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777 :あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/01/22(月) 00:52:56 ID:sVWolwVr
その帰り道でいろいろと聞いた。
名前は海原英一郎(うなばらえいいちろう)。
剣道を始めたのは小学三年生。段位は二段。
意外なことに今まで大会で優勝したことはないらしい。
気になったので突っ込んで聞いてみたところ、

「・・・笑わないって約束してくれる?」
「笑いませんよ。でも、まさか『大会に出るのが馬鹿馬鹿しい』とかじゃないですよね?」
「違うって、逆。出たくても出られなかったんだよ。
 ほら、大会前って練習に力が入るでしょ。
 俺の場合はやりすぎて体調崩して寝込んで、ってパターンが多いんだ。」
「でもさすがに七年間続けてっていうのは変じゃないですか。」
「大会前日に練習しなかったりしたら今度は体がうずうずして
 寝られなくなったりとか、風邪とか怪我もあってね。結局出場したことがないんだよ。
 嘘みたいだけど本当。」
「・・・ご愁傷様です。」
「いいえ、亡くなった私のために悲しんでくださって本当に・・・って違う!
 ノリ突っ込みさせないでくれ。」
「いやいや、今私ボケてないです。」
「そういやそうだった。ごめん。」

そんなことを話しているうちに私の家に着いてしまった。
残念。もっと長く話していたかったのに。通学路の短さを恨んだのは始めてだ。
先輩と別れの挨拶をして、その背中を見送っていると急に寒気を感じた。
寒さからではなく、これが寂しさから来るものだとこのときの私は理解していなかった。




778 :あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/01/22(月) 00:53:36 ID:sVWolwVr
風呂に入り、遅めの夕食をとる。明日は弁当を持っていって練心館に行く前に食べるようにしないと。
歯磨きをして、布団に入る。

今日一日のことを思い返してみる。そして真っ先に思い浮かぶのは、海原先輩のこと。
私と互角の実力者。いや、私は全力だったが先輩は本気だったとは限らない。とすると互角以上と考えるのがいい。
しかし今まで私と張り合えるような人間はみんながみんな両親や兄のような遠い存在か、
年が近くても威張り散らしているような人ばかりだった。

しかし先輩は違った。とぼけているような感じがするけど実際は剣道好きでまじめな人。
初めて会う後輩に対しても親しく接することが出来る人。
短い髪。私より頭一つ分高い身長・・・。

「ん・・・」

なんだろう。むずむずする。もどかしい。パジャマの上から下半身に手を当てる。

「ひぁっ・・・!」

秘部のあたりに手を当てた途端、腰がくだけた。

「なに、これ・・・」

いままで経験したことのないものだった。
物足りないようで満たされないような感じ。でも、

「きもち、いい・・・ふぅ、ん・・・あっ!」

さっきより強く手を当てるとさらに強い刺激が襲ってきた。
甘い。手を出してはいけないとわかっていても手を出してしまうほどに。

そういえば中学生のころに聞いたことがある。
自分で性器に触って快感を得ようとする自慰行為。
今まで一度もしたことがなかったけど、

「これが、そうなんだ・・・」

でもどうして?今まで一度もこんなことしようなんて思わなかったのに。
なにが違うの?なにか悪いものでも食べた?なにか考えて・・・あ。



779 :あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/01/22(月) 00:54:16 ID:sVWolwVr
「海原、せんぱぁい・・・」

そうだ。あのとき先輩のことを考えていたらこうなったんだった。
でも、たしかこういうのは好きな異性のことを思い浮かべるものだって聞いた。
と、いうことは。

「ふぅ、ん・・・あ、あんっ!わたし、せんぱいのこ、と・・・ふぁっ!好き、なの・・・?」

本当にそうなんだろうか。今日会ったばかりの人に?
でもなにもしなくても先輩の姿を思い出すだけで甘い痺れが襲ってくる。

「だめぇ、こんなの・・・せんぱいにしつ、れぇ・・・はぁん!」

そう思っても指は止まらない。妄想は止まらない。
先輩の指が私の秘部をいじっているところを想像した瞬間、

「あ!ひ、・・・なにこれ、とまらないよぉ・・・ふあ、あ、ああああああンっ!」

止めようのない大きな波が全身を駆け巡る。その波は私の体をしばらくの間痺れさせたあと、引いていった。
そして今度は脱力感に襲われた。なんだか芯に力を入れられないような感じ。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・せんぱい、先輩、センパイ、私・・・」

初めて想いを込めてこの言葉を口にします。

「好きです・・・海原先輩。」


これが先輩と初めて会った日の記憶。
それまでの人生で一番楽しかった日。



780 :あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/01/22(月) 00:54:49 ID:sVWolwVr
翌日、私は一本の鍵を持って学校に行った。
実家とは少し離れた位置にある道場の鍵だ。
この道場はかなり昔、祖父か曽祖父が師範をしていたころに建てられた道場で、名前を練心館という。
現在では剣道の大会などで時々使用するだけで、ほとんど使われていなかった。
そこで父に部活の校外練習に使うという理由で頼み、許可を得た。

だが校外練習というのは理由の一つに過ぎない。
本当の理由は海原先輩と少しでも一緒にいたいと思ったからだ。
正直に言うと、先輩だけ来てくれればいい。

顧問と部長に校外練習をする提案をした。
顧問は道場の持ち主が近くに住んでいるということを話すと許可してくれた。
部長もはじめは渋い顔をしていたが、最後にはOKの返事をしてくれた。
部員には希望者のみ参加してくれればいい、と説明した。
先輩にはその日の校外練習が終わった後に頼みごとをしてみた。

「海原先輩。お話があります。」
「ん?なに?まさかこくはk」
「もう夜九時です。遅い時間ですよね? 外は真っ暗ですよね?
 女の子が一人で帰ったら危ないですよね?
 だから先輩。練習の後に私の家まで付き合ってくれませんか?」
「ああ、もう九時だ。たしかに遅い時間だ。夏でも九時には真っ暗になっているな。
 女の子が一人で帰ったら暴漢にあうかもしれない。
 だが大河内。練習の後は俺もすぐに家に帰って寝たい。だから断る。」
「なんでですか!私が暴漢に襲われてあんな目やこんな目にあってもいいと言うんですか?」
「むしろお前があんな目やこんな目にあわせてしまっ・・・
 いや、すまん。前言撤回する。だからそんな目で見るな。」

全く失礼な先輩だ。会って二日目だというのにこのやりとり。まるで昔からの友人みたいだ。
でも――嬉しい。こんなに早く先輩と仲良くなれるなんて。
これからは毎日先輩と二人っきりで話すことができる。
もっと先輩のことを知ることができる。先輩のことをすべて知りたい。 
ただ先輩がものすごく怯えているように見えるのはなぜだろう。



781 :あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/01/22(月) 00:55:36 ID:sVWolwVr
それからは学校での部活動が終わった後に練心館での稽古が行われるようになった。
参加する部員は十人前後ではあったが、海原先輩は毎日来てくれた。
狙い通り。昨日の話で先輩が練習大好き人間だということが分かっていたから来ると思っていた。


校外練習の成果だろうか。剣道部は地区で行われた春の新人戦で団体戦で準優勝を飾った。
同時に行われた二・三年の先輩達の試合も第三位という快挙を成し遂げた。
このときに海原先輩も参加しており、初めて手にする銅メダルを感慨深い眼差しで見つめていた。

第三位という成績をおさめ、練心館はさらに活気付いた。
部員の八割が校外練習に参加するようになり、大会でも好成績を記録していった。
それには――海原先輩の参加が影響していると思う。
私が入部して以来、先輩は『大会の日に必ず体調を崩す』というジンクスが嘘のように消え去った。
参加する大会ではほぼ負け無し。夏の県大会で全国大会の優勝校のエースと対戦したときだけが例外。
その戦績で部員達の信頼を得た先輩は夏に三年生が引退するときに部長を務めることになった。

剣道部も先輩の調子も順風満帆。ただひとつだけそうは行かないのが――







782 :あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/01/22(月) 00:56:19 ID:sVWolwVr
「俺はいまだに脱皮する必要があるのかわからない。
 最初からあの状態で高速戦闘したほうがいい。
 あれは設定ミスだろう。」
「最終回が終わったっていうのにいまさら何言ってるんですか。
 だいたい先輩は分かってません。脱皮したら敵を吹き飛ばせるんですよ?
 それにいきなり高速戦闘するだなんて情緒がありません。
 あれが美学というものです。」

これだ。私と先輩の関係。未だに『部活動の先輩・後輩』のままだということだ。
半年以上一緒に帰っているというのに先輩は全く私に色気のある話を切り出さない。
まあ、そういう話を振らない私も悪いのだけど。

だけど、いつまでもこの状態でいるわけにはいかない。私の恋には敵が多い。
剣道部の女子の数人も時々先輩を潤んだ瞳で見ていたりするし、
先輩の下駄箱には毎週ラブレターが入れられている。

今までは女子部員の籠手の手首を狙って打ったり、
ラブレターを別の生徒の下駄箱に入れたりしてきたが、
直接言われたらもう止める術はない。

「よし、決めました。決戦は月曜日です。」
「それを言うなら金曜日だろ。あれもいい歌だよな。たしか・・・」
「あ、着きました。じゃあ先輩。送ってくれてどうもありがとうございました。」
「あ、ああ。じゃあまた来週部活でな。」
「はい!」

この戦い、必ず勝利して、そして・・・今までの先輩との関係の壁を壊します。