709 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/02/25(月) 00:41:03 ID:zqTZeBFc
他愛の無い挨拶を交わしながら教室へ入る。今日も実に爽やかな朝だ。
悪友どもは相変わらずバカな遊びや会話で盛り上がっているし、
隣の席の香奈は可愛いし幼なじみの茉莉のツンデレっぷりも最高だ。
「お前もカラオケ来るか?」
「茉莉と香奈も来るから来いよ」
「そうだな、弥生さんも来るなら行くよ」
心の底に秘めた悪意を隠して翔と啓太の誘いに乗った。
笑顔に黒い思いを出さないように注意する。
「弥生?おい茉莉、誘ってくれよ」
「なっなんで私が!?」
「だってあの人話し掛けにくいじゃん。頼む」
茉莉に誘わすなんて。無意識の翔のアシストに溢れる笑みを隠しきれない。
「僕からも頼むよ、茉莉。お前しか頼めないんだから」
「……仕方ないなぁ」
「ん、ありがとう」
しぶしぶ承諾した茉莉の頭をわしゃわしゃと音を立てて撫でる。
「あ~頭触ってる~」
香奈がすかさずうらやむような声ではやし立てた。
わざわざ音を立てる必要は無かったようだ。こんなことなら
茉莉の機嫌を損ねる覚悟でぐしゃぐしゃにしなくとも良かったのに。
「香奈ちゃんにもやったげるよ」
「ちょっと髪型崩れたんですけど!しかも香奈には優しくするんだ」
本当に。
本当にこいつらは素晴らしい。
わざわざ実況してくれるなんて。
「お前は本当にモテていいよな」
啓太の軽口と同時にチャイムが鳴り、僕らは各々の自席に散った。
担任の須田先生はこれでもかという程の典型的「厳しい女教師」だ。
黒髪縁メガネの32才にみっちり怒られたくは無い。
着席して教室を眺める。弥生だけ他クラスになったのは幸か不幸か。
少なくとも彼女を追い詰めた点では僕にとっては幸なのだろう。
見ていて実に楽しい。
襟の後ろに手をやると今日もしっかりついていた。
先程の会話を弥生に聞かせていただろう盗聴器。
いいよ、もっと狂え。
僕は楽しくて楽しくて笑みが溢れるのを止められ無かった。
最終更新:2008年08月30日 00:03