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845 :手紙:2012/01/16(月) 05:56:29 ID:rHmqrhJQ
ところで、小村雄介君を覚えていますか。
小村君はこの田舎の町に多分戻ってきません。
彼は都会で1人の女性と出会ったのです。
お相手は私の親戚の御嬢さんで、昨年、大学を卒業しました。
小村君と彼女は周囲の反対をうけ、駆け落ちともとれる失踪をしてしまったのです。
ですが、私にはそう思えません。
小村君からの最後の便りを紹介する前に出会いからの今までの流れをさらりと記してみます。

私たちが高校を卒業した時、君は工業大学に進み、私と小村君は都会の大学に進学しましたね。
小村君と私は新入生歓迎会でとても美しい女性を見かけ、声を掛けたのですが彼女は振り向いてもくれませんでした。
そんなありさまだったものですから、私と小村君はあきらめていました。
その会の三日後小村君は彼女と下宿部屋のカギを探し、日が落ちた頃部屋に帰ってきました。
なぜそのようなことになったのか私も詳しくは分かりません。
そこで分かったのは、彼女が極度の照れ屋で大勢の前でしゃべれないことと、ある一定の距離に入ると饒舌になることでした。
小村君に対して心開いた彼女は小村君に交際を申し込み、交際を始めました。
私の部屋に小村君が帰ってくることも少なくなり、私は内心喜んでいました。


846 :手紙:2012/01/16(月) 05:57:51 ID:rHmqrhJQ
大学三年生になり、小村君が彼女の部屋に引っ越した頃、私は都会に住む伯母の下で働いていました。
そこで彼女が従妹であることを知ったのです。
この頃になると彼女は小村君に対し、依存のような情を抱いておりました。
小村君と二人で出かけることもままならぬほど情緒も不安定でした。
それからです、結婚の話が持ち上がったのであります。小村君はあまり乗り気ではありませんでした。
小村君は卒業の後、幹部候補生学校に入校し幹部自衛官を目指していたからです。
自衛官となってしまうと彼女を一人にする時間が増え、精神的に不安定にしてしまうからです。
そうなる前に彼は彼女の新しい依存先を作ってやろうとしましたが、私を含む他の誰にも靡かず、
ただ小村君を追い続けていました。私はそんな二人の有様をただ見ているだけだったのです。
大学卒業後、私は小さな電気器具製造会社に入社し、小村君は希望通り幹部候補生学校に入校し、卒業しました。
そこで再び結婚の話が持ち上がりましたが、今度は彼女の両親が反対しました。
小村君が自衛官であるというのが気に入らなかったようで、彼女は実家に連れ戻されてしまいました。
そして先月、自衛隊から外出中の小村君が失踪したとの電話が入りました。
そのころ、彼女も姿を消してしまったようで伯母さんが訪ねてきました。
彼女は駆け落ちすると書き残し、部屋から忽然と姿を消してしまったようなのです。
小村君は脱柵扱いとなり、今更戻ったところで処分は免れないでしょう。
私には小村君が望んで駆け落ちしたとは思えません。
彼は最後の便りに営内生活の様々な事、将来への希望を書き綴っていたのです。
そして最後の一行が私の心に残るのです。
「俺はお前に面倒を掛けるだろう、彼女は諦めない。」
おそらく、彼はどこか遠くで彼女と暮らしているでしょう。

19日の同窓会、私は参加できそうもありません。
それでは、お体に気を付けて。さようなら。