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259 :ふたり第7話 ◆Unk9Ig/2Aw:2012/11/29(木) 07:30:08 ID:LN7/7c/6 第7話



・・・いや、待て。よく考えてもみろ、本条さんや米沢にもデリカシーってもんが絶対あるはずだ。
いくら仲が悪いからって病人の前で喧嘩なんてするわけがない。そう信じよう。
ふたりは見つめあったまま微動だにしない。俺はハラハラした気持ちでそれを見守っていた。
しばしの沈黙。それを最初に破ったのは米沢だった。

「なんで・・・本条さんが、池上の家にいるの?ねえなんで池上?」
「え・・・なんでって・・・。」

看病しに来たから。と言おうと思ったけどあまりの米沢の迫力に口ごもってしまう。
・・・怖い。いままで米沢の怒った顔は何度か見たことがあるが、今の米沢はそれとは比較にならんほど怖い顔をしている。

「察しが悪いのね、米沢さん。病気の人がいたら看病しに来るのは当然のことでしょう?」
「あんたには聞いてない。池上!答えてよ。」
「米沢さん、池上君は病人なのよ?それなのにギャーギャー騒いだら治るものも治らなくなるわよ。」

なんだか怪しい雲行き。本条さんは米沢とは対照的に余裕たっぷりな感じだ。
米沢の威圧感を前に薄い笑みさえ口元にたたえている。
でも、気のせいだろうか、その笑みは俺には少し恐ろしく見えた気がした。

「まあいいわ、私が買い物行ってて留守中だった間の看病、ご苦労だったわね。もう帰っていいわよ、本条さん?」
「あら、あなたこそ!私が池上君を看病するために必要なものを買ってきてくれて御苦労さま。もう帰んなさい?」

260 :ふたり第7話 ◆Unk9Ig/2Aw:2012/11/29(木) 07:30:46 ID:LN7/7c/6 二人とも何かをしゃべっている。でも耳鳴りがさっきよりも相当強くなってきたので何を喋っているかうまく聞き取れない。
でも喧嘩しているということはわかる。・・・止めなくちゃ。
俺は一旦ベッドから立ち上がって二人を止めようとした。
でも視界はぐらぐら、頭はガンガン、耳元はキンキンだ。そんな状態で立ちあがっても足に力が入らない。

「あっ!池上!無理しちゃだめ!」
「池上君!」

ふたりが俺を呼んでいる。心配掛けないように応対しなきゃ・・・。
ふらふらと右手を挙げて答えようとしたが、右手は挙げられなかった。
そのまま両足から力が抜けて、がくりとその場に倒れこんだ。そしてそこから俺の意識はブラックアウトした・・・。



再び目を覚ました時にはすでに夜になっていた。
目の前には姉ちゃんの心配そうな顔があった。

「あっ、目を覚ましたのね哲也。あーよかった。全然目を覚まさないから死んだのかと思ったわ。」
「そんな大げさな・・・。」


いつの間にか来ている服も着替えさせられているし、汗も拭き取られていたようだ。
枕元にはポカリスエットのペットボトルが置いてある。多分、米沢が買ってきてくれたものだろう。
なんだかんだできちんと俺の看病をしてくれていたのだなと、感心してしまった。失礼な話だが。
姉ちゃんも普段は俺に無関心でもやっぱり俺のことを心配してくれているんだと知り、普段疎ましく思っていたことを反省することにした。
少し起き上がるとさっきよりも気分は良くなっていた。
耳鳴りもないし目眩もない。頭痛は少しするがさっきほどではない。

261 :ふたり第7話 ◆Unk9Ig/2Aw:2012/11/29(木) 07:31:28 ID:LN7/7c/6 温度計で熱を測ってみると37度1分とだいぶ熱も下がったようだった。
ほっと一安心するとひどく空腹であることに気がついた。よく考えると今日は昼飯食べてないからなあ。

「姉ちゃん、俺腹減ったからなんか食べるものくれ~。」
「そういうと思ってもう用意してあるわよ。ほら、うどん。」

そう言って姉ちゃんは器に盛られた温かいうどんをベッドの横にあるテーブルに置いた。
さすが俺の姉。俺が食いたいものを分かっていらっしゃる。
うどんのスープからいい香りが漂ってきて、俺の食欲を刺激する。
一口うどんをすすると、また程よいゆで加減でちゅるちゅると喉を通って行く。

「このうどん、うまいなあ。姉ちゃんってこんな料理うまかったっけ?」
「何言ってんの。そのうどん作ったの私じゃないわよ。」
「えっ?」
「そこの机にうどんの入ったお鍋が蓋をして置いてあったのよ。私が帰ってきたときにはもう冷めちゃってたけど。私はそれを温めなおしただけよ。アンタを看病しに来たって言う女のコが作ってくれたんじゃない?」

じゃあこれを作ってくれたのは米沢か本条さんだな。
俺が倒れた後もきちんと看病をしてくれて、しかもうどんまで作ってくれたのだ。ふたりにはちゃんとお礼しなければなるまい。
俺がうどんを食うのを見て姉ちゃんはやけにニヤニヤしていたが気にせず俺はうどんを黙々と食べ続けた。

「あんたなんかのために貴重な日曜日を犠牲にしてまで看病してくれた女の子にはちゃんとお礼言っとくのよ?」

少し言い方が引っ掛かるが、お礼しなけりゃいけないことは言われなくても分かっている。
俺はふたりに感謝しつつうどんを完食した。



私の弟はうどんを食べ終わるなり、そのまま寝てしまった。
あまりにも間抜けな顔で寝ているから私は少し不安になってくる。
このアホ弟は絵里ちゃんだけじゃなく、愛理ちゃんにも好かれているということに気がつかないのだろうか・・・。
この弟の一体なにがお気に召したのか知らないが、愛理ちゃんも絵里ちゃんに負けないくらいこいつが好きみたいだ。
普通女の子が看病しに家にやってきたら、すこしは自分に気があるのかなとか思うものなのにこいつは一体何をやってんだろう・・・。
さっさとどちらかに決めないと痛い目見るわよ。分かってるの?
私は幸せそうに眠る弟に、ふとんをかけなおしてやった後、部屋から出て行った。