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442 :風の声 第13話「風の困惑」:2011/11/11(金) 16:04:22 ID:MOUoAHvI
「スマイル、くださぁぁぁぁぁい!!」

カウンターの方から天野の大声が聞こえた。
またスマイルを注文しているみたいだが気合入りすぎじゃね?
俺は二人に連れられ殺ッテリアに来ていた。
周りは同じくらいの高校生の集団や家族などで賑わっているのだが
何故か俺がいるテーブルでは沈黙が続いていて
少しばかり空気が重かった。
そんな空気の中、口を開いたのは高坂だった。

「なんであんな女と付き合ってんの?」
「え、付き合ってるって誰が?」
「お前と大空」

      • 何て言った?
俺と大空が付き合っている?
冗談だよね?

「いや、付き合ってないけど・・・どうして?」
「俺、お前のことが好きだから」
「・・・・・は?」
「なんちゃって」

真顔で言うな!
普段こんな冗談とか言わない奴なだけに
こういう冗談が冗談に聞こえない。

「なぜ気になるかというと、まぁあの日のことで少し気になってたからな」
「あの日って、夏休みの大会?」
「物分りがどこぞの馬鹿と違って助かる」

そういってカウンターのほうに目をやる高坂。
そして、すぐに視線を戻し質問を続けてきた。

「で、結局どうなんだよ」
「付き合ってはいない」
「なんで?」
「なんで?って・・・なんで?」
「だってラブラブだったじゃん。風魔に近づく人間すべてに敵意むき出ししてさ、
 ホント、遠くから見てたら『束縛しすぎだろ、コワっ』とか思ってたけどさ
 そのあと、風魔の家でお前に話を聞いたときにさ、お前言ってたよな」
「なにを?」
「『大空がああなったのは風魔のことを守るため』的なことを言ったじゃん。
 忘れた?」
「いや、覚えている」
「あの時は大空の行動全て否定することしかできなかったんだけどさ
 今思えば、対人恐怖症のお前を守るために大空が頭を絞って出した
 最善のやり方だったんだよな。まぁ最善とは言えないけどさ。
 だからあの時俺は、『一生大空に守られる人生を追うのか
 それとも束縛から逃れて社会に羽ばたくのか』みたいな事を言ったけどさ
 訂正させてくれるか?」
「?」
「大空に束縛される人生を歩むか、それとも・・・」


443 :風の声 第13話「風の困惑」:2011/11/11(金) 16:05:32 ID:MOUoAHvI
「大空を心のそこから愛する事で、大空を救い、大空の事を守っていく人生か?」


「えっ、何で、大空を愛する事が救う事になって、さらに守る事ができるんだ?
 だって、大空を守る必要なんて「あるんだよ」」

いきなりの高坂の言葉に遮られた。

「大空とは一緒の小学校だったんだ。
 あいつは、大空は・・・・親から虐待を受けてたんだよ」

一瞬、時が止まったかのように感じた。虐待?
いつも、明るくしている大空が?

「知ったのは小1の夏。プールの授業で大空の体にたくさんのあざが見つかったんだ。
 教師たちは保護団体と共に行動して親を刑務所に送り、大空を救った
 ・・・かのように思えた」
「思えた?」
「体罰を与える人間を消す事はできたが、大空の心はボロボロだったんだ。
 また、あんな目に合うんじゃないかって、施設では職員やほかの子供たちにも
 怯えていたらしい。小学校高学年になると怯える事は無くなったが“愛”を
 求めるようになった。今まで生きてきた中であまり“愛”を感じなかった為か
 いろんな人を好きになり“愛”を求め続けた。一目惚れなんてしょっちゅうだった。
 “愛”を求めすぎた事で自然とあいつは“重い人間”になっていった。
 あ、重いって言うのは重さじゃなくて“想いが重い”って意味だから」

それぐらいわかるって。つまりその時期には今の大空の大体が完成していた訳だ。

「告白をして振られた時なんか、ものすごい暴れたからな。捨てられる事を
 ものすごく嫌がってたんだと思う。そんな毎日を過ごしていたせいで
 小学校卒業のときには友達もいなく孤独になっていた。
 こうして美人なのに孤独な王女様の完成ってわけ。
 ・・・悪い、最後ふざけ過ぎたかもしれない」
「何で・・・」
「ん?」
「何で、そうやってずっと見続けてきたのに助けてやらなかったんだよ!!」

気づいたらテーブル越しに高坂の胸倉を掴んでいた。
愛のない人生が怖いのは俺もいろんな意味で知っている。
俺は隼先生という頼れる人に出会え人を信用する気持ちを少しだけだが知った。
けれども大空はそんな人に一度も出会えず今日この日まで人生を歩んできたんだ。
言葉では表せないぐらい辛かったに違いない。

「あの頃はおれもガキで女子と話したりするのが恥ずかしかったし
 周りの目も気になったし」
「でも、今は高校生だろ!」
「あいつは俺の事なんて覚えていない!」
「覚えていなくても救ってやりたいっていう気持ちはあったんだろ!」

そう言ったとき高坂の表情が暗くなった。


444 :風の声 第13話「風の困惑」:2011/11/11(金) 16:06:13 ID:MOUoAHvI
「入学式で大空がいるって事を知った時、俺は『大空と同じ高校かよ。
 あ~ぁ、俺の高校生活台無しになったな』って考えていた。」
「・・・・・」
「そう考えていた時点で俺にはあいつを救う気持ちなんてどこにも無かったんだよ。
 だから、お前に頼んでいるんだ。俺にできなかった事をお前にしてほしい。
 悲しみの人生しか知らないあいつを救ってほしいんだ!!」

ただ単に、人に責任や、その他のものを擦り付けているだけじゃないかと思った。
けれども今思えば俺は大空に救われた事が何回かあるんだよな。
部活に入ったのだって、今思えば大空のおかげだしな。
愛する事で救うか・・・、俺は大空の事を愛せるのかな?
深く考えながらポテトに手を伸ばしたときにふと気づいたことがあった。

「なぁ、どのへんでそう思ったんだ?」
「どのへんって・・・だから高校入学するとき」
「それじゃなくて、俺と大空が付き合っているって思ったの。
 確かに基本的に行動は一緒だったけど
 俺が嫌がっているのは見たら分かっただろうし。
 そんなんで、なぜ付き合っているって思ったのかなぁって」
「あの大会の日、大空がお前にキス求めたじゃん」

      • はい?

「あの大会の日、大空が勝ったらお前からキスしてほしいって言ってたじゃん」
「キスじゃなくてハグだろ?」
「そのハグを断られてキスに変更したんだろ?」
「・・・・・?」
「もしかしてお前、聞いてなかった?」
「少しウザイって思って、大空の言葉すべて流してた・・・」
「お前・・・・・・最低だな」
「・・・ごめんなさい」
「大空はお前からの愛を求めている。それは確実なことだ。
 もしも、お前が甘く考えているのなら、俺が殴るから」

“甘く”その言葉を聞いてふと自分の中のモヤモヤに気づいた。
あの日、なぜ自分や周りの人を傷つけた大空の見舞いに行くという行動を取ったのか。
あの時は無意識に行っていたが今ならその理由も分かった気がする。
俺は・・・大空のことが・・・ス「おい!逃げるぞ!」
「!?。天野?」
「お前、カウンターで何分時間つぶしてんだよ」
「いいから逃げるぞ!」
「何で?」
「『ものすごい形相でスマイルを頼んでくる人がいます』って通報された!」
「おまえ誰?」
「へ?」
「なぁ風魔。こいつ誰だか知ってる?」
「えっと・・・・いや知らない」
「急に他人の振りするなぁぁぁ~~~~!」

ちょっといろいろと邪魔されて言えなかったけど一つだけ決めた。
また今度、大空の・・・舞のお見舞いに行こう、と。


445 :風の声 第13話「風の困惑」:2011/11/11(金) 16:07:03 ID:MOUoAHvI
『ハァ、ハァ、ハァ』

病室に私の荒い呼吸音が響いた。
時計を見ると夕方の4時。
窓からの光で病室が茜色に染まっていた。
先ほど目が覚めたのだが自分の今の状態に少し戸惑う。
額と手には汗、息も荒い。先ほどきた看護婦はうなされていたと言っていた。
嫌な夢を見ていた気がするがあまり覚えていない。

「っ!」

胸のところが痛む。
襟を寄せて胸の真ん中にある痣となっている手術痕を見た。
医者には一生消えないと言われた。
この痣を見るといつも思う。
“どうしてあんなことをしたのだろう?”と。
あの日、彼は彼の友達に拉致・・・じゃない。
ただ連れて行かれただけなのに、心のそこから怒りが沸いてきた。
彼は私が守るって決めていたから、周りの人間すべてが私と彼の敵だって思ってた。
だからすぐに彼の携帯をGPSで見つけて、追いかけた。
追いかけないで、ただ電話やメールで連絡すればよかっただけなのに・・・。
そうして私は彼に殺されかけた。
あの異質な空気をまとった彼を思い出すだけで身震いする。
それでも私は、彼が好き。
好き、なのだけれども・・・。

『コン、コン』

ドアがノックされた。
スライドして開かれていくドアの影から現れたのは・・・

「!?」

黒い髪をした彼だった。
一歩、また一歩と近づいてくる

「(イヤ・・・来ないでぇ・・)」

病室に逃げ場はない。もとより体が震えて動くことさえできない。
そして翼はベッド横まで来て、あの日と同じように手刀を構え、そして・・・

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「大空さん!大空さん!大丈夫ですか!?」

恐怖のあまりにつぶった目を開くとそこには自分の担当の看護婦が立っていた。

「何かありましたか?ものすごい悲鳴でしたが・・・」
「え?あ・・あの、な、なんでも・・ありません・・・」
「震えてますね・・・お水持ってきましょうか?」
「あ、ありがと・・ございます」

彼のことは好き、けれどもそれと同じくらい彼に恐怖を抱いていた。
会いたい、けれどもまた殺されるのではないかと思うと何もできなかった。

「助けて、助けてよ、つばさぁ・・・」


446 :風の声 第13話「風の困惑」:2011/11/11(金) 16:07:51 ID:MOUoAHvI
「ゲームセット!」

審判をしていた天野の声が聞こえる。
今日の練習での試合で、遂に、遂に、高坂に勝った。
21ポイント1セットマッチなのにデュースを繰り返してしまったために
29-27というスコアになっていた。

「勝ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

体育館に響く自身の歓喜、響きすぎて周りからの視線が痛かった。

「十分、勘を取り戻したみたいだな」
「まぁな。あ、罰ゲームは飲み物奢りな」
「何本目だよ」
「3本目?」
「飲んだら打つな。打つなら飲むな」
「俺が飲んでいるの酒じゃなくてスポドリなんだけど・・・」

高坂は飲み物を買うために体育館を出て行った。
いま男子達の間では敗者が勝者の命令を聞くというミニゲームが流行っている。
当たり前だが命令と言っても罪にならないこと限定となっている。

「風魔!次、俺とやろうぜ!」
「お前弱いからやだ」
「何でも命令聞くからさぁ~」
「じゃあ、最終下校時刻まで女子更衣室に待機」
「OK!」

こいつ、絶対負ける気でいるな・・・。
結局、21-3で俺の勝利となった。

「じゃあ行ってくる!」
「えっと・・・武運を祈る?」
「祈られた!」

そうして天野は意気揚々と旅立って行った

「あいつどこに行くんだ?」
「・・・さぁ?」

入れ替わりで戻ってきた高坂からスポドリを受け取ったときだった。

「翼さん。私と試合やりませんか?」
「ん?。あ、咲先輩」
「いかがですか?」
「まぁ、いいですよ」
「良かった・・・。それじゃあ勝った時の罰ゲーム、考えといてくださいね」
「え?罰ゲームありでやるんですか?」
「もちろんですよ」

先輩がそういうのをやるなんて、なんか意外だった。
罰ゲームかぁ。何にしようかな?
高坂と同じく、飲み物を買ってきてもらうのがいいと思うけど
いじめられている人をパシリのように扱うのも気が引けるし・・・。
      • どうしよう?


447 :風の声 第12話「風の困惑」:2011/11/11(金) 16:08:27 ID:MOUoAHvI
審判をやっている高坂の「ラブオールプレイ!」というコールで始まった試合も
数分たって終盤を迎えていた。
『女子に負けたくない』という焦りからか、アウトやネットを連続でやってしまい
気づけば19-20と先輩のマッチポイントだった。

「頑張らないと負けちゃいますよ?」
「ハァ、ハァ・・・わかってますよ」

余裕の表情の先輩と息切れ状態の俺。
それでも、ここで点を取ればジュースに持ち越せる。
そう思うとやる気が俄然と出てきた。
先輩からのサーブをスマッシュで決めて早く終わらせたかったが
ネットを恐れ、クリアで返す。
シャトルは先輩のいる逆方向に向かって行く。しかし、先輩は簡単に追いつき、
フォームを構えていた。力を溜めている感じからして、おそらくスマッシュ。
そう思った俺は、コートの後方に移動し、スマッシュに備えた。
そして、シャトルが先輩の打点に入ったときだった。
ラケットのヘッドスピードが・・・遅い。
先輩が打ったショットはネット際に落とす“ドロップ”。
俺は先輩のフォームがフェイントだったことにまったく気づかなかった。
スマッシュが来ると思っていた俺の体は簡単に動いてくれない。
それでも俺は気合で体を動かしシャトルに向かって飛び込んだ!
伸ばしたラケットは何とかシャトルに届き、俺は思いっきり打ち上げた!
しかし、このショットが負けへと繋がってしまった。
打ち上げたシャトルは高く上がったもののコート奥へ行かずネット際に落ちて行った。
このチャンスボールを先輩は逃さなかった。
先輩は助走をつけ、そしてシャトルに向かって・・・跳んだ。

「そういえば言い忘れてましたね。罰ゲームの内容。
 罰ゲームは・・・・・・









                “翼は今日から私だけの物”です」
「・・・え?」

困惑している俺をよそに先輩はジャンプスマッシュを打ってきた。
先輩の全てのパワーが乗った高速のシャトルは
立ち上がった俺の額へと向かってきて、そして・・・・・・・。


448 :風の声 第13話「風の困惑」:2011/11/11(金) 16:09:18 ID:MOUoAHvI
何度目だろう?この場所に来るのは。
目を覚ましたのは一番来たくない場所。・・・・・保健室。
ベッドの周りのカーテンで室内の方は見えないが静かさからして誰もいないようだ。
額に手を当てると少し痛かった。ヘアバンを巻いていなかったら・・・考えたくない。
そのときすぐそばから小さい風を感じた。
向いてみると・・・・咲先輩の顔がドアップ。感じた風は先輩の吐息みたいだ。

「!?!」

1つのベッドに男女が・・・あたふたしていると先輩がおきてしまった。
とりあえず起き上がり、ベッドそばにあったヘアバンとリストバンドを装着し
傷を見られないようにした。

「おはよう・・・つばさ」

そう言い終えると先輩は、いきなり俺に覆いかぶさってきた。

「ちょっ、先輩!何する・・・んんっ!?」

口に感じたのは先輩の柔らかい唇の感触。そう思ってたのも束の間。
俺の唇のわずかな隙間から、何か生暖かいものが口内へと侵入してきた。
先輩の舌だと理解するには時間がかかった。
いつもの先輩の性格からして、この行動はありえない物だったからだ。
先輩の舌は俺の口内を暴れて、這いずり回り。
先輩自身も俺を貪る様に顔を動かしていた。
『ピチャ、ピチャ、クチュ、ジュル』と卑猥な音が脳裏に響いてくる。
口を離そうにも先輩が俺の首に両腕を回しガッチリ、ホールドしていた。
数分たったとき、ようやく口を離してくれた。唾液の糸を引きながら。
まだ混乱している頭をフル稼働させて言葉をつむぎ出す事ができた。

「せ、せんぱい・・・な、何を」
「なにって、キスですよ。ふか~いふか~い大人の・キ・ス」

笑みを浮かべながら話す先輩に悪寒を抱いた。

「言いましたよね、罰ゲームの内容。“翼は今日から私だけの物”。
 私だけの物なのだから、私が何をしようと良い訳です」
「ちょ、ちょっと待ってください。罰ゲームに恋愛関係を持ち出すのは「罪に
 ならなければ何だっていいのですよねぇ?。これは罪じゃない、“愛”ですよ」」

目の前にいるのは咲先輩なのだろうか?性格が変わりすぎている。

「フフッ、今ここには誰もいません。最後までやりましょう・・・」
「最後までって・・・」
「再確認しないでください。ベッドの上で若い男女が
 やる事と言えば1つしかありません」
「だ、駄目ですよ!そんなこと「口答えしないでください」」

その瞬間、先輩が俺の首に手をかけてきた。ギリギリという音が聞こえる。
「あなたは私だけの物なんですよ?口答えしないで私の愛を受け続ければいいのです」

その後、目覚めてすぐだからという理由で何とか行為を避けることはできた。
けれども、その日は最終下校時刻までベッドの中で先輩の抱擁を受け続ける事となった

「死ぬまでずっと一緒です。誰にも邪魔させません。フフッ、アハハッハハッハハハ」