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519 名前:三回目だから堪忍ね[sage] 投稿日:2013/05/12(日) 21:21:23 ID:txwT05i6 [2/7]
えーっと、これはあっちであっちはこれで、ああ忙しい忙しい。
あ、どーも皆さん。
自己紹介は…もう必要ないですよね。
何をそんなに慌ててるんだって?
実はですねぇ、今日一週間ぶりの待ちに待ったお客さんがいらっしゃるんです!
私、この力を何か世のため人のために役立てないかと思いまして、いわゆる霊専門の『何でも屋』のようなものをやってるんですよ。
ただ、あんまりお客さんが来なくて…、この間なんて食費がなくて餓死寸前でしたからね。
それで申し訳ないんですけど、皆さんには構ってられないんです…。
え?私の仕事ぶりを見たい?
ふふっ、皆さんなんだかんだで私のことが知りたくてたまらないんですね、素直じゃないんだから。
ああっ、すいません!そんなつもりはなかったんです、だからその冷たい視線を向けるのをやめてください!

コンコン

おや、どうやら来たみたいですね。

「はあーい、今行きまーす!」

立てつけの悪いドアを開けるとそこには、だいたい小学2、3年生あたりの少年が顔をふせて立っていました。

「いらっしゃいませ、君が昨日電話をくれた優太君かな?」

「あ、あの、えっと……。」

「ああ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ~。ささっ、こちらへどうぞ!」

不安そうな彼を連れてリビングにやってきた私たち。
優太君は、名前通りの優しそうな少年でかざってある仏様やいろいろ貼ってあるお札に驚いています。
もちろん、ただの飾りですけど。
こういうので重要なのは雰囲気ですよ、雰囲気!

「さっそくだけど、優太君はどうしてここに来ようと思ったのか、お姉ちゃんに話してくれないかな?」

「…ここ、幽霊の探偵屋さんなんでしょ。友達の拓哉くんが『ここに来れば何とかしてくれる』って言ってたから…」

「探偵かぁ、あいにく私指から霊力も打てなければ、7人の人格も持ってませんけどね。」

「?お姉ちゃん、何の話してるの?」

「いやいや、優太君は気にしなくていいよ。こっちの話ですから。」

拓哉くん、拓哉くん…ああ、思い出しました!
あれは二か月前、優太君と同い年ぐらいの子がうちに依頼しに来たときで、本当に大変でしたもん。
なんせ、その子に憑りついてたのが20代後半の世間的に“ショタコン”と呼ばれる女性の霊でしたからね…。
『小学生と結婚するまで成仏できない』とか何とか言って、成仏させるのに苦労しましたよ。

「うん、拓哉くんの悩みを解決したのもお姉ちゃんなの。だから、私に任せれば大丈夫!すぐに何とかしてあげるからね。」

「ほ、本当!?実はね……」

520 名前:三回目だから堪忍ね[sage] 投稿日:2013/05/12(日) 21:22:19 ID:txwT05i6 [3/7]
―――数分後―――

ふむふむ、なるほどなるほど。
彼の話をまとめると、ちょうど一か月前あたりから誰かの視線を感じるようになったらしい。
しかも、学校や外でならともかく一人で家にいる時もだそうで、最近になると自分の名前を呼ぶ声が聞こえるようになって、夜には誰かにのしかかられてるような感覚になるそうです。

「誰かに相談はしてみたの?」

「したんだけど…、誰も僕の言うこと信じてくれないんだ。友達も先生もまともに相手してくれないし、お母さんなんて僕を病院に連れて行って精神科っていうところで診せたんだ。
でも、何の異常もないって…。やっぱり僕おかしいのかな?」

言ってて泣き出しそうになる優太君。
うーん、これは急いだほうがよさそうですねえ、彼的にも“彼女”的にも…

「うんうん、そんなことないよ。私はあの世とこの世をつなぐものですからね!どーん、と任せてください!」

「あ、ありがとうお姉ちゃん。それでこれだけしかないんだけど…。」

優太君が取り出したのは、近頃流行のキャラクターの貯金箱で、中から出てきたのは大量の小銭、小銭。
ひい…ふう…みい…って全部合わせて五千円!?
こんなにあったら、私幸せすぎて死んじゃいそうですよ…しかし、

「こんな大金、使ってもいいの?何か欲しい物のために貯めてたんじゃ……。」

「ううん、いいんだ。本当は友達のために我慢してためてたんだけど、またため直すから。
きっとその子も許してくれるよ。」

…いい子ですねえ、本当に。どうりで憑いてくるわけですよ。

「ふふっ、分かりました。それじゃあ、部屋を移しましょうか。」

「え、どうして?」

「それはもちろん、私の霊力を上げて優太君から霊を追い払うためですよ!(嘘ですけどね)」

「や、やっぱりいるんだ…僕の近くに……。」

ああああ、しまった。私としたことが、彼に不安感をつのらせるようなことを…。
て、そんなこと考えてる場合じゃないですね。

「心配しないで、言う通りにすればすぐに終わりますよ。あと、入る前に一つ聞いておきたいことがあるんだけどいいかな?」

「え、なにを?」

私は優太君の上の何もないはずの空間に視線を向けながら、問いました。

――最近、女の子がずっと学校休んでない?――

521 名前:三回目だから堪忍ね[sage] 投稿日:2013/05/12(日) 21:23:48 ID:txwT05i6 [4/7]
―――またまた数分後―――

ふう、だいたい聞きたいことは聞けましたね。
いやあ、優太君とお話しするのが楽しくてついつい長くなっちゃって申し訳ありません。
さて、今度はあなたとお話ししましょうか、“池上桜”ちゃん?

「黙れッ!はやくここから優太を出せ、ババア!!」

ババア…ってまだ私はピッチピチの~~才なんですけど!

皆さんもお気づきの通り、優太君に憑いていたのは“生き霊”と呼ばれる類の霊ですね。
生き霊というのは、普通人は死んだときに肉体から霊が抜けて成仏するか、そのままの状態になるのかですが、彼女のように生きたまま霊となる場合もあるようです。

かの有名な源氏物語の登場人物である、六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)がその例で(霊だけに)光源氏のことが好きでたまらず、妻の葵上をその嫉妬心だけで殺したとされています。
桜ちゃんも同様に優太君のことを愛して、その気持ちが抑えきれずにこうなってしまったんでしょう。

「中で何してたの?なんで中に入れないの?優太は、優太は無事なの?お願いだから早く優太を返して!」

「いっぺんに質問しないで下さいよ…。この部屋はですね、どんな霊も入れないようになってるんです、理由は知りませんが。それと優太君はここから出れませんよ、私がいいと言うまでね。」

「ふざけるな!じゃあ、あんたに憑りついてでもいいって吐かせてやる!」

「いいんですか、そんなことして。私に憑りついたら私が死ぬまで離れることはできませんよ?その間に彼を誰かに取られちゃうかもしれませんね。」

その瞬間、桜ちゃんの顔が青ざめる。
実際、憑りついた後離れようと思えばすぐに離れられるでしょう。
けど、この子が誰にも憑りついたことがないのは今の反応でよくわかりますね。

「…じゃあ、どうすればいいって言ってくれんの?」

「簡単ですよ。優太君についてのクイズに3つのうち1つでも正解したら返してあげます。」

「クイズ…?」

「はい、しかも桜ちゃんが知っていそうな単純な問題ばかりですよ。どうです、受けますか?」

彼女は黙ってうなずいた。
優太君のことなら何でも知っているとでも言いたそうな顔で。

522 名前:三回目だから堪忍ね[sage] 投稿日:2013/05/12(日) 21:24:34 ID:txwT05i6 [5/7]
「では、第一問。優太君の夢ってなあんだ?」

「なに、そんな簡単な質問でいいの。答えは弁護士でしょ。馬鹿みたいにいっつも口にしてるんだもん。」

まるで我が事のように答える桜ちゃん。
自分の解答が間違えているはずがないという、自信たっぷりな態度でしたが、

「残念、不正解です。」

「……え?」

「さて、第二「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」…なんですか?」

「何でたらめ言ってんの、あいつ夢について聞かれたら弁護士になりたい、しか言わないのに。知ったかしないでよ!」

「それは、あなたの思い違いでしょう?次行きますよ、優太君のお金を貯めてた理由はなんですか?」

いまだに納得できず、二問目の答えを考えているのがよく分かりますね。
ま、どーせ次も…。

「と、友達へのプレゼントを買うための……」

「ぶっぶー、はずれです。さてさて、最後の一問になりましたね。」

「……っ。」

彼女は、あまりのショックにうなだれています。
仕方ありませんよね、自分が誰よりも知り尽くしてると思っていたのに、あって間もない私の方が優太君のことを知っているんですから…。

「そう、落ち込まないでください。では第三問、優太君の一番好きな人はだあれ?」

「…担任の山田先生…。」

やっぱり、そういうことですか。
よーく分かりましたよ、彼女が生き霊になった理由が…。

「ねえ、桜ちゃん。優太君に聞いたんだけど、あなた今意識不明で入院中らしいですね。ご家族や学校の皆も心配してるそうですよ。」

「…それがどうしたっていうのよ。あんな奴ら、いなくなっちゃえばいいんだ!
パパもママも先生もクラスの連中も、みんな優太を私から遠ざけようとするただの邪魔者じゃない。
私はあいつと一緒にいられればそれでいいの!そう思ったら、意識が飛んで…、
それからすごく幸せだった。だっていつどこにいても、優太の隣にいられたから。
家でも、学校でも、トイレでも、お風呂場でも、寝る時もずっとずっとずーっと一緒!!
なのに…、なのにどうしてそれを邪魔しようとするの!?」

「…じゃあ、彼の気持ちはどうなるんですか?」

「あ、あいつは…優太はいつだって私のこと見てくれない。
私がこんなに好きなのに何も答えてくれない。伝えれるわけないでしょ!!」

「…一問目の答え、優太君の夢はですね、ある人と結婚したいそうです。」

桜ちゃんは私が何を言い出したのか、意味が分からないとでも言いたそうな顔になりましたが、無視して話を続けます。

「二問目の答え、優太君のお金を貯めてた理由は、ある人の入院費を払おうとお小遣いを必死に集めていたからだそうです。」

それを聞いた瞬間、気付いたのでしょう。
さっきまで鬼の形相だった彼女の目からは涙が流れていました。

「そして三問目の答え、優太君の好きな人は…あなたですよ、桜ちゃん。」

「う、嘘よそんなの!だって、だって私は……。」

困惑する桜ちゃん。
ここまで見れば皆さんもお気づきでしょう。
彼女は自分に自信が持てなくて、自分の気持ちを優太君に伝えることができなかったのです。
だからこそ、クイズに対しても自分が答えだなんて思いもよらなかったんでしょうね…。

「桜ちゃん、確かにあなたは優太君のことが好きかもしれません。
でも、こんなことしてても彼はあなたに振り向いてはくれませんよ?
むしろかわいいんだから、もっともっと優太君が好きになってくれるように手段は選ばず、頑張ってください。
『生きてさえいれば』どんなことだって可能なんですから…。」

「…ヒック、……こんな私でも…グスッ…できるかな…?」

「大丈夫ですよ、私が保証します。なんてったって両思いなんですから!」

そして、気持ちも晴れたのでしょう。
桜ちゃんは笑顔を見せ、光になって消えていきました。
今頃、病院でも意識が戻ってる頃でしょうね。
さてと、

「もう出てきてもいいですよ、優太君。」

部屋から出てきた優太君は会話が聞こえないように、しばらく寝てもらっていたのですごく眠たそうでした。

「お姉ちゃん、幽霊は…幽霊はどうなったの?」

「安心してください、優太君に憑いていた霊はいるべき場所にもどりましたよ。」

そう、いるべき“場所”にね…。

523 名前:三回目だから堪忍ね[sage] 投稿日:2013/05/12(日) 21:25:23 ID:txwT05i6 [6/7]
―――後日談―――

ふう、なんとか一件落着ですね。

生き霊となって体から霊が離れすぎてしまうと、そのまま死に陥るケースも珍しくはありませんから、今回はけっこうやばかったです。
まあ、あの二人なら何も心配はいりませんよ。
なんせ、お互いのことが大切で、今までそれに気が付いてなかっただけですから。
ん?小学生からお金を奪っていいのかって?
またまた、私がそんなことするわけないでしょう!
ただ、どこまで本気かどうかを調べるための調査みたいなもんですからね、あれは…。

それにしても…、あの二人を見てると思い出しますよ、私の若い頃を。

………し…ん

――あ、すいません。物思いにふけってしまって…。
とにかく皆さんも生きていれば、生きてさえいればどんなことだってできちゃうんですよ!
だから、諦めずに頑張ってくださいね。
では待て、次回!!