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幼い頃から悠二の両親は仲が悪かった。
父は母のことを最低の女だと罵倒し、
悠二にあんな女とだけは結婚するんじゃないぞと
言い聞かせた。母も反対に父をけなした。

(ならどうしてお父さんとお母さんは結婚したの? 
 幸せになるために結婚したんじゃないの?)

悠二は思ったことを母に伝えた。
母は言葉を濁し、大人には色々事情があると教えてくれた。

意味が分からなかった。

夕飯のたびに飛び交う両親の怒鳴り声。
割れた皿やビンの音が鳴り響く。
なぜか離婚はしなかった。あれだけ憎しみあっていたのに。

中学に上がる頃には胃がキリキリ悲鳴をあげるようになった。
くだらない。あいつらは人間のクズだ。
あいつらのために自分が気を病むなんてくだらない。

男女の愛など偽りだ。

それは恋愛小説など創作作品の中にだけ存在するだけ。
一人の異性と一緒を共にすることなど最高にくだらない。


967 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:01:07 ID:n0OBkfas
恋愛にも結婚にも一切興味がなくなっていた。
一生一人で過ごしても構わないと思っていた。

世界の広さを知らない時までは。

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「早見君。目を覚まされましたか?」

「あぁ。俺はどれくらい寝てたのかな?
 見たところ外はもう暗いみたいだけど?」

悠二は保健室のベッドから起き上がろうとして
違和感を強烈に感じる。軽いデジャブ。
全身が麻痺していた。そして右腕にガーゼ。
注射でもされたのかと推測する。

「夜の七時を回ったところですわ。ですから
 早見君は二時間くらい寝ていたことになります」

生真面目な口調で答えるのは彼をここまでさらった女だ。
榊原葵。ついに化けの皮をはいだ同級生。

悠二は勤めて冷静に話し始めた。

「下校時間はとうにすぎてるじゃないか。
 榊原さんは家に連絡してるのか?」

「もちろんですわ。全て計画通りです」

「そうか。すまないが俺の携帯を取ってくれないか。
 君が握ってるそれだ。なぜ君が俺の携帯を持ってるのかは
 あえて聞かないけど、家族に連絡しなきゃならないんだ」


968 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:03:07 ID:n0OBkfas
「それは無理な相談ですわ」

「なぜだい?」

「これをご覧になって。橘愛梨さんからの着信件数、
 もう40件を超えてます」

彼女は事の顛末を話した。

表向きには具合が悪くなった悠二が演劇の練習中に
帰ったことになってる。実際には巧妙に貸しきることに
成功した保健室で悠ニを監禁しており、勘のいいアイリは
事件の匂いを嗅ぎつけているとのこと。

学校側にばれないのかと悠二が聞くと、問題ないと即答された。

榊原はベッドに浅く腰掛けた。

「私が早見君のことを好きなのは知ってますか?」

「初耳だね。いつからだい?」

「はじめて同じクラスになった時からずっとです」

「へえ、ってことは一年の時からか……」

悠二は去年クラス委員長をしていた。将来の推薦に
役立つと考えて立候補したのがきっかけだった。
自分としては与えられた仕事を淡々とこなしてるつもりだったが、
先生や周りの生徒からはリーダーに向いてると評価されていた。

今年も立候補しようかと考えたが、めんどくさいのでやめた。
他に誰もやる人がいないのなら話は別だが、今年は
例の委員長殿(メガネ)がいるので彼にまかせた。


969 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:04:29 ID:n0OBkfas
それでも文化祭実行委員として彼のリーダッシップは
遺憾なく発揮されていた。困った時や迷った時は
周りの人と相談し、総合的に意見を集めてから判断する。

榊原が文化祭実行委員に立候補したのも、すべては
彼に近づきたいがため。彼の補佐が出来ればそれで十分だった。

少し前までは。


「榊原さんが俺をどうしたいのか知らないけど、
 俺の中ではアイリが一番の存在に……」

全て言い終わる前に枕元に注射器が突き刺さった。

「……っ!!!!」

太い針だった。
数センチ間違えれば眼球が潰されてしまっただろう。

「あの女の名前はできるだけ口にしないで下さいね?」

「……う……あっ……!」

この瞳……。

間違いないと悠二は悟った。
病的になっている女特有の狂気を感じた。

さっきの注射器もまるでためらいがなかった。
これ以上私を怒らせれば次は容赦しないぞと
脅されたようなものだ。

ただでさえ抵抗できないこの状態。
死刑囚と同じ牢屋に閉じ込められたのに等しい。


970 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:05:50 ID:n0OBkfas
「早見君はあの女に騙されているんです」

榊原は電気を消した。
明るさに目が慣れようとしていた悠二にはきつい。
人は情報入力の大半を視界に頼っており、
これが失われると途端に不安になる。

「あの女は嫌がる早見君をいたずらに追い掛け回して
 困らせていました。早見君だって私に何度か言ったじゃないですか。
 あの女がしつこいから困っていると……」

それは事実だった。今でこそアイリの存在が大きくなりつつある
悠二だが、少し前までは本当にうとましいと思っていた。

「最初は早見君の方から話しかけてくれましたね。
 私は絶対に早見君とはうまくいくと思ってました」

確かに、榊原と親しくしようとしたのは悠二の方からだ。
二年連続で同じクラスで、委員会も一緒になったので
軽い気持ちでアドレスを交換したのが間違いだった。

後悔してももう遅い。

一年の頃から影から見つめる熱い視線に、鈍感な
男は気がつかなかった。彼女の正体を知っていれば、
決して仲良くなろうとは思わなかっただろう。

「なのに、あの女は私たちの邪魔をしました」

いつのまにか榊原の顔が目の前にあったので慌てる悠二。
肩が触れ合うほどの距離だ。
暗闇の中でも相手の顔がうっすらと見える。


971 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:07:08 ID:n0OBkfas
「先週はあの暴力女に暴行されてしまいましたが、
 悠二君はあんなやり方が許せると思ってますか?」

いつのまにか下の名前で呼ばれてることに気がついたが、
あえて指摘しない悠二。淡々と答える。

「ああ、屋上のあれな。確かにアレは常軌を逸してるよ。
 あいつはちょっと感情的になりすぎるところが
 あるからな……。あの件については俺からも…」

「悠二君は私を助けてくれませんでした」

「……!!」

「さらに、あろうことかあの女とキスしてましたね。
 でもアレは間違いだったと信じてます。
 橘愛梨に脅されて無理矢理やらされたんでしょう?
 毎日お昼ごはんを一緒に食べているのもです。
 違いますか?」

榊原は悠二に馬乗りになってる。
上半身を倒し、彼の肩に両手を乗せている。
まるで押し倒してキスを迫ってるようなポーズ。

しかし甘ったるい雰囲気はなく、
むしろ殺伐とした尋問だった。

あの簀巻き事件は確かに人としての尊厳を奪った。
榊原が怒るのも無理はない話しだが、
この女は少しずれてると悠二は思った。
橘愛梨に対する恨みというより、一人の男に対する執着から
行動してるように思えるのだった。


972 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:08:02 ID:n0OBkfas
「質問に答えてください」

沈黙を続ける悠二に苛立った様子の榊原。

「……っ。なら正直に言うよ。俺はアイリのことが好きなんだ。
 別にあいつに強制されたわけじゃないぞ? 俺は本当に
 あいつのことが好きになったんだ。だから君とは付き合えない」


榊原は黙ってしまった。

あたかも異次元にワープしてしまったかのような違和感。
雰囲気がさらに悪くなり、空気が恐ろしく冷たく感じる。

今彼女が何を感じ、何を考えているのかは分からない。

魔物に脅えて過ごすのはもうごめんだった。
悠二はようやく手足に感覚が戻ってきたことを
実感していた。指先程度なら自由に動かすことが出来る。

もう少し時間を稼いで隙をみて逃走しようと思ったのだが…


973 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:08:46 ID:n0OBkfas
パリーーーン!!


「っ…!!! な…?」


ガシャーーーン!!


悠二が何事かと思って目を凝らすと、榊原が暴れていた。 
怒り狂った彼女は
パイプイスを手にしてその辺の棚を破壊してる。

(あの時と同じだ……両親が喧嘩してる時のあの音……!!
 うわぁあ……嫌だ…嫌だ……誰か助けてくれ……!!)

砕けるガラスの音。

物品が叩きつけられる大きな音。

押さえ切れない怒りが爆発している。


三十秒ぐらいしてから、再び沈黙が訪れた。

静寂もまた恐怖だ。悠二の精神は幼稚園児にまで
退行しようとしていた。真っ暗な暗闇で見えない
暴力に脅える怖さ。

高校生になってもぬぐうことの出来ない最悪のトラウマだった。
死ぬ。殺される。もう駄目だ。
マイナスイメージで脳が支配される。
本気で得体の知れない同級生に脅えてしまった。


974 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:10:45 ID:n0OBkfas
「大きな音を立ててしまってごめんなさい。
 悠二君が正直になってくれないものですから、
 つい苛立ってしまいましたわ」

「……あ……う……」

子犬のように縮こまる悠二を胸に抱く榊原。

悠二は確かに少女の体温を感じた。
恐れている相手なのに、なぜか安心してしまうのだ。
なぜか懐かしさを感じるのは、頭を丁寧に撫でられているから
だろうかと考えていた。

親への服従。
両親から強制されたこと。扶養されている者の哀れな身分。
本当に欲しいのは愛情だった。なのに……
悠二の脳裏にそれらが浮かんだ時だった。


「はぁぁ……。久しぶりに激しい
 運動したから汗かいてしまいましたわ」

榊原は制服を脱ぎ始めた。まずは上着からだ。
清楚な色合いのブラが暗がりの中でも確認できる。
それと形のいい控えめの乳房もおおまかに。

「……っ!!」

思わず注目してしまう悠二。
すでに目は暗闇に慣れてしまってる。
普段から委員会で一緒になってる女の子の
素肌がこんなに扇情的だとは思わなかった。


975 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:11:57 ID:n0OBkfas
彼女はスカートのホックを外してショーツも惜しげなく解放した。
悠二の男性の本能はすでに彼女の身体を欲しがり始めてる。
どちらかというとスレンダーな体系。アイリとは違った魅力。

駄目だ。浮気は駄目だ。頭ではそう思っていても身体は……


「どうかしましたか悠二君?」

彼女は悠二をじっと見つめてる。

「だ、だめだ……。やめるんだ…」

悠二の神経麻痺はもう治っている。
彼は半身を起こした体勢だったが、
榊原に密着されている。
首の後ろに両手を回されていた。

細い彼女の指が自分の身体に触れるだけでドキッとした。

「私の身体が欲しいですか?」

「う……」

「いいですよ? 悠二君にならなにされてもかまいません。
 ただし、あの女のことを忘れるといってくださればですけど」

そんなこと急に言われてもできるわけがない。
悠二はそう口に出して言いたかったが、
なぜか唇が震えてしまう。声も出ない。

だが彼女は待ってくれない。

「……好き……です……んん……」


976 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:13:12 ID:n0OBkfas
彼女の柔らかい唇が押し付けられていた。
できればアイリ以外の女とキスは控えいと思っていた矢先だった。
女の唾液の味が口の中に染み込み、頭がボーっとしてしまう。

(俺はあの榊原とキスしてるのか……?
 最初は軽い気持ちで知り合ったのに……)

榊原は積極的に身体を預けてきた。
キスに夢中になっていた悠二がふと下のほうを見ると、
胸が押し付けられていることに気がつく。

まだ下着姿の彼女。美しい肌だ。
全て脱がしてしまいと劣情が頭を過ぎる。
暗闇に脅えていた男に、猛獣としての本能が戻ってくる。

「我慢しなくていいんですよ?」

まるで心境を見透かしたかのようなセリフ。

確かに我慢は体に悪い。ここまで来たらもう止まれない。
全ては誘惑してきたこの女が悪いのだと自分に言い聞かせ、
悠二は彼女を押し倒してやった。

「きゃ……」

「今度は俺からいくぞ」

「はい……」

舌を伸ばし、彼女の口の中にいれる。
彼女の嬉しそうに舌を絡め、液体が交じり合う。

まるで発情した雌犬だな。
いいだろう。徹底的に犯してやる。


977 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:14:42 ID:n0OBkfas
悠二はそう思いながらブラのホックを外した。
乳首が自己主張してる可愛い胸を強く握る。

「んん……はぁぁ……!」

頬を赤く染めて息を吐く榊原。
実年齢より何歳も色っぽく感じられる。

「次はこっちだ」

「……あっ……」

「ほう、やっぱりびしょ濡れだな? 
 普段は大人しそうな顔してるくせに変態だったんだな」

「あうっ……んんっ……」

ショーツの中を男の手がまさぐっていた。
エッチな液体で濡れている下着など、
もはや脱がしてしまっても問題ない。

羞恥心を煽るようにゆっくりと脱がしてやった。
ずぶ濡れになってる秘所が眼前に晒される。

ピチャ ピチャ ピチャ

悠二はわざと下品な音を立てて、あふれ出る愛液を
舐めていた。足を閉じることなど許さない。
両足を大きく広げさせ、彼女のアソコに顔をつっこんでいた。

「はっ……いいです……もっと……舐めて……」

榊原は自分の指を口でしゃぶりながら、
もう片方の手で自分の胸を触っている。


979 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:17:29 ID:n0OBkfas
その姿はもっと快楽が欲しいと主張していた。

「あっ……んっ……あっ……」

「どうだ? 感じてるか?」

「はいっ……もう私っ…………」

「おっと、イクのはまだ早いぞ」

悠二は責めを止めた。榊原の身体を抱き上げ、
ベッドの上に座っている自分の上に乗せる。

互いが向き合う位置で悠二のモノが
榊原の秘所に押し込まれた。対面座位だ。

「あっ……!! あんっ……!! すごいっ……!!」

いっそう大きな声で喘ぎだす榊原。
汗一杯かいてる肌が艶かしい。

髪を振り乱し、悠二の上で上下に揺れ続ける。
その華奢な腰を決して離そうとしない悠二は、
力強く彼女を膣を刺激し続ける。

膣口のさらに奥を目指して男性器を挿入していた。

「だ……だめっ……!! もうすぐにでも……イッちゃいそう!」

「うっ……はは……ヤッてる時はお嬢様口調じゃ…ないんだな…!!」

「悠二君……!! 悠二君大好き……!!」


980 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:19:55 ID:n0OBkfas
「一緒に……楽になろうぜ榊原。はっ…こうなったら……
 トコトンまでやってやるからな……」

若い男女の嬌声が響き渡る夜の保健室。

ここは県内有数の私立校だ。金持ちのお子さん達が
通う清き正しき学校でこんなことが行われていると
誰が思うだろうか。

世間に事実を知られたら即退学。

そんなことは二人だって承知の上。
だからこそ、背徳感が劣情を加速させる。


――それから何度達したのか、二人は覚えてない。

気がつけば夜の八時を回っていた。
家ではゴールデンタイムのテレビ番組でも流れているのだろうか。
残業を終えたサラリーマンたちが駅前を歩いているのだろうか。

冷静になると、今日に外の世界が気になって仕方なかった。

「俺はもう行くよ、榊原さん」

身支度を整えてカバンを手にした悠二が言う。
早足で扉を開け、振り返らず去ろうとしたが…

「まあそんな他人行儀な呼び方はいけませんわ。
 どうか下の名前で呼んでください」


981 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/07(金) 21:21:40 ID:n0OBkfas
「葵か。少し気恥ずかしい気もするが…」

「悠二君。私のこと好きですか?
 これからもずっと好きでいてくれますか?」


榊原は暗に今の関係を続けようといっている。

ズキ……

アイリを裏切ってしまったという罪悪感で胸が痛んだ悠二。
彼女の顔は見ず、無言で立ち去った。

月明かりがカーテンの隙間から差し込む。
夜の学校特有の静けさに支配されいてる保健室。

一人だけ残された少女はポツリとつぶいた。

「悠二君。私には一度も好きと
 言ってくださらないのですね……」

ーーーーーーーーーー
あとがき。

ついに体の関係を持ってしまった葵(あおい)と悠二。
アイリへの思いが強まっていた悠二にとっては
思わぬ誤算となってしまった。

これから彼らの関係はどのように変化していくのか、
次回にご期待ください。
                 第四章へ続く
最終更新:2011年10月22日 11:57