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570 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/11/26(日) 20:44:09 ID:PInRSSth
春、美奈は小学生になった。
学校に行くことになる、と美奈に言った時の喜びかたは強烈だった。
「本当!?兄さん、私も学校に行っていいの?あはっ!これでお昼の間も一緒だね!」
予想以上の美奈の上機嫌に、同じ学校に通っても一緒に居られる訳じゃない、
と言えなかった。
自身の言葉で美奈を落ち込ませるのが恐かったんだと思う。
案の定、学校に行くまではうきうきしてた美奈だったが下校時には目に見えて落胆していた。
「…やっぱり学校なんて………
あ!ねぇ、兄さんって何年何組だったっけ?」
俺は特に考えずに質問に答えた。


571 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/11/26(日) 20:45:49 ID:PInRSSth
驚かされたのは次の日だ。
一時間目が終わり教室でのんびりしていると聞き慣れた声が聞こえた。
「えへへ、兄さん、来ちゃった。」
姿を確認するまでもない、美奈だ。
「へぇ、よく場所がわかったね。」
この時は美奈のことを褒めた。エラいエラいと頭を撫でた。
授業間の休み時間は短い。
その短い時間に小学一年の美奈が俺の教室を見つけ、やって来たことを単純に凄いと思ったからだ。
しかし、
美奈は毎時間毎時間やって来た。
授業が終われば飛んで来て、開始ぎりぎりまで粘っている。
これは、間違ってる。そう感じた。


572 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/11/26(日) 20:47:17 ID:PInRSSth
兄バカかもしれないが、美奈は賢い子だと思う。オセロだって強い。
間違ってることをしているのならば早めに修正すればよい。
何事にも悪くなり始めがある。そして悪くなり始めのうちは案外簡単に手が打てる。
というのが俺の持論だった。
先手先手を取っていけば取り返しのつかない事態にはならない、
そう思い、その日の下校時に俺は美奈に言った。
「美奈、もう教室には来ちゃいけないよ。」
美奈は信じられないといった顔でこちらを見てきた。
「なんで!?教室に行かないと一緒に居られないよ?」
「そうじゃないよ、美奈。」


573 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/11/26(日) 20:48:51 ID:PInRSSth
俺は続けた。
「美奈、学校っていうのはね、兄妹で仲良くする場所じゃないんだ。
勉強したり、友達を作ったり、クラブに精一杯になったり、そうゆう所なんだよ。
だから、休み時間を僕と一緒に居るのに使ったらいけない。
今のうちはいいかも知れない。でも、将来困るのは美奈なんだ。わかる?」
「わかんない、わかんないよ。
だって…兄妹なんだよ?一緒に居ないなんておかしいよ。そうでしょ?」
「美奈、学校に兄妹を持ち込んじゃ駄目だ。兄妹でいるのはそれ以外の場所。」
「なんでなんで?そんなの、変だよ!!それに」
「美奈!!」


574 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/11/26(日) 20:50:22 ID:PInRSSth
美奈に対して大声を出したのはそれが初めてだった。
思えばむきになるような事でもなかった気がする。
しかし、美奈にあんな風に食ってかかられたことが無かったから、つい興奮したんだろう。
俺の声に美奈は震え、俯いた。そんな姿は俺を後悔させるには十分すぎた。
気まずい沈黙がどれくらい続いたのだろうか。
どうやって謝ろうか思考を巡らしていたところで
美奈は小さな声で、囁くように喋り出した。
「……わかった。兄さんが、そう言うなら……………そうする。
でも……………………………のは、………までだよ。」


575 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/11/26(日) 20:52:08 ID:PInRSSth
「うん、わかってくれて嬉しいよ。ごめんな、大きな声出したりして。」
最後のほうは殆ど聞き取れなかったが、美奈が応じてくれたことに安心して言葉を返した。
「私も、ごめんなさい。わがままいって。」
そう言って美奈は笑い、腕に抱き着いた。
家に着く頃にはいつもどうりの仲の良い兄妹に戻れた、と思った。
いや、"仲の良い"兄妹だと思っていたのは初めから俺だけだったかもしれない。
いずれにせよ、今も昔も、美奈の黒い瞳の向こうがわを読み取ることなど
俺には不可能であり、
先手を取ったと思った時にはとっくに手遅れだった。