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541 :初めから ◆efIDHOaDhc:2011/11/21(月) 22:09:56 ID:NGD2bxnY

「重秀!咲ちゃんが来てるわよー!」

あんた女の子取っ替え引っ替えしてるんじゃないわよね?
と、若干ドスの効いた声で母が呼んで居る。最近は咲や委員長に歳久
その前は凜子にさやか、翔太等が俺の迎えに来てくれていた。

その中で女子の比率が高い事に母は何か邪な考えでもしたのだろう。
中学生二年生の現在。ついにモテるモテないの差が本格的に出始めた。
そんな中で、俺の立ち位置はモテない男組である。そんな奴が母の言うような
器用な真似を出来るはずもないのに…

「咲…別に迎えに来なくていいんだぞ?」

ここ最近咲とは急激に仲が良くなった。中学一年のあの日以来どうにも彼女は
俺を意図的に避けているきらいがあった。それが進級を期に、クラスが別になった途端
彼女の方から俺に良く接触するようになってきた。
私の勝手だから――そうは言う咲の姿は仕草から喋り方まで本当に『あいつ』そっくりだ。

「おいこら重秀ぇ!俺のエロ本返せ!」

「うるっせぇ!今言う事か!」

登校途中後ろから後頭部をはたかれる。
朝っぱらから遠慮のない奴だ。女の前でそうゆうこと言うからモテねぇんだよ!、と
そんな事を言いつつ学校へ向かう。この歳久もまた一年経って何か変わるかと
思ったが、別にそんなことはなく以前同様子供のままだ。まぁ性欲の方は
中学生男子らしく強いようだが。




「最近私物がなくなるんだが…」

昼休み。教室でパンを食いつつ最近の悩みごとを話す。
最近妙に物が無くなるのだ。特に体操着は痛い。まだ一着しかないのに取られてしまい、
非常に困っている。他にも筆記用具や、いつのまにか消えていたハンカチ、
はては洗濯しようとしていた下着まで消えおおせた。

被害はこれらだけではなく、枕に毛布、靴、靴下。
明らかに失くしようのない物まで無くなっている。
これは異常である。

「実は俺もなんだよ…」

歳久も普段の軽薄さはなく、深刻そうな顔で頷いた。
どうにも被害に遭っているのは俺達だけのようで
他の男子に被害はない。

歳久もまた、学校だけだはなく家でもいろいろ無くなっている
らしい。互いに学校だけではなく家庭でも無くなるのだ。
明らかにおかしい。

全く、男の私物を盗んで何が楽しいんだ?女子の体操着や
ハンカチ、靴下でハァハァは分かる。俺も無性にしたくなる時が
あるから。だが、男子だぞ?汗臭い男だぞ?

一度冗談で凜子やさやかのリコーダーを目の前で嘗め回して
やったがそれは女だからであって、男の物に対してそんな
下劣な感情は抱かないだろう。

それにそんな事をされれば、誰だって怒る。あの時は普段は怒らない
凜子が顔を真っ赤にし、いつもなら突っ込んでくるさやかも凜子同様
顔を赤くするだけで何もしてこないのだ。ただ、見てるだけ。
それだけで彼女らが、どれほど怒っていたか分かる。

犯人を許すつもりはない。もしも女の子が勢い余ってやってしまった
というのならバッチコイだが

男だったら――俺たちの貞操の為にもどうにかしないといけない。

それと何か?『中学生男子最高だよ~』なんてオカマ声で喋りながら
筋肉ムキムキの青髭が俺の私物でハァハァしているというのか?
冗談ではないぞ!!

歳久も俺と同じ考えに至ったの若干キレ気味の表情になっている。

「委員長…俺たち如何したら?」

「わ、私じゃないわよ!」

歳久の言葉に傍で聞き耳を立てて居た委員長は、何を勘違いでもしたのか
若干焦った顔で頓珍漢な事を言っている。休み時間は咲の指定席となっている隅の机。
そこに座っている咲は相変わらず無表情だったが。

咲はあの一件以来積極的に人と話すようになっていた。無言が消え
残ったのは無表情だが、それでも大きな変化だ。良く喋るように
なってからというもの咲の男子からの人気は高い。
彼女のクールな感じに惹かれでもしたのだろう。昨日も三組の
和田が告白したとかいう話だ。

そんな咲は俺達を普段どうり汚物でも見るような鋭い目つきで口を開く。

「放課後――残ってみたら?」


542 :初めから ◆efIDHOaDhc:2011/11/21(月) 22:10:43 ID:NGD2bxnY

「おい、もっと詰めろって」

「限界だよ、バーロッ!」

日も落ち始めだんだんと暗くなり始めた教室。隠れる場所がないからと男二人で教室
の用具入れに張り込みをすることになった。歳久は体は小柄なので問題はないが
それでも汗臭い男と密室でべたつくなど気持ちの良い物ではない。

「くそっ!お前が女ならいいのにっ!」

俺の嘘偽りのない本心を言ってみたものの歳久の反応がない。静かにしてみると、少しづつ
足音が近づいてくる。その足音は教室の前あたりで止まった。互いに緊張感が走り、俺の
汗が下にいる歳久にかかる。

「うわっ汚っね」

小声で何か言ってるようだが気にしない。そんな事よりも足音の主は教室のドアを開け
静かに入ってくる。侵入者は背が小さいのか、全体を把握できない。しかし、おおよそ
ではあるが雰囲気は掴める。髪は肩まで届くほど長く細い印象を受ける。あれは…恐らく
女の子っ!

そんな無駄にテンションを上げつつ、不審者を観察する。少女は歳久の机まで行くとそこで止まる。
机の物色から始まり、洗ってもいなさそうな歳久の運動靴に顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
ここから伺い知れる限りでは顔を赤く染め、息は荒く、なんかハァハァ言ってる。

「お兄ちゃん…」



「で、犯人は妹だったわけだが」

俺の言葉をちゃんと聞いているのか歳久は頭を抱えてうずくまっている。
さっきからぶつぶつ何か言っており、よほど堪えたようだ。
じっさい妹が居たとして俺があんな目にあったらどうだろう?

「最高だなっ!」

「ぶっとばすぞ!」

突っ掛ってくる歳久をあしらいつつ思う。結局俺の物を盗んでいるのは誰だ?

――――――――――――――――――――――――――――――――

ボコボコにしてやった歳久を肩に抱え家まで送る。普段ならここまで
一方的になりはしないのだが、やはり今日の精神状態では無理があるようだ。
先に帰ってきていた歳久の妹は、ボロクズになった兄を冷めた目で見ていた。
恐らく人前や兄の前では、冷たい妹を演じているのだろう。
あまり長く居すぎると嫌な予感がするので早く帰ることにする。

帰りの駅前、交差点から良く見える街頭ディスプレイに良く知った顔が
写っていた。

「翔太の奴頑張っているな…」

あいつは、結局しつこいスカウトを断りきれずアイドルデビュー。それから
わずか一年で結構名の知れるアイドルになっていた。元々高い歌唱力を
持っていたのでアイドルと云うより、半ば歌手のような状態だ。

クラスの女子達の間でも中々人気があるようで、この調子でいけば二年後には
バラエティー番組や、お昼のワイドショーなどでも話題になるだろう。
俺の事でもないのに、妙にうれしい。『以前』の人生では芸能人の知り合い
なんて居なかったのも手伝っているのだろう。
だが、それ以上に驚いた事が一つ――

「凜子ちゃんは翔太君と仲が良いと聞いたけど、実際どうなの?」

テレビの向こうでは、リポーターの下世話な質問に顔を顰めながら、何かを言おうと
している凜子の姿があった。驚いた事に、翔太のスカウトに来ていた芸能事務所が
翔太と一緒に居る可愛い女の子に気づいたのだ。翔太からのメールに依れば、凜子
だけでなく一緒に居たさやかも誘われていたらしく、あいつは持前の勝気さでそれを
退けたが、凜子はそうもいかなかったそうだ。


543 :初めから ◆efIDHOaDhc:2011/11/21(月) 22:11:58 ID:NGD2bxnY

「彼とは…友達なだけですよ?」

困ったことに、凜子は容姿も性格もよくあれで結構器用なのだ。おまけに歌まで
上手いと来ればブレイクしない訳がない。そのままトントン拍子でスターダムに
のし上がっていた。おまけに翔太とよく一緒に居たのが悪かったのか、その辺りを
週刊誌にも取り上げられている。

テレビでは、凜子の答えにも納得がいかないのか、リポーターはしつこく食らいつく。
こんな調子ではあるが、凜子の人気は高まるばかり。以前のクラスメイト達のメール
もこの話ばかりだ。

「しかし、寂しいな…」

俺として見れば、小さい頃から面倒を見ていた子供が、いきなり手の届かない所に
行ったような気がする。実際、翔太はともかく凜子と会うのは控えた方が良いだろう。
小うるさい週刊誌に会っている所でも撮られれば一大事だ。
仕事の都合もあるだろうから、メールも控えたほうがいいな…

そんな事をボケッと考えていたのが悪かったのか、ドスッとぶつかってしまった。

「大丈夫です…ゕ?」

目に入った金髪に思わずたじろぐ、外国人ともめると非常に厄介だ。
そう思ってよく見ると、成城の制服を着た非常に綺麗な少女がそこには居た。
髪は結構長く綺麗な青い瞳は、町の光に当てられて曇りのない蒼穹の空を
見ているようだった。

一方の彼女も俺を見て固まっていた。良く見ればこの子は、成城の金色
ではないだろうか?確かにこんな綺麗な子、天使か妖精か、そう思いたくもなる。
倒れている少女に手を貸し、立ち上げる。彼女は緊張でも取れたのか先ほどとは
打って変わって冷たい印象を持った表情になる。

「ありがとうございます」

流暢な日本語だ。以前考えていた通り、恐らく帰化した外国人なのだろう。
そんな彼女は、固い表情ながら体を震わせており若干怖い。気に障るような事を
したのだろうか?そんな事を考えていたら少女は携帯を取り出してきた。

「アドレス…交換しませんか?」



「ふぅ…びっくりした~」

彼女――アーニャとは、少し話し込んでしまった。彼女は思った以上に良く喋る子で
学校から年齢、名前や趣味などドンドン聞いてくる。無表情でこちらに顔を近づけて
来たりと、中々ヒヤヒヤした。なんでも友達があんまりいないらしく、これを期に
友達になってくれとの事だ。少し突飛な気がするが、これぐらいが友達を作るには
良いのだろう。そう思って了承したが、内心ビクビクしていた。

「しかし…まさか許してくれるとは…」

落ち込んでいるだろう歳久の為に、ダメもとで写真を撮っていいかと聞いてみたら
彼女は迷いなく頷いてくれた。普通この手の写真は嫌われるものだが。
そんな事を考えつつ家に急ぐ、夕飯には間に合わないかもしれない。

「あの女…」

風に乗って誰かの声が聞こえた…