急に聞こえた謝りの声。振り向くと、ナイスバディな眼鏡の女子生徒が立っていた。
 こいつが、俺に嫌がらせをしてくる親衛隊の隊長で幼馴染み、向祐希だ。
 祐希は兄と同じ三年生で、昔から一緒に遊んでいた仲だ。それがいつの間にか、祐希は兄が大好きになってしまい、ファンクラブを作ってしまったのだ。もちろん、条項を作ったのもこいつだ。
「私からも親衛隊にはきつく言っておくから。」
 そういって、笑顔のまま教室を出ていった。

 一応補足しておこう。親衛隊条項第八条とは、「親衛隊員は暴力を行使してはならない」である。
 これはつまり、殴らなければ何をやってもいいと言うことだ。だから親衛隊の連中は、こうして古典的ないじめを長い時間をかけて続けている。もちろん、犯行は学校中に散らばった各学年の親衛隊によるものだから、犯人を特定して告訴することもできない。
 まぁ、もう慣れたから別にいいんだがな・・・。
 ある程度片付け終えたところで、チャイムが鳴った。


882 :サイエンティストの危険な研究 第二話:2011/10/04(火) 22:45:50 ID:VBe3Oamg

 親衛隊の陰湿ないじめは朝しかやらない。だから朝を過ぎれば至って平和だ。
 特に昼休みともなると、ゆっくり飯が食えるという空間が作られるのだ。この時間を有効活用せねばなるまいと、俺は紙とペンを用意する。

ギュ!

 突如、制服の襟を捕まれた。振り返ると、一人の女子生徒が立っていた。
「ねぇ~亮ちゃん!一緒にご飯食べよう~!」
 やれやれまたか・・・。こいつは祐希の妹で同じく幼馴染み、向友里だ。
 こいつは親衛隊じゃないが、何故だか俺を執拗に色々なところへ誘ってくる。
 親衛隊とかがこういうことをすることはよくあったが、全部罠なのは言うまでもない。しかしこいつは親衛隊じゃないから、スルーしてもしつこく迫ってくる。
 そんな俺に、友人は「友里ちゃんに誘われるとかうらやましい~!!!」なんて言ってくるが、俺は女よりも研究が大事だ。だから今回もスルーし続ける。
「ねぇねぇねぇ~!亮ちゃん~!一緒にご飯食べようよ~!亮ちゃんと食べたいよ~!」
 本当にしつこい。こいつは家にまでやって来るくらいしつこい。スルーし続けるしかないらしいな。
 とりあえず、紙とペンを持って、俺は兄のいる教室を目指した。

「ねぇねぇねぇねぇねぇ~!!!」


883 :サイエンティストの危険な研究 第二話:2011/10/04(火) 22:46:39 ID:VBe3Oamg

 兄はいつも弁当を忘れる癖がある。だから俺が毎回弁当を届けるのだが、今日は違う。
 三年生の教室を覗くと、兄と祐希が二人で並んで座っていた。遠くから声を聞いてみる。
「うん!やっぱり祐希が作る卵焼きは絶品だよ!それにこれもうまいしこれも!」
「えへへ、そんなに美味しいの?」
「うんうん!毎日でも食べたいくらいだよ!」
「じゃあ~、毎日作ってこようかなー。」
 端から見るとカップルにしか見えない兄と祐希。それでこそ研究のしがいがあるというものだ。
 まずは、兄の周りにいる親衛隊の連中が祐希に向ける嫉妬の目。祐希は親衛隊の隊長であるから、隊員は口出しも手出しもできないからな。しかし、そんな視線にも気づかずにいちゃつく二人。



 さて・・・、そろそろだろう。



カラン!
 俺がいるドアの反対側から聞こえる、硬いものが床に落ちる音。そして感じる殺意、異常なまでの負の感情。
 間違いない、大好きな弁当を兄に届けに来た妹だ。
 大好きな兄がいちゃついている姿は、妹には刺激が強すぎだっただろうか。しかし、これも研究のためだ。兄には申し訳ないが、しっかりと今の状況を記録させてもらおう。



 俺は今日、わざと兄の弁当を忘れた。妹はそれを察知して、いつもの俺の役割を担ってくれた。
 そして俺は昨日、友里を通して祐希に弁当の話をした。
「明日から兄の弁当を作ってあげてくれないか?」
 そう言うと、祐希は喜んで受けてくれた。
 そして祐希は、兄に弁当を作り食べさせる。その場を、弁当を届ける妹に見せる。
 激しい嫉妬と殺意が伝わってくる。もちろん、全て俺が研究のために仕込んだものだ。
 それにしても妹も祐希も単純だ。兄の名前を出しただけで何だって言うことを聞いてくれる。
 おかげで研究が一歩前進した。早く帰って、この研究データをまとめたい。

 負の感情はまだ続いている。祐希は明らかに気づいているようだが、気づかないふりをしているようだ(兄はまったく気づいてない)
 今後、二人を動かしていくのには注意が必要なようだ。
 そう感じると同時に記録を終え、俺はそそくさと教室に戻った。



「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ~!」
 まだいたのか!
「ちゃんと言われた通りにお姉ちゃんに伝えたよー!だから私にご褒美ちょうだいー!」
 まぁ・・・いいか。