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528 名前:世話焼きな姉(仮) ◆aRAnj9VVXE[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 08:40:41 ID:NN04tFyA [2/11]
 放課後の教室の中に、一人の男子生徒と、一人の女生徒の姿があった。二、三の言葉を交わした後、男子生徒は教室から出ていき、女生徒のみが教室に残った。
女生徒が男子生徒に告白し、男子生徒はそれを断ったのであった。
 男子生徒の名前は、坂川数馬という。そこそこ難関の都立高校に通う二年生。性格は穏やかで優しく、しかしこの年頃の少年特有である騒々しさ、明るさも併せ持っていた。勉強もス
ポーツも上出来で、ルックスもイケメンだ。
当然大勢の友達がおり、また、彼に憧れる女子も少なくなかった。そういう訳で、数馬は毎週のように女子からの告白を受けるのであった。
 しかし、数馬は特定の異性を作らなかった。数馬に告白してくる女生徒の中には、可愛いと人気の女生徒が何人もいたし、数馬自身、いいなと思う女生徒もいた。

529 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 08:51:31 ID:NN04tFyA [3/11]
しかし結局のところ、いずれも数馬の彼女になることは叶わなかった。
そんな数馬に友人たちは、「なぜ彼女を作らないのか」と聞いたが、彼の返事はいつも煮え切らないものであった。数馬が彼らに真実を伝えることができなかったのは当然である。
 数馬は、血のつながった双子の姉に恋していたからだ。
 しかし数馬は、その思いを決して誰にも悟られぬよう、細心の注意を払って生きてきた。彼はその恋に、どれだけの障害があり、また恋が実ったとしても、同時に姉を地獄に引きずり
込む所業であると理解していたからだ。彼は姉を思うが故に、葛藤していたのであった。

 数馬の双子の姉の名前は紗那という。数馬と同じ都立高校に通う二年生。性格は思いやりがあり真面目。かといって頭でっかちなわけでなく冗談も通じるし、この年頃の少女特有の、悪戯っぽさも併せ持っていた。またスポーツも勉強も高レベルにこなし、その容姿は高校でも随一の美少女である。
 彼女に憧れる男子生徒も女生徒も数多くおり、紗那も毎週のように告白を受けていたが、彼女も特定の異性を作らなかった。

530 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 08:52:28 ID:NN04tFyA [4/11]
 しかし数馬と違うところは、紗那の友人たちが「なぜ彼氏を作らないのか」と聞いた時、彼女の返事は「心に決めた人がいるから」と言うものであったことである。
 とはいえ、イケメンでスポーツ万能な先輩が告白しても、資産家として有名なクラスメイトが告白しても、はたまた後輩の美少女が告白しても彼女は首を縦に振らない。納得できない友人たちが数馬に聞いても「知らない」の一点張りである。これでは、紗那の言葉が本気にとら れないのも仕方がないことであった。よって、一縷の望みを賭けた紗那への告白は未だに続いているのであった。
 しかし、彼ら(稀に彼女ら)の告白が成功しないのは当然である。
 紗那は、双子の弟である数馬を愛していたからだ。彼女は、その愛には障害があり、世間の理解が得られないことは理解していたし、「待っていれば、いつか弟が自分に恋をする」とうぬぼれるほど乙女チックでお目出度い頭をしていなかった。
 だが同時に。自分はそれらの困難を打破し、弟に自分を愛させることができる。そして、弟を幸せにできるのは自分だけである、と確信していることもまた事実であった。そのために彼女はいくつもの種を蒔いてきた。そしてその種は、少しずつ芽を出しつつある。来たるべき輝かしい未来。そしてその思いは誰にも、数馬自身にも決して悟られないように。彼女の心には、迷いなどなかった。

531 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 08:54:27 ID:NN04tFyA [5/11]
 「ごめん紗那、お待たせ!」
校門に背を預けていた紗那は、数馬の姿を認めるなり、タタッと駆け寄ってきた。
 「待ちくたびれちゃったよ。早くかえろ!」
紗那は数馬の手を取ると、先に歩き始めた。普段は優等生然とした姉が、こうやって時折見せる無邪気な態度に、数馬はドキッとする。
だが、数馬自身うれしい気持ちもあるし、また姉弟仲は良好なこともあり、決して振りほどいたりはしないのであった。
 「数馬さ。……また告白されたの?」

532 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 08:56:38 ID:NN04tFyA [6/11]
数馬の半歩先を行く姉の顔は、数馬にはわからない。だが、ほんの一瞬――恐らく数馬以外の人間では気づかないであろう――姉の雰囲気が変わった気がした。
 「うん。断ったけどね」
 数馬は何となく気まずさを感じ、淡々と事実のみを口にした。『可愛い子だったんだけどね』という心の声は伏せておく。
 「そっか」
対する紗那も素っ気なく、ただ一言返事をするのみであった。これは、数馬が告白された日、毎回発生する会話であった。かといって、今でも慣れるものではなかったが。
 「まぁ、相手の子のこと、よく知らなかったから。それで付き合うのもどうかと思ってさ」
 なんとなく、口調が言い訳じみてしまう。それは自分が、罪悪感を感じているからであろうか。はたまた、自分も有象無象と同じく、この美しい姉への一縷の思いを持つものだからか。いつも通
っているはずの下校風景が、まるで全く見知らぬ土地のように数馬には思えた。

533 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 08:59:55 ID:NN04tFyA [7/11]
 「数馬ー、起きてるよね?」
控えめにこんこんとドアがノックされる。ちょうど課題を終わらせた数馬が、「うーん」とのびをしている時であった。入るよ、という声と同時に、扉が開く。どうやら風呂上りらしい
紗那の髪は、しっとりと濡れており、ほんのりと上気した顔は、数馬に少しインモラルな感情を抱かせる。そうやって無防備な姿を見せる紗那に、嬉しいと思う反面、少しでも劣情を抱
いた自分を恥じた。
 「明日は休みだしゲームしよ!」
 そんな数馬の気持ちを知ってか知ら ずか、紗那は数馬をベッドに座らせると、ゲーム機の電源をいれ、ぴったりと寄り添うように陣取る。
 「おーしやるか!」
自らの気持ちをごまかすように、不自然に気合をいれる数馬であった。
 最近、姉弟がはまっているゲームのジャンルはFPSであり、女性プレイヤーの人口はかなり少ないものである。しかし、紗那の才能はゲームにおいても揺るがない。
彼女は最善の武装をチョイスし、操作も完璧であった。数馬もそれなりに腕は立つ方であるが、どちらかというと弱くても好きな武器を使うタイプで、戦績でいえば紗那に多少劣る。少し、男としてプライドが傷ついた数馬は、バッタバッタと敵を倒していく紗那に、ぼそっとつぶやく。
 「……いつも思うけどさ、躊躇なくストライカ ー使うのはよくないと思うんだ」
 「だってこの武器強いもん。数馬こそドラグノフなんて使うのやめなよ」
 「紗那はわかってないなー。この音がいいんだよ!男のロマンだね」
その場でてきとうに発砲する数馬。ドンドンドンという重い音が線上に響く。が、発砲したことで居場所がばれ、次の瞬間数馬の操作するキャラは、背後から敵に殺されてしまった。
 「あーあ。どんまい」
その敵を、物陰から伺っていた紗那が倒した。
 「あ!気づいてたなら教えてくれよ……」
 「隙を見せる数馬が悪いね。だから大人しくサブマシンガンにしとけばいいのに」
 「いやいや、だからね。俺はドラグノフ以外使う気ないから!」
そんな会話をしながらも、着々と戦績を伸ばしていく数馬と 紗那。
こうして、坂川家の夜は更けていく。

534 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 09:02:11 ID:NN04tFyA [8/11]
 ふと目を覚ました数馬。どうやら、ゲームをやりながら寝てしまったらしい。心なしか頬が湿っている気がした。正面の壁にかかっている時計を見ると、午前三時時を少し過ぎたあた
りであった。ふと肩に重みを感じ隣を見ると、紗那が寄りかかるようにして寝ていた。数馬と紗那は、一応部屋は別々だが、かなり仲良しなこともあり、だいたいどちらかの部屋で過ご
すことが多い。そして、漫画やテレビの置いてある数馬の部屋に紗那が入り浸るパターンが多数である。思春期を過ぎても尚そんな二人に、両親は「まあ、喧嘩するよりはね」と、何も
言わない(異性の兄弟が仲良しだからといって、恋愛関係を疑う親もなかなかいないだろうが)のであった。よって、気づいたら二人して寝ているということも、日常化していた(これ
も紗那の思惑通りである)。日常化しているとはいえ、普段から姉への思いにジレンマを持つ数馬からしたら、到底慣れるものではなかった。普段は可愛いというよりは美人
で凛々しさすら感じる顔も、寝ている時は年相応より幼く見える。しかし、寝ていても身体は成長した女のそれである。スースーという寝息と同時に盛り上がる胸。数馬に触れる柔らかでなめらかな肌。そ
して全身から発する甘い香りが、数馬にどうしようもないもどかしさを植え付ける。寝ようと無理やり目を閉じてみても、数馬も年頃の男の子。一度高まった興奮はなかなか抑えられる
ものではない。数馬の心 のタガも、限界を迎えつつあった。
(……離れなきゃ)
このままではまずいと離れようとした数馬に、紗那は腕を回し抱きついてくる。振りほどこうにもその力は強く、なかなか離れてくれない。数馬自身も、すやすやと寝ている紗那を起こ
してしまうのが怖く、またこのままでいたいという思いもあって、身を任せてしまう。
 「……紗那起きてるのか?」
紗那からの返事はない。
 「……紗那」
ゴクリと飲み込んだつばの音が、静かな部屋に響いたように感じた。

535 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 09:03:44 ID:NN04tFyA [9/11]
 今でも仲良しの数馬と紗那であるが、数馬とて、何度か距離を取ろうと努力はした。例えば高校受験の際、数馬は紗那には内緒に、少し遠い紗那とは別の高校に進学を希望したのだ。
しかし、当 然家族にいつまでも隠し通せるものではない。それを知った紗那が様々な理論で両親を説得し、気づいたらやはり同じ高校を受験するようになっていた。数馬はそのことにぶ
つぶつと文句を垂れたが、紗那が自分を必要としてくれたことに喜びを感じた。そして同時に、そんな喜びを感じた自分に嫌悪を抱いた。
 そして今も。こうやって自分に無防備な姿を晒している紗那に、自分への信頼を感じ(紗那はわざとやっているのだが、当然数馬は知らない)うれしく思う反面、どうしようもなく性
欲を感じ、男の部分が反応してしまっていることに、嫌悪感を抱いてしまう。
 (……そろそろ、本当に姉離れしなきゃダメだな)
尚もその発育した身体を擦り付けてくる紗那を横目でみつつ、性 欲の波に抗い続ける数馬。
 しかし、しかしだ。もしも、近い将来か遠い未来か。いまだ彼氏を作らない姉の隣に自分とは違う男がいるとしても、数馬は姉と男を祝福できるであろう自信がある。数馬はこの優し
い姉の幸せを、誰よりも願っていた。そしてそれは、自分と姉が一緒になっては達成できないこともわかっていた。
 だから、自分の恋心と同時に、姉を任せるに足る男の登場と、姉から離れるきっかけを、彼は望んでいた。彼にとってそれはダブルスタンダードではなく、矛盾なく両立できる思いで
あった。

536 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/05/15(水) 09:05:21 ID:NN04tFyA [10/11]
 (……数馬)
自分の傍らで眠る愛しい半身、数馬を慈愛のこもった眼で見つめる。どちらかといえば素行も真面目できちんとしている数馬であるが、少し夜更 かしは苦手であり、ゲームをしながら寝
てしまった。こうやって隙を見せる数馬が、紗那はたまらなく愛しいと感じる。恐らく数馬に告白してくる女たちは、彼のこんな無防備に眠る姿など一生見ることはないだろう。今日の
下校中も、数馬が告白された話を聞いて、名前も知らない女に殺意を抱いて、めちゃくちゃにしたいと思った。教室に乱入して、女の髪をひっつかんで引きずり回してやりたかった。
それをしないのは、最終的に自分が数馬に選ばれるという確信と、彼女の理性がストップをかけるからだ。しかしわかっていても、不快なものは不快で仕方がない。
 「……数馬」
しっかりと数馬が寝ているのを確信してから、紗那は数馬の頬に口付ける。彼を起こさないように繊細に 。しかしたっぷりと思いを込めて、自分のものであると刻み込むように。
 何度も繰り返していると、どうやら数馬が起きたらしい。彼女は寝たふりをして数馬の反応を楽しむ。案の定数馬は一瞬びくりとしたかと思うと、離れようとした。
(……逃がさないよ)
 紗那はそんな数馬に抱き着き動きを封じる。こうすると、優しい数馬は自分を起こさないように動きを止めることを知っていた。さらに密着すると、彼女の身体に、硬くなった数馬の
男が触れる。今すぐこの場で自慰するのを我慢し、寝たふりを続ける。普段は有象無象の目を引くこの身体も、この時を思えば役に立つものだと思う。
 「……紗那」
 困ったような、切ないような声で自分を名を呼ぶ数馬。 その声を聴いた瞬間、紗那は軽く達してしまった。
 
 
 基本的に仲良しであった数馬と紗那であったが、紗那自身、何度か数馬が自分から離れようとしていることに気づいていた。その度に彼女はあの手この手で彼を引き留めていた。そし
てその試みが成功するたび、安堵を覚えたのであった。
 紗那は思う。もしも、彼が自分から本当に離れていったら。自分は自分でいられるのであろうか。数馬の隣に自分ではない違う女が寄り添っていたら、発狂せずに済むだろうか、と。
きっと自分は耐えられないだろう。例え幻でも、その光景を想像するだけで自分を嫌悪する。
 彼女は、姉として女として、数馬の幸せを誰よりも願っていた。願っていたが故、それを他人に任せようとは思えなかった。世界で数馬をもっとも愛しているのは自分であり、よって
数馬を幸せにできるのは自分のみであると、彼女は確信していたからだ。
 だから、この愛が成就する未来の到来を、掴み取るために。彼女は生きていた。