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117 :ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/05/01(木) 23:50:13 ID:i6U3Ixs2
 空が微かに白み始めたころ。
 香草さんが大きな伸びをして起床した。
「……起きてたの?」
 香草さんは木の根元にもたれかかっている僕を見るなり、そう言ってきた。
「火の番が必要だからね」
「相談してくれれば、私だって……」
 香草さんは珍しく柔和な態度をとっている。これが見れただけでも、半徹夜の価値はあったかもしれない。
「無理しなくていいよ。その代わり、今からよろしく。僕はこれから少し寝るよ」
 僕はそう告げると、寝袋に包まって即時に夢の世界に旅立った。


――――――――――――――――――


「……なさい!」
 甲高い何かが聞こえる。まったく、なんだよ人が気持ちよく寝てる時に……。
「起ーきーなーさーいー! 一体いつまで寝ているつもりよ!」
 耳朶を叩き壊さんばかりの大声と、甘い香りで目を覚ました。
 声のした右のほうを向けば、鼻の頭がぶつかりそうなほどの超至近距離に香草さんの顔があった。
 反射的に飛びのこうとしたが、両手両足が寝袋で封じられているため、飛びのくことも出来ずにただ変なポーズをとっただけになってしまった。首がグキリとなる。
「あいたっ!」
「もう、なにバカやってんのよ。もうアンタ以外準備出来てるんだからね」
「あ、朝飯は?」
「……あの鳥が木の実摘んできたわよ。それと虫も! 信じられる? 虫を食べるのよ!?」
 うわー、露骨に不快そうだなあ。
 虫かあ……まあ僕も食べたことが無いわけでもない。都会の人間はあまり食べないみたいだけど、若葉町なんか思いっきり田舎だからなあ。
「あ、ゴールド起きたです! 木の実食べるですー? それとも虫食べるですー?」
 軽快な声とバサバサという羽音が聞こえた。頭を少し持ち上げてみれば、ポポが僕のほうに飛ぶように跳んでいるところだった。
 待て待て、ちょっと待て、まさかそのまま……。
 僕の顔から見る見る血が引いていく。その憂慮どおり、彼女は両膝で僕の腹の上に着地した。
 当然声にならない悲鳴を上げた。意識を失うほどでないだけ、昨日よりはマシだったが。
「どうしたです? 具合悪いですー?」
「な、なんでもないよ。大丈夫だから早く僕の上から降りて……!」
 軽い拷問だ。早くどいて貰わないといろんな秘密を意味もなくゲロってしまいそうだ。
 ポポは多分事態を理解できていなかっただろうが、僕の上からはどいてくれた。
「あ、虫潰れちゃったですー」
 体を起こして見てみれば、ポポの鉤爪には潰れた虫と思しき液体と物体が付着している。彼女は体を器用に丸めて、それをペロペロと舐めていた。
 他人の食生活にとやかく言う気は無いが、これは結構キツイ光景だな。
 ちゃんと契約して登録したら、そういうのは控えてもらうようにしよう。
 僕はその後、普通に木の実を食べると――この木の実がやたら苦かった。どんな錯乱状態でも一瞬で正気に戻りそうな苦さだ。甘い木の実もあるというのに――、荷物を片付け、火を消し、そのまま吉野町に向けて出発した。
「あのさ、昨晩考えたんだけど、折角人数増えたんだし、協力しない?」
「協力?」
「そう、ポポに僕らの上を飛んでもらって周囲の警戒をしてもらうのさ。草むらの中じゃあまり早いうちから野生のポケモンが分からないだろう?
 上から見て、それを伝えてもらって、早期発見早期撃退ってね。それに多分鳥ポケモンが目立つ位置にいるってだけで虫ポケモンは逃げ出すはずだし」
「いらないわよ、そんなの」
「まあまあそう言わずに、物は試しだと思ってさ。いいね、ポポ?」
「分かったですー!」
 ポポは素直でいいなあ。前方を肩を怒らせて歩いている香草さんに見習わせたいよ。
 と、思っていたら、早速ポポが大声を出した。


118 :ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/05/01(木) 23:50:34 ID:i6U3Ixs2
「ポケモンいたですー!」
「どの辺ー?」
「あっちのほうにいるですー!」
 あっちかよ!
 思わぬ不意打ちに僕と香草さんはこけそうになる。
 そういえば、野生で暮らしていれば方角を指す言葉なんて知っているわけが無いな。
「ポポー、一度下りてきてー」
 教えないといけないな、と思ってポポを下ろした。
「どうしたです?」
「あっちってその方向さ?」
「あっちですー」
 ポポはビシッと翼を二時の方向に向けた。
「『蔓の鞭』」
 香草さんがその方向に二本の蔓の鞭を伸ばせば、何かにぶつかった音と短い悲鳴が同時に聞こえ、その後草むらを僕達から遠ざかるように走り去る音が聞こえた。
 やっぱり思った通りだ。草むらにおいて二人は相性がいい。……ポポの問題さえ解消できれば。
「よしポポ、勉強の時間だ」
「勉強? それ食べ――」
「食べられないよー。勉強ってのは、頑張って頭をよくしようってことだよー」
「勉強したらいいことあるです?」
「食べ物たくさん食べられるようになるよー」
「やるですー!」
 ポポの扱い方がちょっと分かってきたかもしらない。
「何『ちょろいな!』みたいな顔してんのよ、気持ち悪い」
 な、中々厳しいな……。
「やっぱり役立たずじゃない。だから私はあんなのとは」
「はいはいはいはい」
 ここで全自動愚痴聞きマシーンになってもよかったが、時間が勿体ないから悪いとは思いつつ流す。
 ああ、間違いなく彼女は怒るんだろうなあ……。
 予想通り、彼女は大声でわめき散らしている。でも暴れたりしないからまだマシか。
「いいかポポ、正面が十二時、背後を六時とする。で、こっちの翼のほうを三時、こっちの翼のほうを九時だ。覚えた?」
「覚えたですー」
「よし、じゃあ次はそれぞれの間を三つに分けるんだ。十二時と三時の間に一時と二時、三時と六時の間に四時と五時、六時と九時の間に七時と八時、九時と十二時との間に十時と十一時。分かった?」
「よ、よくわかんなくなったです……」
「あはは、一気にやりすぎたか。まあ三時六時九時十二時さえちゃんと覚えてくれれば、後は適当でいいから。じゃ、出発しようか」
 ポポは再び飛び上がり、香草さんは僕が走ってなんとか追いつけるような速度で進みだした。
 ポポは混乱していたみたいだったが、実際は割とよく理解できていたみたいだ。
 ここからは本当に順調だった。ポポが指示した先に香草さんが蔓の鞭を伸ばし追い払う。ほとんど歩を止めることすらなく、昼までにかなりの距離を進んだ。
 僕にもっと体力があればもっと進めただろう。
 もっとも、人間離れした体力があれば、だが。
「ぜはーぜはー」
「情けないわね」
 肩で息をしている僕に、香草さんは理不尽な言葉を浴びせてくる。
「は、早いよ、進むの」
「普通よ、このくらい」
 大部分の人間にとっては普通じゃないんだ。
 昼食のために止まったが、もう動き出せそうに無い。
「木の実とってきたですー」
「お、ポポ、おかえりー」
 ポポが木の実を摘んで戻ってきた。
「何か水がある場所あった?」
「なかったです……」
 うーん、木の実のおかげでかなりの節水になってるから、吉野町まで水分補給できる場所がなくても大丈夫といったら大丈夫なんだけど、それでも不安だなあ。
「まあいいや、じゃあお昼にしようか」
「はいですー!」
 こうして僕とポポは木の実を食べだした。
 今度の木の実はやけに冷たい。先ほどまで火照っていた体が、今はもう寒気すら感じる。
 僕とポポは普通に談笑しながら木の実を食べていたが、香草さんは僕らから距離をとって、会話に加わろうとするどころか近づこうとすらしない。


119 :ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/05/01(木) 23:51:43 ID:i6U3Ixs2
 うーん、中々難しいなー。
 元々他の種のポケモン嫌いに加えて、天敵の鳥ポケモンだから、ポポと仲良くするのは相当難しいだろう。
 でも、僕はどうせならやっぱり皆仲良く旅をしたい。
 その旅がたとえ途中までの短いものであったとしても、だ。
「もう行くわよ」
 僕が木の実を食べ終わったころ、見計らったように香草さんが声をかけてきた。
 僕はこんな短い休憩では満足に疲労がとれるわけもなく、本音を言えば一歩も動きたくなかったが、早く体を温めないと明らかにやばい気もする。
「ポポ、もう大丈夫? 多分また休憩無しで日が暮れるころまで飛びっぱなしになると思うんだけど」
「大丈夫です……。それより寒いから早く動きたいです……」
 ポポが食べた実も、僕が食べた実と同じ実だったみたいだ。香草さんだけが、僕らの様子を見てキョトンとしている。
 彼女のそんな顔が可笑しくて、にやけそうになるのをなんとかこらえる。
 もうこれ以上怪我を増やしたくないし。

 ポポが空高く舞い上がったのを確認すると、僕達は再び歩き出した。
 時たまポポが野生のポケモンの存在を伝え、遭遇する前に香草さんがそれを迎撃するだけで、他のトレーナーや人に会うことも無い。
 速度的には僕達はかなりハイペースだし、最後尾からのスタートなんだろうから、出会ってもおかしくはないと思うんだけどな。
 そんなことを考えていたとき、ポケットに入っていたポケギアが突然激しく振動した。
 ポケギアの画面を見れば、宇津木博士からメールが来ていた。
 香草さんとポポに止まってもらって、そのメールを確認した僕は、我が目を疑わずにはいられなかった。
「そ、そんなことって……」
「どうしたのよ?」
 香草さんは怪訝な顔をしながら僕のところまで歩いてきた。そして僕のポケギアの画面を見て、僕と同じような強張った表情を浮かべた。
「ロケット団復活ですって!?」
「し、信じられない……」
「どうしたですー?」
 僕らの様子が気になったのだろう、ポポも地上に降りてきた。
「ポポ、字読める?」
「読めないですー」
 ポポは元気に右の翼を掲げながら言った。
「だよねえ……。ロケット団って知ってる?」
「知らないですー」
 ポポはさらに元気に右の翼を掲げながら言った。
「だよねえ……。ロケット団っていうのは、とっても悪い人たちの集団のことだよ。ポケモンを正式な契約無しに捕獲して売りさばいたり、自身の技を使って犯罪行為をしたり……三年前に壊滅させられて解散したって聞いたんだけど……」
「それで、そのろけっとだんってのがどうかしたです?」
「復活したんだよ……それで、宇津木博士から、『この辺での目撃情報はまだ無いけど、一応念のため、今は使われていない旧街道を使うように』って。その街道は通行には不便なんだけど、見通しがいいから、多分警察の人たちが何人か派遣されてるんだろうね」
「で、どうするのよ」
 香草さんがズイッと僕の視界の前に来た。
「どうするもこうするも……旧街道のほうに――」
「何ふぬけたこと言ってんのよ! 他のパーティーがちんたらしてる隙にリードするチャンスじゃない!」
 僕の言葉を最後まで待ってもくれない。
「で、でも、もしロケット団と会ったりしたら――」
「所詮チンピラの集まりじゃない! それに、三年前壊滅させたのだって、私達と同い年くらいのパーティーだったらしいじゃない! なら大丈夫よ!」
 僕の言葉にかぶせるように彼女は自信満々に言った。一方の僕は、彼女が自信を持てば持つほど、自信が無くなっていく。
「そ、そんなのただの噂話じゃないか……」
「昨日も言ったでしょ? 私は、誰にだって負けないんだから」
 その赤い双眸には、強い光が宿っていた。
 はあ……と僕は軽くため息を吐いた。彼女にはかなわないな。
「分かったよ。でも、一つだけ約束して。戦闘中……もし戦闘になったらだけど、ちゃんと僕の指示を聞いてよ。昨日みたいに暴走するのは無しだからね」
「う……そんなの、分かってるわよ!」
 彼女の頬がぽうっと赤く色付く。一応昨日のことは恥ずかしく思っているんだな。
「たとえ逃げる、っていう指示でも、だよ」


120 :ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/05/01(木) 23:52:17 ID:i6U3Ixs2
「うう……分かったわよ!」
 彼女はかなり癪なようだ。声がほとんど怒り声になっている。まあ彼女のプライドから考えたら逃げるなんて絶対に嫌なんだろうなあ。
 でも、古くの言葉にすら、三十六計逃げるにしかず、なんていうものもあるくらいだ。逃げることの有効性は確かなものなのに。
「じゃあ、逃げるときの合図を決めとくよ。僕がリュックに手を入れたら即座に戦闘を中止して、僕の後を追って一目散に逃げてね」
 僕はそう言って、リュックから手のひらサイズの筒を取り出した。
「にゃんにゃかにゃんにゃんにゃーん。シルフカンパニー製、怪しい光曳光弾ー」
 僕はそれを頭上に掲げながら、だみ声を作って言った。少しでも場を和ませようと思ってだ。
「……ナニソレ?」
 しかし、僕の期待を見事に裏切って、彼女はポカーンとしている。
「怪しい光と同じ効果がある曳光弾。だから絶対に光を見ないでね」
「いや、そうじゃなくて、その前の」
「アレ? 知らない? そういう感じのシーンのある有名なアニメあったじゃない?」
「……知らない」
 うっわー、完全に滑ったな、こりゃ。
「ま、まあいいや、そういうことだから」
 僕は無理やり話を終わらせると、逃げるように歩き出した。
 ものの三十分で後悔した。
 僕の足とスタミナはあっさりと限界を突破した。
 というわけで、今僕は香草さんに蔓の鞭でずるずると引きずられている。
 もうだめだ、休憩しようと言ったら、アンタなんかに付き合ってらんない、と香草さんが蔓の鞭で僕を縛り上げ、そのまま引きずって歩き出したからだ。
 草がうっそうと生い茂っているお陰で痛くは無いが、ズボンとリュックは黄緑色に染まっていることだろう。
 僕を引きずったまま香草さんは無言で日没間際まで歩き続けた。
 日没間際なので、当然夜目の利かないポポは木の実を探すこともできなかった。

「……なにこれ」
 僕が差し出したものを見て、香草さんは不服そうな顔をしている。
「何って、乾パンと水だよ」
「見れば分かるわよ、そんなの。……それよりもどうしてこんなものしかないのって聞きたいの」
「しょうがないだろ。香草さんが日が暮れるまで止まってくれないからポポは木の実を探しにいけなかったし、火を使ったら野性動物やポケモンは逃げても、ロケット団は逆に寄ってくるだろうし」
「……」
 文句を言いつつも、香草さんはきっちり完食していた。
 そして今日も昨日のようにメタモンガムを噛み、就寝の準備をする。
 ちなみにポポが、「ポポもそれ食べたいですー」と言ってきたので、一応の効能を説明してガムをあげたら、噛むのもそこそこに飲み込んだ。大丈夫だよな? 人体に対しては無害なはずだよな?
 ガムの効能を説明している間も、飲み込んだことを叱っている間も――ポポは「おいしくないです……」とか言っていてまともに聞いてなさそうだったが――、
香草さんはずっと不機嫌で――と言っても昼間のような過激な不機嫌さではない。空気を澱めるような、ダウナーな不機嫌さだ――、僕達のそばに寄ろうともしかなかった。
 はあ……と軽くため息を吐いた。
 ポポは僕のため息の意味が理解できないのか、ぼおっと僕を見ている。
「香草さん」
 僕は藪の中で横になっている香草さんに声をかける。
「……」
 返事がない。もう寝てしまったのだろうか。……いや、この空間を伝わってくる不機嫌オーラで分かる。彼女はまだ起きている。
「……何?」
「今晩は火を焚かないじゃない? だから用心のために固まって寝たほうがいいと思うんだけど……」
「絶対イヤ」
 即答だ。予想通りだけどさ。
 僕はその後、一言も言葉を発しなかった。
 ポポは当然すぐに寝てしまったし、そして……。
「……香草さーん」
 小声で呼びかける。しかし返ってくるのは規則正しい寝息の音だけ。
 よし、もう寝たみたいだな。
 僕は香草さんの……というか大部分の草ポケモンの性質上、夜に弱いということが分かっていた。だから僕がちょっと待っていれば香草さんはすぐ眠ってしまうわけで……。
 僕は寝ているポポを抱きかかえ、同じく寝ている香草さんのすぐそばまで移動した。


121 :ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/05/01(木) 23:53:07 ID:i6U3Ixs2
 月の光に照らされた香草さんの寝顔はとても美しく、どこか幻想的な雰囲気すら纏っている。
 こうして見つめている分にはいいんだけどなあ……。
 はあ……、とまた一つため息を吐くと、僕も眠った。

「起きるですー」
 頭とペシペシと叩かれる感覚。どこか舌足らずな声。
 それらで僕は目を覚ました。
 ポポの幼い顔が僕を覗き込んでくる。
「おはよう。香草さんは?」
「離れて木の実食べてるです」
 ポポの指すほうを見れば、こちらを見ながら無表情で木の実を食べている香草さんがいた。
「そうか……。ポポはさ、香草さんの態度、気にならない?」
「気になるって何がです?」
「いや、かなり距離とってるだろ?」
「草ポケモンは皆近づいてくれないです」
 ああ、そういえばそうだ。ポポにしてみたら、香草さんの態度は当然のものなのか。うーん、色々考えさせられるなあ。人間とポケモンの共存はもちろん、ポケモンごとの共存も難しい問題なんだな。
 そんなことについて考えながら食事を終え、再び吉野町に向かって歩き出した。
 やはり行進は順調そのもので、まともに遭遇したポケモンは一人もいない。
 相変わらず空気は最悪だったが。
 今日は僕は昨日の疲れもあり、午前中から引きずられることになってしまった。
 やはりほとんど会話もないまま昼食を取り、ほとんど休まずに歩き続けた。僕は歩いてないけど。

 そうして、日が傾き始め、そろそろ吉野町に着くかな、と思ったころ。
 僕達の上を飛んでいたポポが、大きな声を出した。ポケモンを見つけたときより焦っているように見える。
「十二時の方向に、全身真っ黒の怪しい人たちが三人いるです!」
 僕は慌てて蔦をほどき、体勢を立て直した。
「服に赤い字で何かかかれてない?」
「書かれてるです!」
 やっぱり! ほぼ間違いなくロケット団だ! まさか町の入り口近くで張っていたのか!?
 どうしようかと考えていると、向こうにも目の効く者がいるのか、こちらに気づいたらしい。高らかな笑い声が聞こえてくる。
「ハーッハッハ!」
「我々はロケット団だ! ガキ共、おとなしく――」
 ロケット団の演説は途中で中断した――いや、させられた。
 草むらの間を縫う、低い蔓の鞭が三人の足を絡め取り、逆さ吊りにしたのだ。
 彼らの着ている服は、やはりロケット団のものだった。
 ロケット団は人間の男が一人にポケモンが男女二人か。多分、どっちもコラッタかな?
「コ、コラ、人の話は最後まで聞けと――」
 男が何か喚いたが、香草さんはそれをまったく意に介さず、左の林に向かって高く放り投げた。
 罵声、絶叫、悲鳴。その三つの声が順番に発せられた。
 その声もかなりの距離飛び、林に突っ込むころには聞こえなくなった。
 唖然とする僕とポポ。
「なんだ、やっぱり大したことないじゃない」
 平然としている香草さん。
「香草さん! いくらなんでも死んじゃうよ!」
「別に死んでもいいじゃない。どうせゴミよ。それに、多分生きてるわよ。ちゃんと加減したから」
 あ、あれで加減したって言えるのか?」
「で、でも警察にちゃんと突き出さないと――」
「警察に一体なんて言うのよ? そんなことしたら私達が迂回しなかったことがばれちゃうじゃない」
 そ、それはそうだけど……。
 僕は何も反論できなかった。
 香草さんはしばらく僕を見ていたが、話は終わり、と言うようにプイッと向き直り、そのまま無言で進み始めた。
 僕は僕で、かけるべき言葉が見当たらず、一瞬の逡巡の後、彼女を追って歩き出した。
 ポポも困惑しているようだが、僕達に続く。
 そうして、それからすぐ僕達は町に着いた。