※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

32 :サイエンティストの危険な研究 第四話:2011/10/13(木) 23:46:12 ID:epfbBYf2

 枕元に誰かが立っている。そんなの迷信だと思っていた。化学者にとって、この事象を解読するのが仕事なのだ。 様々な理論を混ぜ合わせて最終的に答えを出すのだが、そんな理論を端から端まで話していっては、第四話がそれだけで完結してしまう。だから割愛する。
 俺が言いたいのは、そんなことじゃない。俺が言いたいのは、理論的にじゃ解決できない事象もあると言うことだ。しかも俺は過去に、そして今、それを体現しているのだ。
 その事象とは・・・。



 妹が枕元でナイフを構えているところだ。



――――――――――

 確認はしておくが、鍵はかけたはず、しかも二重にだ。それを破れるアブノーマルな力を発揮するのは、この家では妹だけだ。

「あんたがいるから・・・あんたがいるから・・・こいつなんかにお兄ちゃんが・・・。」

 ぼそぼそと言っている。内容はあの頃と変わってない。デジャヴーにも程がある。ちなみにあの頃と言うのは、妹の頭がおかしくなっていった時ぐらいからだ。

――――――――――

 話は遡るが、俺が中学二年生の時だ。
 俺は一人で部屋に籠っていた。中学生の勉強の内容なんかとっくの昔に覚えてしまっていたから、勉強なんかしなくてもよかった。
 この頃から俺は化学者に憧れていたため、手短に観察できる対象を使って独自に研究させてもらっていた。
 観察してわかったのは、妹がおかしくなったのはこの時期だということだ。
 この時期の妹の休日は大体、兄の膝枕を探してそこに擦り寄ってくる。

「お兄ちゃん~!むぎゅ~!」

 端から見れば、兄に甘える妹という微笑ましい光景だが、妹の目は明らかに変わっていた。
 そのとき俺が見たのは、可愛く甘える妹としての純粋な澄んだ目ではなかった。濁さずはっきりと言わせてもらうが、発情期の雌犬みたいな目だ。
 明らかに兄を意識し出しているのは見てとれるのだが、超がつく程の鈍感な兄にそんな気持ちは届くはずがなかった。
 そして妹は大きく変わった。一番分かりやすいのは態度だ。分かりやすいぐらい、俺と兄に対する態度に差が現れ始めたのだ。
 例をあげるとしたら、妹が飯番の時は、朝食や夜食は量や種類が変わる。例えば、俺は食パン一枚なのだが、兄にはフレンチトーストや付け合わせのサラダやら何やらが振る舞われる。
 そんな待遇の差には、正直な話慣れてしまった。兄は毎回気を使ってくれてはいるが、未だに改善されていないから、俺は完全に諦めている。


33 :サイエンティストの危険な研究 第四話:2011/10/13(木) 23:47:13 ID:epfbBYf2

 待遇の違いは別に構わないが、妹にとって俺は邪魔でしかない。
 さらに、妹の行動力が良すぎるせいで、あいつは俺の寝込みを襲って俺を亡き者にしようとしている。
 今のこの状況を端的に説明するなら、こういうことだ。



――――――――――

 妹は躊躇いを知らない。おそらくあと数十秒でナイフは俺の腹部を貫通するだろう。
 最初は恐怖を感じたが、二回目ともなると冷静になれる。そして俺は、こんな状態になった時の対処法を心得てる。俺は深呼吸の後、思いっきり叫んだ。

「兄さ~~~~~ん!!!!!」

 妹は呆気にとられたような顔をした。その刹那、俺の部屋のドアが開き、救世主がやって来た。

ガチャ!

「何やってんだ!?」

 妹は、手に持っていたナイフを後ろに投げ捨てて、取り繕った笑顔で兄を見た。

「えっと・・・あの・・・その・・・。」

 必死に言い訳を考える妹。黒く楠んだ目は、視点が全くあってない。

「お兄ちゃんを起こそうと思ったの!もぅ!お兄ちゃんっていっつも起こしても起きないんだから!」

 言わせてもらうが、妹が俺を起こしに来たことは一回もない。しかし、兄は何でも真に受けてしまう。

「そっか、朝飯出来たから食べるぞ。」
「はぁ~~~い!」

 満面の笑みで兄に飛び付く妹。
 とりあえず朝飯ぐらいは食べておくか・・・。



――――――――――

 朝の教室、下駄箱と机の上の悪戯は今日はなかった。
 それも当然、木村梨子という親衛隊機動組の支部隊長がいなくなったからだ。
 頭がいなくなれば烏合の衆も同然、嫌がらせもなくなるというわけだ。簡単に言えば、親衛隊以外には得しかないと言うことだ。
 とりあえず、いつもは汚い机に頭を突っ伏して、寝る体制に入ろう。

「ねぇねぇねぇねぇねぇ!」

 無視。

「今日は一緒にお弁当を食べる日だよね~! だから私、亮ちゃんの分も作ったんだよ~!亮ちゃんの好きな物ばっかりだから~!美味しく食べてね~!あ!でも栄養バランスとかも考えて野菜とかもたくさん入ってるんだけど~、好き嫌いはダメだよ~!やっぱり夫の健康を一番に考えて料理をするのが妻の役目だもんね~!」

 こいつの頭はどうなっているんだ?



――――――――――

 約束通り弁当を一緒に食べた。しかし、一口食べれば「美味しい~?」という質問を続けてくるのがうざかった。
 とりあえず今日の研究のために、猛ダッシュで兄の元に行く。

「・・・?」

 おかしい。明らかにおかしい。俺の予定では、また妹が嫉妬の視線を祐希に浴びせているはずだ。
 しかし、今の光景は予想とは全く違っていた。


34 :サイエンティストの危険な研究 第四話:2011/10/13(木) 23:48:00 ID:epfbBYf2

「お兄ちゃん~~~!美味しい~~~?」
「う・・・うん・・・。」

 これはひどい。
 明らかに異質な光景だ。まるで恋人であるかのように振る舞う妹と、その対処に困る兄。兄の顔は、恥ずかしさで真っ赤になっていて、汗が滴り落ちている。対照的に、妹の表情はすごく幸せそうだ。

「お兄ちゃん!あ~ん!」

 クラスメイトは明らかに引いてる。耳を澄ませばヒソヒソ声も聞こえる。当然だ、実の妹にこんな、恋人紛いのことをされて注目されないわけがない。二人は明らかに浮いていた。
 研究の際、色々と起こりうるハプニングを予想して対策を練っておくのが普通だが、まさかこんなハプニングが起こるとは。
 おそらくあれは、昨日の夜に秘密に仕込んだものだろう。そして、その秘密の弁当が兄にばれないように、朝みたいな行動に出て注意をそらしたのだろう。もし今の予想が本当だったら、妹を恐るべき策士としか言い様がない。
 ペンを落としそうになるぐらいビックリしたが、それ以上に気になることを見つけた。

「・・・祐希がいない?」

 いつも兄のそばにいる祐希がいない。兄がこのような状況に陥ってる場合、祐希はすぐさま機動組を差し向けるはずだ。
 更に見ると、祐希はおろか機動組すらいない。まさかこの状況を野放しに?
 まぁ俺には好都合だ。この教室に残ってる通常の隊員達の嫉妬の視線は健在だ。さっそくデータをとろう。



――――――――――

 六時間が終わり、早速家に帰る準備をする。いつものようにやって来た友里を置き去りにして玄関を目指す。一段飛ばしで階段を下り、靴箱に手をかけた。

「ずいぶん急いでいるのね。亮介君。」

 これは意外な人物だな。
 俺の目の前にいるのは、俺を憎んでいるはずの幼馴染み、昭介様親衛隊隊長の向祐希だ。
 相変わらずのナイススタイルだ。その辺の男なら一瞬で虜になるだろう。まぁ俺は別に興奮はしないがな。

「ちょっと話したいことがあるんだけど、久しぶりに一緒に帰らない?」

 一瞬、祐希の口元が怪しく笑った気がした。何か形容しがたい恐怖を一瞬で感じた。
 だからといって断りはしない、むしろ好都合だ。
 研究対象を知ることも研究の一つだ。

「あぁ、わかった。」

 しかし、とうとう俺にもツキが回ってきたのかもしれない。こうも研究しやすいように場が転がっていくとは・・・。


35 :サイエンティストの危険な研究 第四話:2011/10/13(木) 23:48:37 ID:epfbBYf2

 いつもの通学路だが、いつもと違う。
 俺の隣には、俺の天敵(兼研究対象)の祐希がいる。
 幼馴染みと言っても、一緒に歩いていたのは俺が小学三年生になるまでの話だ。この頃からか、友里は俺に、兄には妹がベッタリくっつき始めていた。だからあまり、祐希のことは覚えていない。
 ・・・考えてみれば、祐希が兄のことが好きなんて聞いたことがない。ベッタリくっつくわけでもなく、だからといって仲が悪いわけでもない。付かず離れずの距離を保ち続けていた。
 高校に入ってから、ファンクラブを作ったりと兄が好きな様をさらしてきたようだが、そもそもファンクラブなんか作る必要があるのか?幼馴染みの特権を行使すれば、いくらでも口説けるはずだ。何かしら裏がありそうで怖い。

「家族全員仲良くやってる?」

 切り出してきたのは祐希だった。
 俺達の家は、両親が共に忙しいため、家にいない日が多い。だからしょっちゅう向家にお世話になっていた。

「まぁ・・・ぼちぼちかな。」

 まさか兄と妹が一線超えそうなんて事実を言うわけにもいかない。言ったら何をするか、想像がつかない。最悪の場合、親衛隊機動組が偶然を装って、妹を手にかけてしまうかもしれない。そうなると俺は研究対象を失うことになる。夢の実現のためにも、それだけは阻止しなければならない。
 一瞬、祐希の口元が笑った。

「そう・・・ならいいけど・・・あなたはどうなの?」
「俺はいつも通りですよ。俺は兄貴みたいにちやほやされる人間じゃないんで。」

 少し皮肉っぽく言ってみた。
 向姉妹は俺が研究者になっていることを知らない。特に祐希にとって、俺は半端者だ。妹みたいに憎き強敵なわけでもなく、兄みたいに尊敬の対象にもならない。
 まぁ、研究者として素性がばれてないだけまだマシだがな。

「それで、聞きたいことって?」
「単刀直入に聞くけど、妹さんに何があったの?」

 間髪入れずに聞いてきた。一瞬吹いた風が祐希の髪を舞い上がらせた。

「・・・。」

 無言で黙秘権を行使する。言っては俺の研究に支障が出てしまう。

「そう、なら・・・こうするしかないのね。」

 え?


36 :サイエンティストの危険な研究 第四話:2011/10/13(木) 23:49:35 ID:epfbBYf2

 ・・・・・・・・・・・・・・・カチャカチャ。

「・・・!」

 ゆっくりと意識が覚醒した。
 意識が覚醒すると同時に、頭に強烈な痛みが波のように押し寄せてきた。
 今の状況を確認すると、どうやら俺は今、椅子に座っているようだ。体を動かそうとしたが、手も足も動きが制限されていた。
 突然なにかが起こったのだが、そのなにかがわからない。気がつけば、俺は椅子に座らされていて、両手を背もたれに手錠で繋がれ、両足を椅子の足に縛られ、目隠しと猿ぐつわをつけられていた。



 とりあえず状況を整理しよう。
 祐希と話している最中、俺は急に視界が暗くなった。そして気がつけば、頭に強烈な痛みを残して椅子に縛られていた。

「・・・?」

 駄目だ、あまりにも突然すぎてよくわからない。頭が徐々に混乱し始めてきた。頭に響く激痛が、思案している頭をかき乱して思案を強制的に終了させる。落ち着こうにも落ち着けない状況が、次第に焦りに変わり始めてきた時、



ガチャ!



 誰かがドアを開けて入ってきた。ということは、ここは誰かの部屋なのだろう。いったい誰の部屋なのだろうか。

「亮介君、私がわかる?」
「・・・!」

 聞こえた声は、さっきまで一緒にいた人の声だ。今、その人が俺の目の前にいる。目隠しでなにも見えないが、聞こえた声の位置や声質で大体わかった。

「・・・!・・・!」

 猿ぐつわで声が出せないが、足をバタバタさせて今の言いたいことを伝える。

「こんなことする理由?亮介君が正直に答えないからかな。」

 そう言ったと同時に、俺の制服のズボンを脱がし始めた。

「私の質問に答えたら気持ちよくイカせてあげる。だけど言わなかったら絶対にイカせてあげないから。」

 なるほど、「尋問」をする気なのか。
 そんなことを思案しているうちに、とうとうパンツまで下ろされ、俺のモノが外に出た。
 が、

「・・・。」
「何で大きくなってないの?」

 当然だ。監禁されてる状況を知ってて興奮するなんて、よっぽどの上級者じゃなきゃ無理だ。

「ん~、早く言わないとイク寸前で止めて苦しめちゃうよ?」

 脅しか?まぁそんな脅しなんかにビビる俺ではない。

「ん~、じゃあ早速尋問始めるから。」
 唯一機能している聴覚が、目の前の祐希が着ている服を脱ぐ音を確認した。