※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

505 名前:二回目だから勘弁してね[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 08:09:15 ID:3k1ZX.M. [2/7]
ええ、みなさまお久しぶりでございます!
ついに帰ってきましたよ、この私が!
え?お前だれだよ、ですって?
ほら、私ですよ、私!以前お会いしたじゃあないですか!
霊を見ることが出来る田中(仮)ですよ、た・な・か(か・り)!!
え、あ、落ち着けって?すいません、ちょっと興奮気味で……。

えー…ゴホン、前の去り際に『またどこかで会いましょう』と言い残してここを後にしたのを皆さんは憶えているでしょうか?
私は、言ったことは実行するデキる女ですからねっ!(本当は、シリーズ化したらどうかってコメントがあったからなんだけど……。)
まあ、どちらにせよ私にスポットライトが当たったことには変わりありませんよね!?
というわけで、まずは私の若い頃の話から………
…え、どうでもいいし、前置きが長いって?
す、すいません…、ちゃんと真面目にやりますから……。

 ところでみなさんは身の回りの物にも霊がいるのを知っていますか?
例えば、『伝説の妖刀』や『呪いの盾』といった曰くつきの品なんかには使用した者や犠牲となった者の怨念が宿るといわれています…。
それと同様に、どんな物にでも霊がついているんですよ?
今回はそんな霊を見ていきましょう!都合よくあそこにいるのが見えますしね…。(言い忘れてましたけど、私に見えるのはどうやら修羅場だけじゃないようです。)

506 名前:二回目だから勘弁してね[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 08:10:16 ID:3k1ZX.M. [3/7]
私は、彼と出会った12年前のあの時のことをはっきりと憶えている…。
12月24日、人々がクリスマスと呼び、町が幸せな雰囲気に包まれていたその日のことだった。
町のしがない店で中古の自転車として売られていたのが私。
前の持ち主は買い物かごが壊れたというだけで、まだまだ使えたというのに新しい自転車を買い、私をこの店に売り払ったのだ…。
所詮、人間という生き物は古い物から新しい物へ乗り換えようとするくだらない生き物なのだ。
自分はこのまま、誰にも触れられずに廃れていくのだろう……。

完全に未来をあきらめかけていたその時、子供連れの3人家族が店内に入ってきた。
クリスマスの夜、赤い服を着て白髭を生やした、サンタクロースという老人がその年に良い行いをした人間の子供たちにプレゼントをするというのは、物である私でも知っていた。
実際は、それを口実に親が買っているということも……。
あらかた、自分の息子に新しい自転車を買ってやろうとしてるのだろう。
まあ、古い私には関係のない話だが…。
だが、両親が子供サイズの置いてあるコーナーへと向かおうとすると、少年が私を見つけると真っ先に指さして言った

「おとうさん、おかあさん!ぼく、これがほしいな!!」

彼の両親は息子の選んだものを見て驚いていたが、無理もない。
当事者である私のそれは、彼らをはるかに凌駕していたからな……。

「おいおい転太、こんなのがいいのか?中古だし、他にもかっこいのはあるんだぞ?」

「そうよ、サイズも大きすぎるし……。別に遠慮しなくてもいいのよ、初めての自転車なんだから…。」

言いたい放題言われていたが、もし私が人間で彼らの立場だったら、同じことを言ったに違いない。
だが、少年……転太は何と言われようとも、決して私以外を選ぼうとはしなかった。
あまりにもかたくなな彼の態度に折れた両親は、私を買うことを了承したようだ…。
その時の彼の喜びようと言ったら……ふふっ、思い出すだけでこっちが恥ずかしくなるようなものだった。
今思えば本当に愚かだったが、その頃の私には前の持ち主の影響か、人間を信用できなくなっていたのだ。
(こいつも所詮、あいつと一緒だ。親に迷惑をかけないように安い私を選んだはず。
 雑に扱い続けて壊れたら、すぐに捨てるに決まっている…。)

507 名前:二回目だから勘弁してね[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 08:11:24 ID:3k1ZX.M. [4/7]
 文字通り彼の所有物になってから数週間、転太は私と毎日一緒だった。
彼はまだ小学生になったばかりで私を使うには体も小さかったし、何より経験不足だった……。
学校から帰ってきては公園に行き、必死に乗りこなそうと練習を続ける彼
まともにまたがることもできず、転んだり倒れたりを繰り返す彼
それでいて自分の怪我のことも放って、私の体に傷がついてないかどうかを確認する彼
休みの日には不器用ながら、さび止めやタイヤに空気を入れることを欠かさなった彼
そんな彼の姿に、私のすさんだ心はまるで、枯れた花が水をやって再び咲きほこるようにやわらいでいき、同時に惹かれていった…。
そして――

「や、やった!こげてるよ!ぼく、うんてんできるようになったんだあああっ!!」

ついに乗れるようになった時、私は転太と共に喜んだ。
たとえ伝わらないと分かってはいても、彼と同じ喜びを感じることができたのはとても嬉しかった。
小学校を卒業後、中学と高校が遠くに位置してあったおかげで、私は転太とほぼ毎日一緒にいることができた。
そんなある日、通学を共にしていた人間の女が私を見てつぶやいた…

「ねえ、あんたさ。そろそろ乗り換えない、その自転車?」

「え、なんでさ?」

「だってあんたの身長にあってないじゃない、それ。
 それにいつも思ってたんだけど、なんか古くさいし、かご使えないから大変でしょ?」

この女……、私を彼から引き離そうというのか…!?
物を見た目でしか判断できないやつが、私は1番嫌いだ。
でも、彼が大事に使い続けてくれたのにもかかわらず、私の体はこいつの言うとおり、ぼろぼろでブレーキが片方イカれかかっているのも間違いではなかった…。
――――転太が私を捨てる?―――
ありもしない未来を想像した瞬間、体中に悪寒が走った…!

「ああ、そういえば言ってなかったっけ?これ、俺が6歳の頃に初めて買ったやつでさ、もともとかごは壊れてたんだよ。」

「何それ、小学生の時からずっと使ってんの!?てか初めての自転車が中古って…、あんたの親ひどくない?」

「いやいや、ウソと思うかもしれないけど、選んだのは俺なんだ。」

「…子供の頃から親の懐のこと考えてたなんて、普通じゃないと思うのはあたしだけかな?」

「そういう訳じゃないってば!なんか買いに行った店でこいつを見たときさ…、子供ながらに感じたんだよね。誰かに乗ってほしいんだろうなって…。そしたらすっごく乗りたくなって無我夢中だったよ、あの時は。」

「その、あの、もしかしてあんた危ない人間なんじゃ……。」

「ちげーよ、勘違いすんな!!」

――やっぱり。
やっぱり、転太はこいつらとは違うんだ…。
初めて会ったあの時から、自分でも分からなかった私の本当の気持ちに気付いてくれていた、たった一人の人間。
こんなおんぼろな私でも見捨てないで使い続けてくれる優しい転太。
あなたになら壊されてもかまわない。
だから、一瞬でもあなたを疑った私をどうか許してね?
その時私は、道具として使われることに至上の喜びを感じていた。

508 名前:二回目だから勘弁してね[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 08:12:19 ID:3k1ZX.M. [5/7]
 しかし、大学に無事合格してから彼は変わってしまった…。
最初はわずかな変化だったけれど、出かけるときに私を使うことが少なくなった。
大学が遠くに位置しているために、近くの駅から電車を利用しなければならないことは知っていたから、我慢はできた。
問題は、休みの日に彼が大学ではない学校に通っていることだった…。
そして通う日数が長くなるにつれて、彼が私に乗ることに満足できなくなっていくことが彼の私を握る手から感じ取れた。
こんなこと今まで一度としてなかったのに…いったい、彼の身に何が?
翌日、答えを知るべくしてその学校の名前を確認してあの時と……捨てられると想像した時と同じ衝動が私の中をはしった。


     ○   ○   自   動   車   教   習   所   ?


―――彼が、いや、まさかそんなはず……。
信じたくない、信じたくないよこんなの…!何かの間違いに決まってる!!
心のどこかでは気付いていたんだ…、もう子供じゃない彼にとって車に乗ることはなにもおかしくないことなのだから……。
それでも彼なら、彼なら私を裏切らないと思い続けてきたというのに。

いやだ、いやだよ捨てないで転太!まだ壊れてないよ私はやっとあなたの身長にあってきたじゃないかブレーキが弱いなら全部付け替えていい遅いならいらないパーツ全部取っ払ってかるくしてもいいいたくてもがまんするからあなたいがいのやつらにのられるなんてたえられないじどうしゃなんかにのらないでわたしにのりつづけておねがいだからすてないですてないでくださいおねがいします!!!

どんなに祈り続けても、彼にこの思いが伝わることは決してなかった…。

 そして今にもどる。
あと数週間で免許を手に入れてしまうだろう彼はとても幸せそうで、私を初めて乗りこなした時と同じような笑顔をしている。
もう彼の心は私のもとにはない、私の物になることはこの先絶対にない…。
どうすれば、どうすれば捨てられずに一緒にい続けられるのだろうか?
そして坂道にさしかかったところで、響いてきたある電子音…
―――カン……カン…カンカン…カン――

これは……電車の踏切の…?
その瞬間、思いついてしまったのはあまりにも残酷な思考。
多分、この音は悪魔のささやきなのだろう。
にもかかわらず、私はまるで欲しかったおもちゃを手に入れた赤ん坊のような気持になった…。

  そ   う   だ  、  こ   う   す   れ   ば   よ   か   っ   た   ん   だ

すでに使い物にならなくなる寸前のブレーキに圧力を加えて、かからないようにしておく。
想いの強くなった今の私にはたやすいことだった。
ついでに…

「~~♪ん、あれ?なんか足が勝手に……?」

そういえば、最初の頃は足が地面に届かなかったよね?

「う、嘘だろ!?手まで…なんで離れないんだよ!!」

運転するにはふんばらなきゃって、痛い程ハンドルを握ってくれたよね?

「ふざけんなよ!動け、速く動いてくれよ俺の身体!!」

私はもうあなたの物になったんだから……

「う、うわあああぁぁあぁぁああ!!!」

あなたも私の物だよね?―――

509 名前:二回目だから勘弁してね[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 08:13:12 ID:3k1ZX.M. [6/7]
 いやー、すごいことになりましたね。
ほらほら、たくさんの野次馬がやってきましたよ?
ん、何解説してるんだ、そんな暇があったら早く助けろ、お前は誰の味方なんだ、ですって?
愚問ですなあ、隊長。
私は『私』の味方ですよ?
と、冗談はさておき、そうですね助けようと思えば間に合ったかもしれませんね。
でも、私にはそんな真似はできませんよ。
だって、あのこは自分の命を落としてまで、あの男性の心を自分のもとに留めようとしてましたから。
あの時の“あの子”と同じように……
あ、すいません。話がそれちゃいましたね。
では、機会があったらまたどこかで……。