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201 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02:14:14 ID:7Ww8SaUH
「昼間の道ってほんと人いないな……」
辺りを見回しても、誰の人影もない。登校の時間でも、下校の時間でもない。
太陽が真上にある――即ち、真昼だ。普通の人間なら、食事をしている時間。
勿論学生がその範疇から外れるはずもない。今頃、普通の生徒ならば学校で食事をとってい
るはずだ。高校の同級生たちは弁当を。神無士乃たち中学生は、給食を。
食べていないのは、普通ではない学生だけだ。
たとえば――学校をサボって、昼から帰るような。
「なんか堕落した気分だ……」
二限目から授業をサボっただけではなく、その後も全部サボるとは、堕落したと言われても
否定しようがない。
実際、保険の神薙先生には『貴方は堕落しました』とはっきりと言われてしまった。それも
これも、如月更紗のベッドで横になったのが悪かった。ちょっと休むだけのつもりが、気付け
ば寝入ってしまって――起きたときには、なぜか上着が剥ぎ取られ、裸の如月更紗と同衾して
いた。
神薙先生が、生徒の健康状態以外に何一つ興味を持たない人間でなかったら、間違いなく問
題になっていただろう。いや、それ以前にカーテンをめくってベッドを覗き込むような興味心
の強い生徒がいれば、それだけで一環の終わりだ。二度と学校にいけなくなる。 
というか、如月更紗と噂のたっている学校なんて、死んでも行きたくない。
起きたときにはもう昼だったので、午後の授業を受けるのも面倒になり、結局学校をサボる
ことにしたのだが――当然のように、如月更紗はついてきた。
「堕落なんて、そんなわけはないよ」
如月更紗が、まるで僕を赦すかのような笑みを浮かべて、言う。
「最初から底辺じゃない、私たち」
「僕を最底辺扱いするなよっていうか『たち』ってなんだ『たち』って! 僕はな、――」


「お前らと、同類になったつもりはない?」

にやにやと――笑いながら、如月更紗は機先を制したように、そう言った。
「…………」
「同類、同類、同類ね。あんな姉に懸想して、こんな私に懸想されて。そんな心で、一緒でな
いと?」
「…………」
僕は――答えられない。
これだ。
如月更紗のやっかいなところはコレなのだと、短い付き合いながらも悟ってきた。切り替え
氏が速い。ふざけたような態度の中に、鋭い皮肉が混じっている。くるくると表情を変えて、
人がもっとも切り込まれたくないところに話を飛ばす。つねに他人を観察して、隙を狙ってい
なければ出来ない芸当だ。
微笑みの裏側に――にやにや笑いがあるようなものだ。
「同じ穴のむなじ、ということよ」
「……回文っぽく聞こえるがむじなの間違いだ」
ただ、本気でボケてるのか、本音でボケているのか、たまに判別がつかない。
まあ――どちらでも、同じことだ。
「僕やお前や姉さんが同類かどうかはともかくとして、同類項でくくられるのは確かだろうか
らな……正確には、『仲間になった憶えはない』だ」
「それなら正しいわね」
にっこりと、満足したように如月更紗は笑う。
――ふと、思う。
あの日屋上で、如月更紗は僕の身の安全を保証するといった。
けれど。
僕の仲間になるとは――一言も、言っていないのだ。
如月更紗。
よく考えてみれば。
狂気倶楽部の一員とさえ、名乗っていないのだ。
こいつが敵か味方なのか、そもそも何を目的としているのか、調べる必要があるのかもしれ
ない。

202 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02:14:44 ID:7Ww8SaUH
「流石にこの辺りは人が多いわね」
言いながらも、如月更紗は手を離さない。制服を着た男女が――さすがに如月更紗は服を着
ている――手を仲良く繋いで真昼間から歩いているのは少しだけ目立つ。幾人かが、口元に笑
みを浮かべながら僕らを見ていた。
……手を振り解きたい。
しかし――そんなことをしたら、間違いなく鋏が閃く。今も如月更紗の背中には、あの三十
センチものさしを組み合わせたような馬鹿でかい鋏が隠されているのだ。
あの鋏、本気で振ったら首でも撥ねれるんじゃないだろうか。
「平日の昼間でも、無人の街だったら怖いだろ」
軽口を飛ばしながら、周囲を見回す。学校前の長い坂道を降りきって、大きな道路に出たの
だ。片道ニ斜線の道路は交通量が多く、街路樹に沿うようにして歩道が作られている。しばら
くこの歩道沿いに歩いて、信号を渡り、反対側の駅方面へと歩くと自宅に到着だ。
如月更紗を手を繋いで歩道を歩くのは、ある意味羞恥プレイに等しかった。
まあ、こいつ綺麗だから、そこまで嫌な気はしないけど。
「……黙っていれば薄幸の美少女って感じなんだけどな」
「醗酵した美少女?」
「どう考えてもゾンビだそれは」
「納豆星人かもしれないわ」
「そんな奇妙な奴に『美』なんてつけてたまるか!」
思わず突っ込むと、すれ違ったOLがくすくすと笑った。
……傍から見たら、どう見えるんだろう。
考えてみた。
すぐに結論がでた。
――漫才夫婦。
まったく笑えない、泣きたくなるような結論だった。
如月更紗はそんなことを気にする様子もなく、どこか上機嫌そうに小さな声で、
「おー手てつないで帰りましょうー」
「唄うなよ……」
「あら、あら、あら。歌は良いものよ冬継くん。良い舞台には、良い音楽と良い演出が欠かせ
ないのだから」
「……演劇、すきなのか?」
僕の問いに、如月更紗は手を繋いだまま、器用に肩を竦めた。
「この世は全て舞台――シェイクスピアではないけれど、私たちはずっと、ずっとずっと、ず
っとずっとずっと、劇を続けているわ」
「狂気倶楽部、か」
その単語を、簡単に言うなと言われていたけれど。
言わずには――いられなかった。
どう考えても、如月更紗はそのことを言っているような気がしたからだ。いや、それだけで
はない。それを含めた、全てのことを、言っているような気がしたからだ。
僕の相槌をどう思ったのか、如月更紗は微かに、その小さな口元を引き上げた。
「歯車は狂い、螺子は壊れ、脚本は消失し、観客すらも無くしているけれど――壮大で矮小な、
馬鹿げたほどに真面目で、狂おしいほどに狂っている――喜びに満ちた悲劇、ね」
「どうして――」
どうして。
どうして、んなものが、あるのだろう。
どうして、そんなところに、人が集まるのだろう。
どうして。
どうして――姉さんは、そこにいたのだろう。
けれど、言葉から出たのは、心に浮かんだ疑問ではなかった。
「――お前は、そこにいるんだ?」
本心ではない。
けれど、本音かもしれない僕の問いに。
如月更紗は、笑みと共に答えたのだった。
「フラグが立ったら、教えてあげる」
冗談めかしたそんな言葉に――何故だか僕は、少しだけ安堵を憶えていた。
それは、もしかしたら。
この関係が――少しだけ、気に入っていたのかもしれない。

203 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02:15:17 ID:7Ww8SaUH
「……ポートピアなみに難しそうだな」
「犯人はヤスよ」
「知ってるよ」
「貴方を殺した犯人よ?」
「俺が死ぬのか!?」
初耳だった。
というか、ありえない話だった。
「あと数十ページほどで何の脈絡もなくヤスが登場して貴方を殺すのよ」
「そういうメタ的な発言は頼むからやめてくれ……お前が言うと本当になりそうだ」
この女が悪魔と契約していても僕は驚かない自信がある。
それくらい、やりそうだし。
「ま、あんまり期待せずに待っとくよ――」
言って、僕は如月更紗から視線を逸らした。少しだけ気恥ずかしくなったのだ。そんな心中
を察したのだろう、如月更紗は僕から視線を逸らすことなく、にやにやと笑ったまま、ずっと
僕を見ていた。
…………。
…………いや、そこは視線をそらせよ。
心中を察したからこそ視線を逸らさなかった、というべきか。
あんまりにも凝視されるので、居心地が悪くなってさらに視線を逸らす。
――と。
「…………」
道路を挟んだ対岸の歩道に、おかしなものがあった。
おかしなものが居た、だとはすぐに気付けなかった。初見で、それが人だと分からなかった
からだ。
――影が直立しているように見えた。
そう言うのが、一番正しいのだろう。よく見てみればそれは人間だが、一見すると、長細い
影が立っているようにしか見えない。
少年だった。
鴉色のズボンとブレザーを着ているせいで、黒一色の影に見えた。そしてそれ以上に――頭
に被っているシルクハットが、影の印象を強めていた。
夏だというのに、白のカッターシャツと臙脂色のネクタイは、ブレザーに隠れてほとんど見
えない。見るからに暑そうな顔だったが、少年は平然としていた。シルクハットはいまにも落
ちそうで、頭の頭頂部から首のあたりまでを広いつばがすっぽりと隠していた。
奇妙な少年だった。
何よりも奇妙なのは――少年は、目があった瞬間。

僕を見て、にやにやと――それはまるで、如月更紗のように――確かに、笑ったのだった。

「…………」
僕は。
そのにやにや笑いを見て――何を思うよりも早く。
「――あ。」
横にいる如月更紗の間の抜けた声と同時に――電信柱に思い切り頭をぶつけたのだった。
「い、」
痛い、といえなかった。
ぐわんぐわんと頭の中で鐘が鳴っていた。横を向いて歩いていたせいで、正面にあった電柱
にまったく気付かなかった。そりゃあ、横見て歩いてればふらふらと行先がずれるかもしれな
いが……まさかぶつかるとは考えもしなかった。
「痛い……」
ようやく、痛いと主張できる程度に回復してきた。そこまで速度が出ていなかったので、こ
ぶができるほどでもない。それでも、ぶつかったところがひりひりと痛んだ。
如月更紗は手を繋いだまま、そんな僕を見て、くすくすと右手で口元を押さえて笑った。

204 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02:16:21 ID:7Ww8SaUH
「面白かったわよ」
「…………」
「もとい、大丈夫?」
「できればそっちを先に言ってほしかった」
「もとい、大丈夫そうね」
「言い直すなよ!」
「それだけ突っ込めるなら、大丈夫というものよ」
言って――如月更紗は、すっと。
いつもは凶悪な鋏を握る、細い指で、僕の頭を撫でた。
指先が――頭皮を撫でていく、優しい感触が遅れてきた。
「痛いの痛いの」
撫でながら、如月更紗は言う。
「増えたら面白いわね」
「面白くね――! お前僕の身の安全を保証するんじゃなかったのか!?」
「身体をはったギャグだと思ったわ」
「そんな生傷だらけの青春はごめんだ!」
心の底からごめんだった。
如月更紗の手を振り払うように体勢を整え、ついさっき少年を見た方へもう一度視線を走ら
せる。けれど、あの影のような少年の姿は――それこそ影のように、蜃気楼のように消えてい
た。
見間違い、だろうか。
普通に考えれば呻いている間に立ち去ったと考えるんだろうが……なんとなく、あの少年の
雰囲気が、そんな常識的な解答を拒んでいた。
シルクハットをかぶった、にやにや笑いの少年。
まあ――少年がにやにや笑っていたのも、この展開を予想していたかもしれない。そりゃあ
横向いて歩いている男の前に電柱があったら誰だって笑うだろう。
気にするほどの、ことでもないか。
「ドッペルゲンガーでも見たかのような顔をしてるわ」
少年の姿を見失った僕に、横に立つ如月更紗がそっと口添えた。
ドッペルゲンガー。
似たような、ものなのかもしれない。
僕とは似てもつかなかったけれど。
しいていえば――雰囲気が、似ていた。
僕ではなく。
如月更紗に、似ていたような気がした。
「そんなところだ」
「鏡でも見たかのような顔をしてるわ」
「それは酷い侮辱だ!」
鏡を見るたびに鬱になれというのかこの女は!
ゴッホの抽象画みたいな顔をしているつもりは一切ないんだが。
「何を見たのか知らないけれど」
珍しいことに、こほん、と如月更紗は咳払いして。
一歩だけ踏み込んで、僕の瞳を間近から覗き込んで、彼女は言った。
「出来ることなら――私だけを見てほしいものだわ」

205 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02:17:48 ID:7Ww8SaUH

以上で十一話終了です。山場のぼりかけといった所
次でようやく山と、病んだシーンを書けそうです

206 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02:49:14 ID:MAWLByRU
GJ!
この軽快な口調の電波娘がどのように病んでいくのかがとても気になります。


>シルクハットをかぶった、にやにや笑いの少年。

あれ?もしかして、(男装している)マッド・ハンター?
如月更紗はマッド・ハンターじゃない??


>Bルートはトゥルー

うお、新事実発覚!
メインヒロインは神無士乃だったのか!?

207 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02:50:08 ID:UUM9gXcp
いない君といる誰かキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆

GJ!
主人公と更紗のやり取りにほのぼのしてしまいました

208 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 04:27:55 ID:UpU7PADd
GJGJGJ!!
これは面白すぎるだろ……常識的に考えて……

209 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 08:02:55 ID:qNFQ+vxW
>>196
手首切り落しって・・・・・・しかも男のじゃなくて自分の?すげえや。

>>205
これは面白くなってきたましたね。
あの少年は倶楽部の関係者なのか?それとも主人公と同じ考えを持っているのか?
wktkです。



えーと、俺らも誤字の指定はしていいのかな?
だとしたら、
>>201
>如月更紗のやっかいなところはコレなのだと、短い付き合いながらも悟ってきた。切り替え
>氏が速い。ふざけたような態度の中に、鋭い皮肉が混じっている。くるくると表情を変えて、

の『切り替え氏』は『切り替えし』じゃないのかな?
と思ったりするんですが。

いや、みんな待って!バットはさすがに危なくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」

210 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 08:55:27 ID:h0klp62Q
>>206
よく考えろ
マッド・ハンターのシルクハットは頭にちょこんとのっけるタイプで爵杖を持っている
つまり主人公が見たのはヤマネの死体を処理した……



あ、誰か来た

211 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 10:26:14 ID:uUIYnH25
>>209
それも違くね?
「切り替えし」じゃなくて「切り返し」だろ

212 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 10:41:26 ID:qNFQ+vxW
>>211
そういやそうだ。
俺のミスまで指摘してくれてありがとう。

君みたいな人は初めてだ。
結 婚 を 前 提 に 付 き 合 っ て く だ さ い !

213 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 10:56:45 ID:xMkeqk+n
誰だ!誰だ!誰だ~お前はだ~れだ~>シルクハット

214 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 14:22:05 ID:NEr9ZgPx
なんか最近>>205氏のSSのストーリ-がよく分からなくなってきた
だれかまとめてくれ、頼む

215 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 15:17:36 ID:9yD2ehT5
>>214
シスコンの少年が通り魔と恋に落ちる話

216 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 16:13:18 ID:UpU7PADd
>>214
まとめサイト読んだら?
前作と繋がってるから、その辺も含めて

217 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/02(金) 20:58:26 ID:to+plQON
あのあれだ。
なんというか、更沙の接頭語?×3の喋り方はマッド・ハンターそのものジャマイカ!と指摘してみる






というより、更沙がマッド・ハンターであって欲しい今日この頃。

218 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/02(金) 22:00:10 ID:gA0JCOH+
>>217
そうなると、何故表舞台に出てきたのかが話の焦点になるんだろうな…

ウサギ兄妹の出番があるかなぁ、作中一番好きな人物だし。
幹也君が。

誰だアンタ、え?
「兄さんを愛していいのは私だけです」
ザシュッ!!

暗転

219 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:25:14 ID:9yD2ehT5
>>218
あのヤンデレ兄妹が出てくるとどうしても他の登場人物が死んでしまう
死亡フラグのようなキャラだからなあ……
ラストで出るかもしれません

誤字の指摘、まとめへの転載、感謝しています。ありがとうです。

12話投下します。



220 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:25:52 ID:9yD2ehT5
「KRの4」
わざわざ口で宣言して、如月更紗は黒のクイーンを動かした。かつん、と木の触れる良い音
がする。プラスチック製の安物ではない、しっかりと造られた木彫りのチェスだ。赤と白――
ではなく、黒と白。白は使いたくない、と如月更紗が言ったので、僕が白、如月更紗が黒だ。
姉さんが買ったチェス盤で、姉さんと遊んでいたチェスを、如月更紗としている。
妙な違和感があった。
なんで僕はこんなことをしているんだろう――とめどなくそう思う。
「…………」
チェス盤がある以上、口頭する必要はない。無言のまま、白のポーンを動かす。かつん。音
を共に木彫りの兵士が一歩前進。目指すは黒のキングだ。もっとも大してやる気があるわけで
もないので、先の先を読もうとも思えなかった。その場しのぎの、読み合いですらない適当な
チェスだ。
負けているのかも勝っているのかも、よく分からないチェスだ。
「なんで僕らこんなことしてるんだろうな」
独り言のように呟くと、予想外にも如月更紗が反応した。タイムラグ・ゼロで黒のポーンへ
と伸ばそうとしていた手を止めて顔をあげる。
「貴方が暇だと言ったから」
「……分かりやすい解答をありがとうな」
確かに、言った覚えがある。暇だ、と。しかし――だからといって、如月更紗と仲良く遊ん
でいる自分というものに、どうしても慣れることができない。
だが、それ以上に。
「それと――お前の格好に、関連性はあるのか?」
僕の問いに、如月更紗はきっぱりと「ないわね」と答えた。
答えて、微笑む。
ブラウス一枚だけの姿で、幸せそうに微笑んだ。
「…………」
そんなふうに笑われては何もいえない。
チェス盤が置かれているのは机でも床でもない。ベッドの真ん中に、毛布に沈めるようにし
てチェス盤はあった。ベッドの頭側と足側に向かい合うようにして座っているのだが――その
向かい合う如月更紗の姿が問題だった。
制服を脱いでいる。
スカートと靴下も脱いでいる。
半そでのブラウスはボタンひとつしか止まっていない。案の定というか何と言えばいいのか、
その下に下着をつけている様子はない。ショーツとブラウスのみだった。
……なんか、よく考えれば、こいつの制服姿か裸のどちらかしか見た覚えがない。
何と言うか、色々な面で問題だった。
「露出狂め」
「ブラウスも脱いで欲しい、と?」
「僕が露出狂じゃなくてお前がだよ! 誰が裸を迫った!?」
「私の中の冬継くんは、笑顔で全裸調教を迫ることのできる人だわ」
「捏造だよそれ! 妄想以下だ!」
「あ――これは貴方でなく須藤くんだったわね。ごめんなさい」
「誰だよ須藤……」
というか、その須藤くんとやらは笑顔で全裸調教を迫るような奴なのか。
恐ろしい世界だった。

221 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:26:30 ID:9yD2ehT5
「制服はあまり好きではないのよ。家の中でくらい脱ぎたいわ」
「ここはお前の家じゃなくて僕の家なんだけどな」
「間を取って二人の愛の巣ということでどうかしら」
「間どころか彼方に跳んでるじゃねーか!」
「冗談よ。――Kの2。チェック」
急にくるりと話を変えて、黒いナイトを如月更紗は動かした。そのまま、チェス盤に見入っ
て言葉を続けようともしなかった。そのくせ、確実にチェックメイトへと迫っているのだから
意地が悪い。
はぁ、とため息ひとつ。
「どんな服が好きなんだよ」
言って、こちらも白のナイトを動かして、赤のナイトをとった。伏兵でも策略でもない、た
だのその場しのぎの戦いだ。こんな曖昧なチェスを、夕方からずっと続けている。
家に帰ってきたのは、昼過ぎだった。
帰ってきて最初に驚いたのは家の鍵が開いていたことであり、二番目に驚いたのは人の部屋
に見覚えのあるキャリーバッグが置いてあったことだった。問い詰めてみると、僕と神無士乃
が学校へ向かった後、こっそり家に戻ってキャリーバッグを置き、それから学校に向かったこ
とを如月更紗はあっさりと白状した。
悪びれもなく。
不法侵入だ、と突っ込むと、涼しい顔で『ノックはしたわ』と返された。そういう問題じゃ
ないが、それ以上突っ込んでも完全に無駄なので放置。
なんとなく寝たりなかったので、ベッドで如月更紗と寝て――一緒に寝ることに慣れてしま
った自分が怖い――夕方に目を覚まし、如月更紗にブラウスとショーツを着せて、今に至る。
窓の外ではもう陽が完全に沈んでいた。真夜中、ではないが、どっぷりと夜に浸かっている。
今外に出て空を仰げば、きっと綺麗な月が見えるだろう。
閑散とした住宅街なので、やけに静かさが耳についた。
「服――見たい?」
ちらりと、トランプ柄のキャリーケースを見て、如月更紗はそう言った。少しだけ考えて、
「いや、いい」と断る。今も如月更紗の背後には巨大な鋏が置いてある。あのキャリーケース
が開いたとき、中から何が出てくるのか考えたくもなかった。
「裸のほうが好きということね」
「誰がそんなこといった!」
「裸の私は嫌いかしら?」
「枕詞に裸をつけるなよ! 僕がすごい駄目人間みたいだろそれだと!」
「違ったかしら」
「く……っ」
違うと言い切れないのが悲しかった。
「クイーンをK列へ」
話の流れを斬るように、如月更紗のクイーンが動いた。こつん、と木が鳴る。盤面で、白と
黒の駒は行ったり来たりを繰り返す。
将棋と違って、復活はしない。
欠けてしまえば――戻らない。

222 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:27:06 ID:9yD2ehT5
「……狂気倶楽部には、チェスの二つ名もいるのか?」
なんとなく。
意味もなく――そんなことを、僕は如月更紗に尋ねた。暇潰しだったのかもしれないし、話
題逸らしだったのかもしれない。
けれどもそれが、僕と彼女を繋ぐ、最大の接点であることに変わりはなかった。
「――――」
如月更紗は、すぐには答えなかった。しばらくの間、迷うように盤面に視線を彷徨わせてい
た。そこから何を読みとろうとしていたのかは、やはり僕には分からない。
分からない。
「例えば、そう――」
どうして如月更紗が――その駒を指差すときに、微かに躊躇っていたのか、僕には分からな
かった。

「――白の女王とか」

如月更紗は、その細い指先で――白のクイーンを、指差したのだった。
「…………」
指された駒を、何気なく持ち上げる。木を掘られて出来た駒は重くもない。
チェスの中で、最強の駒。
そして、同時に。
「……不思議の国のアリスにもいたよな」
「そうね」
気のない返事を、如月更紗は返した。何か、思うところがあるのだろう。
――狂気倶楽部では、二つ名を授かる。『本当の自分』を現すためか。『現実の自分』から
逃げるためか。とにかく、彼は、彼女は、仇名を授かる。
如月更紗にも、あるはずだ。
『白の女王』は彼女の知り合いなのかもしれないし――彼女自身なのかもしれなかった。
いい加減、それをはっきりさせたかった。
持ち上げた白のクイーンを、QRの6へと置き、僕は宣言する。
「チェック」
「え、嘘?」
ばっと如月更紗が盤に顔を近づける。黒く長い髪が、チェス盤の上に垂れた。
チェスに集中していなかったのは如月更紗も同様だったのだろう。盤の上では、黒のキング
が完膚なきまでに追い詰められていた。
完全に、詰みだ。
「……私の負け?」
「そうみたいだな」
「…………」
無表情で盤面を眇める如月更紗にわずかな優越感を感じつつ、僕は本題を切り出すことにす
る。
「勝ったんだから――ひとつくらい、言うこと聞いてもらうぞ」
「……分かったわ」
無表情のまま、それでも微かに声に悔しさを滲ませて、如月更紗は頷いた。頷き、ひとつだ
け止まっていたブラウスのボタンを自分で外す。
――って、おい。

223 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:27:47 ID:9yD2ehT5
「この身体を自由にし」
「だれがそんなことをしろと言った!」
「……せめて最後まで言わせて欲しいわね」
「最後まで言わせてもろくなことにならないだろうが」
それ以上に、口を開けばろくなことを言わない。
本当にろくでもなかった。
「こういった冗談は、結構好きなのよ」
さらりと、耳元にかかっていた黒髪を後ろに流して、如月更紗は言った。ブラウスの前を止
めようとしないが、もう着ているだけでよしとする。
「それは知ってる」
「なぜ好きかというとね――」
「いや、説明しなくていい」
ろくでもない言葉が出てきそうな気がして制止するが、如月更紗は聞いちゃあいなかった。
くすりと、口元を押さえて笑い、
「向こう側だと、冗談にならないからよ」
「――――」
「冗談でしかありえないことを、本気でやる人しかいないから」
それこそ須藤くんしかりね――そう、如月更紗は、冗談めかして言葉を結んだ。
冗談で、あるはずがなかった。
如月更紗の言葉が、冗談であるはずが、なかった。
沈黙する僕に、如月更紗は笑いながら続ける。
「そう考えると、冬継くんは不思議よね。貴方は明らかに向こう側を許容しているのに――自
身は渡っていないなんて」
「……何を言ってるかさっぱりだ」
いや。
言いたいことは分かる。狂気倶楽部なんてものと平然と向かいあう人間なのに、お前はなぜ
狂っていないのだと、そう如月更紗は問うているんだろう。
そんなことに、答えられるわけがない。
自分が狂っているかどうかなんて――自分で、分かるはずがない。
「そんな冬継くんだからこそ、私は今ここにいるのよね」
どこか、楽しそうに。
どこか、幸せそうに。
如月更紗はそんなことを言って、ベッドにぽすんと身体を倒した。生々しい生足が放り出さ
れてむき出しになる。低い視点から、僕をじっと見上げてきた。
「それで、何を聞きたいの?」
「…………」
チェックをとった白のクイーンを弄びながら考える。聞きたいことは、幾らでもある。
狂気倶楽部での姉さんのこと。
姉さんを殺した奴のこと。
ウサギのことを聞いてもいいし、それ以外の誰かについて聞いてもいい。
あるいは――如月更紗が、どうして狂気倶楽部に入ったのか、とか。
冷静に考えれば、聞くべき質問は決まっているはずだ。復讐のためにどこまでも走ればいい
。無理矢理にでもソイツの特徴を聞きだして、今すぐ家を飛び出て探せばいい。
けれど。

そのときはきっと――如月更紗と、決別するのだと、思った。



224 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:28:27 ID:9yD2ehT5

顔を上げる。部屋の隅に、姉さんはいる。姉さんはずっとそこにいる。如月更紗と添い寝を
する僕を、如月更紗と遊ぶ僕を、如月更紗と話す僕を、変わらぬ笑みで見ている。
姉さんは、いつでもそうだ。
変わらない。
変われない。
死んですら、変われない。
僕の中で生きている限り――変わることは、ない。
僕は。
僕は姉さんに――何をしたいんだろう。
姉さんに、何をしてほしいんだろう。
死んだ姉さんに対して――僕は果たして、何を思っているんだろう。
そんな、はじめに考えておくべきことを、疑ってしまう。結論は分かりきっているはずなの
に、分かりきっているそれを言葉に出せない。
――迷っているんだろう。
何に迷うのか、分からないほどに。
「……なあ、如月更紗」
結局、僕は。
「今日帰りに、変な奴をみたぞ」
結論を出すのを――先延ばしにした。
答を、先送りにした。
それが何の意味もないと、知りつつも。
そんな僕の心中を、如月更紗の黒い瞳は見抜いていたのだろう。「そう」と頷くだけで、僕
に対して追及してこようとはしなかった。そのことに安堵しながら、僕は今日の昼、帰り道で
見た少年のことを思い出す。
「絶対暑いと思うんだけど、冬物のブレザー着てたんだよ。それだけでもおかしいけどさ、そ
いつ、ぶかぶかのシルクハットを被ってたんだ」
他人から聞いた面白おかしな噂話を話すつもりで語った。
だというのに。
如月更紗の反応は――劇的だった。

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――冬継くん」

表情が、止まった。 
声が、止まっている。
何もかもが抜け落ちてしまって、表情を浮かべることができなくなってしまったような貌を
していた。見開いた瞳が、鏡のように僕を映している。
驚いて、いるんだろう。
僕もまた驚いていた。如月更紗が驚くということに、驚いていた。
驚きをまったく隠そうとしないまま、如月更紗は、震える声で言葉を紡ぐ。
決定的な、一言を、吐く。

「そいつは―――――――――――――にやにや笑いを、浮かべてはいなかっただろうね?」

にやにや笑い。
他人を嘲うような、からかうような、笑み。
にやにやと、そうとしか効果音のつけようがない笑み。
それならば、確かに――
「……浮かべてた、な」
思い返せば、あの少年は終始笑っていた。僕を見て、如月更紗と手を繋いでかえる僕を見て
、にやにやと笑っていた。てっきりバカップルぶりを笑われていたのか、電柱にぶつかったの
を笑われたのかと思っていたが……
それがどうしたというのだろう。
にやにや笑いくらい、誰だって浮かべると思うのだが。まあ、黒一色の姿ににやにや笑いと
いうのは、確かに変ではあったけれど。
けれど。

225 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:29:06 ID:9yD2ehT5
けれど――如月更紗の反応は、今度こそ、劇的過ぎた。
「どうしてそれを言わないのよ!」
傍から見て退いてしまうほどの勢いで如月更紗が立ち上がった。反動でベッドの上に置かれ
ていたチェス盤が撥ね、駒たちがばらばらと転げ落ちる。そんなことに如月更紗は委細構わず
にベッドから飛び降りる。
化学反応のような反応だった。
劇的過ぎて、ついていけない。
「おい如月更紗、いったい何が――」
状況についていけず、問いかけた僕に。
如月更紗は、一言で答を返した。

「――チェシャだ!」

「チェ――シャ?」
意味が飲み込めず、意識せずに反復してしまう。如月更紗はベッドに置いていた鋏を握り、
しゃきんと、慣らすかのように一度鳴らした。
「そいつがチェシャなのよ!」
――チェシャ。
不思議の国のアリスに出てくる、笑いだけが残る猫。
そして、それ以外の意味については、今朝説明を受けたばかりだった。
索敵と、警戒と、罠を担当する――狂気倶楽部の、『外』に対する役割。
番犬であるアリスを呼ぶための――呼び水。
闇に溶けるような服装をし、にやにや笑いだけを残す、悪趣味な猫。
つまり、つまりは――

間違いの無い、敵だ。

「昼に補足されたなら、今夜には間違いなくアリスが来る。今はチェックを受けてる段階。こ
ちらの反応次第では、間違いなく詰まれるわよ」
鋏をもうニ、三度鳴らし、くるりと回して如月更紗は言う。鋏の遣い具合をチェックしてい
るのだろう。……ということは、今夜あれを振うかもしれないということか。
狂った凶器にしか見えない鋏を見ていると背筋が冷えるが、敵でないだけ安心だ。屋上でや
られたように、僕の首筋に添えられるということはないだろう。
問題は、如月更紗ではない。
問題はチェシャで――そいつが呼ぶ、アリスだ。
アリスが、やってくる。
敵が、やってくる。
けれど、それは。
「考えようによっては――これはチャンスか」
「……え?」
僕の言葉に、如月更紗は疑問符と共に振り返った。長い黒髪が宙を舞う。その毛先を目で追
いながら、僕ははっきりと告げる。
「僕の目的は、アリスやらチェシャやらを打破することじゃなくて――そいつらを押しのけて、
姉さんを殺したウサギと会うことなんだからな」
チェシャがどんなやつだろうと。
アリスがどんなやつだろうと。
あくまでそれは障害物に過ぎない。僕の目的は、姉さんだ。
そう、自分に言い聞かせるように、僕は言う。
如月更紗はそれでもしばらく沈黙していたが、やがて、ふぅ、とため息をついた。
「仕方がないわね――」
その後、如月更紗が何と言おうとしたのか。
知る機会は、永遠に失われた。
次の瞬間に――


ピンポーン、と。軽い電子音が、家の中に響いたからだ。



226 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:30:10 ID:9yD2ehT5
「…………」
「…………」
一瞬で――場に緊張が満ちる。
タイミングが、良すぎる。
まさか。
まさかこのタイミングで、正面から堂々と、アリスが――
その杞憂もまた、次の瞬間に破られた。
どんどんと、どんどんどんどんと、荒々しく扉が叩かれたからだ。そして、扉を叩く音に被
せるようにして、どことなく間の抜けた声が聞こえる。
「里村くぅん――! あけて――! お願い――!」
半分泣いてる、女性の声だった。
聞き覚えのある、女性の声だった。
「……なんだ、神無佐奈さんか」
胸をなでおろし、僕は窓の方を向いて油断なく鋏を構えていた如月更紗を見る。
――裸に鋏。
どう間違っても、この姿を見られたら、この家から出ていかなくてはならない。
「……如月更紗」
「何?」
「ちょっと対応してくるから、この部屋で待ってろ」
「でも――」
「知り合いだから大丈夫だ」
あまり問答している時間はなかった。話している間にも、どんどんという音と、泣き声は二
階にまで届いてくる。神無佐奈さんは非力だからドアは壊れないだろうが……その前に拳が壊
れるんじゃないだろうか。
一方的に言って、僕は如月更紗を置いて一階へと降りる。その間にも、ドアはどんどんと鳴
っていた。
「はいはい、今出ますよ――」
言って、ドアをがちゃりとあけると、
「あ。」
ドアを叩こうとしていた神無佐奈さんが、バランスを崩して、僕の胸に飛び込んできた。
どん、と少し重い感触。如月更紗の軽い体と違って、神無佐奈さんは、実の娘である神無士
乃と同じように女性的な体つきをしていた。回りくどくない言い方をすれば、胸に大きな重り
が二つあるせいだろう。
ぶつかっても痛くないのは、その重りのおかげだが。
「……どうしたんですか、こんな夜中に」
夜中に――というほど夜でもないが、日が暮れてから、こんな風に神無佐奈さんがきたこと
はなかった。神無士乃ならばこんな来客もおかしくはないが――いくら幼く見えるとはいえ、
神無佐奈さんは立派な大人であり、母親だ。そこまで常軌を逸したことをするとは思えなかっ
た。
しかし……
本当に幼いな。胸の中にすっぽりと収まる身長といい、制服を着れば学生にしか見えない顔
といい。本当にこの人、母親なのだろうかと、たまに疑ってしまう。今はゆったりとした私服
にエプロンをつけているおかげで、かろうじて家庭的な人に見えた。
神無佐奈さんは、「はわわ」と慌てて僕から離れ、裾で涙を拭った。
本当に泣いてたのか。
涙を拭った瞳で、神無佐奈さんは僕を見上げて言う。 
「あのね、士乃ちゃんが帰ってこないの。冬くんのところにいるかと、佐奈さん思ったんだけ
ど」

227 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:31:22 ID:9yD2ehT5
「――神無士乃が?」
「冬くん。士乃ちゃんのこと、呼び捨てにしてもいいんだよ? そんな他人事みたいに言わな
くても――」
「いや、そんなことはどうでもいいですから。――神無士乃が、帰ってきてないんですね?」
「え、うん、そう」
こくこくと、勢いよく神無佐奈さんは首を縦に振った。
「学校からまだ帰ってきてないの。冬くん、いっつも一緒帰ってきてるから、そっちの家に行
ったんじゃないかなって、佐奈さん思ったの」
「いや――」
言葉に詰まる。
今日は、僕は神無士乃とは一緒に帰ってきていない。
いや。
正確に言えば。
今日は、初めて――神無士乃と、一緒に帰らなかった。
帰れなかったことは幾度かある。ただしその場合は、あらかじめ連絡を入れていた。連絡な
しで帰れなかった場合、神無士乃は犬のように、忠犬のように坂道で待っていたから、結局遅
くはなっても一緒に帰っていた。
けれど。
今日、初めて――僕は、神無士乃よりも、早く帰った。
神無士乃との、約束を、破った。
いつも繰り返していた日常を――僕の方から、破ったのだ。
「まさか……」
頭の中に浮かぶ想像は最悪なものだ。


――神無士乃は、今もあの坂道で、僕を待っている。


一度思い浮かんでしまえば、それは、取り消すことのできない事実に思えた。
今朝見た、神無士乃のあの姿。
あの神無士乃ならば――たとえ一晩だって、あそこで待っているだろう。
チェシャやアリスが徘徊する町で――僕の知り合いである神無士乃は、ずっと、そこで無防
備に立っているのだろう。
僕を待って。
僕を、信じて。
「……くそ!」
思わず、悪態をついた。それは神無士乃へと向けたものではない。彼女の優先順位を低く見
すぎていた僕に対するものだ。声をかけることくらい、できたはずなのに。
夕方一緒に買い物に行こうと――約束していたのに。
「神無佐奈さん」
僕は神無佐奈さんの横を通るようにして靴を履き、つっかけながら外に飛び出る。
夜の街は暗く静かだ。遠くで月が輝いている。街頭の光が、頼りなく街を照らしている。
この先に、きっと神無士乃は待っている。
「……迎えに行ってきます」
今からでも、遅くない。
謝るには、遅くはない。
神無士乃を――迎えに行こう。
僕は迷わずに、全力を持って、夜の街へと駆け出した。

そこに何が待ち受けているのか、知らぬままに。



228 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:33:22 ID:9yD2ehT5

以上で十二話終了です。
今回鏡の国のアリスの小ネタがちょっと入ってます。

次回でようやく、書きたかった二つのシーンが書ける……
急加速して急落下する予定。



229 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:36:34 ID:Es5M5QVt
いや、ほんと面白いですわ。
貴殿に賛辞を。そして来たる惨事に賛辞を。

230 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:41:51 ID:ArCuoT3z
>>228
うはwwwGJ!!
次回の燃える展開を期待しております。

>>229
誰がうまいこと(ry

231 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 23:57:41 ID:HFsgaaYl
>>228
GJGJGJ!
wktkが止まりません!

232 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 04:24:00 ID:7fRsZeef
GJ!!
改めて思ったが…
この作品を読むのは夜寝る前に限る!!

233 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 04:33:26 ID:hgKIvNKi
GJ!!
夜中まで待ち続ける神無士乃。病んでますね。
迎えに行ったら行ったで「あの女のにおいがする!!」
とか言いそうで怖いww
あ、如月更紗とはまだ面識がないか……。


234 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 05:00:24 ID:hgKIvNKi
>あの勇敢な鼠の騎士は

読み返してみたら、十話でリーピ・チープのネタがww

235 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 05:40:27 ID:BmdBoyHk
GJGJGJGJGJ!
次回姿を現す?裁罪のアリスに激しく期待!

236 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 05:50:33 ID:WyQwLqj1
ああ…ヤンデレスレなのに敢えて言おう
誰にも死んで欲しくない!!
キャラを愛しすぎてしまったのか…

237 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/03(土) 06:54:48 ID:5QP1HQSR
GJ!
>赤のナイト→黒のナイト かと思われる。
更紗と冬継に幸あれ。
微妙に死亡フラグが立ちましたがあえてスルー…させてください!

238 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 10:49:11 ID:0B9RN4eO
何という… 何という…

ヤンデレ以外の要素で燃えてしまうから困る

239 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/03(土) 11:56:03 ID:RgYVpYBY
贖罪のアリスが神無士乃っていう展開も燃えるな。

そうだといいな

240 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/03(土) 12:55:01 ID:5QP1HQSR
>>239
おぉ!それもいいな~って、はッ!?
まずい…確実に更&冬のどちらかもしくは両方の命が……。


241 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 13:37:17 ID:J68D0dFA
須藤兄妹がセットでアリス
という錯乱したような予想を置いていく

242 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 13:52:11 ID:Tq0g9ULk
>>228
遅くなりましたがGJ!果たしてこの先に何があるのか……

ところで保管庫見たらidealがいい所で中断してるんだよなあ……再開をお待ちしております

243 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/03(土) 16:10:19 ID:RgYVpYBY
>>240
故にBがトゥルーになる。
と予想する。

244 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 17:27:06 ID:BmdBoyHk
A=グッド
B=トゥルー

こういう事?

245 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 18:16:30 ID:2+yTM92I
いや、自分は神岸トラップと予想。
神無士乃の好感度を上げておかないと如月更紗のEDにたどり着けないとみた。

246 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/03(土) 19:31:04 ID:RgYVpYBY
マッド・ハンター=髪フェチと認識しているので、冬継に接触した理由が『冬継の髪が綺麗だから』だったらやだなぁ

ん?それでこそヤンデレか?

247 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 21:06:36 ID:hgKIvNKi
>>244
作者氏の上のレスによると

A 本ルート
B トゥルールート
C 姉ルート

らしい。

248 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:34:16 ID:vpHTOitt
>>229
誰がうまいことを(ry

>>ルート
一応プロットとしては以下のようになりそうです
A-1 ハッピーワールド・ルート
-2 ループパーティ・エンド
B  トゥルーラブ・ルート
C  バッドエンド

結構長くなってしまいましたが、読んでくれてるスレのみんなありがとうです
これにて一区切り終了、第十三話投下します。
アレとかアレとかの影響を一部受けてますがごめんなさい。

249 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:34:54 ID:vpHTOitt
時計を持っていないので時間が分からない。太陽の位置ならともかく、月の位置から時間を
特定する方法は忘れてしまった。まだ月は真上には浮かんでいない――それでも太陽が完全に
消えてしまっているので、もう完全に夜だということは分かる。
夏の夜空には星がよく見える。星座の形なんて小学校にならったきりで忘れてしまった。北
極星が見えるのは夏だったか冬だったか。そんなことももう憶えていない。
思考が錯綜しているのが、自分でも分かっていた。
姉さんの次に付き合いが長い少女。神無士乃が、ここまで逸しているとは思っていなかった。
普通の人間なら、とっくに帰ってきているはずだ。
いや。 
いや――違う。
そもそも、前提が違う。
今まで一度も考えたことがなかったが、よく考えてみれば、普通であるはずがないのだ。普
通でない姉さんと付き合える僕と、長い間付き合ってきた神無士乃が――普通であるはずが、
ないのだ。
類は友を呼ぶ。
朱も交われば赤くなる。
血に交われば赤くなる。
いつからかは分からないけれど、神無士乃は、とっくに逸脱しているのだ。
元に戻れないほどに――かどうかは、分からない。神無士乃は明るくて、学校で存在感なく
窓際で本を読むような、そんな少女じゃない。ごく普通の、年相応の少女らしい面だって持っ
てる。
それと同じくらいの比率で、朝見せた、あんな表情だって、裏側に持っているのだ。
片足を――踏み込んだようなものか。
向こう側に片足を踏み出して。
こちら側に片足を踏み入れて。
曖昧なところで、揺れている。
なら。
その背中を、とんと押すのは。
その腕を、ぐいりと引くのは。

僕次第じゃ、ないんだろうか。

「…………くそッ」
もう一度悪態をついて角を曲がる。暗い一本斜線の道を、電柱につけられた灯と家から漏れ
出る光が照らす。家に帰る時間はもう過ぎている。今は、家の中でのんびりする時間だ。辺り
には誰もいない。暗い道がどこまでも続くだけだ。
走る。
どこまでも――走る。息が絶え絶えになっても、途中で休みたくなっても、走る。歩いて三
十分以上かかる距離でも、走れば半分にできる。走りながら、どうせなら自転車に乗ってくれ
ばよかったと後悔するが、今更遅い。鞄を持っていないのが救いだ。
夜の道を、全速力で走る。
力の限り。
命の限り――走る。暗い夜道を直進し、曲がり、くねり、ひねり、よどみ、うねり、闇夜の
奥の果てを目指す。
風景が後ろに流れる。
目的地が近づく。
あと角を二つ曲がり、一つの直線を走れば、あの大きな国道に出る。歩道橋を渡って反対側
に行き、坂道を少し登ったところが、神無士乃との待ち合わせ場所だ。
そこまで、走る。
休むのは、そこについてからだ。
僕は走り、角を曲がりながら――ふと。
三匹の子豚の話を、思い出す。

250 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:36:10 ID:vpHTOitt
狼がこないように、レンガの家の中に逃げましょう――三匹の子豚の話はそういう物語であ
り、子豚たちがとった行動は正しい。どうしようもなく正しい。レンガの中の中にいれば、狼
はやってこない。それは確かだ。狼のすさましい吐息は、レンガの壁を壊すことができなかっ
たのだから。
でも。
狼にしてみれば――そんなことは、どうだっていいのだ。ワラの家を吹き飛ばすようなとん
でもない狼にしてみれば、レンガの家を突き崩す手段なんて、いくらでも思いつくはずだ。そ
れをしなかったのは、その労力に見合う対価が、子豚三匹じゃ足りなかったからだ。
家をどうにかする必要はない。
家から出てくるを待てばいい。
生きている以上――いつまでも、家にいるわけにはいかないのだから。安心すれば、油断す
れば、あるいは朝がくれば、子豚は家の外へと出てくる。そのときに、ぱくりと食べてしまえ
ばいいのだ。
けれど、もしも。
子豚が想像よりも予想よりもはるかにアホで――あるいは、そうしなければならない理由で
――その夜のうちに、レンガの家から飛び出てきたら。


狼が、襲わない理由など、何一つないだろう。


目的地に辿り着くまで、止めないと誓った脚が――止まる。
止めざるを、得なかった。
無理矢理に走り抜けることもできた。そうしなかったのは、目の前に立ちふさがる相手が、
あまりにも異形だったからだ。闇夜の路地、月明かりの下、『通せんぼ』をするかのように、
道の真ん中に立ち尽くしていたその異形を、ただの一言で現すのならば。

――黒白。

白く、黒い。モノクロで、歪な、少女だった。
着ている服は、月の光を浴びて輝かんばかりに白い服だった。フリルの過剰な、洋服という
よりはドレスに近い。ウェディングドレスと言われても信じてしまいそうな装飾過剰な服だっ
た。スカートの前は大きく膨らみ開いていて、代わりに後ろは地面すれすれまでテールコート
のように伸びている。薔薇をあしらったヴェールのせいで、その顔は見えない。ただ、黒い口
紅を引いた口元だけが、三日月状に笑っていた。袖口は大きく膨らんでいるくせに、肩と腋が
むき出しになっていた。その全てが、染み一つのない白。
病的なほどに肌は白く――だからこそ、よけいに。。
手にしている、大きな蝙蝠傘の黒が、何よりも黒く見えた。
闇よりも、夜よりも暗い、暗黒よりも黒く漆黒よりも暗い、蝙蝠傘を差している。
吸血鬼が、日光を嫌うように。
狼男が、満月を避けるように。
雲ひとつない月空の下――白い少女は、黒い傘を差していた。

童話の世界から抜け出してきたかのような形貌で、少女はそこに立っている。

「…………」
迷う。止めた脚を、前へと進めるか、後ろへ戻すかを。
冷静に考えれば不審者なんて無視して先に進めばいい。神無士乃がきっと待っている。
目の前の相手が、ただの不審者ならば、の話だ。

251 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:36:41 ID:vpHTOitt
これが不審ですむなら警察はいらない。
疑わしいなんてレベルじゃない。どう考えてもこれは待ち伏せされていた。大通りに出るた
めの路地で、両脇に門ではなく塀があり、外から気付かれにくい道はここしかないからだ。
襲撃するならば――ここを選ぶ。
意図的に、少女はここに立っているのだろう。恐らくは家へと攻め込むかどうか考えあぐね
ていた際に、僕が飛び出るのを見て――ここに移動したに違いない。
チェシャは、呼び水。
呼び水は、当然のように水を呼ぶ。 
呼ばれてきたのは、殺人鬼。
狂気倶楽部に関わるモノの罪を裁く、狂気倶楽部の中の最果て、狂気の中の狂気。
その名を、僕は、如月更紗から聞いている。
「裁罪のアリス――か」
僕の、言葉に。
白と黒の少女は、ヴェールに覆われて見えない口元の笑みを。

きりりと、吊り上げて、深く笑った。

正解です、と言わんばかりに。
笑って――すっと手を動かす。左手を傘の柄に沿え、右手で傘の持ち手を逆手に握る。何を
するのかと思えば、アリスはするすると、するすると右手を動かした。
左手は動かさない。
なのに、右手はするすると、するするすると動く。
その理由は――
「……冗談だろ」
馬鹿げてる。
冗談だ。
いや、冗談だと、思いたい。
思いついても本当にやるやつがいるとは思わなかった。いったいどこであれを買ったんだ。
まさか自分たちで作っているのか。 
そんな突っ込みが頭の中に浮かんでくるが、突っ込みのための声が出来ない。
あまりの光景に、威圧されて言葉が出てこない。
アリスの右手は、持ち手を握っている。それなのにするすると動くのは、持ち手が、傘から
離れるようにして伸びていくからだ。一メートルはありそうな傘の柄から、持ち手が離れてい
く。
そこから現れたのは――信じがたいことに、現れてしまったのは――月の光を浴びてなお輝
くことのない、長く長く長く長い、一振りの黒い剣だった。
すらり、と。左手の傘を捨てて、アリスは細い黒剣を振った。風を切る音だけが聞こえて、
剣の軌跡は見えなかった。ただでさえ細い刀身が黒いせいで、まったく見えない。
――冗談じゃない。
如月更紗の大鋏も冗談めいていたが、これはもう、ふざけているとしか思えない。
本気で、ふざけている。
本気で、道化けている。
本気で、演技けている。

それが――狂気倶楽部。

252 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:37:15 ID:vpHTOitt
「殺人鬼って……比喩でもなんでもなかったのかよ……」
甘かった。チェシャやアリスを撃破すると言いながら、ここまでだとは考えていなかった。
無鉄砲に家を飛び出したのも甘ければ、常に武器を常備していないのも甘すぎた。
如月更紗は、寝ているときだって、鋏を持っていたというのに。
あいつのあの行為が、偏執でも冗談でもなく、至極当然の行為なのだと、僕は今更気付かさ
れた。
こんなのを相手にするなら――あれくらいの備えは当たり前だ。あれでも、足りないくらい
だ。こいつなら、レンガの家にガソリンまいて火をつけることくらいはするだろう。
とんでもない、相手だ。
けど。
「だからといって――負けるわけには、いかないんだよな」
そう。
負けられない。
勝たなくてもいい。刀を振り回すこいつに、勝つ必要なんてどこにもない。
負けないことが、大事だ。
死なないことが、大事だ。
こいつは過程でしかない。こいつの向こうにいる、姉さんを殺した男にこそ、僕は用がある
のだから。
「どけよ、お前――」
言いながら、僕は足に力を込める。前に飛ぶわけではない。
後ろに退いて、全力で逃げるためだ。
剣持って街中走れるやつなどいない。違う道を通って神無士乃を迎えにいけばいいし、なん
なら、如月更紗と合流してもいい。
そう思って、いつでも駆け出せるように足に力を込めて、

考えが甘すぎたことを、次の瞬間に思い知った。

「ち――ッ!」
足にこめた力で、一気に跳ぶ。後ろではなく、横へ。身を低くして、潜るようにして跳ぶ。
跳んだそのすぐ上を、ちりちりと、死の感触が通り過ぎていく。
毛先を切りながら、黒剣が振り切られたのだ。
真後ろに跳んだら――殺られていた。
裁罪のアリスが、十メートル近い距離を、一秒で埋めて切りかかってきたのだ。足に力を入
れてなければ、逃げることさえ間に合わなかっただろう。
確かに運動神経がいいやつなら、十メートルを一秒で走りぬけることは可能だが、それはあ
くまでもトップスピードの話で、立ち止まった状態からなんて――
「どこまでデタラメなんだ――お前らは!」
着地し、それでも止まらずに勢いのままに再度跳ぶ。振り下ろした剣が逆方向に跳ね上がっ
てきたのが、流れる視界のままで見えた。あのまま立っていてもやはり斬られていた。
容赦のない斬撃。
完全に、殺す気で来ている。

253 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:37:50 ID:vpHTOitt
せめて武器が、バッドでも鞄でも鋏でも何でもいいからあれば反撃か防御ができるのに――
探す暇はなかった。裁罪のアリスは振り上げた剣を手の中で翻り、上段で担ぐように構えて、
避けよう、と思う暇もなかった。
勢いを殺せなくて無様に転んだだけだ。
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――アハ」
その無様さが、ギリギリで、命を救った。
かすかな笑い声と共に――頭の上を、横薙ぎに剣が通り過ぎていく。頭上で風が流れるのを
感じた。剣が此方から彼方へと流れていく。
ぎりぎりで、死ななかった。
死ななかっただけで、助かったわけじゃない。
敵は、すぐ前にいる。
「この――常識知らずどもが!」
悪態を力にかえて、尻をついたまま、無理矢理右足を蹴り出した。無理な体勢で伸ばしたせ
いで、ぎりりと、筋が痛む感触が走る。それでも足を止めず、刀を振り切ったアリスの腹を目
掛け、
「な、」
目掛けた足が、左手で受け止められた。
いくら不安定な姿勢からとはいえ――全力で蹴った足を、手の平で、受け止められた。
「んな馬鹿な――」
憤りとも悲鳴ともつかない言葉は無理矢理に中断された。つかんだ左手を、アリスが合気道
のようにぐるりと回したからだ。力ずくで、僕の身体もまた宙を一回転し、
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――アハハ」
笑い声と共に、浮いた体を、蹴られた。
サッカーボールのように、胴を思い切り蹴り飛ばされる。「がぁ、」と意識せずに口から息
が漏れる。
肺の中から、無理矢理しぼり出される感覚。胃の中のものを吐き出したくなる。衝撃が強く
て吐くこともできない。
蹴られた勢いのまま僕の身体は宙を飛び、地面に叩きつけられて――それでも止まらずに地
面を転がり、壁にぶつかってようやく止まった。
まずい。
これは――死ぬ。
相手が狂気を持っているとか、狂気を以っているとか、そういう問題じゃない。蹴られた衝
撃で息が出来ない。呼吸をしなければ酸素が取り込めない。酸素がなければ、動くことができ
ない。
五秒もすれば動けるようになるだろう。けれど、再び剣を構えたアリスは、五秒も待ってく
れそうになかった。あそこから詰め寄って剣を下ろすのに、一秒もかからないだろう。
だから。
僕は、このままだと、死ぬ。

254 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:38:59 ID:vpHTOitt
殺される。
殺される?
誰が? ――僕が。
誰に? ――アリスに。
アリスに、僕が、殺される。
身体が動かない。だから、思考だけがくるくると、狂々と動き続ける。殺す。殺す。殺され
る。殺される。殺し殺して殺され殺される。
姉さんは殺された。
姉さんは殺された。
僕も殺される。
僕も殺される。
姉さんを殺した奴に?
違う。
姉さんを殺した奴に会うこともなく――僕は殺される。
それは、おかしい。
おかし過ぎて、笑いたくなる。
可笑し過ぎて、脳が侵される。
心が、犯される。
そんな、馬鹿げたことがあるか。
姉さんを殺した奴でもないのに――殺されるのか。
姉さんと殺した奴を殺すこともなく、殺されるのか。
こんな、中途半端で。
僕は――
アリスが迫ってくる。
白と黒が迫ってくる。
白い少女が殺しにくる。
黒い細剣が殺しにくる。
死が、目前に。
終わりが迫る。
僕は。
僕は――
最後に――姉さんではなく。


如月更紗の、笑い顔を、思い浮かべた。




「やあ、やあ、やあ! 誰か――私のことを呼んだかい!」




255 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:39:50 ID:vpHTOitt
かきん、と。
脳裏の笑い顔に、現実の笑い声が重なって――黒い剣が、金属音と共に、弾かれた。
弾いたのは、僕じゃない。
鋏だ。
三十センチものさしを二つ組み合わせたような、人を殺すことしかできない、人を救うこと
なできそうにもない、狂気じみた凶器でしかない大鋏が、僕の命を、救った。
裁罪のアリスの身体が、見えなくなる。
塀の上から、降り立った人影によって。
颯爽と、まるで正義のヒーローのように、頭上から飛び降りてきた人影によって、アリスの
姿が見えなくなる。アリスの剣が届かなくなる。
罪が裁かれることはなく。
罰が、そこに在る。

「おや、おや、おやまあ! なんてことだなんてこと! 私を差し置いて随分と楽しそうなこ
とをしてるじゃない」

楽しそうな。
愉しそうな。
おかしそうな。
犯しそうな。
笑い声。
聞き覚えのある、笑い声。
裁罪のアリスが一歩退く。目の前に降り立った影は、そんなことには構いもせずに、くるり
と右手の鋏を回して――くるりと左手に持った、黒いステッキを逆回しにした。
時計の針のように、杖と鋏が回りだす。
デタラメな時間を、刻み出す。

「それはそれはそれは楽しかったでしょう。こんなにいい夜なのだから!」

影は笑う。影は、影にしか見えなかった。
長く艶のある黒髪は長く、夜の風に揺れていた。男物のタキシードは、彼女の性別を覆い隠
すかのように黒い。頭につけたミニハットもまた、黒だった。回る杖も黒。
アリスが白と黒ならば。
白を殺して――黒だけになったような、姿だった。
黒い。
黒い男装の、少女。
見覚えのある、後ろ姿。
これが。
こんなものが――キャリーケースの中に、入っていたのか。

「さぁさぁさぁ楽しみましょう遊びましょう。こんなにも月が綺麗なのだから!」

そう、高らかに笑って。
右手と左手が同時に止まった。鋏は前へ、杖は後へ。杖の頭と鋏の先を、二挺拳銃のように
アリスへと向ける。
その名を、僕は知っている。
噂だけは――聞いている。
姉さんを殺した奴の名前を探しているときに、偶発的に、必然的に飛び出してくる名前。曰
く、七つの頃から其処にいる、気付けばいつだってそこにいる――狂気倶楽部の最古参。
狂った狩り人してイカレた帽子屋。


――マッド・ハンターが、そこにいる。



256 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:40:32 ID:vpHTOitt
そして。
そして僕は――
彼女の、もう一つの名を、知っている――その声に、その姿に、その鋏に、覚えがある。
僕は、ようやく動くようになった肺を、喉を、身体を、力を振り絞って、僕の命を救った彼
女の名を。
身の安全を保証すると、あの日屋上で交わした誓いを、守った彼女の名を――叫んだ。

「如月――更紗!」

僕の叫びに、如月更紗はくるりと鋏と杖を回し、僕の方を振り向いて――おどけるように笑
って言った。
「今は、今は、今だけは、マッドハンターさ」
そして、振り返ったそのままに、後ろ蹴りをかました。
僕に。
「…………」
何しやがる。
無言の広義の視線を送ると、如月更紗はふんと笑い、
「さっさと、さっさに、さっさか立ちたまえよ。生きているのでしょう?」
「…………ハ」
全く――遠慮のない奴だった。
まさに、その通り。
生きている。
僕は今、お前のお陰で――生きている。
壁に手をついて、どうにか立ち上がる。裁罪のアリスは、焦ることもなく僕と闖入者たる如
月更紗――いや、マッド・ハンターを見つめていた。といっても、目がヴェールで隠れて見え
ないので、本当に見つめているかどうかはわからないが。
どちらにせよ、焦っている様子はない。
まるで、登場を予期していたかのようだった。
マッド・ハンターは鋏をしゃきん、と一度鳴らし、アリスに向き直ったまま、僕に言う。
「里村くん、里村くん、里村冬継くん――君はどうして私たちがこういう格好をするのか、知
っているのかい」
「こういう格好――?」
それは、お前みたいな男装とか、アリスのウェディングドレスとか。
狂気倶楽部の面々が好むゴシック・ロリータ姿のことだろうか。
僕の返答を待たずに、如月更紗は朗々と唄うように続けた。
「それは儀式さ、それは魔術さ、それは黒魔術さ――自分は特別なのだと、ここはメルヘンの
世界なのだと、思い込むための魔術装備。だからこそ、」
こんなことができるのよ。
そう、言葉を結んで――マッド・ハンターの姿が、消えた。
「!?」
消えたようにしか見えなかった。
一瞬後に事実を悟る。一瞬の後に、マッド・ハンターは距離を置いていたはずのアリスと、
剣を交えていたからだ。黒い剣と長い鋏がぶつかって、がぎんという音がする。瞬き一つの間
に攻防は進んでいく。鋏を開き、剣を挟むようにしてすべらせる。アリスは剣を返し、鋏を弾
く。弾かれた鋏が宙で向きを変えてアリスの首筋に迫り、首を逸らせてアリスは避け、避けな
がら長い足を蹴り上げる。足の間を通す脚撃をマッド・ハンターは杖で巧みに受け流し、返す
一撃でアリスの腹部を殴打しようとした瞬間にアリスが後ろへと跳んだ。
跳んだのにあわせてマッド・ハンターは鋏を開いて跳び――しゃきんと鳴らして、アリスの
首を刈ろうとする。アリスは伏せて避け、避け切れなかった髪が一筋宙に残された。下から逆
袈裟に黒い剣、黒い杖がそれを受け止める。中に何か仕込んであるのか、杖が両断されること
はない。ぎりぎりと、拮抗状態が生まれる。
目で追うのがやっとの――信じられない、争いだった。

257 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:41:32 ID:vpHTOitt
そして、脳は目よりも早く事態を追っていた。思考だけが加速していく。
魔術儀式、とマッド・ハンターは言った。
日常とはかけ離れた服を着て、日常ではありえない舞台を作り、日常に存在しないモノを振
う。そうすることで、まるで物語の中に自分がいるのだと、強く思い込む。思い込むだけでは
あきたらず、思いこんだ世界をそこに作り出す。
強力な――自己暗示だ。
洋服も、
武器も、
口調も。
全てが、日常から変質するための、道具だ。だからこそ、こんな突拍子もないことができる。
もしも暗示が逆転して、それが日常になってしまえば――完全に発狂する。狂気が常になり、
基準点が崩壊する。
正しく――狂っている。
狂気倶楽部。

狂気の国の――御伽噺。

「行きたまえ、行きたまえ、行き給えよ冬継くん。君を待っている人がいるのだろう? ここ
は私に任せて――という奴さ」
杖の隙間から鋏を繰り出しながらマッド・ハンターが言う。アリスはそれをバックステップ
で避け、さらに垂直に飛んで塀の上へと降り立った。マッド・ハンターは、そんな彼女と僕と
の間に立ちふさがる。
杖で、僕の行く道を指し示す。
その好意に、こたえないわけにはいかない。
「――恩にきる。だから、」
僕は、初めて。

更紗――死ぬなよ」

自覚して、彼女の名前を呼んで。
わき目もふらずに、駆け出した。今の僕では、如月更紗の、マッドハンターの邪魔になるだ
けだ。
僕は、僕のやるべきことをやる。
あいつは、あいつの意思で、僕のために戦っているのだから。
その思惑が何なのか、僕はまだ、知らないけれど。
あいつが――僕の命を、助けてくれたのは、本当なのだから。
僕は走り出す。
最後の角を曲がる直前に。
背後から――楽しそうな、マッド・ハンターの声が、聞こえた気がした。




258 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:42:34 ID:vpHTOitt
















「さあ――――――――――――――――――――――――――――お茶会を、始めようか」

















259 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:44:14 ID:vpHTOitt
……。
…………。
………………。
「――――」
走り、走り、走り抜いて。
歩道橋を渡り、あの坂道を、学校へと繋がる坂道を登った先。近くに民家がないせいで余計
に暗く、ぽつり、ぽつりと、大きすぎる間隔をあけてたつ街灯の明かりしか存在しない、夜の
坂道に。
――神無士乃は、立っていた。
辺りは暗い。月と星の光だけが頼りだった。街灯の真下に立つ神無士乃だけが、夜の闇から
ぽっかりとくり抜いたように見えた。俯いているため、表情は見えない。
泣いて、いるのかもしれない。
それも当然なのかもしれない。泣かせるだけのことを、僕はしたのだから。
何を置いても、謝らなければいけない。
ここまできたらもう走る必要はない。そう自分に言い聞かせ、息を整えながら歩く。
――走るのをやめたのは、神無士乃に何て話しかければいいのか、思いつかなかったからか
もしれない。
そんな思考を押し殺し、歩いて、近づく。走り続けてきたため、心臓は破裂するかのように
ばくばくと鼓動していた。息が荒い。呼吸が難しい。今にも死にそうだ。
でも、死んではいない。
如月更紗が、助けてくれたから。
――彼女は、生きているだろうか。
マッド・ハンター。狂気倶楽部の古参。古くからいるということは、古くから生き続けてい
るということだ。生半可なことでは死なないと思うが――それでも相手もまた、狂気倶楽部の
中では特別な位置にいる殺人鬼なのだ。結果は、誰にも分からない。
生きているか死んでいるか分からないなら、
生きていると、信じよう。
如月更紗を、信じよう。
そしてそれは、後で考えるべきことだ。今は――神無士乃だ。
街灯の下で立ちすくむ、神無士乃のことを、考えなければいけない。
夕方からずっと――僕を待ち続けてくれた、神無士乃のことを、考えよう。
街灯の光の中に立ち入ると同時に、僕は息を吸って、吐いた。一つ深呼吸をして覚悟を決め
る。
そして僕は、彼女の名前を呼んだ。
「神無士乃――」
名前を呼ばれて。
神無士乃は――顔を上げた。
泣いているのだと、思っていた。
けれど、違った。
神無士乃は。
数時間も待ちぼうけを喰らっていたはずの神無士乃は、僕を見て。
「――先輩!!」
嬉しそうに、笑っていた。
幸せそうに――笑っていた。
「先輩、ちゃんと来てくれました。でも、大遅刻ですよ? 具体的に言えば、三十一時間ほど
時刻です」
いつものように笑って、神無士乃は言う。
いつもと変わることなく、神無士乃は、言う。
「え、あ、うん――」
その、あまりの変わらなさに、僕はなんと言えばいいのかわからずに戸惑う。
謝らなければ、いけないのに。
笑う神無士乃に対し、その言葉が、出てこない。

260 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:45:08 ID:vpHTOitt
「ちなみに今のは日付を間違えた場合の計算です」
「いくら僕でも日付を間違えたりはしないよ」
「知ってます。先輩は年月を間違えるんですよね?」
「どこの浦島太郎だよ僕は」
いつものように、僕らは問答する。
いつものようだ。
日常的に、する会話だ。
日常――過ぎる。
あれ?
おかしい。
まったくおかしくないのが、おかしい。
僕は、謝らなきゃいけないはずだろう?
謝るだけのことを、しでかしたはずだろう?
「そう、そうじゃない――神無士乃、僕はお前に、」
「あ、いいんです」
神無士乃は。
謝ろうとした僕の唇を、左手の人差し指で塞いだ。
「それ以上言ったら駄目ですよー。気にしてないですから」
「気にしてない?」
「はい、全く全然です」
「いや、重複しているから」
「全く全然全てにおいてパーペキです」
「パーペキは死語だ!」
意味も間違ってる。
じゃなくて。
そうじゃ、なくて。
こんな楽しい会話を、している場合じゃなくて。
おかしいだろ。
おかしくなくて――おかしいだろ。
例えば、笑ってる神無士乃とか。
丸い瞳が、僕を見て、なんで笑っているのかとか。

なんで――そんなに、幸せそうな顔をしてるんだとか。

「いえいえ、正確に言えば、もう気にする必要はないんです」
「……? 何が、だよ」
「それはですね、」
神無士乃の左手は、僕の唇に添えられている。その手が、くるりと捻って、僕の口を押さえ
た。声が出せなくなる。
そして、神無士乃の右手。
右手につかんでいたバッグが、地面に落ちる。そして、その手がつかんでいるのは――黒く
て長い、棒状の何か。ああなるほど、と納得する。神無士乃の薄っぺらいくせに重そうな鞄の
中には、こんなものが入っていたのか。
その先端が、僕の首筋に、当てられて。
「か――」
「大好きですよ、先輩」
神無士乃はそう言って微笑み、微笑んだまま手に持った棒ことスタンロッドのスイッチを一
気に最強まで引き上げた。
電流が、走って。



誰かのことを考える暇もなく、僕の意識は、闇に堕ちた。



261 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:46:08 ID:vpHTOitt


そして僕は――地下室で目覚めることになる。




262 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/03(土) 22:49:56 ID:vpHTOitt
夜討ち、監禁が嫉妬の華ならば。
横から主人公を奪い取るのも、また修羅場の華である――

というわけで、第十三話終了です。伏線伏線張りつつも完全に折り返しの山を越えました。
散散引っ張っていたキャラをようやく出せて嬉しいです。

Aルートということで、神無士乃のフラグが立たない状態で、如月更紗ルートに突入した話でした。
結果、横合いから思い切り殴られることに。
次回から多少エロありの監禁調教編です。

263 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 23:09:07 ID:R1VD3LQ+
48度線から韓国面となります

264 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 23:23:10 ID:qn1NPJ2v
>>262
キタ━━(゚∀゚)━━!!
激しくGJ!
これほどの作品を毎日投下して下さる作者様は神いわゆるゴッド!

265 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 23:40:57 ID:hgKIvNKi
GJ!!
どんどん病んできましたね!!


それにしても……。
神無士乃はスタンロッド常備してたのか!!

もう更正は無理ポ



266 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/03(土) 23:49:11 ID:RgYVpYBY
>>254
殺人貴キター!!

これで冬継くんは蜘蛛めいた動きをする暗殺者になる訳ですね!!

違います?

267 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 23:52:43 ID:hgKIvNKi
>>266
消えろ月厨。
若しくはアンチ型月。

268 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 23:56:20 ID:e1B5/YHA
月厨 乙

269 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 00:06:16 ID:uUb4oBjk
頑張れありゃりゃぎいーちゃん!

270 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 00:08:07 ID:InR9IB3M
いい仕事してますねぇ。
刀対鋏。これは実に興味深い戦いだ。
俺の予測では光輝いた鋏が刀をちょん切って・・・・・・って展開はないな。

そして、後輩のエロスに期待。

271 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 00:57:04 ID:RAA1Wd5e
読んでる間動悸が止まらなかった!
マジGJ!

272 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 01:02:48 ID:hK3AiIAj
マッドハンター気タァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ


273 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 01:12:29 ID:IsPZZbp8
!ニニ'' フ         iニi    ____  /二/    
__  / / ─ッッ ムZ7/7 iニi   / --//     /   
ヽ‘ニ'ノ iニ√ iニしシ iニヽ_ノ iニしソ !二二し'   

274 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 01:17:02 ID:TPjHz1ZO
>>267-268
どうでもいいじゃん

275 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 01:27:43 ID:lE7sV37g
実に良きものを見せて頂きました。
毎回このシリーズには読み入ってしまいますよ。
次回も楽しみにしています。

276 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 02:07:28 ID:q6Qw3w0D
GJ!
病んできたよ。これからが楽しみだ。


277 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 04:00:42 ID:UspJGeEY
GJ!
マッド・ハンターがカッコ良すぎる!

278 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 04:27:17 ID:ZX7De/tP
やはり更紗はマッド・ハンターだったか。
ミスリードかと思ってたら更に裏をかかれたww

まぁ今はとにかくGJ!
物語もさる事ながら戦闘のクォリティも高いwww

279 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 08:19:16 ID:Qp6PkzpM
賛辞と惨事の掛詞に興味を示してもらえるとは。
今が三時で無いのが残念だけれど、参事したからには更なる賛辞を、他の雑事は二次三次。

280 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 09:02:42 ID:InR9IB3M
>>279
ではキミの三時のおやつはサンジェルマンのメロンパンだ。

281 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 11:31:21 ID:aCKEUEFb
(´・∀・`)うっせ

282 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:00:28 ID:InR9IB3M
では投下します。

283 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:01:09 ID:InR9IB3M
~遠山雄志のひとり語り~

一人称を僕から俺に変えたのはいつだったかはっきり覚えていないが、
俺の性格が大きく変わったのは二年前だった。
別にトラウマになるような事件が起こったわけではない。ただ俺が勝手に
ひねくれただけのことだ。

学生のころはもっと単純な人間だった。
人間は話せばわかってくれる、悪いことばかり考えている人間はいないと思っていた。
しかし就職してからはすぐに現実と言うものを見せつけられた。
人の話を聞かない人間がいるということ。
人は自分さえ良ければ他はどうでもいいと思っているということ。
自分より上の世代のだらしなさやマナーの悪さ。
自分より下の世代の自分勝手さと良識の欠如。

自分にも駄目な部分があると思っている。
だから他人の悪いところばかりを見ないように努力した。嫌なことを忘れるために色々やった。
酒、パチンコ、女、スポーツ、車、読書、暴食・・・・・・
それでもどんどん嫌なものばかりが目に入った。
いつのまにかテレビ・新聞・社会の習慣、全てが疑わしくなり――

就職してから四年後、会社を退職しフリーターになった。 


284 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:02:02 ID:InR9IB3M
~菊川かなことの出会い~

『ぴぴぴぴっ ぴぴぴぴっ ぴぴぴぴっ ぴっ』
目覚ましを止めて時間を見ると、朝6時。
いつもバイトの日に起きる時間だ。 
今日はバイトも無いのだからゆっくりしていてもいいのだ。
そんなわけでもう一度布団に潜りなおす。
・・・・・・・・・・・・。むぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
眠れない。寝すぎか?昨日は何時に寝たんだっけ。
えっと・・・・・・
思い出せない。何時に寝たかが分からない。
たしか昨日は家に帰ってきて、シャワーを浴びて飯を食って、
布団に入りながら本を読んで・・・・・・読んで・・・・・・どうしたんだ?
いつもならその後で歯磨きをして寝る。でも、昨日は歯磨きをした記憶がない。
ということはつまり。
「そのまま寝ちまった、ってことか」
だらしない。日に日にだらしなくなっていく気がする。
やることが少ないからか、それとも自分を縛り付けるものが少ないからか。
いや、違うな。心がたるんでいるからだ。
俺がしっかりしていればだらしなくなったりはしない。

そう思わないと本当に駄目になってしまいそうだ。
望んでフリーターになったということを、今更後悔したくはない。
今日もいつも通りに朝食を食べてから図書館へ本を返しに行くとしよう。



俺が住んでいる町の図書館はこじんまりとしたもので蔵書の数は多くないが、
それでも俺の読書欲を満たすには充分な数だ。
ここの図書館はジャンルや作者ごとにきちんと整理されて管理が行き届いて
いるのに加え、掃除がしっかり行われているので読むには最高の環境だ。
今日は昼まで本を読んでから一週間分の本を選んで借りていくとしよう。

この間借りた小説の本は面白かった。
どこぞの姫の命を奪おうとする刺客たちと、姫を守るために戦う一人の武士との戦い。
刺客との戦いに勝利し、姫のもとへ駆け出す武士。
しかし姫のもとにたどり着いたとき、彼が見たものは今にも死にそうな姫の姿だった。
彼が刺客と戦っている間、別の刺客によって姫は襲われていた。
姫は最後の力を振り絞り、涙を流す武士に愛の言葉を伝え――彼の腕の中で息絶えた。
この小説の中で俺がもっともぞくりとしたシーンは姫の最後の台詞。
『わたくしは・・・・・・あなたさまに殺されとうございました・・・・・・
あなたさまの愛をこの胸で、この背中で感じながら、そして・・・・・・
いまのように強く、抱かれながら・・・・・・死にとうございました・・・・・・
強く焦がれております・・・・・・今のこのときも・・・・・・
わたくしは生まれ変わりたるときも・・・・・・此処であなたさまに会える日を・・・・・・
・・・・・・もう、前が見えませぬ・・・・・・わたく、しは・・・・・・あ・・・・・・て・・・・・・ぅ』

姫と過ごした日々を思い出しながら泣き崩れる武士の気持ちが、痛いほどに伝わってきた。
本を閉じてから頬に手を当てると涙が流れていた。

285 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:03:13 ID:InR9IB3M
あれほど泣けた本は初めてだった。
そういえば初めて本を読んで泣いたのはいつだっただろう。
・・・・・・まあ、いつだっていいか。

よさげな本は無いかと思い、あの本が置いてあった棚の列の前に向かうと――
一人の女の子がいた。
いや、違った。
・・・・・・すごい美女がいた。
腰にまで届くほどの黒髪。
透明な肌。
整った目鼻立ち。
ピンク色の小ぶりな唇。
儚げな眼差し。
細い体に白いワンピースを身にまとい、その女性は本棚の前に立っていた。

横顔に見惚れていると、その視線に気づいた女性は俺の方を振り向いた。
「? あの、何か・・・・・・?」
「い、いいえ別に。なんでもありません」
怪しいものを見る眼差しだ。
しかし彼女は俺の答えを聞いてから、すがるような声で話しかけてきた。
「・・・・・・あの、一つお聞きしたいことがございます。この図書館で――」
どうやら彼女は一冊の本を探しているようだ。
その本は、姫と一人の武士が恋に落ちるという内容らしい。今まで他の町の
図書館に行って探してきたが、一向に見つからないのだという。
なんとかしてあげたいが・・・・・・
「すいません。その本はまだ読んだことがないです」
「お願いいたします。もう一度思い出してください。
わたくしはもう、何年もその本を探して・・・・・・」
そう言われても・・・・・・ん?待てよ。
この間読んだ本も過程は違うけど共通している部分があるな。
「違うかもしれませんけど、似たような本なら読みましたよ。
最後には姫が死んでしまうんですけど」
「! その本は今どこにございますか?!」
いきなり腕を掴んで迫ってきた。整った顔がすぐ目の前にある。
花のような優しい香りがする。香水だろうか?
くらくらしてきた。この距離はまずい。
とりあえず彼女の肩を掴み距離を空ける。
「ついさっき返却してきたばかりだから、今はカウンターにあると思いますけど・・・・・・」
「ありがとうございます!」
俺に向かって頭を下げるときびすを返してカウンターへ向かって走り出した。
いかにもお嬢様に見える人が本一冊で落ち着きを無くすとは。
もしかしてあの本は有名な本だったのか?
また今度改めて読み直すとしよう。

286 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:04:16 ID:InR9IB3M
めぼしい本を数冊選び、昼まで本を読んで時間を潰してから外に出ると、
駐車場に長い車が停まっていた。ゆうに軽自動車二台分はある。
黒に塗装されているボリューム感のあるフェンダーや押し出しの強いフロントグリル。
ボンネットの先端にはシンボルマークの天使がたたずんでいる。
どう見積もっても俺では一生かかっても買えそうにない車種だとわかる。
こんな小さな町の図書館に大金持ちが来るほどの価値のある本があるのだろうか。
一度読んでみたいものだ。

ボリューム感という単語とは程遠い我が愛車――二万円で購入した自転車だ――の
ワイヤーロックを外そうとしたところで、後ろに人の気配を感じた。
振り向くと図書館で話した女性がいた。
「先ほどは本当にありがとうございました。
おかげさまでずっと探してきたこの本を手に入れることができました」
彼女が持っているのは今朝俺が返却したばかりの本。
大事そうに両手で胸の前に抱えている。 
・・・・・・ところで今『手に入れた』って言ったか?
まさか図書館の責任者にかけあって自分のものにしてしまったのか?
まあ、この女性に『お願いします。どうしてもこの本が必要なのです』と
涙を浮かべながら言われたら俺も『あげます』としか言えないけど。
「それは良かったですね。それじゃあまた・・・・・・」
「お待ちください」
呼び止められた。なぜ?俺、何かしたか?
・・・・・・そういえば図書館の中でこの人をじっと見つめていたっけ。
でもまさかそのことで因縁をつけられたりはしないよな・・・・・・?
「この本を見つけられたのはあなたのおかげです。ぜひお礼をさせていただきたいのですが」
・・・・・・どうやら違うようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
しかし『お礼をしたい』と言われても、たったあれだけのことでお礼をされても
気が引けるだけだ。ありがたい申し出だけど、断らせてもらおう。
「すいません。今から昼食を食べに行くので。
お気持ちはありがたいのですがお断りします」
「お昼ですか? それでしたらわたくしがお礼に馳走いたします!」
しまった。必要無いことまで言ってしまった。
このままでは一緒にお昼を食べることになってしまう。
別に奢られるのが嫌なわけじゃない。ただ――怪しいのだ。俺のようなフリーターの
男をこんな美人が誘ってくるなど、何か裏があるとしか思えない。美人局の可能性もある。

逃げるのが得策だ。はっきりと断ったのだから、俺に何の落ち度も無い。
自転車のロックを外し、サドルに乗ろうとした瞬間――
右から来た黒い腕にチョークスリーパーをかけられた。
「あ・・・ぐ・・・ゥゥッ・・・・・・」
すごい力だ。振りほどこうにもびくともしない。まるで銅像だ。
――やっぱり、嫌な予感当たったな。

数秒間首を絞めあげられ、抵抗する力を失った俺は諦めて目を閉じた。

287 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:05:13 ID:InR9IB3M
目が覚めたときに最初に見たものは木目の天井だった。
・・・・・・・・・・・・。
ここはどこだ?なぜ俺はこんなところにいる?
「目を覚まされたのですね」
その声は頭の上から聞こえてきた。
目線を上げると穏やかな笑顔の美人の顔があった。
ということはこの体勢は膝枕か。どうりで寝心地がいいわけだ。
目が合うと女性は俺に向かって頭を下げた。
「申し訳ございません。わたくしのせいですわ。
どうしてもあなたとお食事をご一緒したかったので・・・・・・
側近の者に命じてあなたをここまでお連れしたのです」
・・・・・・つまりこの女性は俺と昼食を一緒に食べたかったが俺が断ったことで焦り、
側近――おそらく首を絞めてきた人間のことだろう――に命じて強引に俺をここまで
連れてきた、ということか。
「申し訳ございません・・・・・・本当に、誠に、申し訳もございません・・・・・・
何度でも謝ります・・・・・・ですから、どうか、どうかわたくしを嫌わないで・・・・・・
お願い・・・・・・お願いでございます・・・・・・ぅっうっうっ・・・・・・」
「いえ! 大丈夫ですよ! もう全然! あはははは!
・・・・・・大丈夫ですから、もう泣くのはやめてくれませんか・・・・・・?」
飛び起きて大丈夫だということをアピールする。
泣かせたままにしておいたら今度はその側近とやらに刺されてもおかしくない。
幸い女性は飛び起きた俺を見て泣き止みはじめていた。
「くすんっ・・・・・・すん・・・・・・本当でございますね? ・・・・・・よかった」
「それでその、ここはどこですか? 図書館ではなさそうですけど」
「ここは菊川の分家が経営している料亭ですわ。
料亭としては中の下ですが、図書館から最も近い場所にありましたので
ここにお連れしました。・・・・・・もしや、お気に召しませんでしたか?」
どこが中の下だというのか。
畳や襖はしみどころか色あせも無いし、壁際には高そうな壷や掛け軸まで
掛けてある。庭に敷き詰められている砂利には靴跡一つ無い。
「気に入らないなんてことないですよ。ただ、自分には場違いだと思って」
「堅くなる必要はございませんわ。わたくしの客人であるあなたに物申す人間は
わたくしが許しません。ご安心を」

・・・・・・最初から思っていたけど、この人は何者なんだ?
上品な言葉遣い。さらに側近を連れている身分。この料亭を中の下だという胆力。
「さ、こちらに。すぐに料理を運ばせますわ」
座れ、ということだろう。敷いてある座布団に正座をする。
女性が手を叩いたらすぐに女中らしき人が襖を開けた。そして女中に一言告げると
俺の正面に正座で座り、礼儀正しく座礼をする。
女性は顔を上げるとこう言った。
「数々の無礼、改めまして深くお詫びいたします。
わたくしは菊川本家長女、菊川かなこと申します。以後お見知りおきを。遠山雄志さま」

288 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:06:35 ID:InR9IB3M
菊川本家というのは分かりやすく言えば上流階級の人間だ。
最近は階級格差がどうとか言うが、そんなことを言っているのは労働者である
下流の人間と、人を雇う立場にある中流の人間と政治家だ。
労働者ではないし、人を雇わなくても自動的に金が懐に入ってくる上流階級の
人間。その一つが菊川本家だ。
菊川本家が動けば当選確率が低い県知事候補がいてもその状況を
数日でひっくり返すことが可能だという。
・・・・・・いや、全部今聞いたんだけどな。どこそこの金持ちの名前を
聞いて反応するのはフィクションか、もしくは上流階級の人間だけだ。
実際俺も目の前にいる女性――菊川かなこさんを前にしてもどうも金持ちだという
イメージがわかない。おしとやかな和風美人であるという印象の方が強い。
「あまり驚かれないのですね?」
「ええ、まあ」
とはいえ、どう接したらいいものか。
今までの人生でここまでスケールの大きい人間と話したことがない。
まるでフィクションだ。今俺がここで食事をしているという事実も含めて。

口数も少なく食事を終えて、お茶を飲んでいるとかなこさんから話を切り出してきた。
図書館で彼女が探していた本を俺の前に差し出す。
「この本を読まれて、雄志様はどのような感想を抱きましたか?」
「そうですね・・・・・・。面白かったですよ。
戦闘シーンの緊張感は真に迫るものがありましたし、
姫の最後の台詞を読んだら泣・・・・・・なんとも言えない気分になりました」
危ない危ない。『泣いてしまいました』って言うところだった。
「では、姫は本当はどうなることを望んでいたと思われますか?」
「姫が本当に望んでいたこと、ですか?」
「はい。『本当の望み』です。思ったままお答えください」
まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかった。
『姫は本当はどうなりたかったのか?』
困った。そんなこと本人じゃあるまいし、わかるはずもない。
「うーむ・・・・・・ありきたりですけど、『武士と幸せに行き続けたかった』じゃないかと」
「やはりそう思われますか・・・・・・」
残念そうな顔で俯いてしまった。
もしかして俺、まずい答えを返してしまったのか?
彼女は顔を上げ、俺に訴えかけるように喋りだした。
「わたくしはこう思います。
姫は幸せな未来ではなく、『武士を永遠に独占したかった』のではないかと。
そのためには生き続けるのではなく、共に死を迎えようと思った。
二人で刀を持って向き合い、心の臓を貫き合い、同時に死を迎える。
これこそが姫の描いていた理想の死に様なのではないでしょうか?」

289 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:08:35 ID:InR9IB3M
なるほど。姫の最後の台詞から推測するとそう考えていたともとれる。
第一、『私はあなたに殺されたかった』なんて正気とは思えない。
姫が少しばかり心を病んでいたとしても不思議ではない。
しかしリアルな想像だな。お互いに刀を向け合う姿が目に浮かぶよ。
俺がその光景を想像していると、彼女の言葉で目を覚まされた。
「・・・・・・はっ。申し訳ございません。
この本のことになるとつい熱くなってしまって・・・・・・。
誠に失礼ですが、もう一つだけお答え頂いてもよろしいですか?」
「ええ。なんでもどうぞ」


「もし雄志さまの前世が武士だったとして、生まれ変わった姫と
再会したら一緒になろうと思いますか?」


――――――これは、本の話ではない?
本とは全く関係無しに『前世を信じるか』と聞いているのか?
かなこさんは俺から目を逸らさない。
まばたき一つしない。
ここは、自分の本当の考えを伝えないとまずい――そんな気がする。

「もし、そうであったら・・・・・・そうであったとしても、
前世で愛し合っていたという理由だけで一緒にはなれません。」
これは正直な気持ちだ。
だいたい、前世で引き裂かれたという理由だけで恋人同士になるなら
人間とカメだって恋人同士にならなければいけない。
「前世とか運命なんて・・・・・・嘘っぱちです。そんなものは信じていません。
もし存在していたとしても、庭に敷き詰められている砂利の一粒のように
気づかなければ素通りしてしまう程度のものです」

俺の言葉を聞いたかなこさんは俯いていた。
肩が震えている。
手は固く握り締められている。
「なるほど・・・・・・そう思われるのですね」
そう言うと顔を上げた。

・・・・・・・・・・・・!
彼女の目が、睨みつけている。
俺の目を、睨んでいる。
その目には光を宿していない。
純粋な殺意の瞳。
鋭い眼差しが俺の目を通過して脳を通過し――
心を、睨んでいる。
そんな錯覚を覚えた。

290 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:09:34 ID:InR9IB3M
今度は完全に選択肢を誤った。
かなこさんは怒っている。しかも半端なものではない。
烈火のごとく、という表現はこういうときに使うのだろう。
それが目線だけでわかるのだ。
彼女はこれでも怒りを抑えている。
もし怒りを爆発させたら――確実に殺される。
側近に頼ることなく、彼女自身に首を絞められて。

彼女は立ち上がり、俺の右に座った。
すぐ目の前に殺意のこもった瞳がある。
睨みつけたまま俺の首に手を伸ばし――
「っ!!」
「何を怯えていらっしゃるのですか?」
え?
かなこさんは俺の肩に手を乗せていた。
手の感触が服を通して伝わってくる。
もう睨みつけてはいない。雰囲気は穏やかそのものだ。
「わたくしは前世で無理矢理に引き裂かれた者同士は
生まれ変わったとき、何もせずとも出会ってしまうものだと考えます。
それは、『運命』もしくは『宿命』とも言えます。
雄志さまの言葉を借りるならば、砂利の一粒ですね」
そこで言葉を区切ると目を閉じ、唇を軽く結んだ。
だんだん彼女の顔が近づいてくる。
――もしかしてキス?
しかし彼女の唇は俺の顔の数センチ前で進路変更して右耳のあたりで停止した。
体を密着し、言葉を続ける。
「ですがわたくしは砂利ではなく、巨大な岩石だと思うのです。
目を逸らそうにも勝手に視界に入ってくるほどの大きな岩。
離れようとしても大きな音を立てて転がりながら追ってくる丸い岩石。
こう・・・・・・どどどどど!どどどどどどどどどど!どどどどどどどどどどど!ぐしゃり。と。
目を逸らした相手をひき潰すまで追ってくるのです」
話すたびに耳に息がかかる。
くすぐったい。

「もし雄志さまが武士の生まれ変わりだとしたら、潰されてしまいますね・・・・・・ふふ」

彼女の顔は見えない。
いや、見たくなかった。
きっと、さっきの恐ろしい瞳が俺の右にある。
そう思うとそのまま動くことができなかった。

291 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:12:47 ID:InR9IB3M
その状態を変えてくれたのはかなこさんだった。
俺の肩を掴んで体を離す。
「ふふふふふ。冗談でございますよ。
運命が人を殺す、なんてことはございません」
笑いながら語りかけてきた。
緊張の糸が解ける。
「あ、ははははは。そうですよね。
まさかそんなことはありませんよね。あはははは・・・・・・」
運命と言う名の大岩に潰されて死にました、なんて両親が聞いたら
おそらく葬式もしてくれないに違いない。
それに大岩に潰されるなんて御免だ。


ちょうどいい時間になったので、お礼を言ってから帰ることにした。
「本当に今日はご無礼をいたしました」
「いいえ、こちらこそ美味しい料理をご馳走していただいてありがとうございました」
かなこさんは名残惜しそうな顔で俺を見つめている。
そんな顔で見つめられるとどうにかなりそうだ。
「また、お食事をご一緒していただけますか?」
「ええ。機会があればぜひ」
だが、こう言って別れた相手との約束が果たされることはほとんど無い。
いわゆるお約束というやつだ。
「それでは、また、近いうちにお会いしましょう。『必ず』。
雄志さま。ごきげんよう」
「はい。また」
そう言ってから料亭とかなこさんに背を向けて歩き出す。

かなこさん、綺麗なひとだったなあ。
でも俺みたいなフリーターとはこれ以上の接点はないだろう。
俺には豪華とはほど遠い六畳一間のアパートで本を読んでいるのがお似合いだ。
・・・・・・本?
そういえば今日は図書館に行って借りてきて・・・・・・
あ!
「自転車と本、図書館に置きっぱなしだ!」
しかもワイヤーロック外したままだし!まずい!
「待ってろ! 相棒!」

自転車が盗難に遭っていないことを祈りながら、図書館へ向かって走り出した。


292 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:14:14 ID:InR9IB3M
次回に続きます。

予告:ヒロインはあと二人登場します。


293 名前:ことのはぐるま訂正 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:20:54 ID:InR9IB3M
>>288
>「うーむ・・・・・・ありきたりですけど、『武士と幸せに行き続けたかった』じゃないかと」
「うーむ・・・・・・ありきたりですけど、『武士と幸せに生き続けたかった』じゃないかと」

でした。ごめんなさい。


294 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:25:03 ID:QmcXFwy7
うぉぉぉぉぉGJ!!!!!


295 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:27:07 ID:UspJGeEY
>>292
GJです!
既にかなり病んでるヒロインktkr

296 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 15:27:34 ID:ZX7De/tP
GJ!

実に先が気になる展開ですな。
この先登場するヒロイン二人にも期待!

297 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 16:28:43 ID:i7sUNtiQ
GJ!!!!
オラ、久しぶりにワクワクしてきたぞ!!!

298 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 16:36:35 ID:ptr0E1xP
今やってる「料理」ってゲームの奥さんがヤンデレだな
別居中の夫を監禁して手料理を食べさせるんだが…

299 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 16:43:39 ID:8VVzy+A/
自らの手を調理して、旦那に食わすのでござるか。

300 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 16:52:37 ID:ptr0E1xP
いや、選択肢によって内容が変わる。
今は全部クリアしたら出てきたビフォアストーリーを読んでるが、
奥さんが徐々に狂っていく様子が結構クるな

301 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 17:45:56 ID:QmcXFwy7
>>300
詳細kwsk
コンシューマー?

302 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 17:56:29 ID:ptr0E1xP
フリゲ。vectorで検索したら出てくる
ちなみにすぐ終わった

303 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 18:21:49 ID:rNWlPayh
飯食いながらやったら吐きそうになったぜ。

304 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 18:31:05 ID:xprb1kCY
作者のページにいってみたら、結構そそりそうなものが展示してあった。

305 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 18:31:25 ID:rroPq7Mx
たしかにヤンデレだが・・・グロが強くて萌えなかったぜ

306 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 21:52:25 ID:dytkcEY/
キタキタキタキタキタキタキタキターーーー!!
作者GJ、超GJ。続きも期待しています!

307 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 23:23:35 ID:ptr0E1xP
縛り付けて手料理食わせるまでは良いとして、そこで優しくささやきながら抱きしめる(けど縄はほどかない)
ってのがいいな、俺は。
料理も口移しで与えるとなお良し

308 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 23:48:26 ID:aE+nSUJS
書いてみたらこっち向けだったので投下します。

309 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 23:49:20 ID:aE+nSUJS
真冬の山の中。俺は榛原よづりと湖面に浮かんだ船の上に居た。
「カズくん……。寒いよう……」
「うるせぇ、湖の中はもっと寒いんだ。これぐらいガマンしろ」
真冬の湖の上は寒い。冷たい風が吹くたびによづりは体をちぢ込ませ、暖をとるように俺に抱きしめる。そんなよづりを俺は片手で抱きかかえ、オールを使いなるべく湖の真ん中へ移動していた。
片方だけでボートをこぐとまっすぐ行くわけはないのだが、ちょうどぴゅるりと吹く風が俺たちの乗ったボートを流し、真ん中へ運んでいる。オールはそれの方向調整に使っているだけだ。
胸によづりのふにゅりとやわらかい感触が押し付けられていた。不健康そうな顔をしているのに、ここだけは健康的に膨らんでいて奇妙だ。
吹く風を背中で受けながら、俺は目的の場所にたどり着いた。
「湖の中心についたぞ」
「うん……かずくん」
「なんだ」
「わたし……かずくんと一緒なら死ぬの……怖くないよ」
よづりはかちかちとふるえつつも俺に笑顔を見せる。俺より年上のクセに、小動物のように寂しそうな笑顔。
「死後の世界に行っても……一緒だよ。かずくん」
「……そうだな」
俺の返事を聞いたよづりは安心したように白い息を吐くと、また湖面を眺めるように俯く。
榛原よづりは死のうとしていた。誰も居ないような山の中。湖に体を沈めて、現世とのつながりを絶とうとしていた。
「じゃあ、そろそろ行くか?」
俺はオールを漕ぐ手を止めて、よづりの体を両手で掴む。早くしないと湖の中心からズレてしまう。死ぬには万全を尽くさないとうまく死ねない。よづりの口癖だった。
「ちょっとまって……」
よづりは俯いていた顔をあげると、俺を抱きしめていた手を強く握り背伸びをするように顔を伸ばした。
瞬間。重なる唇。
よづりの唇は冷たかった。
「えへへ……」
奪っちゃった、と言いたげに笑うよづり。彼女にとっては最後の現世でのキス。
「もういいか? よづり。そろそろ……」
「うん、もう死ねるよ。かずくん」
二人で立ち上がった。ボートがバランス悪く揺れる。
あたりは真っ暗で俺の持っている懐中電灯の明かりのみがあたりを照らしていた。
「じゃあな。よづり」
「うん。またね。かずくん」
最後のお別れを言った後に、俺は懐中電灯を海の中に捨てた。
そして、俺とよづりは、手をつなぎ、二人で冷たい湖の中へ飛び込んだ。


310 名前:真夜中のよづり ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 23:49:56 ID:aE+nSUJS
俺が榛原よづりに出会うきっかけというか原因を考えれば、去年の四月まで遡る。
もともと、俺はそんな真面目な生徒じゃなく毎日を学校でのほほんと過ごしてる奴で、委員長みたいにいつも勉強しているような器用な真似はしない。
せいぜいテスト前に慌てて勉強して、平均点の若干下あたりの点数をとるぐらいである。マンガやらアニメやらでの主人公と一言ぐらいしか交わさないサブにもならないモブキャラみたいなものと考えてもらえば想像しやすいと思う。
名前だって森本和人でワープロで打てばほら一発で変換完了。変換ミスなし。ありふれすぎた名前だ。
そんな俺なのだが、いやそんな俺だからこそ、副委員長に選出されたのかもしれない。
なんてことない俺だから、誰になっても特に問題ないような副委員長にみんな俺を選出したわけだ。俺にとってはめんどくさいことこの上ない。
ただ、救いだったのは、委員長となった駒木愛華がとてつもなく優秀だったことだ。責任感が強く面倒見のいい委員長はほとんど俺に仕事を回すことなく全て一人でクラスの厄介ごとをすべて解決していた。
俺の仕事はたまに授業の教材を取りにいったり、月一回の委員会に少し出席するだけ。
四月に選出されてこの一月まで、俺はたいした仕事もせずただ副委員長と言う肩書きのまま高校二年生の学生生活を過ごしていた。
結局副委員長のままたいした活躍もせずに終わるのかと思っていた。というかそれを望んでいた。
しかし、あと一ヶ月でようやく解任というこの時期に、俺は一生ものの仕事を副委員長として任されることになる。

「明日、あたしのかわりに榛原さんの迎えに行ってください」
委員長こと駒木愛華は放課後教室に俺を呼びだすといつもの口調で言った。
おさげに黒髪でまんまるメガネというまさに委員長という容姿の女で、真面目な成績優秀者だ。ほとんどの委員長の仕事をこいつが引き受けてるため、副委員長居の俺としてはどうしても頭が上がらない存在だ。
焦ると関西弁を喋るらしいが俺はコイツを焦らせたことがないので、その関西弁はいまだ聞いたことが無い。
んで、そんな委員長が俺に用があるって言うんで呼び出された。放課後、できるかぎり人の居ないところでって。
あのさ、そんなシチュエーションだとやっぱり思うよ。告白するのかって。
だって、二人っきりの教室だよ?
んで、呼び出されているわけじゃん。期待しないわけない。俺はもし告白された場合を考えていた。
……委員長ってめっちゃ真面目じゃん。それこそ一昔のマンガみたいに委員長ってあだ名で呼ばれてるくらいだから。じゃあ付き合いはめちゃくちゃプラトニックになるのか? うわぁ、新鮮だ。新鮮すぎて逆にいい。萌える。
じゃあ付き合って初キスは彼女の部屋か? やろうとしてメガネに当たってちょっと二人ではにかんでみて、メガネをはずしてもう一度やろうとしたらメガネをとった顔がもっと可愛くて……。
とかなんとか。いま思うととらぬ狸の皮算用。わかりやすく言うと馬鹿。
行ってみればこのとおりである。
「はぁ?」
で、告白かと思って返事を考えてた俺は情けない声を出して聞き返す。
「榛原さん。知らない?」
はいばら? 誰だそれは。
「もぉ、副委員長なんだからクラスメイトぐらい全員覚えておきなさいよ」
委員長は頬を膨らませるように説教じみて言う。俺はそれを聞きながら榛原という人物について思い出そうとしていた。
しかし、クラスメイトで榛原という人物が居た覚えは無い。
「不登校のコよ。去年から登校してなかったからちょうど一年留年になったわけなんだけど……。一応名前はうちのクラスになってるわよ」
そういうと、委員長は持っていた学級日誌を渡した。学級日誌の生徒欄の中には、たしかに「榛原よづり」という名前があった。
「本当だ。居るな」
よづり。男か女かわかりづらい名前だな。女っぽいけど……。
「で、その榛原さんが明日から登校するんだって。で、今年度初めての登校だから一応付き添いとして一緒に行って欲しいの」
「ふぅん、微妙な時期に登校するんだな。なんでだろ」
「さぁ、理由は知らないけど」
「でもさ、登校するんならわざわざ付き添いに行かなくてもいいんじゃないか? 勝手に来ればいいだろ」
俺にとっては学校と言うものは面倒くさくても行かなきゃならない場所と脳内で設定している。だいいち家でずっと過ごすってのも結構暇でつらいものがあるからな。
しかし、委員長はそんな俺とは違う考え方の持ち主だ。真面目で面倒見がいいのが如実に現れる性格と言動をする女である。

311 名前:真夜中のよづり ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 23:50:54 ID:aE+nSUJS
「あなたは不登校生徒の気持ちがわかってないのね」
お前はわかるのか? それだとお前も不登校だったってことになるが。
「違うわよ。でもね、いい? 森本君。誰だって初対面の人たちがいるところに新たに入っていくのは苦手なの。初めての人ばかりの空間って不安にならない?」
「俺は初めての人たちがいっぱい居る電車の中に入っていくのは不安に思わないぞ」
あえて的外れな回答を返してみる。
「電車の中の人たちは一期一介だけど、学校はみんなで集団生活する場所でしょ? あなただって入学式は緊張したんじゃないの?」
簡単に返す委員長。まぁそりゃそうだ。
「まぁ、確かに入学式は、な」
「うん。でも入学式はまだみんながお互いのこと知らないから、まだいいの。ただ、今は違うわ。みんなほとんどのグループになっちゃってるから、このコにとってはもっと入りづらいのよ」
言わんとしていることはわかる。
今のクラスになってもうすぐ十ヶ月。クラス内でもおしゃれギャルグループ、ロリ姉グループ、文系グループ、他クラスグループと何組か友達グループができている。
結構個性的な面々が集まってるクラスだから(筆頭は藤咲ねねこだな)、なじめず孤立してしまうこともあるだろう。
「で、このコがようやく登校してきたのに、友達も居なくて一人じゃかわいそうじゃない」
変な同情だ。一人の奴は一人が好きだから一人で居るという考え方はこいつには無いらしい。
「だから、あなたが付き添ってあげるの」
で、なんで俺がそんな役回りになる!?
「俺がぁ?」
「そう。あなたがこのコ……榛原さんに付き添ってあげて、クラスの仲間にいれてあげるの」
「やだよっ。俺、そんなことしたことねぇし! それにこういうのは委員長の仕事だろ?」
俺だってそんなに友達が多いほうじゃない。だいいち、そんな器用なこと俺にはできそうもなかった。
しかし、委員長はふんと鼻を鳴らすとジト目で俺を見る。
「この一年間厄介ごとは全部あたしに押し付けておいて、最後までなにも仕事せずに終わるつもり?」
「うっ……」
責めるような口調。いや、じっさい軽く責めている。
たしかに、文化祭のときも全校会議のときも合唱大会のときも俺がやったことと言えば、資料のホッチキス留めとか楽譜のコピー(これはやってよかったっけ?)とか装飾の貼り付けとか、ガキの使いみたいな仕事ばかりしかしてなかった。
合唱曲を決定したのも委員長だし、全校会議の資料のワープロ打ちも委員長、先生への報告も大体が委員長がやっていた。俺はそれのフォローにもならなそうな助けだけ。
それを言われると、俺も副委員長と言う肩書きを持ちながらまともな活動はできていないという罪悪感が湧いてくる。
タバコ吸っていた生徒を無視したこともあるし、もし委員長なら相手が男塾にでてきそうな不良でも注意するんだろうな……。
俺は肩をすくめた。どうやらやるしかなさそうだ。
「わかったよ。行けばいいんだろ? 行けば」
「わかればいいのよ」
委員長は納得した俺を
とりあえず仕事は、朝早めに起きていつもの支度を手早く済ませた後、その榛原とかいう奴の家に行って一緒に登校する。教室に入ってしまえば、あとはなんとか委員長がフォローしてくれるだろう。
それに、三学期も残り二ヶ月ちょっとしかない。そこまで責任がのしかかってくる仕事じゃないしな。
俺も副委員長としての爪あとを残しておかなきゃな。
このときはまだ俺は楽に考えてた。

榛原よづりに会うまでは。

312 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/04(日) 23:51:51 ID:aE+nSUJS
次回へ続きます。
なお、魔女の逆襲のスピンオフでもありますので両方読んでいただけるともっと楽しめるかもしれません。

313 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 00:08:24 ID:VgLGiMfZ
>>312
うはwww
委員長がヒロインかと思わせつつ別のヒロインを出してきますか。


しかし、それ以上に委員長のメガネモエス

314 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 00:08:24 ID:ZEaakHvT
このスレでもパパさんの作品が読めるなんて…。
またひとつ楽しみが増えたってもんだ。

315 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 00:12:59 ID:VgLGiMfZ
続きレス申し訳ない。

>>312
>委員長は納得した俺を

の続きは無いでござるかパパ殿。ちと気になるのでござるが・・・・・・

316 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 01:58:00 ID:f8ft57f0
あれ?IDが

317 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 02:14:42 ID:sCO44oSb
IDが一巡した……?


318 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 02:31:20 ID:aTbHND1I
62の8乗分の1? 凄いな。

319 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 03:00:04 ID:sCO44oSb
他のスレ見てきたら、1/25と今日のIDが同じって人が沢山……。

これは、エロパロ板全体が病む前兆かもしらんね。


320 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 03:09:22 ID:hoEnOjyN
このスレ読んでたらひさしぶりにこの曲を思い出した

ttp://www.youtube.com/watch?v=895uVOJf7Xc&mode=related&search=

321 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 11:35:55 ID:XeFIWhqF
>>320
見ても何言ってるかわからん・・・・・・
歌の内容をかいつまんで教えて欲しいのだが。

322 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 14:38:26 ID:206hWlB1
俺はこれを思い出した

ttp://www2j.biglobe.ne.jp/~k_asuka/sakuhin/warau_h.html

結構ヤンデレって歴史があるのかもね

323 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 16:29:49 ID:hoEnOjyN
>>320
SHOW-YAの「その後で殺したい」
情事の際の女の心情を歌ったものだが歌詞が実によい
「その後で殺したい 愛を独り占めしたいだけ 迷惑な優しさであなたの舌を噛んであげる」
「殺したい 殺したい 殺したい 殺したい もう誰にも渡さないわ 心臓が止まれば わたしだけのあなたよ」
とか

>>322
高橋留美子の短編はけっこうヤンデレ系のホラーが多いね
少女が美しいだけに迫力がある

324 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 16:30:52 ID:hoEnOjyN
誤:>>320
正:>>321

だった。すまんかった。

325 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 16:37:13 ID:XeFIWhqF
>>323
ほ、ほほう・・・・・・これはなかなか・・・・・・
絶頂に達した瞬間に心臓を一突きされたら完璧だな。

まとめてくれてサンクス。

326 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 16:50:43 ID:sCO44oSb
人魚シリーズには、そういう見方も有ったのか……。

327 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:05:02 ID:VgLGiMfZ
SSを投下します。

328 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:05:42 ID:VgLGiMfZ
第二話~天野香織との日常~

朝食を済ませてバイト先へ向かうため玄関を開けると、冬らしい冷え込んだ空気が
襲い掛かってきた。
アパートの鍵を閉めて自転車に乗って出発。
風はほとんど吹いていないが、今日ぐらい冷えていれば手袋をしていても指先が冷える。
「冬はいつもこれぐらい冷えてればいいのになぁ・・・・・・」
冬は好きだ。他の季節と違い寒さが身を引き締まらせてくれるし、
なにより生きているという実感がある。
最近の自堕落な生活ではこういった刺激がないとすぐに退屈になってしまう。
自堕落な生活の一番の敵は退屈だ。
・・・・・・いや、人生における最大の敵が退屈なのだろう。
退屈は人間を磨耗させる。
退屈だから夫婦喧嘩をして、退屈だから犯罪を起こす。
つまるところ退屈から逃れるためには、寒さなどの刺激――『生』を感じさせるのが
一番の解決策なのかもしれない。

と、誰も賛成しそうにないことを考えている間にバイト先に到着した。
7時30分。ちょうどいい時間だ。
「いらっしゃいませー! おはようございます! ・・・・・・って雄志君。キミかぁ」
コンビニ店員の見本のように元気な声で挨拶してくる店員。
俺の中学時代からの唯一の友達。
さらに退職してから働くことになったバイト先でも一緒になるという腐れ縁の持ち主、
天野香織がレジに立っていた。
肩の辺りまで伸ばした少し茶色の入った髪と、黒くて大きな瞳が特徴的だ。
こいつのおかげでこの店が繁盛しているから、店長にとっては貴重な戦力である。
店内に置いてあるパンと缶コーヒーをレジに出し、いつものように話しかける。
「客に向かってその口の聞き方はなんだ。教育がなっとらんな。店長を呼べ」
「なんでボクがキミに敬語なんて使わなきゃいけないのさ。
今日は店長は昼からだよ。昨日本社から呼び出し受けて行ってたから」
そうだったのか。昨日俺は休みだったから知らなかった。
・・・・・・また『この店の売り上げがいいから』とかいう理由で変なものを
押し付けられたりしないだろうな。
コンビニのマスコット人形なんか大量に入荷されてもこっちが困る。
あの時はレジ前にずっと置かれたままのマスコット人形が哀愁を漂わせて
いたから逆に客足が遠のいた。
「それより早く着替えてレジに入ってくれるかな?
ボク次の時間も連続だから休憩したいんだ」
「ん。わかった。ちゃっちゃと着替えてくるよ」
香織の差し出したパンと缶コーヒーを持って事務所の中に入ることにした。

329 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:06:28 ID:VgLGiMfZ
12時を少し過ぎた時間にバイトを終え、事務所で今朝買ったパンを
昼食代わりに食べていると香織が話しかけてきた。
「ね、ね。今日、これから暇?」
「暇ではない。が、忙しくもない。」
暇だ、と言わないのはせめてもの意地だ。
誰に対して意地を張っているわけではない。
ただ、自分が暇だと認めたくないのだ。
もし認めてしまったら本当に暇人になりそうだから。
「その返事が返ってくるってことは予定が無いってことだね。
じゃあさ、またボクの家に来てくれないかな?」
「・・・・・・もしかして、またか?」
「うん。そう。
やっぱりキミ意外にそっち方面に詳しい友人がいないからさ。
ね。お願い!」
まあ、今日は確かに予定も無いしな・・・・・・香織と過ごすのもいいだろう。
「よし、わかった。
ただし、今回も容赦はしないからな」
「あはは。お手柔らかに。
じゃあ早速行こ! 早く早く!」
そう言って俺の手を引っ張って事務所から出ようとする。
こいつは我慢というものを知らないのか?
まだ人が食事している最中だというのに。
「ええい、少し落ち着け。
このパンとコーヒーを飲み終わったらすぐに行くから」
「むー・・・・・・。早くしてよね」
そう言って俺の手を離す。まったく、忙しない奴だ。
だいたい食事というものは不味いもので無い限り、味わって食うのが礼儀・・・・・・

「ただいまー! 誰かいるー!?」
ばん!と事務所の扉を開け放ち女店長が入ってきた。
両手で紙に包まれている巨大な丸いものを抱えている。
「おかえりなさい。店長。
・・・・・・そのでかい物体はなんですか?」
「もしかして、ボクへのお土産ですか?」
「そんなわけないでしょうが! これは本社から試験的に持ってきた・・・・・・」
手に持っていたものを床に置いてその包みを剥がしたとき、出てきたものは――

「我がコンビニのマスコット! 超巨大バージョンのノモップくんです!
今日からレジの前に置いとくから二人ともよろしくね!」
またノモップかよ・・・・・・。俺と香織は一緒に頭を抱えた。

330 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:07:10 ID:VgLGiMfZ
「今日は恋愛もののポエムか・・・・・・」
香織が俺を家に誘うときの用事は、たいていがポエムを読ませるためだ。
「うん。恋愛ものを初めて書いてみたんだけど、どうも自信が無くって」
「前から言ってるけどな。俺に見せるより先にサイトに投稿した方がいいぞ。
あっちの方がいろんな人の意見をもらえるし。
それに俺の感想を聞いてから書き直したりしたら純粋なお前のものじゃなくなるんだぞ?」
香織は何故かポエムを書くことにはまっている。
それでインターネットのポエム投稿サイトに投稿しようとしているのだが、不安だからという
理由で必ず俺を最初の読者に選ぶ。
信頼されているのは嬉しいが、俺の意見で内容が変わったりしたら意味が無い。
「それは分かってるけどさ・・・・・・。
う~~・・・・・・とにかく! ボクはキミに最初に読んでほしいんだよ!
・・・・・・あ、なんとなくだからね。あと昔からの友達だから。
・・・・・・それだけだよ?」
「はいはい。分かってるって」
このやりとりも毎回のことだ。
違うこといえばポエムのテーマが違うことくらい。
まあいい。天野香織作のポエムを読むことにしよう。


331 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:07:52 ID:VgLGiMfZ
『出会いのコイン』

わたしはあなたを見ていました

ただ見ていただけではありません 

一人の男性としてあなたを見ていました

しかし声をかけることなどできません

わたしは臆病な人間です

怖いのです あなたに拒絶されることが

声をかけられないわたしにチャンスをくれたのは一枚のコイン

あなたが歩いているときに落としたもの

それは小さなものでした わたしの小さな手にもおさまるほどの

ですがこれは大きなものです

あなたに話しかける大きなきっかけです

そのコインを手にしたことで ようやくあなたに一歩近づけた


332 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:08:31 ID:VgLGiMfZ
「うん・・・・・・良いと思うぞ。
女の子がどんな性格かよく分かるし落し物を拾ったからっていうのも
話しかけるきっかけとしてはよくあるし」
「そ、そう?よかったぁ・・・・・・」
感想を聞いて、香織は不安が無くなったように肩の力を抜いた。
俺、適当なことしか言ってないんだけどな。
これがいいポエムなのかなんて分からん。
ポエムなんて人によって感じ方が違うものだろうしな。
「あの、それでさ。何か共感できるものがなかった?
どこかにキミとの共通点とかが無かったかな?」
「そんなのあるわけないだろ。女の子に告白されたことなんか無いし」
俺の言葉を聞くと、香織は悲しそうな表情を浮かべた。


「タイトルを読んでも、何も感じないのかなぁ・・・・・・?」


なんでそんな悲しい声で喋るんだよ・・・・・・。
『出会いのコイン』?
出会い?それともコイン?まさか両方か?
俺と何か関係があるのか?
でも香織との出会いは一緒のクラスだったのがきっかけだし、当然告白されてもいない。
コインについてはもっとわからない。
もしかして比喩か?まるでなぞなぞだな・・・・・・。

俺が数分経っても反応を返してこないので、香織の方から話しかけてきた。
「ふうぅ。・・・・・・やっぱりニブチンのキミにわかるはずもないよね。
さすがにここまで鈍いとは思わなかったけど、さ」
いつもの調子に戻っている。
・・・・・・よかった。やっぱりこいつはこうじゃないとやりにくい。
「失礼な。俺ほど感受性の強い人間はいないぞ。
俺にポエムを書かせたら日本中の人間が号泣するに決まってる」
「また根拠のない自信を持って・・・・・・その自信はどこから来るのさ?」
「自信をつけたきゃ根拠が無くても胸を張れ!」
「それで自信がつくのはキミだけだよ。
・・・・・・ちょっとうらやましいけどね」


333 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:09:44 ID:VgLGiMfZ
その後、香織とゲームしたり談笑しているうちに外が暗くなりだした。
「じゃあ、今日は帰るとするよ」
「え、もう?もっとゆっくりしていきなよ」
「俺の自転車にはライトが付いてないんだよ。
今日はライトを持ってきてないからこれ以上暗くなると危ないんだ」
これは本当。今日は香織の家に寄るつもりはなかったからライトを
持ってきていないのだ。
「そっか。じゃあ仕方ないね。あ、送っていこうか?」
「どうやってだよ。歩いて、とか言うんじゃないぞ」
「違うよ。キミがボクのバイクのキャリアを掴んで自転車に乗れば
あっという間に着くじゃないか。」

――――それは、ひょっとして冗談で言っているのか?

俺が立ったまま唖然としていると、香織はいたずらっこの笑顔を浮かべた。
「あはははははははは! 冗談冗談。
もうこの年になってからそんな無謀なことはしないよ。
警察に見つかって点数を引かれたくはないからね」
こいつの冗談と本気の境界線は長い付き合いでもわからない。
それに高校時代に同じことを実行して俺に怪我を負わせたのはどいつだ。

外で自転車に乗って帰ろうとすると香織が見送りに来てくれた。
「キミもバイクの免許取らない?
今なら格安でボクが教官の教習所で教えてあげるよ。
試験場で一発合格間違いなし!」
「バイクのローンで破産したくはないからパスだ」
「そっか・・・・・・貧乏って悲しいね」
「毎月ギリギリのお前に言われたくはないな。
・・・・・・じゃ、また明日バイトでな」
「あ・・・・・・・・・・・・うん。
バイバイ。雄志君。また会おうね・・・・・・」

名残惜しそうな声で見送る香織を後にして自転車をこいで家路に着く。
朝とは違い、冷たい風が吹き付けてきた。


334 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:10:56 ID:VgLGiMfZ
次回へ続く。

~遠山雄志のひとり語り~がプロローグ
~菊川かなことの出会い~が第一話
そしてこの話が第二話だと思ってください。
一話から三話まではどの順番で読んでも意味は通じます。

次回から話数をつけて投稿するようにします。
結構長くなる予定ですので。


335 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:25:52 ID:206hWlB1
GJ!
>結構長くなる予定ですので。
楽しみが多くなって嬉しいです

336 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:26:48 ID:g5fi5xTl
これだけ職人が多いと読む前に圧倒されてしまうな
かくいう俺もこのスレのSSをほとんど読んでない
前スレどころか修羅場スレからつながっていたりと何がなにやら

337 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 18:49:32 ID:mDe6Ynjo
>>336
つ[保管庫]
どっちのスレも良作揃いだから楽しいぞ


338 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 19:22:01 ID:yEEhPkZN
ボクっ娘萌え。
ちなみにピアキャロ3のボクっ娘も姓が天野。

339 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 19:33:12 ID:VgLGiMfZ
>>338
うあほんとだ! 天野って娘がいる!
しかも『ボク』まで・・・・・・

『あなたと握手を』のときも
大河内一楼って人がいるって最終回のあとでわかったし。
あーーーー・・・・・・なにやってんだよ俺・・・・・・orz

みんなごめん!
もう名前変更できないからこのまま行かせてくれ。
いえ、行かせてください。お願いします。

340 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 19:39:43 ID:mDe6Ynjo
>>339
もちろん歓迎です。
そんな偶然よくあることさ。



もちろん俺がよく家に帰る時に髪の長い女性を見かけるのも偶然だ。
あれ、今日はなんだか長い棒もって…ああ金属バットk

341 名前:338[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 19:54:14 ID:yEEhPkZN
>>339
偶然だったのかorz
ちゃんと黒化させてくれるなら問題なし。

342 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/05(月) 21:42:03 ID:VgLGiMfZ
>>340 >>341
ありがとう。ふたりとも優しいな。

343 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 22:05:34 ID:hoEnOjyN
ふたりとも優しいね。
もう、このぬくもりだけは
失・・・い・・・た・・・く・・・ない。

Aルートへ

344 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:36:07 ID:c4sMuGyi
誰も覚えて無いかもしれないが勢いだけの短編落として行くぜ…

ヴァレンタインのB面だ…


345 名前:ヴァレンタインB 1/3[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:37:08 ID:c4sMuGyi
「お姉ちゃん。それは絶対危ないから止めた方がいいと思うよ」
「…いいのよ真弓…これであの人に私の思いが伝わるなら肩から切り落としたっていいわ」
「そりゃすごくいい考えだと思う。私もその案には大賛成だけど」
「あら珍しく気が合うのね」
「私はやらないけどね。でも世の中アプローチの方法は1つじゃないし。ストーキングとか
あのメールはちょっと周りくどくてどうかと思うけど今回は私もいいと思う」
「なら手伝ってよ」

家に帰って来るとお姉ちゃんが包丁を持って私を待っていた。6つ違いのこの姉は
生活能力がゼロに近い。機械系に異常に強くてハッキングや盗聴から追跡まであらゆることが
出来ること以外は本当に何も出来ない。現役高校生の妹としては莫大な遺産を残してくれた
大叔父だかに感謝するのみである。

「ねえ真弓…私はあんたの時は手伝ったじゃない」
「いや手伝いたい気持ちはものすごくあるんだけど…せめて指にしない?」

この人は手首を切り落としたら止血をしなければならないことが分かっているんだろうか。
それとも止血やその他の後処理は私や祐人がやるからいいと思っているのだろうか。


346 名前:ヴァレンタインB 2/3[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:39:43 ID:c4sMuGyi
「だいたいさ、片手無くなったら誰がチョコ作るの?」
「え、多分自分で出来ると思うんだけど…」
「あのね、衛生面は全く無視なの!?傷口から化膿して腐って死ぬよ?もう…本当に
祐人が止めてくれて良かった。ありがとう祐人」

私は3年前から一緒に居てくれる恋人を振り返ってお礼を言った。たまたま今日彼を自由に
しておいて良かった。もし部屋に繋いで行ったりしていたら今頃台所は地獄絵図だったろう。

「真弓がそれを望まないとわかっていたから」

祐人はそう言うと淹れてきた紅茶をおいて私に軽くキスをした。そんなことをされると
もっと欲しくなる…けれど私は理性を総動員してお姉ちゃんに向き直った。この人に
死なれると未成年の私としては非常に危ない。

「……その祐人くんが今家に居るのは誰のおかげかなぁ真弓ちゃん」
「う…でもとにかく手首は危ないと思う!!」
「じゃあ調理は真弓に任せるから…」

……極めて真剣な眼差しな所を見るとこれで最大限の譲歩のつもりだろうか。普段は
奥手なお姉ちゃんがこんなに積極的になっているのだから協力はしてあげたい。


347 名前:ヴァレンタインB 3/3[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:40:50 ID:c4sMuGyi
困った私は祐人の方を振り返った。呑気に紅茶を飲んでいた彼は私の視線に気づくと
困ったように微笑んだ。
……うん、祐人の笑顔を見るとなんか安心する。どちらにしてもお姉ちゃんがこれ以上
譲歩することは無さそうだし、なんとかするしか無い。

「祐人、止血できる?」
「切り傷ならともかく切断面はやったことないな。でもやるんだろう?」
「…うん、そうだね。私も切断はやったことない…でもやらなきゃいけないみたいだね」
「真弓なら大丈夫だよ。なんとかなるって」

そっと頭を撫でてくれた。祐人は本当に私のして欲しいことを的確にわかってくれる。
そんなのは当たり前のことだけどそれが嬉しい。

「話がまとまったみたいね」

私は腹を括ってお姉ちゃんから包丁を受け取った。









348 名前:ヴァレンタインB その後[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:41:43 ID:c4sMuGyi
高熱で動けないお姉ちゃんの代わりにチョコを渡してきた3日後。
家に帰ると空気が重くこごっていた。

「…お……お姉ちゃん?」
「あらお帰りなさい真弓」

お姉ちゃんは笑っていた。こんなに笑顔なのは見たことが無い。けれどその笑顔は
黒い感情のみで出来ていた。重い。冷や汗が出て来た。今日は祐人は部屋だ。私は精一杯
力を振り絞って声を出した。

「……どうか、したの?」
「あの人、食べてくれなかったみたいなの。私が身を削ったのに……
どうして食べてくれなかったのかしら。手首だけじゃ伝わらなかったのかしら。
愛してるのに…こんなに愛してるのに。なんで食べてくれないの…」
「……っ!」

お姉ちゃんがこちらを向いた。その瞳には何も写っていない。黒い暗いだけの瞳が
真っ直ぐ私を押し潰してくる。私は立っていられなくなってへたり込んだ。

「ねえ真弓…なぜかしら…私はこんなに彼を見守っているのに。愛してるって毎日
唱えているのになんで彼は私に気づかないの?なぜ愛してくれないの?伝え方が
足りないのかな…私はこんなに愛してるのに。ずっとあの人を見ていたのに。
愛してる愛してる愛してる。なのに…どうして?ねえ真弓、私わからなくなっちゃったの…
いったいどうしたらいいの?私はただあの人に愛されたいだけなのに…愛してるわ。
ずっとずっと見ていてあげるのに…」

お姉ちゃんはいつまでもしゃべり続けた。



349 名前:ヴァレンタインB[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:43:35 ID:c4sMuGyi
3レスで終わると思ってたら4レスだったためタイトルをごまかしたのは秘密だぜ。

あ、保管庫の中の方タイトルありがとうございましたm(_ _)m


350 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:54:46 ID:c4sMuGyi
連投スマソorz

351 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 00:55:41 ID:c4sMuGyi
連投スマソorz

ヴァレンタインって5日ぐらい前に無題で投下したストーカー女のSSです。

352 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 01:07:44 ID:XwaMjmpP
落ち着け。そして、GJ!!


妹も色々とアレな姉妹ですね。
祐人はいつも首輪かなんかで繋がれてるんだろうなぁ……(;´Д`)ハァハァ

353 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 07:54:36 ID:CuQdHl16
グッジョブ。

妹が祐人をどうやって仕留めたかも読んでみたくある今日この頃。

354 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 10:39:16 ID:5snrzlS5
GJ!
>>353同じく
解ってて束縛されてそうな感じのする祐人は腹黒っぽい

355 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 17:15:08 ID:ACX5mYHI
前スレ遂に落ちてしまったか……

なにはともあれ、GJ!!

356 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 17:26:43 ID:ACX5mYHI
今読み返してみて疑問に思った点があるのだが、祐人は妹の恋人(?)であって、姉の想い人とは違うのですか?

357 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 20:14:55 ID:7WQNyNB1
正直こういうのもヤンデレだとおもうんよ。
ttp://www.h6.dion.ne.jp/~em-em/page244.html

358 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 20:27:03 ID:Nqc2DkM9
神話世界は極端なのしかいないからな

359 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 20:31:13 ID:UWU+IsLa
これはいいな。

サルマキス(;´Д`)ハァハァ


360 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 21:08:38 ID:c4sMuGyi
>>356
はい違います…祐人は妹(真弓)の物で姉(亜弓)の想い人とは関係無いです。

わかりにくくてすみませんorz
祐人の話は今書いてみてます…


361 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:14:46 ID:5snrzlS5
>>360 是非!!

362 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:24:43 ID:UWU+IsLa
>>360
>>361と同じく、是非読ませていただきたい!!

では、SSを投下します。

363 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:26:28 ID:UWU+IsLa
第三話~現大園華との再会~

『おにいさん。どうして会社をやめちゃったんですか?』
この声は誰だ?
なんだかやけにエコーがかかっているな。
『おにいさん』?俺に妹はいないぞ。
たしかに欲しかったが母親に頼んだらスルーされたからな。
『高校卒業してすぐ正社員になれたっていうのに
やめるなんて私は悲しいです』
・・・・・・いろいろあったんだよ。
逃げた。と言われたらそれまでだが。
しかし誰だか知らない女にそんなことを言われる筋合いは無い。
『おにいさんみたいなアウトローが日本のニート・フリーターになって
ひいては少子化を招くんですよ』
知ったことか。俺一人がフリーターになったところで日本人に占める
フリーター人口の割合はは0.1%も上昇しない。
少子化結構。子供の数が少なくなればそれに適応するように社会が
変わるだけだ。なんとかなる。・・・・・・多分。
『私はおにいさんに社会復帰してもらいたいんです。
このままじゃ正月に親戚が集まったとき顔向けできませんよ?』
余計なお世話だ。正月じゃなくても親には会ってるんだから十分だ。
だいたい社会復帰ってなんだ。まるで俺が犯罪者みたいじゃないか。
・・・・・・・・・・・・いい加減つっこむのも疲れてきたな。

『今度は私が助ける番です。
おにいさん。必ず助けてあげますからね――――――』

『今度は私が助ける番』?
そういえばこの台詞、どこかで――――――――

364 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:27:46 ID:UWU+IsLa

『チャーラーラーラーラー チャラララ-ラ-ラ-ラ-ラ- チャンチャンチャン・・・・・・』

・・・・・・・・・・・・うるさい。
携帯電話の着信音で起こされた。
何か夢を見ていた気がするが・・・・・・思い出せない。
ただ、腹のたつ夢だったことは覚えている。
俺のせいじゃないのに理不尽に問い詰められるような・・・・・・

『チャララー! チャララーラーラー! ラーラーラーラー・・・・・・』
まだ着信音は鳴り続けていた。
寝起きには耳に障る。とりあえず電話に出よう。
通話ボタンを押して不機嫌な声で対応する。
「・・・・・・もしもし」
「おはよう雄志。起きてた?」
誰かと思えば母親だった。
腹のたつ夢を見てから携帯電話の着信音で起こされて、電話に出てみれば母親。
朝くらいもっとの色気のある起き方をしてみたいもんだ。
「うん。今起きたんだけど・・・・・・こんな朝早くから何?」
「もう朝八時でしょ。寝坊ばっかりしてると再就職したとき苦労するわよ」
何を言う。休日の朝八時に起きられたら上等だ。
父親が早起きだから母親の感覚までおかしくなるんだ。
「・・・・・・用件は何? もしかしてダイエットに成功したとか?」
「あのさ。華ちゃん、覚えてる?」
スルーされた。都合の悪いことがあれば毎回これだ。
華ちゃん、ね・・・・・・もしかして従兄妹の現大園(げんおおぞの)華か?
「覚えてるけど、華がどうかした?
もしかして俺の家にしばらく泊めろ、とかじゃないよね」
「あら? もう華ちゃんから連絡があったの?」
「は? いや、冗談で言ったんだけど」
・・・・・・雲行きが怪しくなってきた。


365 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:28:53 ID:UWU+IsLa

「実は華ちゃんね、四月から大学二年生になるのよ。
それで来年から勉強に専念したいからってことで」
「断る」
この家、いや部屋に二人も住むことなど不可能だ。
だいたい従兄妹同士とはいえ年頃の娘を男に預けるなんて
叔父さんたちは何を考えているんだ。
「最後まで聞きなさい。
叔父さんたちは華ちゃんの一人暮らしが心配だから反対だったの。
でも大学の近くに雄志が住んでるから、同じアパートに住ませれば
まだ安心できるってことで賛成してくれたのよ」
「ということは同じアパートに越してくるだけ?」
「そうよ。もしかして期待した?」
「最初から何にも期待してないよ」
もし同棲したとしてもあの口うるさい華をどうにかしようとは思わない。
確かに可愛い顔をしているが、中学時代からの同級生に比べれば劣る。
「ふーん。華ちゃんに再会してびっくりしても知らないわよ。
大学生になって見違えるほど綺麗になったんだから。惚れても知らないわよ」
「性格の不一致は男女関係において大きな亀裂の原因になると思うのですが」
いかに綺麗であろうとも口うるさい相手、ましてや従兄妹に手を出すほど
溜まってはいない。
「そういうことにしておいてあげるわ。
今日明日中には来るはずだから仲良くするのよ」
「はいはい」
「もし華ちゃんに変なことしたら・・・・・・今度こそは許さないわよ」
母親は脅し文句を最後に電話を切った。


366 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:30:08 ID:UWU+IsLa

今俺はホームセンターへ買い物に来ている。
昨日、バイトの帰り道で自転車の後輪がパンクしたが、家にもパッチを
置いていなかったので修理できなかった。
同じ轍を踏まないために、ということでパッチと持ち運び用の
パンク修理キットを買いに来たのだ。
俺の住んでいるアパートからホームセンターまでは歩いて一時間。
往復時間に買い物の時間を加えると二時間少々。
それだけ時間を空けていればアパートに華が訪ねてきていてもおかしくない。
『なんで待っていてくれなかったのか』と責められなければいいのだが。
・・・・・・いや、そもそも待っている必要など無いのだ。
華も大学生だ。一人で引越しの段取りくらいできるだろう。
それに人に対して口うるさいだけあって自分にも厳しい。
俺の心配など無用、というものだ。

しかし、早く帰ってあいつの顔を拝んでみたいのも事実だ。
母親が言うには見違えるほど綺麗になったという。
おそらく叔母さんに似たのだろう。叔母さんはうちの母親と一つ年が離れている
だけとは思えないほど綺麗だからな。
そうは思っても華を女として見ようと思わないのは・・・・・・やはり従兄妹だからだろう。
両親の住んでいる家と叔父・叔母の住む家はそれほど離れていないので
両家の子供である俺と華は小さい頃から一緒にいた。
華が生まれたときに俺は五歳だったから、あいつからすると兄のような存在だと思う。
俺から遊びの誘いに行くこともあったし、華から来ることもあった。
そしてその関係は俺が高校を卒業するまで続いた。
しかしそれから四年後に俺が会社を辞めて実家に帰ったとき以来、華には会っていない。
あのときの失望した表情はちょっとだけトラウマだ。

「なんだか気まずいよなぁ・・・・・・」
パッチとパンク修理キットを購入して、家路に着くことにした。


367 名前:1[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:30:49 ID:nNWoFujZ
ムダに長い奴だけど、呼んでいただければ光栄です。



「ああ、またあってる」
そう佐藤育は微笑んだ。その目線は、同年代と思われる女性と話している彼女の弟へと向けられている。
朝、私の手料理を食べた弟は、いつものそっけない顔を少し微笑ませて出かけていった。
その姿が妙にしこり、家事を放棄して来て見ればコレだった。
弟と話している女性は、確か弟の会社の同僚だったはずだ。いつか書類関係を片付けるために家に来ていたのを覚えている。
人当たりのよさそうな娘で、なかなかよい子のようだった。頻繁に弟と会うと言うことを抜かせば。

育と弟の伸は、姉が大学に入る頃父親を無くし、その2年後、伸が高校を卒業すると同時に、母親も他界した。
姉は大学を中退し、弟も高校を卒業後、すぐに就職した。
二人は親の持ち家であったマンションに二人で生活し始めた。
姉は家事が可能であったし、弟は健達で二人は仲睦まじい姉弟として、近所の評判もまぁまぁだった。
姉は弟の事がそれなりに好きで、小さい頃から面倒を見ていた。勉強もよく見たことがあり、そのおかげで成績も上々で、それなりの大学に入る事も可能だった。就職ではなく進学した方

がいいと先生にいわれたらしいが、弟はすんなり断ったそうだ。
「僕には姉しかいませんから。姉が居れば他にほしい物もありませんし」
可愛いことを言う。そう思って育はほほを染めた。

伸は、姉の育はキライではなかった。いや、グラフにすれば好きの値域に入るだろう。
父親が死んで、母親が少々無理をし、高校卒業を目前として他界。父親が死んだとき、人は簡単に死ぬし、いつかは死ぬのだからとわかり、母親が死んだことにもそれほど驚きや悲しみは

無かった。
大学進学も視野に捕らえた人生設計をと教師にいわれていたが、彼にははじめから進学などと言う言葉は無かった。
「ほら、内は姉しかいないし、姉を圧迫するのもあれですから。それに、進学よりも、やりたいことありますしね」
そう、笑いながら答えた。



368 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:31:04 ID:UWU+IsLa

アパートへ向かう帰り道。
歩道の脇で自転車のタイヤとにらめっこしている女性が居た。
パンクしたのだろうか?
困った顔をしてタイヤをつまんだり引っ張ったりしている。
パンク修理の道具は持っていないようで、時々首をもたげてため息をついている。
まるで昨晩の俺を見ているようだ。
幸いにも俺はパンク修理道具一式を持っている。
これは助けるべきだろう。同じ自転車乗りとして。・・・・・・そして男として。

「あの、もしかしてパンクですか?」
俺の声を聞いて女性は小さく肩を揺らした。
振り向いても顔を上げないまま、目を合わさないように俯いている。
「え?・・・ええ。でも、気になさらなくても平気ですよ。自分でなんとかしますから」
「もし良ければ今から直しますよ。丁度道具もありますし」
俺が買い物袋の中身からパンク修理キットを取り出すと女性は口を閉じた。
警戒しているのか?
まあ、今時困っている人に関わろうとする人もいないからな。
警戒するのも無理は無い。
押し黙った彼女を前にして居心地の悪さを感じてきたところで救いの言葉をかけられた。 
「・・・・・・では、すみませんけどお願いできますか?」

パンクの修理は道具があればそれほど難しいものじゃない。
チューブを取り出して、穴の空いた部分にパッチを強くこすりつけて・・・・・・
タイヤの内側にチューブを入れてからビードをリムに戻して空気を入れたら、完成だ。
「はい。できましたよ」
「え? もうできたんですか? ・・・・・・あ、ありがとうございます」
女性が少しだけ笑顔を浮かべて頭を下げてきた。
よかった。どうやら警戒は解けたようだ。


369 名前:2[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:31:39 ID:nNWoFujZ
ちょっとタイミング悪いみたいですけど、そのまま投下させて頂きます。


事件が起きたのはその一年後だった。

弟は自動車整備工場でエンジンをきっちり組む程度になり、稼ぎも安定してきた。
「姉さんはボクが養うから、姉さんは働かなくていいよ」
まるで夫婦宣言のようなその言葉に、育は喜んだ。だがあまり弟に甘えるのはよくないと、彼女はパートの時間をすくなする程度に抑えた。
育は開いた時間を弟の部屋で過ごすことが多くなった。部屋に溜まっている埃を掃除し、エンジンチューニング科学をいう専門書を本棚に片付けた後は、弟の汗の臭いが染み付いたベット

にもぐりこみ、体を撫で回し、絶頂を迎えた。体が浮くなどと言う生易しい感覚ではなく、その場で存在が溶けだし、自身が無くなってしまうような強烈な感覚。
優しい弟、カッコイイ弟。私の育てた、可愛い弟。
出来ることなら、その弟の腕で力いっぱい抱きしめられたいと、育は思った。
その晩のことだ、育は弟に力いっぱい壁に押し付けられ、初めての唇を奪われ、処女を奪われた。はじめは姉弟なのにという倫理観が彼女を悩ませたが、伸の熱い思いをたくさん受け止め

ると、そんなことはどうでもよくなった。
「好きだよ。姉さん」
そんな甘い言葉をささやかれ、仲に出される。汗の臭いを全身に塗りこまれるように抱かれると、これ以上の幸せは無いと、育は思った。

近頃、少々姉が変わってきたと伸は思った。どこへ行くにも付いてこようとする様になった。それらはべつにいい。それほどのことでもないし、付いてこられてもやましいことはない。だ

が、女性の話題になるとかなり気性が荒くなる。たとえば、テレビに映る女優などをみると「そんな女見ることはないでしょ! お姉ちゃんが居るんだから!」とヒステリックに騒ぎ立てる


疲れているのかもしれない。稼ぎが上がってきたといっても、姉の助けが必要であることは変わりは無いのがつらい所ではあるが、体調の方が大切だということで、姉にパートの時間を少

なくするように言った。姉は素直に従った。
それとはべつに、ある女性と知り合った。同僚となった女性で、姉の大学時代の後輩ということだった。
姉から自分のことを話されていたらしく、名前と雰囲気ですぐにわかったそうだ。姉が変なうわさを流して無いことを祈るばかりではある。
姉に会いたいというし、伸はおとなしく彼女を家へと連れて行った。
料理していたらしく、姉はエプロン姿で出迎えた。いつもどおりの満面の笑顔で綺麗な黒髪をポニーテールにしている。
「育さん、おひさしぶりでーす」
自分の後ろから顔を出し、そう同僚が声をかけた。
姉はきれいな笑みを浮かべて答えた。

370 名前:3[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:32:16 ID:nNWoFujZ

「ダレ?そのオンナ」

伸は状況が一変したことを感じた。半身がゾクリとうごめき、なんとも言えない独特の感覚が脳を直撃した。
「やだなぁ 大学時代にお世話になったモンっスよ」
「出てって」
彼女の言葉を聞く気も無いさめた口調と台詞。
その雰囲気に、彼女も異様なものを感じだ。
「出ってって」育は、低い声で言った。「出てけ・・・さっさと出てけ!」
ヒステリックな叫びだった。その叫びにおびえ、彼女は小さくな挨拶と謝罪をして、家を飛び出して言った。
それを聞きながら、伸は目線を姉から動かせなかった。そして、体が妙に熱くなる。だが、脳は限りなくクールだった。
同僚が出て行くのを確認すると、姉は普通の状態に戻った様で、「ご飯食べよう」と、いつもより少し甘い声で言った。
靴を脱ぎ、居間へ入るときも、ゾクリとしたものを感じていた。
いやな予感を感じ、いつもは履くスリッパを履かずに、伸は居間に入った。

371 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:32:22 ID:UWU+IsLa
しかしよく見たらこの人、結構美人だ。
リボンで括った長い髪は野暮ったく見えないし、縁無しの眼鏡もよく似合っている。
「あの、もしよろしければお名前を教えてくださいませんか?」
助けた女性に名前を聞かれた?この流れはよくある恋愛物語ではないか!
このまま流れに乗ればこの女性とのラブロマンスが・・・・・・?
――そうか。今朝色気の無い起き方をしたのはこのイベントとのバランスをとるためだったのか!
ありがとう母上!今度ケーキを大量に持って帰ることにするよ!
「僕の名前は遠山雄志と言います」
なるべくさわやかな声で自己紹介をした。
「雄志さんですか。どうもありがとうございます・・・・・・。
・・・・・・ん?・・・・・・あれ?もしかしておにいさんですか?」
『おにいさん』?
・・・・・・・・・・・・。
俺のことをそう呼ぶのは、知る限りでは一人しかいない。
まさか、と思ってよーく見ると・・・・・・彼女の顔には見覚えがある。
いや、まだだ。他人の空似という可能性もある。
たのむ!違っていてくれ!
「失礼ですけど、あなたのお名前は・・・・・・?」
「現大園華です! 一年ぶりですね! おにいさん!」

・・・・・・当たってしまった。
・・・・・・買い物に出かけて自転車がパンクして困っている女性を助けたら、相手は幼馴染。
・・・・・・こういう時くらい色気があってもいいと思うのだが。


372 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:33:00 ID:UWU+IsLa
その後、華と肩を並べて歩いて帰ることになった。
本来ならアパートで再会する予定だったが、道端で遭遇してしまった以上
そのまま別々に帰るわけにも行かない。
ちなみに自転車は俺が押している。やけに軽い。おそらく有名メーカーの
自転車だ。・・・・・・うらやましい。
いやそれはともかくとして。今問題なのは・・・・・・
「腕を絡めるな華。歩きにくい」
「努力して歩いてください。それに腕を組んで歩くのは昔からじゃないですか」
俺にくっついて腕を組んで歩こうとすることだ。
腕を組んで歩くのは俺と学校に通っていたときの癖だ。
あの頃は華がまだ子供っぽかったから何ともなかったが、
今では成人女性そのものだ。少しだけ意識してしまう。
「お前と腕を組んでいたら恋人同士だと思われるだろ。
小さい頃とは違うんだからよく考えろ」
「おにいさん気にしすぎです。皆そこまで他人に関心ありませんよ。
それに、私はそう思われてもかまいませんよ?」
なんてこと言うんだこいつは。
「あのな。お前だって大学生なんだから恋人くらいいるんだろ?
勘違いされたらどうするんだ」
「・・・・・・・・・・・・それ、本気で言ってるんですか?」
華は俯いて沈んだ声を出した。 
「え? ・・・・・・あ!」
思い出した。華は男が苦手なんだった。

俺が小学六年生のとき、華が同じ学校に入学してきた。
最初は華も男の子と遊んだりしていたけど、いつの間にかその子達とも遊ばなくなった。
それに気づいたのは放課後になっても校門に現れない華を迎えに行ったときのこと。
華が、数人の男の子に囲まれて悪口を言われていた。
早い話が、集団によるいじめを受けていた。
たぶん、それは・・・・・・俺のせいだ。
華は昔から俺としか遊ばなかった。そのため、他の男の子と遊んだことがない。
さらに大人しい性格をしていたから友達ができにくくていつのまにか孤立していき、
いじめの標的になってしまった。
その場では男の子たちを追い払ったが、いつでも一緒に居られるわけではない。
俺が居ないときにも言葉によるいじめを受けていた。
そして――華は俺以外の男が苦手になってしまった。

373 名前:4[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:33:23 ID:nNWoFujZ
夕御飯を並べたテーブルの横、姉が少し冷たいような、上気した顔で静かに立っていた。 包丁を持って。
「前からいってたよね。伸にはお姉ちゃんがいるって」
包丁はキッチンにあるものだった。
「お姉ちゃんには伸がいるから、伸もお姉ちゃんが居ればいいよね」
刃渡りは約20cm。調理用出刃包丁。純手で持っている。
姉が虚ろな表情で歩き出した。距離約1,5m。間合い内に入った。背中がさらにゾクリとうずく。
「お姉ちゃん、伸のこと大好きだから、なんでもしてあげるよ」
腰溜めから包丁を突きさしてくる。可能性大。
「脱げって言えば脱ぐし、セックスだってしてあげるよ」
切り上げの可能性は低い。後方確認。約2mほど空がある。一歩下がることが可能。
「お口でなめてあげるし、おしっこも飲んであげるよ。お尻でもさせてあげるし、いくらでも中出ししても大丈夫だよ」
すぐ動けるよう、足の指が力をため、足の裏の接地比を前へと動かす。
「お姉ちゃんは、伸の子供なら何人でも生んであげる。うん。生ませて欲しいな。伸のこと本当に愛してるから」
体が小さくなる感覚。違う。筋肉が緊張し、体に芯を通したような感覚を覚える。日常ではない非日常。体が異様に興奮する。
「でも、私が愛してるのに、伸が女の子を連れてくるのはがっかりだな。いけない子だよね」
次の動きはなんだ? どうした!速くやってくれ・・・!
「いけない子には、お仕置きしなきゃいけないよね?」
包丁を持った右腕が、高く上がった。上から振り下ろす。
伸の右足が地面を蹴り、左手が包丁を持った右腕を上手くつかむ。よし! そのまま姉を壁に押し付け、包丁を持った右腕を壁に叩きつける。包丁が落ち床に刺さった。
同時に、壁に押さえつけた腕に、さらに荷重が掛かる。見ると、姉が気を失っていた。
姉をそっと床に座らせる。まるで人形のような、力の無い姿だった。
まだ心臓が高い回転数で鳴っている。指先が震えている。だが、この充実感。新しいエンジンを組み、アイドリングを確認した以上の興奮。感動ではない、違う胸の高鳴り。
落ちた包丁で、姉が怪我をしていないのを確認し、姉を彼女のベットへと運んだ。
そういえば、姉の部屋に入るのはしばらくぶりだ。中学だか、高校だかの時に入って以来だと、扉を開け、ベットへ寝かせた。エプロンを解き、ロングスカートのボタンを少し外し、タオ

ルケットを書け、部屋をあとにした。

374 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:33:50 ID:UWU+IsLa
「ごめんな。無神経だった」
「いいんです。昔のことですし。それにおにいさんが鈍感で無神経なのはわかってますから」
わかっている、と言っているがこの口調は怒っているときの喋り方だ。
そしてこの状態を放っておいたら・・・・・・

「それにおにいさんに恋人についてとやかく言われたくありませんね。
だいたいおにいさん、恋人を作ったことあるんですか?
あ、一度だけありましたね。私が叔父さんたちの家に遊びに行ったときに
女の人と一緒にベッドの中でもぞもぞしていました。
あれ、何をしてたんですかね? なんだか喘ぎ声とか聞こえてましたけど。
まあ、おにいさんが自分の部屋で何をしてようとわ、た、し、は、構わないんですけど!」

この通りマシンガンが炸裂する。
久しぶりだからかもしれないがやけに熱がこもっている。
おまけに組んでいる腕をものすごい力で締め付けてくる。
・・・・・・いや、ちょっと力入れすぎじゃないか?

「ええ! 私を放っておいて! 誰と何をしててもね!」

その言葉を機にさらに力が加えられる。
華の細い腕が肘関節を捕らえ――
『ビキ ビキ』
「あだだだだだだ! ちょっと待てって! 変な音してるし!」
まずい。このままだと腕が折れる。
『ビキ ビキ グリッ』
いや、折れるだけじゃ済まない!もぎとられる!
「――――っ!! 待ってくれ! 悪かった!」
『グリ グリ  グリリッ』
「ごめんなさい!! もう無神経なこと言わないから許してください!」
俺が叫んだらすぐに腕が開放された。
――ああ、腕が紫色だぁ。
「分かればいいんですよ。素直なおにいさんは好きです」
「ああそうかい。ありがとう」
お前に言われてもあまり嬉しくないな。
どうせ好きと言っても『兄』としてだろうしな。


375 名前:5[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:33:55 ID:nNWoFujZ
育が目を覚ましたのは午前1時ごろだった。だが、意識はまだしっかりしていなかった。夢遊病患者のような、虚ろな目でベットから這い出し、歩きづらそうな歩調で、部屋をあとにした

。途中、踏んだスカートがずれ落ち、大人のランジェリーがあらわとなった。
そのまま弟の部屋に静かに入った。弟は綺麗な姿勢で寝ていた。
育は、彼に掛かっていた布団をどかし、寝巻きのズボンを、パンツと共に下ろした。大人の形となった弟のモノを見て、育は虚ろな顔で顔を赤らめ、自分のパンツを落とした。
そこはすでに想像できないほどの液で濡れていた。
弟のモノを舐め、大きくなったのを確認して、自分の中へ入れた。驚くほどすんなりと入り、育は体を振るわせた。育は処女ではなかった。彼女の処女は、以前の弟を思った自慰で、失っ

ていた。
伸は異変に気づき飛び起きようとしたが、姉が恐ろしいほどの力で彼を押さえつけた。
「お姉ちゃんの処女、伸にあげてられてうれしいよぉ。伸が、私の処女貰ってくれたの・・うれしいよぉ」
虚ろな目で興奮した顔。その不可解な姿んまま彼女は腰を揺らし、自分の中に彼のモノを押し付けた。何かを喋ろうとした弟の唇を強引にふさぎ、舌や唾液を一生懸命舐めながら、腰を揺

らした。
「すごいよ・・・中にいっぱい出てる・・・」
甘く、色の付いた声で、姉が言った。姉の中はコレは絶対渡さないと言った様に、動いていた。

姉が疲れ果て、ベットに倒れこむと、伸は姉がどうにか成ったのではないかと心配し、その体を改めた。脈拍や呼吸は先ほどの性交で高ぶったのを差し引いても普通だった。
昨晩からの一連の事件はなんだったのかと、伸は考えた。姉が錯乱し、そして逆レイプとも呼べる状態で、姉の中に大量に出した。それは倫理的に少々胸を痛めることではあるが、それよ

りも伸は大きなことに気づいていた。
錯乱した姉を押さえつけるときの興奮度。包丁を見たとき、体がこわばると同時に脳が鮮明に働くあの感触。
しばらくそんなことを考えていると、育が目を覚ました。
自分の身を改め、状況を確認した後、姉は弟に抱きつき、泣き始めた。
「うれしいよぉ。お姉ちゃんうれしぃよぉ」
泣きじゃくり、体をこれ以上ないほど密着させて来た姉を無意識に抱き、伸はあの高揚感に付いて考えていた。

376 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:34:58 ID:UWU+IsLa
そんなやりとりをしているうちにアパートに到着した。
結局、出発してから帰ってくるまで二時間どころか三時間以上かかった。
おまけに腕も締められた。自転車に乗っていないとロクなことがない。

「ここがおにいさんの住んでるアパートですか・・・・・・。小さいですね」
ひと目見た感想がそれか。
確かに広くはないが、1Kの物件で二万円なら格安だぞ。
それに小さいとはなんだ。
小ささで言わせればお前の胸だって平均以下だ。
「な、なに人の胸をじっと見てるんですか・・・・・・。
見たって大きくはなりませんよ」
「俺はお前の胸に夢を抱いたことはない。
たぶんこれからもそうだろう」
「あれ? そうなんですか?
昔私が叔父さんの家に泊まりに行った時におにいさんはお風呂を」
「いやー、うん。小さいものの方が夢が詰まっているというしな。
うん。小さいほうがいい。小さいの万歳!」
「それ、ロリコンの発言ですね」
俺がロリコンならお前はヘビだ。忘れたい過去を思い出させやがって・・・・・・。
しかし、これから毎日こんなやりとりをしなければならないのか。
・・・・・・ストレスで発狂しなければいいのだが。


引越し業者の持ってきた荷物を華の部屋に入れる作業が終わった頃には
もう外は真っ暗になっていた。
「荷物はこれで全部届いたのか?」
「はい。あまり持ってきてないですから」
たしかに箱の数は少なかったが、中身が本ばっかりだったからかなり疲れた。
明日は筋肉痛間違い無しだな。
「そっか。じゃあ今日は帰るよ。またな」
「はい。また明日会いましょう。おにいさん」
別れの挨拶をしてから華はドアを閉めた。
やれやれ。休日だというのに何故こんな重労働をしなければならんのか。
「あ、おにいさん言い忘れてたことがありました」
「・・・・・・なんだよ」
「お部屋、隣同士ですから。昔みたいに雑誌でおイタしたらすぐ聞こえますよ。
気をつけてくださいね。うふふふふ」
「とっとと寝ろ! このヘビ女!」
華は手を振ってからドアを閉めた。

・・・・・・ストレスと欲求不満で発狂しそうだ。

377 名前:6[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:35:42 ID:nNWoFujZ

後日、伸は、カフェで同僚のあの娘と一緒に紅茶を飲んでいた。
「自分の後方、露店の近くの角。こちらを見ている人が居る」
「育・・・さん・・?」
答えを聞いて、伸はにやりと笑った。
「おかしいよ。包丁で切りかかってきたり襲われたり・・・。育さん、絶対に医者につれてったほうがいいよ」
「お断りだ」
なんで。そう同僚が返した。
「背中に感じるこのゾクリとした感覚。危険を感じ、こわばる体、明確な判断をしようと高回転する自分の思考。その興奮がたまらなく好きになってきている」伸は、軽くこぶしを握った。
「それは、あの姉でしか味わえない。自分をそこまで興奮させてくれる女性は、姉しか居ない」
伸は心底うれしそうに笑った。


誤字多いな・・・。
他の人の奴の間に入れる形にってすいませんでした。

378 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:35:50 ID:UWU+IsLa
次回へ続く。

とりあえず三人のヒロインが出揃いました。
ここからはそれぞれが絡み合うストーリーになります。
嫉妬分は少なくなる予定です。
どちらかというとお互いにゲフンゲフン。


どうでもいい情報
題:胸の大きさ

女店長 >>(越えられない壁)>> 天野香織 >>>> 菊川かなこ >> 現大園華


379 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:38:38 ID:UWU+IsLa
うあ! すごいことになってしまった!
すんませんnNWoFujZさん。
あとスレの皆と保管庫の中の人ごめんなさい。


380 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 22:45:13 ID:nNWoFujZ
ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSoさん、こちらこそスイマセン。割り込む形に成ってしまって。


381 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/06(火) 23:03:06 ID:ACX5mYHI
両方とも超GJ!!


キモ姉万歳!!

三人の中では幼なじみが一番好感がもてる

続きに期待!!!


382 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 23:11:53 ID:c/t9r4Kh
ちょwww
なんかすごい連続投下キタ━━━!!!
お二方ともGJ!

遂に三人のヒロインが揃ってこの先の展開にwktk

383 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 23:12:48 ID:DnPf80D7
作品がぶつかるほどこのスレが活気があるなんてうれしいですな。
>>379
>>380
お二人とも、これからも読み続けさせていただきますよ。

384 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 23:22:47 ID:l6jTrGdI
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおお

385 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 23:30:47 ID:RIVIkvRt
雄志の着メロ、MGSのメインテーマの気がする。

386 名前:ことのはぐるま訂正 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/06(火) 23:53:24 ID:UWU+IsLa
>>363
>フリーター人口の割合はは0.1%も上昇しない。
フリーター人口の割合は0.1%も上昇しない。

でした。ごめんなさい。

>>385
ヒント:雄志は萌える曲より燃える曲が好き。

387 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 23:59:35 ID:c4sMuGyi
お二人にはGJ以外にかける言葉が見つからない。


388 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 01:05:39 ID:3SE/UIFM
>>378
越えられない壁とまで言われると女店長が気になってくるわけですが

389 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 01:33:43 ID:BlWBUlC5
共にGJ!!!

ただ>>380さん、結局キモ姉の処女はいつ無くなったんですか?最初は弟が奪ったみたいになってるんですが、後の方はバイブに捧げたみたいな感じに……

390 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 01:58:20 ID:hOt4U5zC
現実と妄想の境目が無くなったキモ姉……。

そして、優等生面しときながら独占欲の強そうな従妹……。


GJすぎるぜ!!

391 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/07(水) 08:53:47 ID:55zc9tPi
>>388
よしわかった。
『越えられない壁』女店長の短編も書くとしよう。

いつにしようか?バレンタインネタにしたほうがいい?

392 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/07(水) 09:35:22 ID:55zc9tPi
続けてレスしてすまない。

やっぱりバレンタインネタの方がキモくなりそうなので14日に投下する。

393 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 12:15:33 ID:fEymG/BJ
+   +
∧_∧  +
(0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +

バレンタインを正座して待っています

394 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 17:32:32 ID:wPKBMAfm
http://www.so-net.ne.jp/vivre/kokoro/psyqa1087.html
マジで怖い・・・

395 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 17:43:02 ID:hOt4U5zC
なんだ、この笑えないオチは!!
結局なんだったのかすげえ気になるな。

396 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 18:29:09 ID:wh/n4Ly9
>>394
これ、美少女にされるんなら俺は大歓迎だ。

しかしイタズラメールの匂いがするな。根拠はないけど。

397 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 23:52:09 ID:hwYcHRU4
気をつけろ…。
店長ばかり見ていると、あの娘がナイフを持ってお前らの背後に…。

398 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 00:28:35 ID:Eyqqfjq3
寧ろあの娘にナイフで刺殺されるのが本望

399 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 06:01:15 ID:CCFupwTk
誰かネットで読めるおすすめヤンデレ小説知らない?
まとめのリンク先以外で

400 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 06:54:27 ID:AOcERuKu
>>399
ハルヒを知ってるんならば、『長門スレまとめwiki』内にある
SSコーナーの『書き込めない人』のがいいかな。

ハルヒを知らないなら、事前知識として

キョン:突っ込み役
ハルヒ:得体の知れない力を持っている女
長門:読書好きの宇宙人

と思っていればなんとなく内容がわかるはず。