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151 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 20:53:27 ID:TLFyhqD/
? なんか呼ばれた気がする。


というわけで、投下します。第五話です。

152 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 20:55:23 ID:TLFyhqD/
第五話~親友と幼馴染~

俺は今、ちょっとした手違いで香織を押し倒している状態にある。
ちょっとした、ただの友人同士のじゃれ合いをしているうちにこんな状態になってしまっただけだ。
決してわざとではない。
だが今の光景だけを見た幼馴染がそれを理解しているわけがない。
華には俺が女の子を部屋に連れ込んで今まさに襲い掛からんとしているようにしか見えないだろう。
しかし、それは誤解である。大きな誤解である。
決して俺は香織をどうにかしようとして押し倒しているわけではない。
香織の腕が俺の背中に回っていて、抱きしめる力が弱らないのは俺のせいではない。
「俺を抱きしめてくれないか」などと変態みたいなことを言った覚えは生まれてこの方一度も無い。
ご先祖様に誓ってもいい。
俺は変態では無い。

「まるで変態ですね。おにいさん」
……だから違うと言っているだろう。
「おにいさんがとうとう栄養失調で倒れてしまったのかと思って駆け込んだ私が馬鹿みたいですよ」
そこまでお前は俺のことをダメな男だと思っているのか……。
「正社員からフリーターになって、この次はニートになるんだと思ってましたけど、
さすがおにいさんは違いますね。まさか性犯罪者になるとは思いませんでした。
たぶんムラムラきて、近所を歩いていた女性を無理やり連れ込んだんでしょう?
前付き合っていた女性は普通の人でしたから、その人はおにいさんの趣味じゃなさそうですしね」
この女。さっきから何言ってやがる。
――もう我慢ならん。今回ばかりは反論してやる。

「華。お前な――」
「華?」
さっきまで黙ったままだった香織が口を挟んできた。
「もしかして、華ちゃん?」
「え?」
華の視線が移動し、俺の下に居る女の顔を観察している。
その顔が疑わしいものを見るものから驚愕の表情に変わるのはすぐだった。
華がおそるおそる、といった感じで言葉を紡ぐ。
「まさか、香織さん……?」
「――やっぱり、華ちゃんだったんだ」
「…………ちっ」
「ふん…………」
ぶつかり合っていた視線を一旦両者とも逸らし、黙り込んだ。
華はその状態で、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
香織は口を固く結んだまま歯軋りをした。ギリッ、という音がはっきりと聞こえてきた。
――またこの二人が再会してしまうとは。
できれば華が大学卒業するまで会わせないつもりだったのに、
今日香織を家に入れてしまったせいでその予定が狂ってしまった。


153 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 20:58:08 ID:TLFyhqD/
香織と華。二人が知り合うきっかけは俺と香織が下校している最中に、
同じく下校していた華とばったり顔を合わせた、という簡単なものだった。
だが、何故か顔を合わせた日から二人の犬猿の関係は始まった。
二人は会うたびに俺を挟んだ状態で睨みあった。
二人の目からビームが出ると想定した場合、性質の違う二つのエネルギーはぶつかり合った途端に
対消滅を起こし、その時に発生するエネルギーで中間地点に居る俺を消滅させているだろう。
つまりはそれぐらいの激しさで睨みあうような関係なのだ。
睨みあう姿を見たくないがために、二人を会わせたくない、と俺は毎日思っていた。
二人のぶつかり合いは俺と香織が高校を卒業した時点で終息を向かえたわけだが、
再び、約五年ぶりに二人が再会したことでその光景が復活しようとしている。

何かきっかけがあったわけではないだろう。
だが、二人は同時に顔を向き合わせた。
「……お久しぶりですね香織さん。五年振りですか。あまりに長い間会わなかったものだから
てっきりご臨終されたかと思っていました」
「うん、そうだね。本当に久しぶりだよ。ごめんね長く会えなくって。
雄志君とセットになっていない華ちゃんと会う価値なんてなかったからさ」
二人ともが――久しぶりだからかもしれないが――昔以上にトゲのある言葉を吐き出す。
逃げたい。でも香織が手を離してくれない限りそれはできない。
つまり、まだこのやりとりを見続けなければならないということだ。
「おにいさんを離してくれませんか? 香織さん」
「離すも何も。雄志君から押し倒してきたんだもん。
どうしようもないよねこれ。いやん。私、どうしよう?」
「――ッ!! おにいさん! 本当ですか!」
華の怒りの矛先が俺に向けられた。
「違う! 断じて違う!」
首を振って全力で否定する。
「確かに傍から見れば香織の言うとおりかもしれないが、俺はそんなことはしない!
俺はいたって普通の人間だ! 性犯罪嗜好は持ち合わせていない!」
「またまた雄志君ったら。さっきまでケダモノみたいな顔をしてたくせに」
笑顔を浮かべながら香織が言う。何かおかしいぞ今のこいつは。
――もしかしてわざとやっているのか?

「……そうでしたか。やっぱりおにいさんは変態だったんですね。
いえ、もはや犯罪者そのもの、と言ったほうがいいかもしれませんね。
さすがです。もはや軽蔑の念さえ抱きますよ」
華が俺を見下ろしながらそう言った。
「なんでそうなるんだよ! 香織とは知り合いだぞ!」
「知り合いだとか、知り合いじゃないとかは関係ないです。
今、香織さんははっきりと『押し倒してきた』と言いました。
それに、今まさに押し倒している人の発言を信じることなど出来ません」
つまり、「女性がそう証言しているのだから、あなたの言葉は信じられません」ということか?
華よ。いつからお前は女尊男卑の考えを持つようになったんだ?
いつから俺の言うことを全く信じなくなったんだ?
おにいさんは悲しいよ。
「よく聞け華。たしかにこの状況を見ればその言葉を信じてしまうのも無理は無い。
だが真実はそうじゃないんだ。香織が俺にタックルを仕掛けてきて――」
「そう! 真実は違うんだよ華ちゃん!」
香織が割り込んできた。
そうだ。お前の口から華に真実を教えてやってくれ。
俺は無実だと。
俺がお前に対して邪な考えを抱いていないということを――
「本当は、雄志君が風呂上りのボクの姿を見てむらむら来て襲い掛かってきたんだよ!」


154 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 20:59:47 ID:TLFyhqD/
……なに?
お前はさっきから何で馬鹿なことばかり口にするんだ?
そんなこと言ったら、また――
「なんですってぇええ?!」
ほらな。華の怒りに燃料を注ぐ結果になった。
香織の手が、わなわなと震えている。
そして、その手が握り締められたときに、ゴキリ、という音がした。
(まずい。香織の口を塞がなければ、今度こそ俺の命が危うい!)
香織の口を押さえようとして腕を持ち上げた。
すると。
「んっ! 雄志君、だめ・・・・・・そこ、弱いから・・・・・・」
香織が今までに聞いたことのない声――喘ぎ声を漏らした。
「何を言ってるんだ! 目を覚ませ香織!」
「ふぁんっ! だめぇ。そんな硬いもの当てちゃ……ボクおかしくなっちゃうよう……」
「ええい! さっきから悪ふざけがすぎるぞ!」
それに体のどこも硬くなったりなんかしていない。……まだ。
「――さん……」
俺が香織を黙らそうともがいていたら、華が俯きながら何かを呟いた。
肩が震えて、手に持っている鍋の蓋がカタカタと音を立てる。
(――――鍋?)
さっきまで持っていなかったはずだが、どこから取り出したんだ?それに何故鍋を持っている?
その理由について考えていると、華がこちらに向かって歩いてきた。
床に鍋を置く。立ち上がると同時に、右手で蓋の縁をつまんで持ち上げた。
華が哀れなものを見つめる瞳をしたまま微笑む。

「おにいさん。さようなら。――永遠に」
彼女は少しも別れを惜しんでいない決別の言葉を、涙を流さずに呟いた。右手を振りかぶって。
下にいる俺からは肘しか見えていない。
しかしその手にはおそらく、鍋蓋が握られているのだろう。

一拍置いて、華の気が動いた。
そこからは、見えるもの全てがスローモーションになった。
振り下ろされる銀色の丸い金物を見つめながら、こう思った。

――理不尽だ。


155 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 21:01:47 ID:TLFyhqD/

・ ・ ・ 

「おにいさん。女性を部屋に連れ込むのは構いません。
しかし隣の部屋に住んでいる人のことも少しは考えて欲しいですね。
壁の向こう側で大きな音がしたら誰でも迷惑だと思いますよ」
「……はい」
「隣に住んでいる私にも人の倒れる音が聞こえてきたんですから、
たぶん一階に住んでいる人にも聞こえていたと思いますよ」
「ごめんなさい」
「私に謝られても意味が無いです。今度下に住んでいる人に謝ってください。いいですね?」
「わかりました」
テーブルの前に正座させられながら、華の叱責を受ける。
反論しないのはこっちが悪いと自覚しているからだ。
――決して華に対して頭が上がらないというわけではない。
実際、大人二人が同時に倒れる音がしたらこの狭いアパート内の住人全員に聞こえているかもしれない。
悪ふざけが過ぎたと確かに思う。華の叱責は当然のことである。
「反省しているのならそれでいいです。……それより頭は大丈夫ですか?」
「ああ、心配するな。たいしたことはない」
華の鍋蓋による一撃は後頭部に直撃した。
しかも縁の部分が当たったものだから平らな部分で殴られるより痛い。
まだ脳に痺れるような痛みが残っている。
まあ、それで華の怒りが収まってくれたのだからよしとしよう。

「じゃあ、晩御飯にしましょうおにいさん。あと、つ、い、で、に香織さんも」
華が普段の調子に戻った。鍋を胸の前に持ってきている。
「晩御飯?」
「はい。私が作ってきました」
そうか。何故鍋を持って隣の俺の部屋にやってきたのかと思っていたら、そういうことだったのか。
――いい話じゃないか。隣に住む生活苦のフリーターのために夕食を作って持ってきてくれる幼馴染。
しかもその幼馴染はしばらく会わないうちに綺麗になっているというおまけ付き。
夢のようなシチュエーションの話だな。
本当に夢であってほしいと思うほど。
「……よし、三人で外に飯食いに行こうか」
「おにいさん? 外はどしゃぶりですよ」
「いや、それでも店は営業してるだろ。なんならコンビニでもいいし」
「おにいさん。もう八時過ぎです。買い物に行っていたら食べる時間が遅くなります」
「あ、そうだ。まだ部屋にカップラーメンのストックが――」
「おにいさん!」
ドン! と大きくなく、頑丈でもない黒テーブルに鍋を叩きつけた。
「私の料理を食べたくないんですか……?」
勢いとは裏腹に小さく、悲しげな声を漏らした。
まずい。さすがに言い過ぎたか。少しだけ目に涙が浮かんでいるようにも――見えなくも無い。
とはいえ、ここで譲るわけにもいかない。なぜなら、華は。
「だって、華ちゃん料理下手でしょ?」
「――――ッ!!!」


156 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 21:04:23 ID:TLFyhqD/
横合いから発せられた一言を聞いて、華が香織の顔を睨みつける。
しかし、今の言葉に反論しようがなかったのだろう。すぐに目を逸らした。
――まあ、つまりはそういうことだ。香織の言ったとおり、華は料理が下手なのだ。
壊滅的・殺人的に下手というわけではない。
砂糖と塩を間違えるレベルの間違いをときどき犯すぐらいのものだ。
「今回は大丈夫です! 何度も何度も何度も確認しましたし、実家に住んでいる時に
何回も何回も何回も何回も作ったことがあります!」
「それさ、昔ボクが食べたときにも言ってなかった?」
「う…………」
「あの時は嫌がらせかと思ったよ。
砂糖と塩を間違って入れたケーキなんて漫画でしか食べられないと思ってたのに」
「今回は違います! 肉じゃがです!」
そう言いながら華が鍋の蓋を開ける。
その中には細切れの牛肉、オレンジ色のにんじん、糸こんにゃく、小さいジャガイモを
だしに浸してあるものが入っていた。たしかに、肉じゃがだ。
「見た目は普通だな。匂いも悪くは無い」
「――問題は味だけどね」
鍋を覗き込みながら香織が言う。
「どうこう言う前に食べてみたらどうですか?」
華が三人分の皿を取り出してテーブルの上に置いた。
「中学時代の私とは違う、ということを知るいい機会です。
いつまでも子供のままでいると思ったら大間違いです」
「ふうん……中身は、成長しているってことだね。中身は。身体のほうは――成長してないみたいだけど」
香織が胸を張る。ブラウスの胸の部分が突き出し、その存在が普段より強調される。
その胸と自分の胸を交互に見た華は、注意深く見ないとわからない程度に歯噛みした。

「――――そういう香織さんは胸だけしか成長していませんね。身長は私より少しだけ低いですし。
何より、頭がかわいそ……おっと、失礼」
……。
「ボ、ボクのどこが頭が可哀相で鈍くさくてノロマでドジっ子だって言うのさ!」
「昔からそうじゃありませんか。香織さん、『情けは人のためならず』の意味、分かりますか?」
…………。
「え…………人に情けをかけるといつかお礼が返ってくるよ、って意味でしょ?」
「あ、ら、ら。あらあら。本当に、その答えでいいんですか?」
………………。
「え、え? ……ち、違うの?」
「違いません。その意味でほぼ正解です」
……………………。
「な! なんだよそれ! ボクをバカにしてるの?!」
「いいえ、試しただけです。……だいたい、これぐらいの問題の答えに自信を持てないなんておかしいですよ」
…………………………はあ。
相変わらずだな、この二人は。ある意味仲がいいのかもしれないが。 
放っておいたらいつまでもやりあいそうな雰囲気になってきたし、ここは一つ……


157 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 21:07:04 ID:TLFyhqD/
「んぬあああぁぁもう! もうボク怒ったからね! 華ちゃん、おもてに――」
「おい、香織」
「何さ! いくら雄志君でも今のボクを止めることなんかできないよ!」
「あーん」
少し大きめのじゃがいもを箸で香織の口元へ運ぶ。
「へ? あ、ああ……あーん」
差し出したじゃがいもを香織が口の中に入れた。
「もぐ、むぐ……」
咀嚼をしている。口の中に入れたものの味を確かめているようだ。
飲み込んだ後で俺の方から声をかけた。
「どうだ? 味の方は」
「んーー。まあ、華ちゃんが作ったにしては上出来だよね。美味しくは無いけど、変な味はしないし……っ!
雄志君! 今あーん、て! いやそれよりも! なんでボクに毒見させるんだよ!」
「いや、いつまで経っても食べられなさそうだったんでな。つい」
これは本当である。夜も八時を回っているから、俺の腹の虫は悲鳴を上げ始めている。
「あ、そっか。ごめん。……でも、いきなりあんなことしなくてもいいんじゃ、ないかな。
こっちにも心の準備というものが……」
香織が人差し指でテーブルに「の」の字を書きながら俯いた。何かぶつぶつと呟いている。
――とりあえず、険悪な状況は脱したようだ。
「……おにいさん」
華が俺を呼んだ。
「なんだ? あ、悪い。勝手に食べさせちゃって」
「いいえ。別にそれはいいんですが。……それより、何か忘れてませんか?」
「何をだ? ――ああ、食事の前には手を洗えってことか?」
「違います! ほら、香織さんにしたことですよ。わかりますよね?」
と言いながら顔を俺に近づけてくる。
「……? キス、か?」
俺がそう言うと、華が顔をしかめた。
「――もういいです!」
華はそう言うと、顔を引っ込めて元の位置に戻った。
なんだ?何か不機嫌そうだな。キスをして欲しかったのか?俺に?
……それは無いか。


158 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 21:10:24 ID:TLFyhqD/
肉じゃがを三人で食べ終わったころには夜も九時を回っていた。
雨はまだ降り続けている。
アパートの天井と屋上の壁は薄いから雨音が良く聞こえるのだ。
「あーあ……どうしよう。こんなどしゃ降りじゃ帰れないよ」
香織が窓の外を見ながらそう呟いた。
「帰ればいいじゃないですか」
華が香織の背中に向かって声をかけた。
「香織さんは少しぐらいなら雨に濡れたって平気でしょう?」
「なに、それ? ひょっとしてボクが馬鹿だから風邪をひかないとでもいいたいのかな?
なんなら華ちゃん、ボクの後ろに乗ってみる? 華ちゃんだったら風邪ひかないよね?」
「……それは遠まわしに私を罵倒しているんですか? 少なくとも、私は香織さんより馬鹿ではないです」
「知ってる? 馬鹿っていうほうが馬鹿なんだよ」
……本当にこの二人は口を開けば喧嘩ばかりするな。
しかも華まで挑発に乗せられるほどに冷静さを失っているから、さっきより低レベルなやりとりになっている。
仕方ない。ここは俺が一肌脱ぐしかないな。
「香織。もし良かったら、だけど。俺の部屋に泊まっていくか?」
とりあえず提案してみた。
返答は――
「「…………」」
――あれ?返事が返ってこないぞ。
おかしいな、と思ったので二人を観察してみる。

窓際に立っている香織は、俺の顔を見つめながら普段より多くまばたきを繰り返している。
テーブルの前に座っている華は、口を半開きにしたまま固まっている。
そのまま一分、二分、三分…………
と、待っても返事が返ってこない。
「……どうしたんだ? 二人とも」
その空気に耐えかねたので、二人に問いかけてみる。
途端、二人が動き出した。
香織が俺に向かって歩いてきた。ずんずんずん、と。
「うん! もちろんそれでボクはオッケーだよ! うん、寝よう。今すぐに!
華ちゃん、そういうわけだから、早く出てって! しっし!」
そう言いながら畳の上に折りたたまれている布団を敷き始めた。
一方の華は、というと。
「おにいさん? 鍋蓋の一撃では目が覚めませんか? 
何なら、このままおにいさんを『終わらせて』あげてもいいんですよ?」
俺に近づくと、俺が着ているジャージの襟を掴んだ。
目の前にいる幼馴染の目は、冗談が通じそうに無い本気の色をしている。
なんだ?俺、変なこと言ったか?
「なあ、華。なんで怒ってるんだ? 困っている親友を泊めるのは当たり前だろ?」
「おにいさんはそう思っているんでしょうけど、香織さんはどう思っているんでしょうね?
本当に何も起こらないと思っているんですか? おにいさん」
「起こるわけ無いだろ。俺は香織に手を出したりしないし」
「そうじゃなくて! 香織さんのほうから……」
言葉を区切ると、華が襟から手を放した。
それから、肩を落として嘆息した。
「――いえ、言ってもおにいさんには分かりませんよね。おにいさんはニブチンですから」
ニブチンって言うな。そんな言葉使うもんじゃない。
だいたい、香織が俺に襲い掛かってくるわけないだろ。
昔も一緒に寝泊りしたときにも何もしてこなかったのに。

しばらく頭を振っていた華は、顔を上げると俺の顔を見つめてきた。
そして。
「仕方ありませんね。そういうことでしたら――私も、今夜ここで寝ます」
有無を言わせぬ口調でそう言った。

159 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 21:12:46 ID:TLFyhqD/
第五話、投下終了です。

160 名前:ことのはぐるま訂正 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/03(土) 21:47:52 ID:TLFyhqD/
>>153
> どうしようもないよねこれ。いやん。私、どうしよう?」
どうしようもないよねこれ。いやん。ボク、どうしよう?」

でした。ごめんなさい。

161 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 22:33:33 ID:6+pMsIgz
ことのはぐるまキタ━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━━!!
再開を待ってました!
香織と華の対決がどこまでの病みに進んでいくのかワクワクテカテカ

162 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 23:04:30 ID:crBr10lR
待っていた。あんたが来るのを本当に待っていたんだ。
嬉し過ぎて、涙も出ねぇや。

GJでした。

163 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/04(日) 01:05:00 ID:buPDkbjT
ことのはぐるまが来てるー
この2人もなかなかだけど、今はなりを潜めているお嬢様が一番目に物見せてくれると期待してる

164 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:05:50 ID:buPDkbjT
(´・ω・`)ごみん、sage忘れた

165 名前:51[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:23:36 ID:XnlPB2so
久しぶりの投稿。
一応…前作の続き物になるよー


鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

さいしょのおはなし
======================================
長きにわたる戦国の世も終わり、太平の時代になって早数十年。
その、長きに渡る平和な時代は、人々に平穏をもたらすと同時に、
その心根の根底に、怠惰と拭えぬ悪意を植えつけていく事になる。




青い空、流れる雲、さらさらと心地よい初夏のそよ風。
「平和ねぇ…」
あたしは境内の掃除の手を止め、はふ、と小さくため息をつく。
そして、境内から伸びる階段の下に広がる城下町を見下ろしながら大きくのびをした。
今日も良い天気だ。
あたしは昼下がりの心地よさに小さく微笑むと、境内の掃除を再開する。
それは、当たり前の一日の日のこと。

あたしの名前は、紗代(さよ)。
とある地方藩の城下町の近郊に居を構える小さな神社の神主である父の
娘であると同時に、この神社で巫女をしている。
先日ようやっと17になったばかりだ。
この年頃の娘といえば、総じて色々と誘惑も多いところではあるが…
巫女という仕事柄もあり、年頃の娘らしい生活とは少々無縁な生活を送っている。

「さてと、これで掃除はおしまいかな」

あたしは箒を納戸に片付けると、授与所へと急ぐ。
今日は御守りの奉製をしなくてはならない。


166 名前:51[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:24:25 ID:XnlPB2so
「…失礼いたします」

あたしが授与所へ入ると、そこには宮司様…あたしの父が、護符を書き上げているところだった。

「ああ、お掃除ご苦労様。こちらも丁度終わるところだよ」

宮司様は手にした筆を置くと、あたしに向かって微笑みかける。
あたしは、父の笑顔が好きだ。
幼い頃に母を亡くしたあたしにとって、父は唯一の肉親になる。
そのためか、父は母親に良く似ているというあたしを愛してくれたし、
あたしもまた宮司として、同時に父親として尊敬の念を抱いていた。

「すまないね。用意はもう出来ているから、後は仕上げをよろしく頼むよ」

そう言って立ち上がると、宮司様は本殿へと午後のご祈祷をあげに行かれる。
あたしはその後姿に一礼をすると、まずはぱしりと自分の頬を叩いて気合を入れなおした。
そして、宮司様の書かれた護符を丁寧に折りたたみ、一つ一つ丁寧に御守り袋へ詰めていく。
その一折に気を張り、念を篭めて袋に詰め、この御守りを持って行く人達の事を思った。
そうやって暫くした頃だろうか。
おおよそほとんどの御守りを仕上げ終わり、ほう、と一つため息をついていた時。

「「「おーねーちゃん、あーそびーましょー!」」」

外から聞こえてくる子供達の声。
あれ、もうそんな時間か。

「はーあーいー」

あたしは、手を止めて外の声に答える。
授与所の戸を開けると、外にはいつもの見慣れた3人の子の顔が並んでいた。

167 名前:51[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:25:23 ID:XnlPB2so
この子達は大体いつもこの時間、私が暇になってくる頃合を見計らってこの神社にやってくる。

「紗代おねーちゃん、今日は何して遊ぶー?」
「俺、鬼ごっこがいい!」
「昨日も鬼ごっこだったじゃんー今日は違うのにしようよー」
「鬼ごっこがいいー!」
「やだー!」
「はいはい、ケンカしない! ケンカしてると遊んであげないよ?」

口々に勝手なことを喋っている子供達に苦笑すると、あたしは三人の頭を撫ぜながら嗜める。
これも、あたしの日課の一つのようなものである。
最初は、神社の境内で遊ぶ子供達が怪我をしたり、物を壊したりしないように監視するのが
目的だったのだが…今となっては、私もちょうどいい息抜きにさせてもらっている。
結局、この日は鬼ごっこを遊ぼうとしていた子が折れる形で、かごめかごめで遊ぶことになった。

「じゃ、まずおねえちゃんが鬼ね!」

子供達が、笑いながらあたしの回りをぐるりと取り囲む。

「うっふっふ、絶対負けないからねー?」

あたしはにやりと笑いながらその場にしゃがみこんで顔を伏せる。
それを確認すると同時に、子供達の歌声が境内に響き渡った。

-かごめ かごめ-
-かごのなかの とりは-
-よあけの ばんに つるとかめが すべった-
-うしろのしょうめん だーれ?-

歌声がやむ。
あたしの背後に立つ誰かの気配。周囲の、笑いを堪えるような、楽しげな気配。

「あたしの後ろにいるのは…」

この気配は…あたしは良く知っている。

168 名前:51[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:26:32 ID:XnlPB2so
「儀介! あんたでしょ!」
「げ、何でわかるかな、気配殺してたのに」

聞こえてくる青年の声。
立ち上がり、顔をあげるあたしの目に映る皮肉げな笑みを浮かべた青年…
こいつは、儀介(ぎすけ)。
あたしの幼馴染で、元服したにもかかわらず、嫁を娶るわけでもなく、
城下町にある長屋でその日暮らしをしている。
あたしとは…まあ、腐れ縁という奴だ。

「紗代ねーちゃんすげー」
「よーくわかったねー! 黙ってたのに!」

口々に褒め称える子供達に、あたしは少し胸を張って見せた。

「いやー、しかしなんだ、ガキンチョどもの子守も大変だぁね。
神社の仕事もこなしながら、てんだから、いやーホント頭が下がるね」

儀介はそういっていつもの皮肉げな笑みを浮かべて、子供の一人の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
あたしは、そんな儀介の姿に小さくため息をつく。

「むしろ、あたしはあんたのその気の抜けっぷりのほうを注意したいところ。
大体その年になったんだからそろそろしっかりと足場、固めるべきじゃないの?」

私の苦言にあいたたたと苦笑しながら、儀介は髪をかき上げふっと伊達男を気取って見せた。

「いやいやいや、才気溢れる俺様の器は安っぽい人生に埋もれさせてはいけないと思うのだな。
もっと俺様に見合う生き方っていうの? そういうのがあるわけだ、うん」

あたしは儀介の言葉を聞きながら、こめかみに指を押し当てる。

「で、あんたに見合う生き方てのはこの際置いておくとして。今日は一体何の用事?」

儀介は、私の言葉に待ってましたとばかりに擦り寄ってきた。

169 名前:51[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:29:16 ID:XnlPB2so
「いやーその、なんだ。 ちょっと今懐が厳しくってさぁ…。
悪ぃ、明後日には返すからちょっと金貸してくんない?」

両手を合わせ、拝むような仕草をとる儀介。
…この男は…。
あたしは、あんまりにもあんまりなこの男の発言に本気で頭痛を覚える。

「うん、わかったー…って言うと思ったかこンの甲斐性なしッ!」

ぱちこーんと小気味良い音を立てて私の張り手が儀介の頬を捉えた。
すっとぶ儀介。

「い、いきなりひっぱたくことないじゃないかよ!」

非難の声をあげる儀介。
そんな儀介にあたしは腰に手を当てながら叫ぶ。

「あたしが 『引っぱたく』と心の中でそう思ったなら!その時すでに行動は終わってるのよ!」
「まて、何だその遠い将来に義兄弟のアニキが言い出しそうな発言はッ!」
「問答無用ッ!みんな、儀介が鬼よ、みんなでやっつけちゃいなさーい!」
「「「はーーい!」」」
「待て、ガキんちょ使うのはお前そりゃ反則だろ! 痛ェ! 石投げるな!」

子供達に追いかけられ、逃げ惑う儀介。
その様を見て、あたしは堪えきれずに笑った。
子供達も笑っていた。儀介も笑っていた。


きっと、明日も、明後日も、明々後日も、この平和な日々が続くのだと。
あたしは、それを当たり前のように信じていた。
この時は、まだ。


======================================
というわけでまずは最初のお話。


>管理人さん
えー保管庫のほうで「戦巫女(仮)」となっているタイトル

鬼葬譚 第一章 『緋の詩』

に変更願いますです

170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:35:35 ID:Qo6U2frW
「ことのはぐるま」を保管庫で第1話から読みました。
キャラがよく練られていて面白いです。
最初のお嬢様がまた出てきてほしいとwktk

171 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:35:36 ID:ebyXowoD
投下します
注意 フタナリものです

「お前たちも自覚があると思うが、もうセンターまで500日も残されていない。部活に精を出し、三年の夏に引退…そっから勉強をやるという奴のほうが多いと思うが、
はっきり云ってそれは少し厳しいぞ。受験の波は既にお前らに迫っている。乗り遅れたら終わりと思え!特に受験なんか、まだまだ先だと思っている奴は!後になって、絶
対後悔するぞ」
そう云って、否命のクラスの担任は朝のHRを打ち切った。五月の半ばに入ったと云うのに、未だにゴールデンウィーク気分の覚めない輩に渇をいれたのである。
「ねぇ、沙紀さん…」
先ほどの担任の話を聞いてゴールデンウィーク気分が一気に覚めた否命が、何処か心配げな声で同じクラスである沙紀に耳打ちした。
「やっぱり、今から勉強しないとまずいのかな?私、成績悪いから推薦も貰えないし、受験勉強だって全然やってこなかったし…」
「お嬢様なら、大丈夫ですよ」
沙紀は胸を張って、自信満々に答えた。
「無理をせずに自分のペースで頑張って、才能を信じて、秘められた力を信じて、奇跡を信じて、楽観的に考えながら前に進む限り成果は無くても、希望だけは見えてきますよ」
「うん、私頑張る!」
「そうです、お嬢様!その意気です!」
「浪人する奴の常套句じゃん、それって」
隣で話を聞いていた否命の親友である、竹宮源之助は苦笑交じりに呟いた。源之助はその男のように厳つい名前で誤解を受けやすいが、れきっとした女である。
「浪人もいいじゃないですか、源之助さん。きっと毎日が日曜日ですよ」
「沙紀さん…それってむしろ、曜日の感覚が無くなるんじゃ…」
「とにかく、私は浪人なんてごめんね」
そう言って、源之助は溜息をつく。
「私も浪人はちょっと…」
「だけど、否命は成績も悪いし、受験勉強も苦手なんでしょ?」
「じっ、自分のペースで頑張って、楽観的に前に進んでいけば、きっ、きっと希望は見えるもん!」
「だから、それだと浪人するって」
「はぅぅ…」
「あらあら…そういえばお嬢様はAO入試なるものをご存知ですか?」
「AO入試?」
聞きなれない単語に否命は眼を丸くした。


172 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:36:38 ID:ebyXowoD
「否命は知らないの、AO?」
「うん…」
「自己推薦方式って言って、自分で自分を推薦するの。論文と面接で入学の是非を判断するんだけど、論文は先生が書いてくれるから、実際は面接だけね」
「面接って、どういう事を聞かれるのかな?」
「自分が頑張ったこと。とりあえず、部活の事については聞かれるんじゃないの?」
「私、部活入ってない…源之助ちゃんも知ってるでしょ?」
「では、君は熱心に勉学に励んだのかね?」
源之助は腕を組み、不遜な態度で無駄にプレッシャーをかける面接官になりきって否命に迫った。
「私、成績も悪い…」
否命はビビリながらも、それに対応する。
「では、君は一体、高校生活で一体何を頑張ってきたのかね?ボランティア活動や研究活動や習い事でもしていたのかい?」
「してません…」
「本当に君は高校で何を頑張ってきたんだい?」
「え…その、とっ、とにかく頑張ってきました」
(言えない…、私が毎日頑張っていることは…誰にも)
否命は心の中で呟いた。
「とにかく頑張ってきた…か?普通に考えれば、成績も悪い、部活にも入ってない、校外活動もやってないとくれば、高校生活で頑張った事がないと思われても仕方が無いと思わないかい?」
「はぅぅ…」
「お嬢様、そういう時はこう言うんですよ。僕を普通の目で見ないで下さい!」
「では、私は君のことをどういう目で見たらいいのかね?」
そう問われれば否命は、
「その、あの…やっぱり、普通の目で」
と、答えるしか無かった。
「じゃあ、君は高校生活で頑張ったことが無い…ということでいいのかな?」
「沙紀さぁん…」
助けて…と、否命は沙紀に潤んだ瞳で訴えかけた。
「お嬢様、そんな顔をなさらないで下さい。大丈夫ですよ、こういう時は、「貴方に僕の何が分かるっていうんですか!!?」と言えばいいのです」
「面接の意味ないじゃん!」
そこで思わず源之助は沙紀につっこんだ。


173 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 01:37:51 ID:ebyXowoD
「はぁー、否命、本当にあんたどうするの?このままだと…」
「むっ、無理をせずに自分のペースで頑張って…」
「だーかーら、それだと浪人よ」
「はぅぅ…」
そんな否命と源之助のやりとりを、沙紀は何処か遠い瞳で見つめていた。
高二は既に自分の将来を選択する時期だ。その選択の一環としてある大学受験は、人生のゴールではないけど、やはり人生の関門の一つだろう。
その来たるべき関門をどう乗り越えるかを、否命と源之助は悩んでいる。それが、沙紀に時間の流れというものもひしひしと感じさせた。
この楽しい時間…、沙紀が大好きな日常はいつまでも続くはずは無い。沙紀だって、それぐらい分かっている。そして、次にまたもっと楽しい時間が待っている事も沙紀は分かっていた。
それでも、この日常が終わるのは寂しかった。
ただ、無性に寂しかった。
沙紀は理解していた。もう、日常が終わりかけている事を。この楽しい一時は終わっていく日常の中の、文字通り「一時」でしかないことを、沙紀は実感として理解していた。
「この偏安いつまで続く…」
言葉にしてみると、それは沙紀の胸によく響いた。

投下終わります

174 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 02:05:49 ID:RKZn4nDD
>>169
おお、待望の続編が!
第一章のときも思ったけど、文章の雰囲気がいいな。
落ち着いてて、「和」を感じさせる。

>>173
>、「貴方に僕の何が分かるっていうんですか!!?」
にワロスwコントかw
で。普通に読めたんだけど、これってフタナリなの?



175 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 02:56:09 ID:RKZn4nDD
続きレスごめん

>>154の
> ほらな。華の怒りに燃料を注ぐ結果になった。
> 香織の手が、わなわなと震えている。
の’香織の手’って’華の手’じゃないかな?と思うんだけど。

え?このケーキを食え?いや、なんかあやしいからことわくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」



176 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 06:58:13 ID:DDilHmMV
>>166
待望の続編ktkr!GJ!
>>173
ふたなり属性はなかったが期待します!

ところでお二方ともトリップつけたほうがよろしいかと

177 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/03/04(日) 14:21:14 ID:DikTk30a
置いときますね
http://imepita.jp/20070304/515280
一応縦にしてご覧下さい

178 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/04(日) 15:11:44 ID:GG/5ruyi
今日も投下ラッシュが来ていた。全ての神々に感謝(-人-)

>>169続編キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
前回に負けない病みクルー!?
>>173「はぅぅ…」 に萌えました(*´д`*)ハァハァ 
>>177いつもながらGJ! このアリスは可愛すぎる(*´д`*)ハァハァ  

179 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 00:29:21 ID:PBOHHP2L
>>175
その通りです。読み直したら、そこも修正箇所でした。

みなさん。ごめんなさい。

180 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/05(月) 09:48:16 ID:7bYfVHDz
いない君といる誰かを待ち続ける

181 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/05(月) 12:11:49 ID:YarDc/SR
それじゃ俺は真夜中のよづりを待ち続ける。
冒頭でDEAD ENDなのが気になりまくり。

182 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 21:21:17 ID:fnlF47vt
お久しぶりです。予告どおり『おにいたん2』投下します。

183 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 21:22:11 ID:fnlF47vt
<<<新店長でグランドオープン~おにいたん、だいすき!2~>>>

てっこら、てっこら。
昼間の大通り、幼稚園ぐらいの女の子が歩いている。
そばには自分と同じぐらいの大きな犬。犬には首輪こそついているが紐はついていない・・・、
もっとも、紐で引っ張っても犬のほうが女の子を引きづるだろうが。
犬と少女はやがて駅に着く。
少女は首から提げた大きなバッグからなにやら写真を取り出した。
待合室の中、少女は写真を手にきょろきょろ。やがて、目的であろう人物に声をかける。
「おぢたん!!」
おじさんと呼ばれた男は同じく写真を手ににっこりと笑い、少女に手を差し伸べる。
少女と男は握手をしたあと、男に声をかける。
「おちっこ・・・」
二人はトイレに入っていった。
10分後。トイレからは女の子だけが出てきた。首から提げたバッグは前より膨らんでいる。
女の子は入り口で待機していた犬の首に自分のバッグをくくりつける。
そして一人と一匹は駅をあとにする。『荷物』を届けるために。
少女は犬の背中にちょこんと座り、声をかけた。
「たてと(さてと)、かえるでつよ、ピオン」
犬は少女を背中にのせ、それでも普段と変わらない足取りで歩き去った。

「『えくつたちぃ』、もらってきたでつよ」
「おお、えらいぞ、かおるちゃん」
某『反社会的団体』の事務所。山那薫はピオンの首からバッグをはずし、中身を見せた。
中にはカラフルな錠剤-『エクスタシー』と呼ばれる麻薬がぎっしり。
「むこうのおぢたん、くみちょうたんにもらったおかねより、マルがひとつおおくくれなんていってきたでつ」
「またか、あいつは!」
「あたまにきたので、バチバチをくらわせてやったでつ」
薫は懐から黒い金属質のものを取り出す。俗に言う「スタンガン」。
「ああ、かまんよ。おい!」
組長と呼ばれた男は近くにいた自分より少し若いぐらいの男のほうにむき、首をしゃくる。
若い男は隣室へと出て行った。程なくして、「なめとんのか、ワレ!」などという声が聞こえる。
「いまごろあのおぢたんはけいちゃつ(警察)のおぢたんにいぢめられてまつね」
「・・・ここはばれねぇだろうな?」
「ようちえんぢにはんげきたれた(反撃された)なんて、ちんぢるひといるとおもいまつか?」
「ちげぇねぇ!!」
組長はげらげらと笑い出す。
「おかねはかえつでつよ」
「かまやしねえよ。今回の代金は薫ちゃんが全部取っときな」
「ありがとう、おぢたん!」
今回の代金は実は7桁に上る金額だったがそれを差し引いて余りある利がある。
誰も思うまい?「幼稚園児が麻薬の運び屋(しかも自覚あり)」などと。
「ではかえるでつ。あんまりおとくなると、ままがちんぱいつるでつ」
「おう、ママによろしくな!」
「あい!ピオン、かえるでつよ」
事務所の中で寝ていたピオンは起き上がると小さな主人についていった。そして事務所を出て行く一行。
「オヤジ、今回の代金はチャラということでナシつきましたぜ。あ、薫ちゃん帰ったっすか?」
「ああ、アレはいい女だ。あと20歳年くってりゃ愛人にするんだけどな」
「それよりもオヤジの後継がしたほうがいいですぜ。いい姐さんになるな、ありゃ」

がぁっはっはっはっはっ。

事務所の中にむさい男どもの笑い声が響き渡った。


184 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 21:22:45 ID:fnlF47vt
「ただいまでつ」
薫とピオンが帰ったのは禾森邸だった。前作の最後、耕治とあずさは山那邸に引っ越したのだが、
そのせいで山那一家は公営住宅を追い出されてしまったのだ。
実はどこでもそうだと思うが、公営住宅は一定年収以下の人間でないと基本的に入れない。
山那一家の場合、同居人の耕治とあずさの収入の合計が公営住宅の基準をオーバーしてしまい役所から退去勧告を受けた。
仕方ないのであずさは一度は出て行った自分の実家に山那一家と耕治を住まわせることにしたのである。
実家といってもあずさの両親は既に亡く、妹の美衣奈と飼い犬のピオンがいるだけだった。
美衣奈は最初は反対したのだが薫が小声で何かつぶやくと大賛成してくれた。
薫が何をつぶやいたのかは当人達しかわからない。
「かおるちゃん、おかえり~」
出迎えたのは美衣奈だった。
「みなおねえたん、ただいまでつ」
薫はピオンの首につるしたバッグを取り出し美衣奈に預ける。
「またちょきん、おねがいちまつでつ」
「今回多いね~危ない橋渡っちゃだめだよ?」
「バチバチもってまつち、ピオンもいるでつ」
ばぅっ
薫の返事に合わせてピオンが吼える。
「分かってるけど、気をつけてね」
「あい♪」
二人と一匹(ピオンは玄関にある専用マットで自分で足を拭いてから上がる)は居間に向かう。
「おにいたんとあづさおねえたんはまだかえってこないでつか?」
「もうすぐ帰ると思うよ?」
そういってたら玄関のチャイムが鳴る。
「あ、帰ってきた」
「きたでつ」
玄関には耕治、あずさ、そしてテュルパンでパートを始めたとき子が入ってきた。

「で、聞いてよ!耕治ったら新しい店長みて鼻の下伸ばしっぱなしなのよ!」
「おにいたん・・・うわきはバチバチのけいでつよ・・・?」
「い、いや、あれ、アレはしょうがないって!」
山那家改め禾森家の食卓。あずさは今度赴任する新しい店長の話をしていた。
前の店長の妹というその人物は相当の美人でスタイルがいいらしいのだ。
「ナイスバディってとこがちょっととき子さん似だけど、もっとすごいというか・・・
そう・・・トランジスタグラマーっていうか・・・とにかくボォン!キュッ!ぼぉぉぉぉん!!なんだよ」
「『みねふぢこたいけい』でつか?」
「そう、そんなかんじ・・・いててててて!!」
「彼女の前でそんな話するなぁ!」
「耕治さん・・・失礼ですよ・・・?」
美衣奈まで控えめではあるがクレームをいう。
「みてみたい、でつね」
「店長さんを?明日にでも見に行きゃいいじゃん」
「とうちまつ。あちたはアレちかけにいきたいでつち」
「あ、準備できたの?」
「あい♪」
「やっと薫ちゃんの許しが出てアレできるんだ・・・」
「ああ、やっとだな・・・」
「おまたてちまちたでつ」
といって座ったまま礼をする薫。ちゃぶ台にゴチンと額をぶつけるのがお約束。
「んじゃ、食い終わったら『食後の運動』だな。ん、ふっ、ふ~」
「おにいたん、なにいってるでつか?おにいたんは『ばつげーむ』でつよ?」
「え、なんで?なんで?」
「こ、耕治さん・・・浮気の罪は重いと思うんですけど・・・」
「え?アレで浮気のうちに入るのかよ?!・・・って、まて、ピオン!なにをする!やめい!!」
ピオンは耕治の後ろに回りこむと後ろの首の襟口を噛み耕治を寝室までひきづっていくところだった。
「まて!俺はまだ食事中!ってやめろ!ズボン噛み千切るな!うわ~」
「ばつげーむのひつようないでつね」
うんうんと頷く女ども。何か後ろではパンパンという腰を叩きつける音がするが気にしない。
そうして禾森家の夜はふけていく。

185 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 21:24:54 ID:fnlF47vt
すいません、続きます。次回、エロシーンだらけ。
冒頭のあのシーンですが、どうしても後半の伏線ですので外せませんでした。
実は今回のメインヒロイン、まだ出てきてません。
次回出てきます。モデルはもちろんあの人です。

186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/05(月) 21:44:30 ID:IP7Gf7/V
薫タンキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆
GJ!…てか、耕治カワイソスwww そして薫タンオソロシスwwwww

187 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:05:25 ID:meHRPJLV
>>185
GJ!!次回をwktkしております。

↓投下します。久しぶりになっちゃってごめんなさい。
バールのようなものを投げたりしないで下さい。


188 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:07:11 ID:meHRPJLV

聖祐人は椅子に座ってぐったりしていた。昨日と違うのは椅子に拘束されていない
ことと右手から手足に繋がれた手錠と首輪が彼を拘束していることだ。祐人は何気なく
首輪に触れながら今朝の情景を思い出していた。

朝はいきなり姫野真弓に叩き起こされることで始まった。起こされたは良いが
頭が重く、霞みがかかっているどころか脳が泥になったような感じがした。
上手く回転しない思考でも疲れただとか体調不良だとかそういったレベルの
何かではないことはわかった。

薬……でも盛られたか。

ここまで考えたところで着替えるからこっち向かないでだとか遅刻するだとか
騒ぎながらバタバタと用意をしていた真弓に朝ご飯だからとリビングに連れて行かれた。
さすがに2人同時に食べると真弓の遅刻が本格的に確定するので真弓だけが食べ
祐人の分は今彼の目の前にあった。


「じゃ、祐人行ってきまーす」

祐人の首輪から伸びた鎖を繋ぎ変えた真弓が振り返る。部屋の隅に繋がれた鎖は
かなり長い。真弓曰わくリビングと「真弓と祐人の部屋」とトイレをギリギリ
行き来できる長さにしてあるらしい。

「ああ……いってらっしゃい」

ぐったりと祐人が応じると真弓は少し頬を膨らませて不服げな顔をした。

「恋人にするいってらっしゃいなんだからもっとなんか甘いこと言ってよ」



189 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:08:55 ID:meHRPJLV

恋人。朝から何度この単語を聞いただろう。
ことあるごとに真弓は祐人と自分の関係に名前を与えた。
それは真弓から一方的に付けられた名前であるが。

「恋人恋人ってお前な……」
「恋人、でしょう?」
「そんな覚えは無い」
「……祐人、祐人私のこと嫌いなの?」

真弓が瞳を潤ませて問い掛けてきた。祐人の目を真っ直ぐ見ながら彼女は続ける。

「私ね、祐人が私のこと好きだってちゃんと知ってるよ。でもやっぱりそんな態度
取られると不安になるの。……お願い、学校行く前に一度でいいから好きって言って。
気持ちを聞かせて」

泣きそうな瞳で見つめながら真弓は繰り返す。
お願い、好きって言って、気持ちを聞かせて……

言うべきでは、無いのだろう。言えば何か自分の大切なモノを真弓に渡すことになる。
たとえ目の前の女の子を泣かせても渡すべきで無いものを。
祐人にもそれは分かった。だが呪文のようにお願い、と繰り返すだけの意志の力を
今の祐人は持っていなかった。頭が泥のように重い。真弓の声がやけに響く。

「ああ……好きだよ」

真弓の顔に光が差すように笑みが広がる。

「ありがとう祐人」

祐人に向かって真弓は心からの笑顔を浮かべた。


■■■■■■



190 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:09:49 ID:meHRPJLV
■■■■■■


陽もだいぶ高く上ったころ、亜弓が起きてきた。

「あら……おはよう祐人くん」
「おはよう亜弓さん」
「朝ご飯食べたのね……」
「はい。何か混ぜられてるとは思ってますけど、空腹で動けなくなっても困りますから」
「本当に適応力あるのね……」

朝に比べれば祐人の頭はだいぶ回復していた。それでも重くぼんやりと、
まるで良くない夢の中にいるような感覚は拭いきれなかったが。
その内助けが来る。必ず来る。水城やクラスメイトの連中に話を聞けば
姫野が疑われるのは必至だろう。
祐人は意識してそのことだけを考えるようにしていた。
それ以外のことを考えても無駄だと思った。

「開き直れるのは……生きる上でとても大事なことね」
「食べたことがそんなに意外ですか」
「それとも衰弱死さえ免れればなんとかなると思ってるのかしら……?」

亜弓は興味が無さそうに言葉を継いだ。

「まぁその内何もかも普通になるわ」


■■■■■■



191 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:10:51 ID:meHRPJLV
■■■■■■


結局その日はそのまま過ぎた。細かい思考を一切放棄した祐人は夕方帰宅した
真弓に再び手錠で繋がれると掃除や洗濯を手伝わされた。

「ちょっと下着を干したいのであちらを向いて下さい」
「はいはい」
「絶対こっち向かないでよ!?」
「向かないよ」
「向かないでよ!?絶対よ!?」
「そんな念押さなくても見ないから」

普通に会話をして、普通に2人で家事をこなす。むしろ微笑ましくすらある
光景だった。ただ、祐人の行動を制限する手錠と2人を繋ぐ首輪と手錠を除けば。


■■■■■■
■■■■■■


昨日と同じように食べづらい夕食のあと
昨日と同じように一緒であることに意味の無い風呂に入る。昨日と違う点は祐人の
着替えまできちんと用意されていた点だ。

「この服どうしたんだ?」
「買ってきたの」
「姫野がか?」

途端に祐人の首が絞まって壁に体を叩きつけられた。
真弓は変わらず笑みを浮かべているが、違う。空気の色が変わっている。
相変わらず回転の鈍かった頭も危険を感じとった。

「ねぇ祐人」

引かれた鎖が息が詰まるほどでは無いが恐怖を伴った圧迫を作り出す。

「どうしてお姉ちゃんは『亜弓さん』で私が苗字なの?私のことも名前で呼んでよ」

真弓が体を密着させて顔を近づけて来る。パジャマしか着ていないため彼女の
体のラインが祐人にも良くわかった。睫が触れるほど、息がかかるほど近づいて
薄い肩の少女は囁いた。



192 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:12:22 ID:meHRPJLV

「祐人、私のこと好きだよね?」

祐人はのろのろと至近距離にある真弓の瞳を見る。そこには純粋な少女の目に
宿るような光しか無かった。次に紡がれる言葉が自分を傷つけるなどとは
夢にも思わない少女の。

純粋だ。純粋に違いない。真弓は真弓の世界で生きている。それ以外など存在しない。
真弓の世界では祐人は「自分を愛する人」でそうでないことなど有り得無い。
世界が違う。生きる上での前提がそもそも違う。
彼女は自分の世界に「自分を愛する人」である祐人を引き込みたかった。
否、引き込まなければならなかった。そうしなければ世界が不完全になってしまうから。
自分を愛さない祐人など有り得無くとも今は自分と違う世界に彼がいることを
真弓は本能的に知っていた。だから彼女は自分のフィールドに祐人を連れてきて
首輪で繋いで自分の望む言葉を引き出す。

「ああ……好きだよ。『真弓』」

否定することは祐人には出来なかった。
彼が真弓の世界のモノにならない為には否定しなければならなかったのに。
必死で真弓の全てに抗わなければならなかったのに。
ゆっくりと祐人の中に真弓の世界が染み込んで行く。

「……ありがとう祐人」

真弓は少し照れたように言って鎖を離した。


■■■■■■
■■■■■■



193 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:13:22 ID:meHRPJLV
今回はここまでです。

遅筆です。すいません。


194 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:36:12 ID:M2fqlPzG
恋人作り待ってました!GJです!
いよいよ祐人が堕ちそうですね。真弓の普通っぽい所が逆に怖くていいです!

195 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/05(月) 23:58:04 ID:IP7Gf7/V
恋人作りもキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆

これを純愛と見てしまった俺はもう駄目かも分からんね

196 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/06(火) 00:40:06 ID:DpdATVjZ
それでは私も投下します。

197 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/06(火) 00:41:24 ID:DpdATVjZ
『俺の人生は素手で砂を掴むようなもんだった。あとからあとから砂はこぼれ落ちていっちまうのさ』
──チャールズ・スタークウェザー「Rebellion」
朧の背中に張られた写し絵を彫菊は丁寧に剥がした。男のモノとは思えぬ白磁の透明感漂う艶ましい肌──指先を這わせれば蜜蝋のように滑らかだ。
興奮と渇きに喉が灼けるように痛んだ。極上の素材だ。美しい。彫菊は陶酔の面持ちで瞳を濡れ輝かせた。
彫り師をはじめて七年近くになるが、これほど素晴らしい肌の持ち主はお目にかかったことがなかった。
皮膚に入れた下絵を彫菊はマジマジと見つめた。背中には、黒い蠍が鮮血のしたたる男女の生首を両方の鋏で持ち上げ、貪り食らう絵が描かれていた。
凄惨だが、同時に冥い色香が感じられる絵柄だった。アルコールを染み込ませた脱脂綿で背中と尻を拭いていく。
こんな気分を味わうのは久々だ。心が躍った。全身に鳥肌が立った。
数十本の絹針を束ねたノミ(彫針)を右手で握り、彫菊は針先がぶれないように正中線を見定めた。
緊張が走る。唾を呑み込んだ。
「ではいきます」
彫菊の言葉に朧は黙って頷いた。斜めに構えた針先を皮膚に突き刺した。正確に素早く針が下絵を辿っていく。苦痛に、朧が秀麗な相貌を歪ませた。
静まり返った室内に、皮膚を突き破る針の鋭い音だけが鳴り響いた。彫菊の毛穴から汗が噴き出す。針が上下するほどに、少年の裸体が震えた。
肌に浮かんだ血と墨を、彫菊がガーゼで拭っていく。声帯から発せられる苦悶の呻き──針が肉を深く抉る度にどんどん高まっていく。
「ああ……ッ」
朱唇から洩れる苦痛の呻きは、サディスト嗜好の女であればそれだけで達してしまうだろう。
激しい劣情に彫菊は襲われた。鮮烈な欲望の疼き。押さえつけたはずの女の性が揺らめいた。朧とのまぐわいの幻想に女芯が痺れる。
理性が蕩けそうだった。
彫菊は悟った。いま、己は朧と交合を行っているのだと。男女の立場は入れ替わり、肌を食い破る針が男根と化した。
朧の肌を伝う幾筋もの血の糸は、彫菊にとって破瓜の証だった。涜聖をこの手で汚すような錯覚に囚われる。
誰にも蹂躙されることのなかった処女地を犯す淫らな空想──彫菊はサディスティックな歓びに、女の割れ目が肉迫する。
彫菊の込められた情念を針が朧の背に刻み付ける。激痛が伴った。歯を食いしばって朧は耐えた。
*  *  *  *  *  *
部屋の壁に背を預け、巴は宙に空ろな視線を泳がせた。ここ数日間、何もやる気が起きない。原因はわかっていた。
二週間前の東郷神社、深夜に散歩していた所を五人グループの暴漢に襲われそうになった。ひたすら走った。走り続けた。
心臓が急激な運動に胸壁を乱打した。恐怖に心拍数が跳ね上がった。頭が空白になりながら、必死の思いで足の筋肉を動かした。
捕まった。泣き叫んだ。冷や汗まみれになりながら、助けを求めた。白馬の王子様を信じたことはなかった。助けてくれるなら誰でも良かった。
暴漢の内のひとりが手を伸ばし、巴の髪を引っつかんだ。渾身の力で地面に引き倒す。これでもうおしまいだと巴は思った。
助け──現れた。どんな形であれ、それは助けだった。巴を犯そうと暴漢が手をかけた瞬間、鈍い音とともに暴漢は前のめりに倒れていた。
煌々と光る麝香猫の瞳が、暗闇から六人を睨んでいた。彼は何かに怒っている様子だった。さながら、己の縄張りを荒らされた獣のように。
巴は自分を睨みつける異様な瞳に戦慄した。暗がりから見える佳麗な少年の横顔。白皙の美貌だった。
秀でた富士額に、鼻筋が細く真っ直ぐ通っていた。形良く切れ上がった瞳になだらかな弧を描く眉。まるで凛々しい天使のように美しかった。


198 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/06(火) 00:42:31 ID:DpdATVjZ
巴は一瞬、我を忘れた。それから起こった出来事は覚えていない。
空気を切り裂く音が聞こえた刹那、首筋に鋭い痛みを感じ、そこで記憶が途絶えている。
気がつくと血みどろになった暴漢達が、玉砂利の上に転がっていた。
五人とも無残な状態だった。
指を食い千切られた者、耳を切り落とされた者、顔面の皮を剥がされた者、両腕の関節が折れて骨片が肉を突き破っている者。
皮肉にも、わりとまともだったのは自分を最初に犯そうとした暴漢だった。リラの花の香りにも似た血臭が巴の鼻腔をくすぐった。
血の匂いに性的な気分に陥り、巴はその場でオナニーをした。男達の血をすくい、唇に血をぬりたくった。舌先で味わうように舐める。
鉄錆の味が口腔内に広がり、官能が昂ぶる。歪んだ自分の性癖に、何度も嫌気がさす事もしばしばだ。
(あの時は、頭がクラクラしてわけが分からなくなっちゃった……)
ベッドの横に置かれたティディベアのヌイグルミを抱き寄せる。わかっていた。
彼は別段、自分を助けてくれる為に暴漢者達を叩きのめしたわけではないことを。あるいは自分も暴漢者同様に──。
それでも、もう一度逢いたかった。自分と同じ匂いがしたあの少年に。これが恋というものなのだろうか。
心が切なかった。たまらなく切なかった。ため息をつく。
(あなたはいま、何をしているの……?もう一度……あなたに逢いたい……)
ヌイグルミに隠したアルコールが入ったのカプセルを取り出した。アルコール溶液に浮かぶ白い物体──人間の耳朶だった。
蓋を外して耳朶をくわえた。くわえながら指を自分のクリトリスに這わせる。自慰に耽るのは今日で何度目だろう。
彼を思い浮かべるたびに、したくなってしょうがない。摩擦を求めてクリトリスが勃つ。指腹で優しくいらった。
「ああぁ……」
微かな喘ぎが唇から洩れる。若い肢体が張り詰めた。耳朶を噛みながら快感の波に翻弄される。
快感の波が寄せては返し、愛液はとどまる事を知らずに分泌する。錯綜する感奮にまかせ、激しく指を使った。
「いい……もっと、もっと……ッ」
内奥が熱く火照る。アヌスにも指をいれて出し入れした。括約筋が中指の第二関節を強く噛んだ。
*  *  *  *  *  *
タイトル名『生き地獄じゃどいつもイカレてやがる』

199 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/06(火) 00:43:46 ID:DpdATVjZ
雑司ヶ谷霊園の黒々とした木々に身を潜め、朧は少女を待ち続けた。冷たい空っ風が吹き荒む。夜のしじまに紛れ、雑草の掠れる足音が聞こえた。
「食べ物もってきたよ」
少女がアンパンとペッドボトルの紅茶を渡した。
「サンキュー」
朧は礼を言って少女──雪香から食料を受け取った。黙々とアンパンを咀嚼し、ペットボトルの紅茶で喉に流し込む。空になってボトルを放った。
雪香が朧のジーンズのボタンをはずし、チャックを下ろした。柔らかいままのペニスをしゃぶる。風呂には三日間ほどはいっていないから匂うだろう。
それがたまらなく愛しいと雪香は言う。無臭よりも匂いのあるほうが人間味があっていいそうだ。口ではどうこういっても、何のことはない。
不潔なことが好きなだけなのだろう。雪香が朧のペニスを根元まで咥え、喉を鳴らした。亀頭のくびれに付着した恥垢を舌でそぎ落とす。
頭をゆるやかに律動させた。鼻につく恥垢の臭気に雪香は恍惚の表情を浮かべた。
「ねえ、後ろ向いてお尻突き出して……」
ペニスをしゃぶりながら、雪香が上目遣いに朧の眼を見ながら静かな口調で言う。朧は何の感情の起伏も読み取れない瞳で雪香を一瞥した。
「そっちも汚れてるよ……いいの?」
「平気だよ。ううん、汚れてるほうが雪香は好きだよ」
身体を反転させ、膝の辺りまでジーンズを引きずりおろした。掌で己の臀肉をくつ拡げる。雪香がアヌスを嗅いだ。幽かに排泄物の匂いが感じられる。
「んん……っ」
鮮やかなピンク色のアヌスをちろりと舐めた。苦い。雪香はかまわずに舐め続けた。朧は身じろぎせずに雪香の好きにさせる。
拙い舌使いだった。それでも懸命さが窺えた。唾液で濡れた舌先がアヌスの内部にもぐりこんで来た。肛門をこじ開けながら舌が奥へ奥へと進む。
舌が引き抜かれ、代わりに二本の指先がアヌスを穿った。人差し指と中指が肛門粘膜を攪拌する。そこでストップさせた。
「今日はもうおしまいだよ」
「もうなの……もう少しいじれない?」
「駄目。早く指抜きなよ」
名残惜しそうに雪香が抜き出した。指にからみついた黄色い腸液が白い湯気をくゆらせた。雪香が指を舐め清める。
舐め清めながら雪香は薄い笑みを浮かべていた。
朧が最初に雪香と出会ったのは今から一ヶ月前だ。いま朧が立っているこの場所で、雪香は子猫を殺していた。
足元に縋り寄り、にゃおぉん、にゃおぉんと哀れっぽく鳴く二匹の黒い子猫。雪香は楽しそうに、本当に楽しそうに子猫を踏み殺していった。
*  *  *  *  *  *
『可哀想に。捨てられちゃったんだね。大丈夫だよ。お姉ちゃんが助けてあげるからね』
身を震わせる子猫に優しく語りかけながら、雪香は最初の一匹目に靴の踵を乗せた。頭に狙いを定めた。力を込める。
子猫の頭蓋骨を踏み砕けた。安物の陶器を壊すような感触が伝わった。真っ赤な液体と飛び散る。飛び出した眼球が靴底に張り付いた。
二匹目も同様に雪香は踏み潰した。わりと淡々とした作業だ。その行為にはある種の慈悲すら感じられた。
『これでもう、安心だね』

200 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/06(火) 00:45:28 ID:DpdATVjZ
正気にては恋愛ならず。ヤンデレスレはキグルイなり。
今回の投稿分はここまでです。 

続く

201 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 09:50:41 ID:Sg9qkrMt
昨夜は投下ラッシュだったのか。全ての神々に感謝
>>185薫がさらに病んできたのにまだヒロインが出るとは……GJ!
>>193真弓は実に可愛いですね(;´Д`)ハァハァ
>>200ヒロインは3人? それぞれステキに病んでますね(;´Д`)ハァハァ 

202 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 10:43:32 ID:w9JM9Aye
>>200
痛くなければ覚えませぬ、と申したかw

203 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 10:48:26 ID:1FRywSzd
ヤンデレスレはエロエロよー!

204 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 13:45:47 ID:NY4eAMS+
誰かと思えばラックか………

205 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 18:06:26 ID:LCVZAlLr
>>200
>ヤンデレスレはキグルイなり。

最初から狂ってたらそれはただの気違いだからね…
血見てオナニーしたり猫踏み殺して楽しんだりってのは
どうもヤンデレより狂人に近い気がする。
>>1にもあるけど、このスレでは
愛しすぎるあまり病んでいくってのが「ヤンデレ」ってことになってる。
まぁまだ始まったばかりだから何とも言えないけど
もし勘違いしてたらそこら辺考えてみて。

あと人物の名前かどうか分かりにくいときあるから最初に名前出す時は
そういうの分かりやすいように括弧付けしたりしてくれてると読みやすいと思う

206 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 18:32:10 ID:EjKNZAjm
「恋患い」が本人の性格、環境により「重症化」して
「不治の病」となって心を蝕んでしまう、というのが基本ラインかな。

207 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 18:39:31 ID:TN7SzrWR
まあ、定義付けは難しいけどね。

個人的には好きだけど、51氏の戦巫女も広義ではヤンデレだけど
狭義ではちがくなっちゃうし

208 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 20:00:44 ID:kBiLHBaf
いや、戦巫女は ヤンデレ→(対象喪失)→狂 なわけだし、狂に至ったのは最終的なオチの部分だけだから
最初や最後はどうあれ、ヤンデレを主体に描いてればスレとしては全面おっけーだろ

209 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/06(火) 21:17:59 ID:9h7ihrTS
>>186
ゴメソ、本編でも耕治はピオンの餌食にwww

>>187、恋人作りの作者様
お久しぶりでございます&GJ!
何かあっけなく祐人落ちそうですね(汗

>>195
どう見ても純愛です。このスレ的には。

>>196、ラック様
この場合、GJよりもこう言うべきなんだろうなw
「お美事、お美事にござりまする!」
・・・ていうかエロいっす。

>>201
スマソ、本ヒロイン出すの忘れてた←まて

>>205
>最初から狂ってたらそれはただの気違いだからね…
み、耳がいてぇorz


210 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 22:42:04 ID:ukQorpOi
ヤンデレは病むだけでは成り立たない。異常なまでのデレが交じって初めてヤンデレといえるのだ・・・・・

211 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/06(火) 23:58:31 ID:9JXPWStO
俺としては狂気からなる性倒錯を描いたものも美味そうに見えるけど。
ツンデレだって配分の違いでかなり様変わりするだろ?

212 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:03:03 ID:kiMII5Zh
投下します
注意 フタナリものです

「えっ、これって…」
放課後…、否命は自分の下駄箱に入っていた白い封筒を持って固まっていた。その封筒は団栗の代わりにハートを持った可愛らしいリスのシールで封されている。
何が書かれているかは明白であった。
その封筒を手に否命は嬉しいやら、恥ずかしいやらで頬を真っ赤にしていた。しかし、その表情はマンザラでもなさそうである。
(こういうの書く人、本当にいたんだ…。こんな方法をとってくるなんて、書いた人はロ
マンチストなのかな?うん、きっとロマンチスト!だって、このリス可愛いぃー!!あと
で、このリスのシールを何処で買ったか聞いとかなきゃ…て、えっ…こんなシールを使うなんて…もしかしてこの手紙を書いた人って女の子…なのかな?)
否命は辺りを見回し、人がいないのを確認するとリスのシールを破かないように丁寧に封を切った。否命の人生で始めての経験に、否応なく心臓の鼓動が高まっていく。
「「突然の、手紙で驚かしてしまったと思います」」
書き出しの文句を読んで、否命は思わず乾いた笑い声を上げた。
(やっぱり、この字って女の子の字だよね。だけど、なんか、見覚えがあるような…)
「「しかしながら、私の意を伝えるには最良の方法と思いましたので、このような手紙を書いた次第です」」
(恥ずかしがり屋さん…なのかな?)
「「大変申し訳ないのですが、今日の放課後、宜しければ…」」
(呼び出し?何処だろう…?体育館裏は汚いし、屋上は閉鎖されているし…)
「「スーパーで、
ジャガイモ200グラム
人参5本、
レバー500グラム
買ってきていただけませんか?本来ならば、私が行くべきなのですが、今日は大会前につき部活が長引きそうなので、お嬢様が行って下さらないでしょうか?
浅原沙紀」」
否命は拍子が抜けて、やはり乾いた笑い声を上げた。同時に自分がからかわれた事に気づいて少し不機嫌になる。



213 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:05:06 ID:kiMII5Zh
「もう、沙紀さんも…。はぁー、ビックリした」
否命は部活に入っていないが、沙紀は部活に入っている。
高校に入った時、沙紀はこれまで部活に入っていなかったのだが、幼い頃から剣道をやっ
ていた源之助に誘われて剣道部に入ったのである。その際に、勿論否命も誘われたが、否
命は自身の「ある事情」のため、源之助の誘いを断り「だったら、私も…」と断りそうになった沙紀を半ば強引に剣道部に入れたのであった。
否命の「ある事情」は、どうしても家に一人という状況でないと具合が悪いのだ。そのため、否命はどうしても一人になれる時間が欲しかったのである。
そういうわけで、否命は一人で沙紀よりも早く家に帰るのが日課になっている。
それにしても、このような手紙は心臓に悪い…と否命はもう一度、手紙を見直した。沙紀が確信犯であることは明らかであった。
っと、そこで否命は手紙の端っこに書かれてある文章に気付いた。
「「P・S 今夜はお嬢様の好きなカレーですよ♪」」
否命の頬は、既にニンマリとホッペが緩んでいた。沙紀にからかわれた不機嫌は何処へ行ったやら、否命は自然に足取りも軽く商店街へと向っていった。




214 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:06:50 ID:kiMII5Zh
スーパーでの買い物を終え、否命は商店街の道を鼻歌交じりに歩いていた。16時30分
という時刻なので、商店街は人のざわめきで賑わっている。しかし、その中でも一際、大
きなざわめきがあった。そのざわめきは自分のほうへ向ってくるように、大きくなっていく。否命は、なんだろう?…と、立ち止まり、後ろを振り返りざわめきを見ようとした。
その瞬間であった。
「どいて!!」
「えっ?」
否命がその声に気付いた時、否命は自分の身体に強い衝撃を感じた。否命はその声の主に弾き飛ばされる形で道端に尻餅をつく。
「悪いわね」
その声の主は早口でそういうと、後ろを振り返ることなく脱兎の如く走っていった。
どうやら、その声の主がざわめきの中心のようだった。
それから少し遅れて、二人組みの男が声の主を追うように走ってきた。
「待ちやがれ!」
「この餓鬼が!」
立ち上がった否命は、またもやその二人組に弾き飛ばされてしまった。
「悪いな」
その二人組みも、後ろを振り返ることなく先ほどの人物を追っていく。
「誰か、その餓鬼を捕まえてくれ!そいつは「スリ」だ!」
男の一人が叫んだ。
途端、ざわめきが大きくなる。
みるまに逃走する人間の前に人垣が出来上がり、もはや逃げ切れる雰囲気では無くなった。
しばらく、逃走していた人間は人垣の前をオロオロと廻っていたが、直ぐに二人組みの男に追いつかれてしまう。
前を歩いていた否命も、しばらくするとその光景に出くわした。
「さぁ、金を返して貰おうか?」
二人組みの男が、満足そうに言った。
「なんのことかしら?」
そういって、逃走していた人間は顔を上げた。その顔を見て、思わず周囲を囲んでいた野次馬の口から、おお!っと一斉に嘆声がこぼれ出る


215 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:07:43 ID:kiMII5Zh
それは女であるはずの否命も見とれてしまうほどの、美貌の少女であった。
年は丁度、否命と同じくらい・・・16、17に見える。肌は程よくうっすらと黄色がのって
おり、その背中までかかる長い髪はまるで濡れた黒檀の如く艶かしく輝いていた。それが
杏子のようにふくよかな頬と、桃のように品良く切れている顎、そして桜を含んだような朱色の唇を、一層際立たせている。
驚くほど、端正な顔立ちであった。
しかし、その少女の瞳は鳳凰のように凛としていながら、何処か濁っているような、鉛の如く鈍く光っているような、そんな汚さがあった。ただし、それを差し引いてもこの少女はこの世のものとは思えぬ美しさをたたえていた。
「とぼけるなよ、お前が俺から掏った財布のことだ!」
男の怒気を孕んだ声を受け流すように、少女はやれやれ…というように肩を竦めて見せた。少女の口元は、こんな状況に陥ったというのに薄く笑いが浮かんでいた。
「貴方が何を言っているのか分からないわ」
「俺は見たんだよ!お前が、俺の連れから財布を掏るのを…」
「貴方、それを本当に見たの?」
「だから、お前を追ったんだよ」
「そう…、それは困ったわね」
「だったら早く出しな」
「いえ、貴方を眼科に連れて行くべきか、精神科に連れて行くべきか…、この場合は、見えないものが見えたのだから、精神科のほうが適当かしら。いえ、やはりこの場合はむしろ眼科のほ…」
「この餓鬼!」
そう言って、男が少女の胸倉を掴もうとする。その男の手を、
「触らないで頂戴」
と、少女はバシッと払った。



216 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:08:59 ID:kiMII5Zh
男の顔が赤くなる。二人組みの男はどうみても堅気の風体ではなかった。恐らく地元の地回りなのだろう。顔には経験によって刻まれた凄みがある。
その男の、怒りに顔を歪めた表情は凄みが浮き上がり、他を本能的に怯えさせる何かがあった。しかし、その表情を見ても、少女は薄ら笑いを止めようとしない。
「お前は、自分の立場が分かっていないようだな」
「貴方は、自分の夢と現実の境界が分かっていないようね」
「ほぅ…」
呟くよりも早く、男は少女を殴った。
周りで成り行きを見ていた野次馬が息を呑む。
「金を出すんだよ、糞餓鬼!」
「だから、知らないって言っているでしょう?」
少女の顔から笑みが消えていた。代わりに冷たい刃物のようなものが、その顔に張り付いている。男も殴っても尚、口を割ろうとしない少女に苛立ちを募らせていく。
男と少女の間に窒息しそうな沈黙が流れていた。
「何やっているんですか!?」
その沈黙は、駆けつけてきた警官によって破られた。野次馬の誰かが通報したらしかった。
「どうしたんですか?」
警官が問うた。
「どうもこうもねぇ、この餓鬼が…」
「そこの男が!!!!」
言いかけた男の声を遮るように、少女は大声を出した。その大声に周りが水を打ったように静かになる。それを確認すると、少女は警官に向き直って言った。
「突然、奇声を上げたと思った次の瞬間には私に襲い掛かってきたの。そして、私が逃げたら追いかけてきた挙句に、私をスリといって詰ったのよ」
「この野郎、シャアシャアとぬかしやがって!」
「違う?」
「お前が、実際に俺の財布を盗んだ事がな!」
「丁度いいわ。お巡りさん、私のポケットの中を調べてくれる?」
「なっ…!?」
その言葉に男は少女の魂胆が分からず怪訝な顔をしたが、そう言われれば引き下がるほかなかった。
少女と男の会話で、事情を察した警官は、
「では、失礼します」
と言って、少女の前にしゃがみこんだ。
「しっかり、調べて頂戴」
少女の顔には再び、不敵な笑みが浮かんでいた。


217 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:10:04 ID:kiMII5Zh

警官は、少女の脇の下に手を入れると、ポンポンと少女の身体を叩きながら手を下ろしていく。別に、何も異変は無かった。
次に警官は少女に、ポケットをひっくり返すよう要求した。少女がポケットをひっくり返すと、そこから黒い財布が出てきた。
「これが…?」
男は無言で頭を振った。
そして、少女のポケットからはそれ以外のものは出てこなかった。少女は自分のシャツも捲ってみせる。やはりそこには何も無い。
「糞ッ!」
血を吐くように男が叫ぶ。
「盗まれたのは…?」
「盗んでいないわ」
少女が苦笑交じりに言う。
「財布だよ」
男が悔しげに言った。
その男と少女の会話を聞いて、警官は焦れたように言った。
「どうですか、一旦、交番までいって双方の話を…」
「「「交番」!!?」」」
その警官の提案を聞いた二人組みの男と少女の声が重なる。三人の表情は呆れる程、豹変していた。少女の顔からは笑みが消えうせ、男の顔からは凄みが消える。三人の目にはいずれも怯えの色が浮かんでいた。
「疑いが晴れたんだから、もう私から話すことなんてないわ」
「俺達も、金が掏られたぐらいで交番にいくほど暇じゃねぇんだよ」
「ああ、そういうこった。悪かったな、糞餓鬼…、俺の目が悪くてよ」
「耳も遠いのでしょう?」
「あっ?」
「だって、私が「やっていない」って言ったのが聞こえなかったものね」
「そうだよ!悪かったな耳も遠くて…」
「顔も汚くて…」
「顔も汚くて…」
「口も臭くて…」
「口も臭く…、こいつッ!舐めてるのかッ!!」
そういって少女を殴ろうとする男を、別の男が目で「止せ!」と合図する。
憤る男達を尻目に少女は悠々と、その場を離れていった。


218 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:10:37 ID:kiMII5Zh
その成り行きを見物しながら、否命はある種の奇妙な感覚に囚われていた。どうも、さっきの少女は男に絡まれながらも、しきりに自分のほうをチラチラ見ていたような気がするのだ。それにどうも、身体の一部に違和感がある…。
気のせいかな?…と否命は自分に言い聞かせ、帰路を急いだ。
(はぁ、それにしてもすっかり遅くなっちゃった。早く家に帰って「アレ」をしないと沙紀さんが帰ってきちゃう。うん、そうだ、今日は近道を通ろう)
否命は不意に商店街を出ると、大通りを曲がり裏路地を通っていった。普段否命は、裏路地は汚いので通らないのだが、やはり時間は惜しかった。
っと、不意に否命は裏路地の半ばで違和感の原因に気がついた。自分の制服のポケットが異様に膨らんでいるのである。ポケットに入っているものはよっぽど分厚いらしく、その長方形の輪郭が布地越しにくっきりと浮かび上がっていた。
否命は恐る恐る、ポケットの中身を取り出しみた。
否命のポケットから出てきたのは、万札で今にもはちきれんばかりの茶色い札入れであった。
突如、否命の脳裏に少女が自分にぶつかってきた時の映像が流れる。
「これって…」
「そう、「私の」財布よ」
否命の振り向いた先には、あの少女がニッコリと笑って立っていた。

投下終わります

219 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 00:27:13 ID:tEkPx5zr
ヤクザ屋さん二人組がかわいそうです(´;ω;`)

220 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/07(水) 01:26:10 ID:nh5QuEj9

投下します。
第五話目になります。

221 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/07(水) 01:27:01 ID:nh5QuEj9

「伊藤は要注意だな」
「うん… でも何があったんだろう?」
「さぁな、何にせよ、伊藤はお前以外を敵と見做してる様だから、気を付けないと。
特に夏月に対しては、かなり危険だな」
「危険…」
「ああ、目がヤバかった。危害を加えると思って、間違いないだろう」
「そっか…」
「お前は、夏月に付いててやれよ。俺が月曜まで泊まり込んでやるから、
買い出しから家事まで、何でも扱き使え」
「悪い、東尉…」

兄さんと東尉君の声が聞こえる。

「……ぅ …んっ」
あれ? わたし、いつの間にベッドに寝たんだろう?
また気を失ってたの?

「夏月? 大丈夫? どう、気分は?」

兄さん… 兄さん…

「夏月!? どこか痛いの!?」

ごめんなさい… ごめんなさい…

「夏月…」

触らないで。兄さんが汚れてしまう。
けれど優しく撫でてくれる兄さんの手を拒めるほど、わたしは強くない。

ごめんね、兄さん。弱くて、猾くて、汚くて。
ホントに、ごめんなさい。兄さんを好きになって。
ごめんなさい。それでも、諦められなくて、ごめんなさい。

何も言わないわたしを呆れる訳でも怒る訳でもなく、ただ黙って兄さんは
頭を撫で続けてくれた。ただただ、優しく優しく、労わる様に。


「ごめんなさい… 食欲ないの…」
「夏月…」
兄さんと東尉君が作ってくれた折角の料理だけれど、少しも食欲が湧いてこない。
兄さんを困らせたい訳じゃないのに……

「ま、ダイエットになって、いいんじゃないか。
けど、一口二口ぐらいは食え。体が持たないぞ」
「そうだよ夏月。夏月はダイエットなんかしなくても、スタイルいいんだし。
無理はしなくていいから、食べられるだけ食べなよ」
わたしを気遣った兄さんと東尉君の軽口に、幾分救われたような気になる。
「うん… じゃあ少し食べるね」
兄さんがほっとしたように微笑むのを見て、どうしようもなく胸が苦しくなった。


222 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/07(水) 01:27:37 ID:nh5QuEj9

静かな優しいピアノのCDの音と、兄さんと東尉君が捲る本の音。
時折ドアの開閉音と、内容は聞き取れないが二人の話し声。

「やっぱりあの女、また来てやがったぞ」
「え!? また?」
「あれはもうストーカーになりかけてるな」
「ホントに?」
「ああ、俺の事凄い目で睨みながら、俺と夏月が邪魔してるだのお前が可哀相だとか、
訳の解らない事を捲くし立てて逃げてった」
「伊藤さん、一体どうしちゃったんだろう?」
「…お前に惚れてるんだろ」
「えぇ!? まさかぁ…」
「この状況でよくボケられるな、お前。要はお前とあの女の仲を、
俺や夏月が邪魔してる、と、あの女は妄想して逆恨みしてるんだろ。
多分、いや、絶対、無言電話はあの女の仕業だぞ」
「はー… 何で僕なんだろうね? 東尉の方がモテるのに…」
「俺が知るか。とにかく電話線は抜いたままにしておけよ?
万が一、夏月が取ったら厄介だからな」
「うん。家の電話が使えないのは痛いけど、携帯があるしね。
僕と東尉の携帯の番号は知られてないから、よかったよ」
「夏月のは?」
「夏月の携帯は電源切って、僕が持ってる。
…それより伊藤さん、どう対処したらいいんだろう?」
「月曜に学校で本人と話してみるしかないだろう。
それでダメなら、あの女の親に話すしかないだろうな」
「そっか… そうだよね」
「お前が気にする必要はない。下手な同情は、あの女を付け上がらせるだけだぞ」
「…………」
「陽太、間違えるなよ? お前の大事なものは何だ?」
「うん、解ってる。同情はしない」

優しいそれらに守られて、わたしはこの休日をほとんど寝て過ごした。



「夏月、絶対外に出ちゃダメだからね!」
「うん」
「絶対だよ!?」
「うん、解った。絶対に家から出ない」
「じゃあ、急いで帰ってくるから。僕が出たら直に鍵とチェーンかける事!」
「うん、解った。行ってらっしゃい、兄さん。気を付けてね」
「行ってきます」
兄さんの言い付け通りに、直に鍵とチェーンをかける。

好乃の様子がおかしい、と日曜の夜、兄さんと東尉君はわたしに言った。
具体的な事は何も言わなかったけれど、暫く距離を置いた方がいいとも言われた。
今のわたしは理由を聞くまでもなく、好乃とは関り合いたくなかったので、
素直に二人の言葉に頷くのに、ためらいはない。

223 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/07(水) 01:28:19 ID:nh5QuEj9

色々考えなくてはいけない事があるのに、疲れて何も考えられない。
考えたくない。

リビングのソファーに座ると、寝過ぎている筈なのに目蓋が重くなり、
うつらうつらと睡魔に身を委ねる。


ピンポ―――ン……

ふとチャイムの音に目を覚ますと、兄さんが学校に行ってから三時間ほど経っていた。
少し迷ったけれど取敢えず玄関まで行き、ドアアイから来客の姿を覗いて見る事にした。

しかし恐れていた姿はなく、わたしよりも幾つか年上な男女二人が佇んでいた。
それも驚く程の美形。

好乃ではない事に安堵したわたしは、チェーンはそのままでドアを開けてみる。

「あの、どちら様でしょうか?」
「あら… ご機嫌よう。突然押しかけてしまって、ごめんなさいね。
私は湖杜(こと)、こちらは射蔵(いぞう)。
私達はあなたの親類に当る者で、本家から参りましたの」
湖杜さんは少し驚いた顔から一転して、女のわたしですらドキドキしてしまうほど、
艶やかな笑みを零してそう言った。
「あ、はじめまして。わたしは夏月っていいます。あの、立ち話も何ですからどうぞ」
湖杜さんの笑顔で一気に警戒心を無くしたわたしは、ドアを開け二人を招き入れた。

家にある一番いい紅茶を出し、湖杜さんと射蔵さんの向かいのソファーに落ち着くと、
湖杜さんが待っていたかのように、薔薇色の唇を開いた。
「実はあなたのお母様にお願いをして、手に入れていただいた物がありますの。
伯母様は本家に送って下さると仰っていたのですが、こちらが無理にお願いをした
ものですし、私達が取りに行くのが道理。
それでお電話をしたのですけれど繋がらなくて、こうして来てしまいました。
…夏月さん、何かお母様からお聞きになってないかしら?」
鈴を転がしたよりも綺麗な声で、湖杜さんが喋るのをうっとりと聞いていたわたしは
その問い掛けに慌ててしまう。
「え!? えぇっと… 母さんからは何も連絡きてなくて… えと……」
「そうですか。なら本家の方に届いているかもしれませんわね」

と、今まで黙っていた射蔵さんが、携帯を取り出すとわたしに向き直った。
「携帯、使ってもいいだろうか?」
うわー… 射蔵さんも、声まで美形だ。
「は、はい。どうぞ」
ありがとう、と微笑むと射蔵さんは携帯でどこかへ連絡を取り始めた。
その姿は携帯電話のCMのようで、隣で優雅に紅茶を飲む湖杜さんと共に、
有名人でも見るようなドキドキに、わたしは包まれていた。

そうして湖杜さんを見ていると、どこかで会った事があるような気がして首を捻る。
一度会ったら忘れられない容姿の湖杜さんと、一体どこで…?

224 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/07(水) 01:29:04 ID:nh5QuEj9

「あ!」
思い出した!
「どうかしました?」
つい大声を出してしまったわたしに、湖杜さんは慌てる事無くにっこりと微笑みかける。
「あ、あの! 十年くらい前の本家の集まりに、湖杜さん来てましたか!?」
「十年前… ええ、居ましたわ」
「えぇと、お兄さんも一緒でしたよね!?」
「ええ、お兄様も一緒でしたわ」
不思議そうに首を傾げながらも湖杜さんは、わたしの質問にきちんと答えてくれた。

それからわたしは興奮しながら喋り続けた。

わたしが兄さんを、兄さんと呼ぶようになった事。
その切っ掛けになった女の子が、湖杜さんである事。
憧れの女の子が、湖杜さんで感激だという事。

湖杜さんも色々話してくれて、湖杜さんと射蔵さんがわたしと同い年だと解った。


二杯目の紅茶もなくなりかけた時、わたしの携帯がメールの着信を告げた。
わたしの携帯は兄さんが持っていたけれど、兄さんと東尉君以外からの着信は出ない
という約束で、出掛けに兄さんが返してくれたのだ。
画面を見ると東尉君の名前。二人に断ると、わたしは安心してメールを開いた。

――――――――――――――――――――――――
From:前園 東尉
Sub:あのさ
そっちの家に忘れ物して、今家の前まで来てるんだ。
カギ開けてくれない?
――――――――――――――――――――――――

いつものメールとは何かが違うような気もしたけれど、家の前まで来ている東尉君を
待たせる訳にはいかない。

「あの、知り合いが来るので、ちょっと席外します。
すいませんが、待っていてもらえますか?」
兄さんにも湖杜さんと射蔵さんに会って貰いたくて、引き止めてしまった。
「ええ。こちらが押しかけているのですから、構いませんわ」
「すいません。すぐ戻りますね」
二人に軽くお辞儀をして、わたしは玄関に急いだ。


ピンポ――ン、ピンポ―――ン……

催促するようにチャイムが鳴る。
どうしたんだろう、東尉君? そんなに急に必要なものなのかな?

やけに響いた、がちゃりという鍵を開ける音に、どきりと心臓が跳ねる。
と、開けようとしたドアは外から急に開き、わたしは驚いてドアノブから手を離した。

「東尉…く……」

そこには、居るはずのない、好乃が嗤っていた。

-続-

225 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/07(水) 01:31:07 ID:nh5QuEj9

以上、続きます。

226 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 03:12:02 ID:WZFM4S60
GJ!正直ここまで先が読めない話は始めてかもしれん。いい意味でな。
もはや好乃が何をしたいのか、誰を好きなのかもわからなくなってきた。

あと、すでに男衆が病みっぷりに感づいたり警戒する話も珍しいね。

227 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 04:11:05 ID:qgEfrS+a
GJ!!!!素晴らしい!!
凄く先の展開が気になりますな。

いよいよ湖社と射蔵がからんできた!
この二人は凄く好きなので活躍に期待。
好乃もいい感じに病んできましたね♪

次回も楽しみにしております。

228 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 08:22:00 ID:I2EkBE7R
GJッス! ヤベェ>>226じゃないけど先がよめねぇ! つかそれ以上に続きが気になる
つーか東尉サイコーw いや久しぶりに良い親友を魅させてもらいましたw
……だからこそ東尉の生死が気になるよ

229 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 13:45:58 ID:tYawQ4Vo
最近保管庫に動きないね。

管理人さん忙しいのかな

230 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 14:39:10 ID:hTm/V+5s
他のスレのSSも保管しているらしいからな。(>>111)
もしかしたらリアルで忙しいということも考えられるが。

231 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/07(水) 17:17:02 ID:/8lXnIgk
>>225
GJ!好乃怖いよ好乃((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
あと東尉がいいヤツで泣けたw

232 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/08(木) 17:00:04 ID:53W0/tEB
保守

233 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/08(木) 20:44:25 ID:wjPB/UdX
へへ、まったくこのスレはマッタリしてやがるぜ!

234 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 01:28:08 ID:wb9pdpD5
投稿です。アブノーマルHネタ注意。
あとまとも?なヒロインをひとり登場させます。

235 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 01:29:37 ID:wb9pdpD5

ひっしゃげて肉の塊になった子猫を抱え、湿気を含んだ土の中に埋める。雪香が泥まみれになった両手を合わせた。
『お休みなさい』
その時、人の気配がした。さきほどとは打って変わり、雪香の背筋が硬直した。肩越しに振り返った。驚愕──死んだはずの母がこちらを見つめていた。
思考能力が低下した。目の前の人物を凝視しつづけた。間の抜けた声が雪香の唇から洩れた。
『マ……ママ』
『ママって誰だ』
*  *  *  *  *  *
雪香がベタベタと朧に甘えた。こうしているだけで幸せな気分に浸れた。死んだ母を雪香は思い浮かべる。優しい母だった。美しい母だった。
死んだはずの母──今、目の前にいる。もっと触りたかった。もっと甘えたかった。もっと抱きたかった。もっと──。
そこで理性が働いた。死人が蘇るはずなどない。第一、朧は母のような女ではなく正真正銘の男だ。朧が母と瓜二つなのはただの偶然の産物だろう。
雪香はそこで考えるのを中断した。どっちでもよかった。重要なのはふたりが今、こうやって一緒にいるという事だ。例え幻でもかまわない。
もし、これが夢ならば永遠に眼など覚ましたくはなかった。このまま朧を自分だけの物にしたい。強烈な独占欲が心の底からわき上がる。
嗅覚を駆使して朧の存在を確かめた。愛しい匂いがする。額を押し付けた。温かい。額、こめかみ、前腕の背、触覚の一番鋭い部分を使って楽しむ。
顔を引き寄せ、右瞼の上から朧の眼球を舐めた。目尻に沿りながら瞼に軽く舌をいれ、角膜の感触を味わった。
粘膜に傷がつかないように繊細な舌遣いで何度も味わった。眼球は完全な球体ではなかった。
角膜の部分が凹凸になっている。朧の涙腺が震えた。分泌される涙がしょっぱい。雪香は舌をはずした。冷たく乾いた風が肌寒かった。
「ねえ、雪香のおウチにこない。ここは凄く寒いよ。雪香のおウチは暖かいよ」
朧にも、さして断る理由は見当たらなかった。雪香が朧の袖を引っ張る。まるで駄々をこねる子供のようだ。
「おいでよ。それにあんなアンパンだけじゃ足りないでしょ。雪香、マ……朧にお料理つくってあげる」
「じゃあいってみようかな」
雪香の住まいは渋谷の裏──松濤の閑静な住宅街にあった。少し歩けば鍋島松濤公園が見える。奢侈な赤煉瓦作りの塀に囲まれた二階建ての邸宅だ。
敷地には一匹のドーベルマンが放し飼いにされていた。他の人間の気配は全く感じられない。
家の中にはいると雪香が急かすように朧を自室に連れ込んだ。清潔な室内だ。チリ一つない。窓際にはダブルベッドが置かれていた。
雪香がベッドに腰をおろした。朧を自分の左側に座らせた。物珍しそうに朧が室内を見回す。無邪気なものだ。
「じゃあちょっとまっててね。ご飯作ってあげるから」
朧を残して自室をあとにした。雪香がキッチンで料理を作り始める。
ベーコンと目玉焼きをトースターで焼いた食パンで挟み、コップにオレンジジュースを注いだ。サラダボールにレタスとトマトとチーズを盛り付ける。
自然に鼻歌がこぼれていた。顔の筋肉がほころぶ。雪香は至福に包まれながらオレンジジュースにギャバロンとロヒプノールを混入した。
朧にここから出て行ってほしくもない。それだけは絶対に避けたかった。逃がすくらいなら死んだほうがマシだ。
ではどうすればいいか。答えは単純だ。筋弛緩剤と睡眠薬を飲ませて動けなくすればいい。あとは手錠を嵌めようが縛ろうが自由だ。
出来れば自発的に留まって欲しかったがそれは無理な話だろう。ゆっくりと慣れさせていくしかない。
(食事も下の世話もセックスも全部お世話してあげる)

236 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 01:31:00 ID:wb9pdpD5
切なくも甘酸っぱい感覚が雪香を包み込んだ。食べ物をトレーの乗せて愛しい人の待つ自室に戻る。
「お待たせ。遠慮せずに食べてね」
サンドイッチとオレンジジュースを口に運ぶ朧の姿を横目で見つめながら、雪香はいつものように微笑む。聖母の如く。幼子の如く。
(朧。雪香は朧の事が大好きだよ。どんな事でもしてあげる。だから……お願いだから、雪香のママになってよ……)

藍色の闇が立ち込める空間。巴はいつものように東郷神社へと足を運んだ。もしかしたらまた逢えるかもしれない。
淡い想いを抱きながら玉砂利を見つめ続けた。確かに彼はここに居たのだ。言葉を交わすこともなく、ただその貌だけを一目見ただけの彼。
名前すらわからない彼。一目惚れだった。一度だけでいいから逢いたかった。
逢って──孤独を癒してほしかった。自分の物にしたかった。誰かに惹かれたその瞬間──人は愛に目覚める。
分かり合いたかった。彼と分かり合いたかった。血を飲みたかった。血を飲んでほしかった。人はその血によってのみ、お互いを理解し合える。
巴は幼い頃に血の快楽を知った。血の快楽に耽溺し、同時に自分が孤独である事を確信した。流れる血を想像しただけで疼く身体の芯。
身体中の細胞が発熱した。血液が沸騰する。切実だった。眩暈がした。もし逢えなかったら──巴の心に一抹の虚しさがよぎった。
(そんな事考えちゃ駄目。絶対に、絶対に見つけなきゃ)
雑念を頭から振り払う。夜空を見上げた。上弦の月が淡い光を放ち、星々がキラキラと華やかに輝いていた。瞳を閉じて、星に願い事をした。
(どうか逢えますように……)
*  *  *  *  *  *
全裸になった朧をベッドの上に仰向けに寝かせた。聖ドメニコの彫像のように眼を閉じて動かない朧──雪香は眠り続ける朧の頬にそっと唇を重ねた。
薄明に際立つその美しい横顔。胸元に指を這わせて擦る。雪香の相貌が妖艶に唇を歪ませた。
雪香の嫣然としたその姿は、類まれなる美貌の悪魔とすら錯覚してしまいそうだった。腋下に鼻を忍び込ませて嗅いだ。くすんだ汗の匂いがした。
(ママ……ママ……ッ)
母と過ごしたあの日の記憶が鮮明に蘇る。舌を窪みに絡ませ、上下に激しく動かす。唾液が地肌を濡らした。興奮に拍車がかかった。
腋から胸板へと舌を回遊させ、愛くるしい乳首を小鳥のようについばむ。母乳を求める赤ん坊のように吸った。ペニスに触れる。

237 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 01:31:48 ID:wb9pdpD5
萎えて柔らかかった。前歯で乳首を咥えながら、懸命に指を遣った。それでもペニスは硬くならない。眠っているからだろうか。
雪香はペニスを後回しにした。欲情の露に瞳を輝かせ、雪香は愛液にまみれて濡れ光るラビアを朧の太腿に塗りつける。
匂い付けだ。動物のマーキングに近い行為だった。雪香の唇から洩れる甘い歓喜の吐息が聴こえてくる。
「ああ……ママァッ、いいよ……ッッ」
よがり狂いながら腰を使い続けた。吐息が一層激しさを増す。激しい吐息に雪香は咽いだ。身体が火照りつく。
「ンァァッ……ンンッ」
包皮を被ったままの敏感になったクリトリスが肌に擦れて喜悦を与えた。素晴らしいエクスタシーだ。このまま永遠に肉欲の愛を貪りつづけたい。
それは雪香の痛切な願望だった。頬の筋肉をこわばらせ、熱い蜜汁をしたたりおとしていく。朧の太腿にこぼれる蜜汁がシーツに伝って染みをつけた。
激しい愉悦感に浸りながら、かぶりをふってセミロングの髪を振り乱した。毛穴から滲む珠の汗が宙に踊る。
「クハアァァ……ッッ」
情欲に上ずる声。雪香の脳裏に白い閃光が走った。痺れるような快感が背筋から這い上がる。
「い、嫌ッ、嫌ッ嫌ッ、まだいきたくないよォ……ッ」
叫んだ途端、雪香の子宮が痙攣した。身体が痙攣した。絶頂感に身体を支えきれなくなり、横様にベッドの上に崩れ落ちる。
雪香は大声で泣いた。れが哀哭なのか号哭なのかは、雪香自身にも分からなかった。意識が徐々に遷移する。
朧と同様に雪香はベッドの上にその身を横たえ、身じろぎもせずに薄目を開けたまま焦点の定まらぬ瞳で朧を凝視し続けた。

蕩けるような余韻から覚め、雪香は我に返った。心地よい倦怠感が身体を支配している。朧はまだ眠っている様子だ。壁に掲げられた時計を見る。
時刻は午前四時二十五分。どうやら六時間近く眠っていたらしい。窓を見やった。外はまだ暁闇だった。あと二時間もすれば朧も眼を覚ますだろう。
警察が使用する安全装置無しの硬化スチール製手錠を両手に嵌める。最初は後ろ手にしようかと思ったが可哀想なので止めた。
双腿をぐいっと開き、臀部を少しだけ突き出させる。全てが雪香の目前に曝け出された。ペニスを口腔内に埋め、蟻の門渡りを指で弄ぶ。
その雪香の様子を薄目を開いて朧は静かに観察していた。

238 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 01:34:19 ID:wb9pdpD5
今回の投稿分終了。ちゅぱっちゅぱっ。

239 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 02:43:52 ID:YHRXPdS2
あらかじめ言っておきます。
各作者の方、無断で描いたものをうpする自分をお許し下さい。
というわけで詰め合わせセット。

http://imepita.jp/20070309/090680
これはあれだ、誰か塗って下さいっていう卑しい下心の現れだ。

http://imepita.jp/20070309/085460
鉛筆画。血とかカラーで描きたかったけど色鉛筆しかないので断念。

http://imepita.jp/20070309/084480
首輪がどんな感じか分からなかったので勝手にデザイン。しかしデカすぎる。

http://imepita.jp/20070309/081610
氷雨の口元とか手元を汚しているのはホワイトチョコレートだと言い張って止まない。

なおそれぞれのタイトルは「原作タイトル/絵のタイトル」の形になっています。

240 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 02:45:21 ID:YHRXPdS2
二番目と三番目の絵とコメントが逆になってました。すいません。

241 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 02:59:16 ID:4NxywN0g
>>240
なんで氷雨はスク水なんて着てるんスか! 抱いて!

242 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 03:30:21 ID:jeUFwSZb
>>235-237
乙です
なんか面白い病み方ですね。変種というか。期待してます

243 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 07:05:28 ID:4ACLCuan
>>238
病みが性癖に繋がっているというヒロインも面白いです。
>>239
多作品の絵キタワァ(n‘∀‘)η
なぜスクール水着wハァハァ(*゚∀゚)=3

244 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 08:37:15 ID:hWSXdwnk
>>235-237
もつかれさまですー。
なんか不思議な感じのする話だな。朧はママの代理かw

245 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/09(金) 11:22:34 ID:DjCAun4P
保守age

246 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/09(金) 11:40:10 ID:n7JaJ+Ba
http://allenemy.fc2web.com/novel/novel.html

247 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 11:52:41 ID:YHRXPdS2
勝手に個人サイトのリンク張るなよ。

248 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 12:19:50 ID:GcP5HZnw
志村ー!中身!中身!

249 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 12:27:38 ID:TQKj//QR
個人のサイト張るのはマズイだろ…

250 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 12:32:22 ID:r1B9Kkpp
どうして保管庫のリンクにそこが載ってないのか考えろっての。

251 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/09(金) 13:13:48 ID:n7JaJ+Ba
すまん

252 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 13:18:20 ID:YHRXPdS2
それとsageろ。

253 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:09:48 ID:n48HZTGQ
>>239
俺の書いたSSでイラスト化をされたのは初めてです!!
マジでありがとうございます!!
抱えきれない程のGJ!!


さて、投下しますよ

254 名前:『首吊りラプソディア』Take5[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:11:08 ID:n48HZTGQ
「成程、そんな訳でござったか」
俺に乳を洗われながら、感心したようにフジノは頷いた。
「それは災難でござったな」
「仕方ないけどな」
ここは俺が宿泊している罪人専用のマンション、と言ってもSSランク専用のものなので
俺しか住んでいない。極秘の内容なので誰にも聞かれないように、と考えた結果の場所が
ここだった。最初は断られたらどうしようかと思っていたが、素直な彼女は相手が俺だと
いう理由もあるのだろうが、大人しく着いてきてくれた。そして今しがた、俺が不名誉な
扱いを受けている理由を説明し終わったところだ。
「すまんな、連絡してやれなくて」
ボディソープを掌に垂らし、歩く泡立てて尻を撫でる。
「虎吉殿なら大丈夫だと信じていたでござるよ」
軽く笑みを浮かべながら言ってくるが、それならば何故刀を抜いて斬りかかってきたの
だろうか。それを指摘すると一瞬言葉に詰まり、目を反らして乾いた笑いを響かせる。
白々しいが、フジノらしくもある。
腕や脚も洗っていると、また細かい傷が何箇所か出来ているのに気が付いた。細かい傷
なので注意をしないと見えないし、数も多くはないが、れっきとした傷だ。今回の刀集め
はかなり大変なものだったらしい。フジノが傷付く戦いをするということは、それ程凄惨
なものだったのだろう。自分のことでもないのに、その光景を想像して身震いをした。


255 名前:『首吊りラプソディア』Take5[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:11:53 ID:n48HZTGQ
泡を全て洗い流し、体をバスタオルで拭うと細い体を抱え上げた。
「あ、ちょっと待って下され」
そう言ってバンダナを取ると、顔に巻き付ける。
「これで良し」
「そうか」
ベッドに降ろすと、突然唇を重ねてきた。いつもならば少し話をしてからなので驚くが、
俺もすぐにそれに応えるように舌を伸ばす。無骨と言うより真っ直ぐな彼女の性格が関係
があるのかは分からないが、あまりキスは上手くない。その代わりに丁寧なそれは、俺に
とっては可愛いものに思えてくる。技術よりも、気持ちの問題だ。
「けど、今日はやけに激しいな」
「それは」
唇を離すと、フジノは少し不満そうな顔をして目を反らした。
「虎吉殿が何度も誉めていた人が居たから、気になったのでござるよ」
こちらを上目遣いで睨み、
「浮気はしてないでござろうな?」
「しないさ」
随分と可愛いことを言ってくれるが、そんなに信用が無いのだろうか。俺はこんなでも
フジノ一筋のつもりだし、余程の美女が現れて二択を迫られてもフジノを取るつもりだ。
と言うか過去に実際そんなことがあったのだが、信頼はまだ足りないらしい。いや、信頼
の問題ではなく、フジノの場合は嫉妬心の方が強いからだろうか。
「安心しろ、カオリは大切だが家族みたいなもんだ」
安心させるように言う。少し過保護にしていたから、フジノも勘違いをしたのだろう。
だがカオリは何だかんだ言っても妹のようなものだし、多分カオリもそう思っている筈だ。


256 名前:『首吊りラプソディア』Take5[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:13:38 ID:n48HZTGQ
「かたじけない」
「いや、こっちこそ。すまんな、馬鹿な恋人で」
軽く首を振り、再び唇を重ねてくる。
「それよりも、バンダナうっとおしくないか?」
「平気でござる。元々そんなに良い顔でもないのに、これ以上見せたら酷いでござるよ。
恋人と言っても、流石に醜女とするのは嫌でござろ?」
フジノは見慣れた苦笑をするが、俺は構わずにバンダナを取った。
「や、駄目でござるよ」
視界には大きな火傷の後が入ってくるが、それを拭うように舌を這わせる。当然だが熱
は残っておらず、硬化した皮膚の感触が舌に来るだけだ。フジノが火傷を気にしているの
ならば、と思い、冷ますように何度も舌を這わせてゆく。左右の手は豊かな胸と股間へと
滑り込ませ、ほぐすように手指の先を埋めていった。
「だ、駄目でござる。火傷の跡なんて、汚くて」
「傷も自分の行動の証だと言ったのはフジノだろ?」
「それは、そうだか」
形の良い顎に舌を移動させ、耳を弄びながら首筋を吸う。全身を確かめるように、引き
締まった腰や太股を指でなぞって、掌で確かめる。時折長い髪を手櫛で鋤くと、胸板な頭
を寄せて熱い息を吐いてきた。初めてのときはそれこそ不感症かと思っていた程だったが
体は慣れてきたらしい。本人はどう思っているのか分からないが、俺は良いことだと思う。
恥ずかしがって斬りつけてくるので、口が裂けても言えないが。


257 名前:『首吊りラプソディア』Take5[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:14:32 ID:n48HZTGQ
首に跡を付けた後で鎖骨に唇を滑らせ甘噛みをして、溝に沿って舌を滑らせる。性感帯
はここと臍、尻なので丹念に愛撫する。胸を揉みしだきながら臍を擽り、尻を撫で回すと、
子供のように身を丸めて耐える。涙で潤んだ瞳が何ともエロい。
それに興奮して、より愛撫を激しいものにする。抗議をするような目を向けてくるが俺
は気にせず続行、それが俺とフジノのやり方だ。たまにフジノにも何かしてほしいと思う
ことはあるが、理性がそれを却下する。こいつは剣を振るのも上手いし頭も悪くはないが、
こと色事に関しては恐ろしい程に無器用なのだ。以前何度か口でするのを頼んでみたが、
毎回食い千切られそうになってしまい断念した程である。必死に舐める姿は良かったが、
それだけで済むのならどれだけ良かっただろうか。
思い出して少し息子が萎みかけたが、フジノの必死な表情を見て股間に手を這わせると
すぐに元に戻った。既に大分濡れており、入れる準備は整っている。
「入れるぞ? 力抜いてろ」
感じやすい癖に濡れにくいという厄介な体質なので、少しでも乱暴にすると痛いらしい。
こればかりは仕方がない話で、フジノは目を閉じて頷いた。
「何か、変に盛り上がるでござるな」
「何が?」
「リアルな小道具ありだと、何だか胸が高鳴るでござるよ。悪いことをしているみたいで」


258 名前:『首吊りラプソディア』Take5[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:17:13 ID:n48HZTGQ
イメプレと言うか小道具と言うか、突っ込むところが多くて迷ってしまった。そもそも
俺の首輪は小道具ではない、作った技術者も草葉の陰で泣いているだろう。おまけに俺を、
仮にプレイの一貫だとしても性犯罪者の目で見てほしくなかった。元々性犯罪をする気は
毛頭無かったが、ここに入り酷い扱いを受けたことで余計にその意思が固まった。将来何
か特別な理由があったとしても、例えば命と引き替えにしても性犯罪だけは絶対にしない
だろう。もう蔑んだ目で見られたりするのはご免だ。
一人で妙なテンションになっているフジノの割れ目に竿の先端を当てがい、ゆっくりと
埋めてゆく。ぬめりが少ない代わりに、ざらついたひだが絡み付き強い刺激を与えてくる。
「あぁ、史上No1の罪人ちんこが拙者の中に!!」
だから、止めろと言うのに。
始めはふざけていたものの、それはすぐに止まった。腰を動かし始めると余裕が消えた
らしく、口の端から唾液を溢して喘ぎ始める。目尻からは大粒の涙が溢れ、胸は俺が腰を
動かすリズムに合わせて上下に揺れた。
頬を伝う雫を舐め取り、鎖骨を吸い、尻を揉むと締め付けが更に強いものになる。普段
の姿からは想像も出来ない乱れ様、何度見ても心に響くものがある。押さえるように胸を
掌で包み、手指を埋めていくと、俺を跳ね除ける程に身を反らす。鼓膜を震わせるのは、
部屋の外にまで聞こえるのではないかと思う程に大音量の喘ぎ声。首輪を着けていること
の理由を説明したときとは別の意味で、このマンションを選んで正解だったと思う。もし
これがサキやカオリに聞かれていたら、からかわれるどころか洒落にならなかった。


259 名前:『首吊りラプソディア』Take5[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:18:45 ID:n48HZTGQ
絞り取るようにくねる、しなやかな腰。フジノは何度も達しているようだが、俺の限界
も近付いてきている。悪いと思ったが腰の動きを加速させ、奥まで何度も叩き付ける。
「今日は、大丈夫か?」
「中に、欲しい、で、ござる」
その言葉が決め手となり、俺は一気に放出する。
引き抜くと、フジノは肩で息をしながら自分の股間を見つめた。
「虎吉殿、いつもより、薄い気が、するのだが」
「気のせいだろ」
そうだろうか、と首を傾げ、股間をタオルで拭いながら、俺の顔を向いた。
「それは後で聞くとして。虎吉殿、拙者は明日から暫く暇でござる故、手伝いたいのだが」
「かなり危険だぞ?」
構わぬ、と真剣な表情で横を向く。視線の向けられた先は、壁に立掛けられた六本の刀。
彼女の存在意義とも言える武器の群れが薄暗い灯りを反射して、まるで意思でも持つかの
ように不気味に輝いている。鞘から抜かなければ効果も何もない筈なのに、恐ろしいもの
に見えた。今にも自ら動き、襲いかかってきそうな程に。単品でならば俺も持ち、使った
ことがある。それに『聖』を入手した後は、暫く俺が保管していたのだ。だが六悪刀全て
が揃った今は、以前とは全くの別物に見えた。
しかしその雰囲気は、フジノの手が伸びたことで一気に霧散する。
「愛しい男を守る為なら、体の一つや二つは惜しくないでござる」
そう言って、その内の一本を取ると笑みを見せた。


260 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 15:20:25 ID:n48HZTGQ
今回はこれで終わりです

何て言うか、その……
ござる娘って良いですよね!?

261 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 16:04:05 ID:rJN2mUPQ
,.――――-、
ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、
| |  (・)。(・)|  
| |@_,.--、_,>  
ヽヽ___ノ

262 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 16:16:18 ID:N6fXrfKo
>>260
>>261には萌えないが、一途な女の子には萌えるな。
しかし、二行目から「乳」という文字が出てくるとは。おっぱいおっぱい。

管理人さん。更新乙でした。
首を長く長く長く長くして待っておりました。

263 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 16:54:35 ID:YHRXPdS2
>>260
顎が外れる程の大音声で同意。
>>262
おっぱい!おっぱい!

つうわけで取り急ぎ描いてみた
http://imepita.jp/20070309/606820
満足のいく乳が描けたと思う。髪で隠れたけど。

264 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 19:25:04 ID:ZgrSWuqD
>>239
自分の書いたキャラがイラストになるって嬉しいですね。イメージ固まるし
ありがとうございます

265 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 20:37:57 ID:hzjoTyJX

投下します。
第六話目になります。

266 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 20:38:54 ID:hzjoTyJX

「夏月ぃ、みぃつけたぁぁぁ♪」

あまりの事に、声が出ない。
どうして好乃が居るの? 東尉君は?

「ダ~メじゃなぁぁいぃ♪ こんな所にぃ、隠れてちゃあぁぁあ♪」

メールは、確かに東尉君の携帯からだった。登録してるんだから、間違いない。

「あははぁぁあっ♪ 不思議そーな顔ぉ♪ 教えてあげよっかぁ~」

好乃は後ろ手にしていた左だけ、わたしに差出す。その左手には見慣れた携帯…
東尉君の携帯電話!?

「これからメール出したんだぁ~」

何で… 何で、好乃が東尉君の携帯を持ってるの!?

「何でかぁってぇ~? あの男ぉ、邪魔ばっかりするのよねぇ!
アンタを庇うしぃ、陽太さんに近付くなぁとかぁ、フザケた事抜かすからぁぁ…」

「頭ぁ殴ってぇ、階段からぁ突き落としてぇやったのぉぉ♪ あははっ!」

頭を… 殴った? 階段から、突き落とした?
嘘、嘘… じゃあ、東尉君は……

「あれぇぇぇ? 何でぇソコでぇ泣くワケぇぇぇぇ?」

どうしよう、どうしよう、どうしよう、東尉君が、東尉君が…!

「まぁ~、これでぇ邪魔者がぁ一人減ったワケぇ♪」

わたしの所為だ… わたしの所為で、東尉君は………

「後はぁ、一番のぉ、邪魔者をぉ、始末すればぁ、いいのよねぇ♪」

ごめんなさい、ごめんなさい、東尉君、ごめんなさい。
わたしが、わたしが、わたしが……

「アンタが最大にして最高に邪魔なのよぉぉぉッ!!
ムカツクのよぉ! 吐き気がするのよぉ! 汚らしいッ!
アンタさえいなければアンタさえいなければアンタさえいなければァァッ!
アンタがいけないのよォ!! アンタの所為よォォォッ!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「アンタなんかァァ死ねばいいィィィィィッ!!!!」

わたしが、居なかったら、こんな事に、ならな、かった……

267 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 20:39:34 ID:hzjoTyJX

思いの外、柔らかく優しく突き飛ばされて、訳が解らなくなる。

「あぁああぁあぁぁぁ… な、何で……」
好乃? 何が………

――――っ!!!!

どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、
どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうしてっ!?

「…っ…大丈夫? 夏月、怪我はない?」

どうして、どうして、兄さんが!? どうして!?

「なんでぇ? どうしてぇ? そんな女、庇うのぉ?
なんでよぅぅぅぅっ! 陽太くぅぅんっっ!!」

手から、手から、手から、血、血、血、血が…!

「伊藤さん、落ち付いて… ナイフ、降ろして」

兄さんの、兄さんの、手、手、血、手から、手から、血が、血が、血、血血血……っ!

「陽太さんはァ、知らないからァ、そんな汚いィ女ァ庇うのよォ!」

やめて、やめて、言わないで! それだけは…
兄さんだけには、言わないでっ!!

「その女はねぇ… 陽太さんに恋しちゃってるんですってぇ!
セックスしたいとかぁ、実の兄の陽太さんにぃ欲情してるぅ…
浅ましくて卑らしくて穢らわしい変態なのよォォォ!!」

いやあ―――――――――――――――――――っ!!!!!!!!

「妹がぁ変態でぇ、陽太さん可哀相~♪
でもぉ、安心してぇ、あたしが慰めてぇあ・げ・るぅぅ♪
あははははははははぁぁっ♪」

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
変態でごめんなさい妹でごめんなさい生まれてきてごめんなさい
汚しちゃってごめんなさい兄さん兄さんごめんなさいごめんなさい

「その前にィィ… その汚らしい穢らわしい目障りな女をぉぉ…
殺してからねぇぇぇぇっ!!」


兄さん、ごめんなさい。
好きになって、ごめんなさい――――

268 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 20:40:22 ID:hzjoTyJX

***************************


四時限目が始まって東尉が居ない事に気付いた僕は、こっそり教室を抜け出し
人気のない屋上へ続く階段の下で、頭から血を流して倒れている東尉を見つけた。

慌てて駆け寄り、下手に動かすと危ないと思い、東尉の耳元で名前を呼び続けた。

「東尉!? どうしたの!? 東尉、東尉っ!?」
「…ぅっ……」
よかった… 息がある…
「東尉、今人を呼んでくるから、待ってろ!」

立ち上がり駆け出そうとする僕のズボンを東尉に掴まれ、慌ててしゃがんで
引き剥がそうとするが、逆に東尉に止められてしまう。
「東尉!?」
「…伊藤、だ… アイツ、に、やられた……
俺の携帯、持ってかれた…… 夏月が… 危ない……」
「伊藤さんが!? 夏月…… いや、でも、お前の助けを…」

どこにそんな力が残っているのかと思うほど、東尉は僕の腕を強く掴んだ。
「ばっか… やろう…… 間違えるなって、言ったろ?
陽太… お前の大事な、もの、は…… 何だ?」

僕の大事なもの―――

「ごめん、東尉。僕、行かなきゃ」
「当り、前だ… さっさと…… 行け」
「うん! ありがとう!」

踵を返し全速力で校内を走りながら、屋上近くに倒れてる人がいると叫び続け、
靴も替えずに校舎を飛び出すと、走ったまま携帯で救急車を呼んだ。

間に合え、間に合え、間に合え、間に合え!!
東尉、頑張れ! 夏月、無事でいてくれ!


走りながら思うのは、夏月の事。

ここ最近、情緒不安定だと思っていた。
特に酷かったのは、伊藤さんが家に来てからだ。
あれからずっと泣きっぱなしで、しかも声も出さずに、ぽろぽろと涙だけ零していた。
そして泣き止んだと思ったら、今度は食欲もなく寝てばかりいた。
伊藤さんに僕の事で何か言われたという事は、想像がつく。
しかし、ここ最近の夏月の情緒不安定さの原因が、それだけだとは思えない。
夏月とは、毎日一緒に行動していて、長く離れるのは授業中と家で寝る時くらいだ。
その間に何かあったとは、到底思えない。
それならなぜ? 夏月に一体、何があったんだろう?


解らない事だらけに苛立ちながらも、必死で走り続け、玄関に伊藤さんの姿が見えた。
その後ろ手に、鈍く光るナイフも。

269 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 20:41:01 ID:hzjoTyJX

心臓が嫌な音を立てる。
あのナイフを向ける先には、僕の大事なもの、夏月が居る筈だ。

間に合え、間に合え、間に合ってくれ!!


狂った様に捲くし立てる、伊藤さんの声が響く。
そして、

「アンタなんかァァ死ねばいいィィィィィッ!!!!」

振りかぶったナイフを左手で、右手はせめて傷つかない様にと優しく押し出した。

崩れ落ちる様に緩やかに倒れた夏月に安堵すると同時に、左手が燃える様に熱く、
遅れて痛みがやってきた。どうやら切られたらしい。

夏月じゃなくて、よかった…
流れ落ちる血を見ながら、そう思った。

「あぁああぁあぁぁぁ… な、何で……」
赤く染めたナイフを手に、伊藤さんは驚愕の表情で僕を見ていた。
しかし伊藤さんを気遣う余裕も理由も僕にはなく、倒れた夏月が起き上がり僕を見て
真っ青になってしまった事の方が気がかりで大事だった。
「…っ…大丈夫? 夏月、怪我はない?」
なるべく優しく押したつもりだったけど、どこかぶつけたりしてしまったんだろうか?
夏月はいよいよ真っ青を通り越して、顔の色が無くなってしまった。

「なんでぇ? どうしてぇ? そんな女、庇うのぉ?
なんでよぅぅぅぅっ! 陽太くぅぅんっっ!!」
ああ、五月蠅いな。東尉の言う通りだよ。
でも今は、これ以上刺激しない方がいい。
「伊藤さん、落ち付いて… ナイフ、降ろして」
マズイな… 目がイっちゃってるよ…
さり気なく夏月を後ろに庇いながら、距離を計る。
と、急にこの場にそぐわない、いや、寧ろよく似合う笑みを浮べた伊藤さんに、
嫌悪感を覚え眉を顰めた。

「陽太さんはァ、知らないからァ、そんな汚いィ女ァ庇うのよォ!」
「その女はねぇ… 陽太さんに恋しちゃってるんですってぇ!
セックスしたいとかぁ、実の兄の陽太さんにぃ欲情してるぅ…
浅ましくて卑らしくて穢らわしい変態なのよォォォ!!」

伊藤さんが言った事は、きっとホントの事なんだろう。
けれど今の僕には、どうでもいい事だった。
そんな事より、目の前の夏月が心配だった。
自分の身体を掻き抱く様にしてがたがたと震え、その目は焦点が合っていない。


伊藤さんが、何かを捲くし立てているけど、どうだっていい
切られた左手や、振り上げられたナイフも、どうだっていい。


ただ、夏月の事が、心配で――――


-続-

270 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 20:42:01 ID:hzjoTyJX

以上、続きます。

271 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 20:53:47 ID:hWSXdwnk
>>270
こえぇぇぇぇぇぇええええええ!!GJ!
ヒロインじゃなくてサブキャラがヤンデレって結構珍しいな。

しかし、よく考えれば好乃って別に東尉の事を好きだって言ったわけじゃないんだよな。
夏月がそう思っただけで。今更気がついたよ俺。

272 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 21:13:12 ID:drinMGtk
昨日一昨日の空白はなんだったんだというぐらいの大量投下が続いてますが、
いったい何があったのでしょうか?
とりあえずおにいたん2続編です。スマン、エロシーンまでいかんかった。


273 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 21:14:08 ID:drinMGtk
耕治がピオンの慰み者になった次の日。薫はとき子に連れられテュルパンに行った。
事務所に行くと前の店長と二人の若い女がいた。どちらかが問題の新店長らしい。
「てんちょうたん、こんにちわ♪」
「おや、かおるちゃんいらっしゃい」
前店長が薫に声をかけた。
「きゃ~♪かわいい~♪お兄ちゃん、この子どうしたの?」
お兄ちゃんと店長を呼んだ人物が問題の新店長なんだろう。癖の強い髪をポニーテールにしている・・・、
そういえば隣の女もポニーテールだ。こっちは癖のない直毛。
「ああ、こちらはうちの麻枝君と禾の森姉妹の下宿先の奥さん。この子はそこの一人娘なんだ」
「かぁる、でつ♪」
「うぁ~かぁいいかぁいいかぁいいかぁいいかぁいいっ!!」
女は薫を抱きかかえると頬擦りしだした。すりすり。
「ほっぺぷにぷに~たべちゃいたいぐらい~」
「お、おねえたん、いたいでつ・・・」
「ああ~もぉ~こちらのおあじはどうかな~♪」
女はなんと薫のスカートの中に手を突っ込み、パンツの中へ手を差し込んだ!
「ああ~ん、ぷっくりしてすべすべでおいしそぉ~♪」
「お、おねぇたん・・・」
「えみるちゃん!アンタって子は!公衆の面前でなにしてるの!」
ごんっ。
えみると呼ばれた女の後頭部に鈍い音が響き渡った・・・。


274 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 21:15:10 ID:drinMGtk
「みさとお姉ちゃん・・・いくら峰打ちでも鉈で殴るのは反則だよ・・・いたた」
「えみるちゃん!いくら愛しのえみるちゃんでも次やったら
この銘刀『義流餓座旨(ぎるがざむね)』の刃のサビにするからねっ」
「なんだその3機縦に並んだら照準が合わなくなるロボットみたいな名前は」
「あ、あたまわるいあてぢでつ・・・」
テュルパン事務室の応接セット。向かい合わせに山那親子と店長たちが座っている。
「では改めて」
店長は二人の女を紹介し始める。
「真ん中が今度からこの店の店長になる笑留(えみる)」
「樹元笑留です。よろしくお願いします」
先ほど薫にセクハラをはたらいた女が一礼する。
「そして端にいるのはテュルパン本部マネージャーの」
「樹元美里です。主人がいつもお世話になってます」
「あら、店長さん結婚されてたんですか?」
「二人は結婚したてほやほやなんですよ♪」
とき子の問いに対し笑留が答える。
「僕は今週一杯で新しく出来る店に転勤になるんです。後釜がこいつなんで、これからもよろしくやってください」
「それで耕治君は今までのマネージャーから店長代理兼マネージャーに昇格したんですよ」
コレは美里の言葉。
「おにいたん、えらくなったでつか?」
「そうよ。昨日そんなこと言ってなかったのに・・・」
「きのうはおにいたんのおちおきでいうどころぢゃなかったでつ」
「まぁ、耕治君何やったの?」
「えみるおねえたんにみとれてたでつ」
「うう~ん♪あたしの美貌にみとれてたのねぇ~えみる、こまっちゃう♪」
「やめろ、気持ち悪い」
「耕治君もいい線いってるんだけどな~」
笑留は薫のほうを向き言ったあと、
「けど、あたしはかぁるちゃんのほうがいいな~すりすり♪」
と、薫を抱きかかえてまたもやすりすり。
「ああんもうおもちかえりしたい~」
「お、おねえたん・・・」
「なぁに?」
「あとでふたりだけのときおねがいするでつ」
「ああ!もう!我慢できない!!」
薫を抱きかかえたまま立ち上がる笑留。
「お兄ちゃん!ちょっと休憩!薫ちゃん、トイレと倉庫、どっちがいい?」
「落ち着かんかいこの性犯罪者!」
部屋から駆け出ようとした笑留の後頭部に、またも美里の銘刀義流餓座旨がヒットした。
「お、お姉ちゃん!薫ちゃん落っことしたらどうすんですか!」
「よくいうわ!片手で子供抱きかかえれる馬鹿力の持ち主が落っことすわけないじゃない!」
「この場合突っ込みどころはなぜ鉈が当たっても死なないのかという点だと思うんですが・・・」
「ああ、気にしないでください、いつものことですから」
口げんかを始めた笑留と美里の影でとき子と店長が話をしていた。
「いつもって・・・」

275 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 21:16:20 ID:drinMGtk
「もともとあの二人は同じ女子高の先輩後輩だったんですよ」
店長が自分とこの家庭の事情を説明し始める。
「実はあの二人・・・まぁ、女子高ではよくある話らしいんですが『一線を越えた』関係だったんですよ」
「レズビアン?」
「そうです。ところが美里が卒業後まぁ・・・いろいろありまして俺と付き合うようになりまして」
「まぁ・・・」
「それから口げんかが絶えなくなりまして・・・」
一方美里と笑留のほうは
「大体お姉ちゃんがえみるをこんなエッチな子にしたんでしょうが!」
「勤務中に発情するような教育をした記憶はありません!」
「失礼しまっす!」
修羅場の真っ只中、耕治が事務所の中に入ってきた。
「店長の二人とマネージャー!藍沢食肉の社長がお見えです。フロアのほうに顔を出してください」
「わかった。笑留、美里。挨拶行くぞ」
「はーい」「うん」
「山那さん達はもう少しここいてもかまいませんので」
部屋を出て行く際、店長は山那親子に声をかけた。
「はい。あとでお店のほうに入ってごはんいただきます」
「まつっ♪」
「う~ん、かぁるちゃん、またね~」
手を振りながら去る笑留。そして耕治は、
「んじゃ、薫ちゃん、後頼むね」
「あいでつ♪」
薫の手には、CD-Rらしき物体が握られていた。


276 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/09(金) 21:19:07 ID:drinMGtk
まだ序盤だよorzやっと今回のヒロイン出たけど、ヤンデレモード突入はまだ先だなぁ・・・。
まぁ、既に病んでいるという気はするがw
早けりゃ明日に続きを。

277 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/09(金) 22:42:44 ID:4ACLCuan
投下ラッシュキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!

>>260
>「あぁ、史上No1の罪人ちんこが拙者の中に!!」
吹いたw そしてなぜかとらとらの青海タンを思い出しました

>>270
好乃テラコワス
しかし夏月もかなり病んできているのか?

>>276
新ヒロインのあまりの変態っぷりにワロタw

とにかく全ての神々に感謝を(-人-)

278 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/03/10(土) 01:07:27 ID:7iazo2nF
管理人さんいつも乙です
諸事情でネットつなげず、もうちょっと投下遅れそうです。申し訳ありません

279 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 05:40:37 ID:NgPWeyDl
待つさ、全裸で

280 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 12:44:22 ID:vJvlI5bV
いじめっ子な女の子、新しい家族を受け入れられない姉妹、
そんな子が何かを切欠にその男を好きになったら。
大抵は、男が聖人君子のように優しくてそういう事を気にしない。

だが、もしここであまりにしつこい求愛に男が辟易しだし、
「あんな事しておいて今更蟲が良すぎるんだよボケェェ!!」って言ったら、
その子はどんな反応を示すだろうか。

281 名前:慎@携帯[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 12:46:44 ID:tHytvgxB
パソ壊れたorzというわけでしばらく消えてました。修理にどれくらい期間かかるかわからないですが、戻ってきたらまた投下します…申し訳ないです。

282 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 12:57:23 ID:OnfItCP2
>>278>>281
+   +
∧_∧  +
(0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +

283 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 15:16:07 ID:0PoQcJ3E
>>280
それは面白い展開になりそうだ。
つ~かスゲー読みたいぞ!

よし!書きなさい!次の神は君だ!!

284 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 15:24:42 ID:jTUou5KW
>>280
それなんてアニメ版SHUFFLE!の楓?
いや、あれは男が別の女を好きになっただけか

どっちにしろかなりその展開は良いな
とことん自分を追い詰めて壊れていって欲しいw

285 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 17:50:18 ID:YFgkeHdD
>>280
そういうの好き。因果応報ざまぁwって思う。
そして病んでいくなんて素晴らしいね(゚∀゚)

ツン→デレ→ハァ?(゜Д゜)今まで酷いことしておいて何ソレ?→病ん→失せろ(゜Д゜)→重度ヤンデレ→ガクガクブルブル→拉致監禁陵辱等


物分りが良すぎる男が多すぎて、たまにはそんなのも見たい読みたい

286 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 18:38:35 ID:vJvlI5bV
いやぁ、嫉妬スレの水燈の蒼い空とか転帰予報とか男の人が良すぎるだろって思ってなw

こういうのは、女が強引なアプローチをするまで男も過去を許して仲良くしていたのなら、
突き放した時のギャップで女に強いショックを与えられると思うんよ。

287 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 18:47:26 ID:346tozKB
>>286
つまり、アニメ版SHUFFLE!の主人公が、
楓から告白された時に拒絶したらそれからどうなるか、と言いたいわけか?

288 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 18:58:48 ID:klYDtKZf
いや、ここはツンしか見せてないツンデレ女を男が突き放したら
デレを見せるようになったけど「なにをいまさら」というほうが自然じゃないか?

男が女の家に借金あるとかひきとられたでいろいろ(性的な意味はあってもなくてもいいな。虐待はデフォか)されていて
宝くじとか働くとか遺産相続とかで借金を返しきって自由になって
女から男が離れていって
女が焦って「本当はあなたが好きだったけどあんなことでしかすきって表現できなかったの」とかいうけど
男が突き放す感じで「借金オワタ\(^o^)/俺始まったな」的に逃げ出して
女が病んで男を拉致監禁「人生オワタ/(^o^)\」みたいな

思いつきを並べただけなので良くわからんな

289 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 19:14:54 ID:346tozKB
男に対して不器用な女が虐待(ツン)

男が女から離れていくときに思いを打ち明ける(デレ)

女、男に拒絶される。

「そんな……そんなこと言わないでよ!
私、あなたのことが好きなの! あなたのためならなんでもするわ!
そうだ! あなたをいじめてた母様と姉様を殺してあげる!
だから私のことだけは信じて! お願い!」(ヤン)

ツンヤンデレ……?語呂が悪いな。

290 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 19:15:46 ID:vJvlI5bV
だが、本当は好きだったのって言えばそれで女を受け入れる理由ができるからな。
いや、そういうのもいいかもしれんが。

そういえば>>286の例は両方とも姉と妹だな。
同じ条件のヒロインが複数だと、お互いに罪を擦り付け合ったりするのもいいかも。
「姉さんがあんな奴追い出そうっていうからいけないのよ!」
「何よ!あなたの方が私よりずっと男くんの事苛めてたじゃないの!!」

291 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 20:55:12 ID:cB3mdQ+B
>>289
ツャンデレというのはどうだろう
発音は難しいが

292 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 20:56:48 ID:siP/H4Oi
ツャンデレの誓い

293 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 20:58:40 ID:YFgkeHdD
ツァンデレ\(^o^)/ハジマタ

294 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 20:59:52 ID:hUF2WUyA
「ツン → デレ → ヤン」なら、
普通に「デレ → ヤン」の部分を取って

『ヤンデレ』

で良いんじゃないのか?


295 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 21:01:30 ID:LY0T5C1d
TNDRYN

296 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 21:03:41 ID:346tozKB
>>295
ツンドリャン?ツンドライン?

297 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 21:26:59 ID:Xj5OvZlj
なんかチャンドラーみたいだな

298 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 21:30:12 ID:vJvlI5bV
そういえば、本当は好きなのに意地悪するのがツンデレなら、
元々酷い態度を取っていたのに後に好きになるのもツンデレなんだよな。

299 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 21:51:16 ID:RsCrIV+4
>>298
不思議だよな。
でも最初にツンツンして最後デレデレになるなら同じでいいんでね?

300 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:10:03 ID:vJvlI5bV
いや、別物だろ。ツンが照れ隠しか本当に悪意が篭っているかで大きく差が出る。

301 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:12:31 ID:W+oljIgW
流れ㌧切るぜ

1週間ぶりにスレと保管庫にいけたんだけどすげー大量投下されてて驚いたぜ
管理人おつかれ!神々まじでGJ!
スレでリアルタイムでGJ言えないけど続きはどれも気になってる!がんがってくれ!
週末に保管庫のぞくのが楽しみで生き甲斐なんだぜ

読み手のお前ら雑談もいいけど作品の感想もな!俺の分まで頼むんだぜ!

302 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:20:49 ID:RsCrIV+4
別物か。まぁ俺としては照れ隠しより本当に悪意があって、って方が好きかなww
>>301任せとけ!!作品書けないからせめて応援ぐらいしたいんだぜ!!

303 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:22:53 ID:346tozKB
>>300
心底嫌いな男を突然好きになる、か……。ありえるのか?そんなこと。
あ、エロパロではあるのか。リアルではないだけで。

でも、ツン→デレ→ヤンは「ストーリー展開」でなるものだな。「属性」ではないか。


304 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:29:11 ID:vJvlI5bV
>>303
水燈の蒼い空、転帰予報を読むべし。こういうときに便利なのがフラグだ。

305 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:36:24 ID:346tozKB
>>304
トラさんのは読んだことがある。なるほど、ああいうのを言っていたわけか。納得納得。


しかし、フラグかあ……
俺の場合、「幼稚園からの幼馴染」っていうフラグがあったのに自分で潰しちまったからな……
いや、泣いてなんかないぞ。別にSSのキャラが羨ましいとか、そんなこと、無いんだからなあ…………

306 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:42:43 ID:ufpoBjt6
>>304
>水燈の蒼い空、転帰予報を読むべし。こういうときに便利なのがフラグだ。

その二作品は面白いんですか?

ってか、皆が何に納得しているのかよくわからないんだけど

307 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 22:59:06 ID:hUF2WUyA
面白いかどうかは個人個人によって違うし、荒れやすい話題だから省略。
納得したのは『ツン・デレ・ヤン』の三態変化がどういうものかという具体例が示されたからだとオモ。


308 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 23:16:32 ID:jTUou5KW
>>306
その2作品はどちらも修羅場スレのもの、気になるなら修羅場スレ倉庫で
読める

どっちも未完っぽく 転帰予報はまだ修羅場の予兆しか見えない

共通点は最初、両親を失った主人公が養子に入る
家の姉妹に気に入られなかったところだな
で、なにかの事件を経て姉妹に好かれるようになると

309 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 23:16:55 ID:NgPWeyDl
デレ→軽いヤン→デレデレ→重度のヤン→崩壊

が理想

310 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 00:08:53 ID:GtqOAAXK
ここはヤンデレスレですよっと

ここであっちの作品のことを延延語ってるのはスレ違いなことにいい加減気付こうや
あっちの作品のことはあっちでやってくれ

311 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 00:11:32 ID:kQkFMdZ9
そもそも、嫉妬スレの作品を

どうして、ヤンデレスレの住人の人間が知っているのかと問い詰めたいもんだ

312 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 00:21:07 ID:Udv7kmz9
嫉妬SSスレに浮気してると、ヤンデレスレに本当の意味で「釘」を打たれるぞ。
それはともかく、

ヤンデレスレは!

313 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 00:24:11 ID:IrR26brh
向こうにもヤンデレは多いからね。単に参考の意でしょ。

314 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 00:27:44 ID:3f2K9cdf
>>313
エロエロよー!って言ってやれよ…

315 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 01:31:59 ID:IrR26brh
やなこった

316 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 01:56:45 ID:6VxX9yxI
単純に住人がかぶりまくってるからでしょ。俺はこのふたつに加えほのぼの純愛も見ている。

317 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 02:14:52 ID:hk7vveW6
そもそも複数のスレを見るなと言っているような気がしないでもない


……はっ!まさかリアルヤンデレか!

318 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 04:46:28 ID:oNY2AiJ+
一枚だけ置いときますね。
http://imepita.jp/20070311/169540
ラフ絵ばっかりですまぬ。

319 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:36:43 ID:+Tw/UoDg
お久しぶりです。

>>318
戦巫女といい、着物は見ていて飽きないです、GJ!

それでは上書き10話投下します。

320 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:37:33 ID:+Tw/UoDg
「今日一晩、加奈を俺ん家に泊めていいですか?」
左隣にいる加奈の肩に左腕を回しながら、ほとんど有無を言わせない口調で訊いた俺と視線を合わせた君代さんは、
一旦俺から自分の視線を加奈の方へと移し、加奈と数秒見つめ合った後僅かに口元を緩めながら静かに頷いた。
「ありがとうございます。明日の朝には帰しますんで、何か心配事あったらいつでも連絡下さい」
「ありがとう、お母さん。我侭言ってごめんなさい」
俺と加奈は深々と頭を下げる、そんな俺たちを君代さんはただ笑顔で見送ってくれた。
そんな気遣いに心から感謝した、正直今平常心でいられるだけでも凄いと思うのに。

加奈の奇行を間一髪で止めた後俺は加奈を抱き締めていた、
その光景は何秒か遅れて部屋までやってきた君代さんにしっかり見られていた。
自分の娘が全裸で男に抱き締められているという見様によっては卒倒してしまう程の光景を目撃し、更にその後
「一晩を共にさせてくれ」と追い討ちをかけられたにも拘らず憤慨しないのはかなりデキる人の証だと思う。
それは勿論何年も自分の娘の幼馴染として接している俺を信用しての事だとは理解していたが、
その『信用』というのが果たして”真の”了承の証なのかという事に強く疑問を抱いた。
君代さんは俺と加奈の関係を知ってはいるが、実際の付き合いとしては高校生になってもキス止まりだった。
だからそんな俺が”娘に『手』を出す訳がない”と解釈した上での了承であったとすれば、
今夜俺が加奈にしようとしている事は君代さんに対する裏切りに為り得てしまう訳だ。

確認したかったが、「”して”いいですか」なんてストレートに訊ける程俺の肝は据わっていない。
この歳で尚且つ夜に娘を預けるんだからそれが”了承の証”じゃないかと勝手に話を進めようともしたが、
今まで何度も世話を掛けてきて多大な感謝をしている君代さんに俺がそんな傲慢な態度を取れる筈もない。
さっきから”『する』事しか考えてないんじゃ”と男が一度は抱く自己嫌悪に陥る中、
顔を上げた俺と加奈に向かって君代さんが固い口を開いた。
「加奈を、よろしくね」
一切屈折のない微笑を浮かべながら、君代さんは俺に向かってウィンクを投げ掛けてくる。
少々刻まれている皺がいい具合に朗らかな印象を醸し出し、年齢よりも若く君代さんの顔を彩った。
その表情が、俺にとっては”了承”という『”許可”の信頼』の何よりの証明だと理解してホッと胸を撫で下ろす。
俺は「はい」と頷くと、傍らに置かれた加奈の荷物を持ち上げた後踵を返してドアを開ける。
「あっ、いいよ誠人くん、あたしが持つから!重たいでしょ?」
「すぐ向かい側までなんだから、気にすんなって」
慌てた様子で荷物に手を掛けようとする加奈の手を軽く避けてみせ、包帯の巻かれた右腕で加奈の頭を軽く叩く。
頬を膨らまして俺を睨む加奈を見て思わず笑いそうになるのを何とか堪えながら、俺はそのまま右腕を加奈の背中へと下ろす。
「失礼しました、君代さん」
「行って来ます、お母さん!」
一旦君代さんの方を向いて一礼した後、再び踵を返し加奈は俺の後についていった。
心の中で、もう一度君代さんにお礼を言った。

321 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:38:14 ID:+Tw/UoDg
「誠人くんの家って、久しぶりで何かドキドキするなぁ!」
「確かに加奈の家に行く事がほとんどだったからな」
先陣を切って自分の家のドアを開けた途端、加奈は俺とドアの間の隙間を縫うようにして家へと入り込んできた。
辺りを見渡し驚嘆したような声を漏らしながら目を輝かせている加奈は、”初めて”ここに来たような感じだった。
その様子を見て、幼き頃の懐かしい日々にタイムスリップしたような微笑ましさに満ち足りる一方で、
加奈のその態度に俺との間の微妙な溝を感じ、荷物を下ろしながら項垂れてしまう。
その初々しい仕草は、同時に『余所余所しさ』に繋がるようで、
今までの俺と加奈で積み上げてきた年月や思い出を全否定されたような心地がしたから。
そんな意気消沈中の俺とは対照的に、加奈は靴を脱いだ俺を手招きする。
「ねぇねぇ、誠人くんの部屋に行ってもいい?」
”部屋”という単語で思い切り卑猥な妄想が脳裏に過ぎったのは男の性だよなと先走りそうな自分を自制する。
男ってのは『そういう事』に関しては一度決断すると頑なになるものなんだなと新たな自分を発見する。
「その前に飯食おう。こんな時間だし加奈も腹空いているだろ?」
僅かに距離が置かれている加奈に左腕についた腕時計を見せつけ、現在時刻を確認させる。
「それもそうだね!」
時計で時刻を確認すると、加奈は腹を擦りながら「えへへ」とはにかんだ。
その動作が妊婦のように見え、慌てて頭の中でその像を払拭する。
さっきから俺は自分の中で勝手に話を飛躍させ過ぎだな、自粛しないと嫌われるぞと肝に銘じながら加奈の下へと歩み寄る。
「そんじゃリビングで………あっ」
「ん?どうしたの誠人くん?」
思わず情けない声を漏らした俺に加奈が下から覗き込むように問い掛けてきた。
その顔が笑顔だからかなり罪悪感を感じてしまう、これからその笑顔を崩してしまうかもしれないから。
言うのが引けたが、冷汗流し続けて突っ立っているだけでは事態は前に進まないので仕方なく加奈の目を見る。
「あのな、加奈………今日母さんいないじゃん?」
「そうだね」
「だからって訳じゃないんだが、その…なんだ………」
言い渋っている俺を見つめる瞳に徐々に暗雲が垂れ込めているのが僅かに下がった眉毛から読み取れる。
こんな不安そうな表情を向けられると余計に罪悪感が増す
これ以上こんな表情を見るのは精神的に辛いので、思い切りをつけて真実を伝える。
「今日は俺一人の予定だったから、飯は”簡単な物”にしようとした訳であって…」
「家にカップ麺だけしかないとか?」
先に結論を言われるとその悲惨な事実が生々しく突きつけられた気分になって黙り込むしかなかった。
俺は後先考えない男だなと自分を責める事しか出来なかった…そもそも俺料理出来ないのによく女の子を家に誘えたな。
頭の中で自虐的な発言を自らにぶつけている最中、加奈が俺の肩を掴んできた。
その表情は妙に活気付いているというか非常に楽しそうなものだった。
「大丈夫だよ、あたしが作ってあげるから!」

322 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:38:58 ID:+Tw/UoDg
「いやいや!俺から誘っといて飯作らすのはかなり気が引けるんだが…」
「でも作れないんでしょ?」
「うっ………」
さらりと加奈に自尊心をズタボロにされた気がした。
事実だから仕方ないとはいえ、これでは何だか母親の役割を加奈に押し付けているような感じがした。
どうすればいいのかと思案している内に、加奈は鼻歌を歌いながら台所へと突き進もうとする。
「多分冷蔵庫に余り物位はあると思うから大丈夫だよ」
軽くスキップ歩調の加奈の背中を見ながら、必死に俺にでも出来る事を探した。
親がいなければ万年カップラーメン生活になるであろう男が料理で出来る事を考えながら早急に加奈に追いつく。
俺とて男だ、いくら料理とはいえやはりそれを仮にも宿泊人である加奈に全てやらせるのは駄目だ、
その一心でとりあえず今出来る最高の誠意を言葉に込める。
「そんじゃせめて、何か手伝わせて。俺が出来る範囲で何でもコキ使ってくれていいから」
言った後自分でその言葉の意味を確認し、我ながら情けない譲歩案しか出せない事を嘆いた。
沈んだ面持ちで加奈の表情を伺うと、先程から変わらない笑顔のままで応えてくれた。
「分かった、何でもコキ使ってあげるからっ!」
どこにも捻くれたところのない真っ直ぐな視線を向けてくる加奈、だからかもしれないが、
今の加奈の発言にまたもや脳内妄想が駆け巡りそうになった自分に酷く自己嫌悪した。
加奈すまんな、君の彼氏は今現在どんな言動行動も自動的にエロに変換する中年親父みたいになってしまっている、
加奈を横目で流し見ながらそう心の中で謝罪した。

「頂きますっ!」
加奈は手を合わせながら意気揚々と叫んだ、しかし机に置かれているスプーンに手を伸ばそうとせず俺の表情を伺っている。
どうやら目の前でいい匂いを漂わせている根源のオムライス、その味の評価を気にしているようだ。
固い表情ではないが真剣味溢れる視線、これは失礼な事言えないなと思いながら俺も小さく「頂きます」を言った。
結局このオムライスだってほとんど加奈が作った物だ、俺がした事といえば冷蔵庫から残り物の食材を取り出して、
後は少々溜まっていた汚れ物の皿洗いをしただけだった。
将来色々と料理出来ないと不便だなと今更気付き、これは明日以降母に料理を習わないといけないなと本気で思った。
俺の決意はともかくとして…目の前の加奈と目線を合わせながら、加奈の成長ぶりに改めて感心させられた。
小さい頃は二人共君代さんが料理を作る後姿を眺めていたのに、加奈の方はすっかりエプロン姿が様になっている。
家庭的な事に関しては男はとことん女に置いていかれるなと女という存在の偉大さを噛み締めつつ、
料理をしていた為長い黒髪を後ろで縛っている加奈に笑顔を向ける。
さっきから料理に手をつけない俺を不審に思ったのか、「どうしたの?」と心配そうに尋ねてきた加奈をよそに俺はスプーンを取り
恥ずかし気もなくケチャップで『MAKOTO』という文字を書きそれをハートマークで囲んでいるオムライスにスプーンを添える。
割れた半熟卵の中から湯気の立つオムライスの欠片を意識的にではないが焦らすようにゆっくりと口に運んだ。
「美味っ」
口に広がる絶妙な甘辛の風味に、加奈の顔を呆然と見つめながら思わず本音がそのまま漏れた。

323 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:39:34 ID:+Tw/UoDg
「本当!?本当においしい?お世辞とかじゃなくて?」
「とんでもない!本当に美味いよ」
加奈を称えながら俺は夢中でオムライスに食らいつく、そんな俺の様子を見ながら加奈は楽しそうに笑っている。
そして俺の本音を聞いて満足したのか、加奈もようやくスプーンを手に取った。
「あっ、我ながら美味しい!」
俺に笑顔を向けたまま”口に注ぎ込む”という表現がぴったりな汚い食べ方の俺と違って丁寧にスプーンを口に持っていった。
そんな加奈を見ながら久しぶりに食べる彼女の手料理に俺は舌鼓を打った。
しばらく夢中で食べる俺を加奈が嬉しそうに眺めるという奇妙な図式が静かなリビングの中で繰り広げられた。

「加奈、本当に悪いな」
食事を終えた後、そう言いながら俺は二人分の食器を台所へと運んでいく。
せめて自分に出来る事だけは加奈に迷惑をかけたくなかったので、食器に関しては俺の専売特許状態となった。
食器を流し台に置き、蛇口を捻りながらどこか遠くの方を呆けるように見つめている加奈を盗み見する。
「結局自分の家で食うのと変わんなかっただろ?俺は本当の意味で美味しい思いしたけど、何か迷惑かけっぱなしだな」
「そんな事ないよ」
ボーっとしていた加奈がいきなり表情を引き締めながらこちらを見てきたので少々驚いた。
加奈はいつも抜けたような態度なのに妙なところでしっかりしているなと感心しながら、皿洗いを続ける。
「でも、いつもの味って何だか新鮮さに欠けたりしなかったか?」
「誠人くん平凡な味だなぁって思ったの…?」
「そんな訳ないだろ!」
急に沈みそうになる加奈に慌ててフォローを入れる、事実本当に美味かったし、
言葉では言えないが…”加奈と一緒に”食べれたんだから何でも美味いに決まっている。
少々焦ったが俺の発言を受けすぐに元の笑顔に戻る加奈を見て一安心する。
「あたしはね…”誠人くんと一緒に”食べれるならずっと同じご飯でも飽きないよ」
その言葉を聞いて思わず皿を落としそうになった、俺の心中でも読み取ったかのようなタイミングだったから。
玄関先で感じた僅かな溝が静かに埋まっていく情景が自然と心の中で浮かんだ。
言葉に表さずとも意思疎通の出来た感動を一杯に噛み締めつつ、加奈の方を向きほとんど勢いで伝える。
「お、俺もだよ!」
言った後加奈の顔を見ると、その顔は沸騰するんじゃないかと思う位頬から耳まで真っ赤に染まっていた。
つられて俺まで赤くなってしまう、そんな俺の顔を俺の言葉を受けた加奈が見てきて、お互いに可笑しく思った。
「あたしたち、客観的に見て、かなりバカップル…?」
「それでいいんじゃね?」
そう言ってやると堰が切れたように加奈と一緒に笑ってしまった。
スポンジでケチャップの痕を落としながらこの状況に多大な幸せを感じた。
このまま今日何事もなかった事にしたかった、そんな俺を現実へ引き戻すように加奈が口を開いた。
「それじゃ…誠人くんの部屋、行っていい?」

324 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:41:01 ID:+Tw/UoDg
さっきまでの笑い声は突然途絶える、それは多分今神妙な面持ちであろう俺の表情が作り出した空気だ。
「あぁ…先行っててくれ。俺も食器片付けたらすぐ行くから」
「分かった」
椅子から立ち上がった加奈が、静かにリビングから出て行った、途中俺の方を向いた気もするが今は顔を合わせたくない。
水の流し音だけが響く台所内で、昨日から今日までの体験を頭の中で事細かに振り返る。
『非日常』に更に『非日常』が食い込みかなり濃厚な二日間だった気がする。
今は思い出したくない”あの女”との出会い、それによって加奈を泣かせてしまった事、
加奈のあまりの変貌ぶりに驚いた事、そして先程危うく大切なものを失いかけた事………全て清算しなくてはならない。
いつの間にか汚れが綺麗に落ちていた皿を乾燥機に入れながら、俺は決意を胸に加奈のいる部屋へと向かう。
予行練習なしの恋人とのコミュニケーション、久しぶりの緊迫感に冷汗が流れながらも高鳴る心臓を何とか抑えつける。
自分の部屋までの階段を一歩一歩上って行く、気のせいかやけに短く感じるのは、心の隅にある甘えが原因だろう。
現状に甘んじていればいいじゃないかという俺の心の弱さ、意気地なさを露骨に感じ、それを払拭する。
そして俺は部屋の扉の前に立つ、一つ間違えればまた加奈を悲しませるかもしれない、それでも開けなければならない。
このままの関係ではいけないのだ、俺と加奈の二人にとって今のままでは今日のような事を繰り返しかねない。
一度ここで積み上げてきた『互いの理解』というものを無視する覚悟がなければ常に崖っぷちにい続けなければならなくなる。
そんな不安定な関係は御免だ、俺にとってもだが加奈に常時不安を感じさせるような事をするのは俺自身を許せなくなる。
大丈夫だ、そう何度も言い聞かせながら俺は部屋の扉を開けた。
「お待たせ、加奈」
俺が扉を開けた先、俺は部屋の中を見渡すがそこに加奈の姿は見当たらない………と思ったがすぐに見つかった。
俺の部屋の中央に横たわっている皺だらけでくたくたの敷布団が変な形に盛り上がっている。
しかも僅かに上下もしている、その幼稚且つ可愛らしい行動を見て本当に自分と加奈が同い年なのかと疑った。
とりあえず、俺は敷布団のところまで歩み寄り、勢い良くそれを引っ剥がした。
「あっ!」
「何してるんだよ、加奈?」
布団の中には加奈が猫のように丸まりながら横たわっていた。
加奈は予想外だったのか一瞬驚きながらも、すぐに不機嫌そうな表情になった。
「見つけるの早過ぎだよ、誠人くん。もう少し慈悲の心というものはないの?」
「生憎、今はそれどころではないんでな」
俺が少々鬼気迫る表情で加奈と顔を合わせると、自然と加奈の顔も引き締まった。
俺の表情から何となくだが俺の真意を読み取ったようにも見えた。
もう引き下がれない、覚悟を決めなければならない。
「加奈、話がある。何も言わず、聞いてくれ…」
目線は外さない、外したら甘えが肥大化してこれ以上先の事を言えなくなると根拠のない確信を感じていたから。
だが、加奈と目を合わせていれば無理矢理にでも言わなければならなくなる気がする、それは結局加奈に
甘えているのかもしれない、それでもどうしても言いたいから、そこら辺の事は速やかに割り切った。
そんな俺に、加奈は無言でただ頷いた。

325 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:41:47 ID:+Tw/UoDg
「加奈、ごめん」
まずどうしても改まってもう一度言いたかった事、この言葉なしにこれからを語るのは今の俺には無理だ。
何も言わずただ俺を見つめ続ける加奈に、俺は話を続ける。
「今まで俺と加奈は上手くやってきていると思っていた。事実特に変な事もなかったし、このままでもいいと思った。
でも、昨日今日の事を考えてやっぱ”このまま”じゃ駄目なんだと思った。俺たちは生まれた時からずっと一緒で、
付き合いの長さで言えばお互い自分の親と同じ位だ。だからだったんと思う…俺いつの間にか加奈の事、
全部分かり切った気でいた。加奈の為に今何をすべきなのかだとか勝手に解釈して自分の考えを押し付けてた。
学校内では会わないようにしようだとか言ったのも、加奈の将来の事を考えての事だと言い聞かせて”分かった気でいる”
自分に自己満足してたんじゃないかと思う。自分にとっての大切な事を加奈にとっても同じなんだってすり替えてしまって…。
本当はどんなに付き合いの時間が長くたって、俺たちはまだまだ未熟なんだ。お互いを分かり切った気でいても、
まだまだ言葉で意思を伝え合わなきゃやっていけない関係なんだ、離れちゃいけないんだと思う。こんな事言うのは
俺たちの関係の程度を認めてしまうから本当に心苦しい…でも、俺は『妥協した幸せ』はいらない。手探りでも構わない、
お互いに言いたい事を言い合って、嫌なら嫌ってはっきり言って、そういう高め合う関係を築いていきたい…。
俺はこんな独り善がり甚だしい男だけど、それでも加奈を誰よりも好きだって自信を持って言える、お願いだ加奈。
こんな俺でも、これからも付き合い続けて下さい」
俺は一語一語噛み締めるように確認しながらその全てを加奈に伝え、頭を下げた。
俺の話中、加奈は本当にただ黙って聞いてくれた、その心遣いに心に感動の波紋が広がる。
いつだって加奈は俺の事を一番に考えてくれた、馬鹿な俺とは違い、常に俺の立場に立って尽くしてくれた。
そんな掛け替えのない存在、失いたくない………俺には加奈しかいない、俺は加奈しか欲しくないんだ。
必死に祈る中、耳に鼻を啜るような音が聞こえたので顔を見上げてみる、そして驚いた。
「加奈ッ!?どうしたんだよ!」
「だ、だって…まこ、誠人くんがそんな…そんな事言うから………嬉過ぎ、て………」
加奈は顔を涙に濡らしていた、スカートの裾を握りながら必死に我慢するように下を俯きながら。
また加奈の涙を見た、でも罪悪感は感じない、だって加奈は今”嬉しい”って言ってくれたから。
「な、何も泣く事…」
「誠人くん」
不意に加奈は立ち上がり俺の首元に両手を巻き付けて抱きついてきた。
いきなりの出来事に顔が赤くなりそうになるのを堪えるので精一杯だった。
そんな俺の胸に顔を押し当てるようにしながら、嗚咽が漏れる口を必死に開く加奈。
「あたしだって…あたしだって誠人くんに………。誠人くんがあたしを好きだって分かってるのに、他の人に傷つけられた
って分かると我慢が出来なくなって傷付けちゃった…。あたしの欲深さが、意地汚い独占欲で誠人くんを何度も…。
本当なら嫌われて当然なのに、なのに誠人くんはこんなあたしでも受け入れてくれて…誠人くん…誠人くん………。
こんな、こんなあたしでも、これからも付き合ってくれますか?」
最後の方は聞き取るのがやっとな程小声だった、でも、想いは反比例するかのように俺の心に大きく響いた。
俺は何も言わず、加奈のその体を強く抱き締めた。
たとえ壊れてしまうと分かっていても離せなかったと思う、加奈が愛し過ぎたかたら…。

326 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:42:34 ID:+Tw/UoDg
俺は泣き止むまでずっと加奈を抱き締め続けていた、本当は泣き止んでも続けていたかったけど。
俺の上着の胸の辺りが加奈の涙でびちょびちょになるまで濡れ切ったところでようやく加奈は泣き止んだ。
泣き止んだ後は、床に座り込み加奈の黒髪を何度も何度も撫でてやった。
そうしてやると加奈はくすぐったそうに笑う、やっと見れた加奈の笑顔に心中穏やかになる。
いつの間にかずっと抱いていた不謹慎な感情は消え去っていた。
加奈の笑顔さえ見れれば”そんな事”は取るに足らない事、俺は加奈に微笑みかけながら静かに問い掛ける。
「加奈、そろそろ風呂入って来いよ。もうこんな時間だし」
机の上にある時計を指差す、すると加奈は何故か急に顔を真っ赤にした。
自分の発言に何か変なところはなかったかを確認し、妙にもじもじしている加奈の顔色を伺う。
「加奈…?どうしたんだ、顔赤いぞ?」
「ひぇっ!?」
すると突然素っ頓狂な奇声を発した。
何だか瞳も妙に濡れていて、さっきまで泣き続けた子供のような姿とは違ってかなり大人びて見えた。
「ま、まま、誠人くん先に入ってきて!?」
「え?俺の後でいいのか?」
「だ、だだだ大丈夫だから!」
全然大丈夫じゃないだろと言おうとしたが、何だか只ならぬ雰囲気なので突付くのは止める事にした。
俺は立ち上がって箪笥の中から下着類を取り出すと、そのまま部屋の扉へと向かう。
「なるべく早めにあがるから、加奈も準備しといていいぞ」
「う、うん…分かったよ………」
何故か俺と目線を合わせてくれない加奈、まぁその真意は風呂の後に聞こうと思い俺は部屋から出て行った。

―――――――――――――――――――――――――――――     

「ふぅ…」
誠人くんの部屋に一人残されたあたし、とりあえず何考えてるのか読まれなくて良かった。
それにしても、誠人くんがあそこまであたしを気遣ってくれていた事が本当に嬉しい。
誠人くんは自分の事”どうしようもない男”だって言ってたけど全然そんな事ないよ。
あたしを好きでいてくれないとあそこまで言えない、あそこまで想えないよ。
やっぱりあたしと誠人くんの間には誰も割って入るなんて出来っこない、あたしたちは結ばれるべき二人なんだ。
メルヘンチックな事を本気で信じながら、誠人くんが風呂からあがってきたらどうしようかと考えた。
だって、この時間にお風呂って事は………”そういう事”があるって思っていいんだよね?
誠人くんってキスまではしてくれるけどいつも”その先の事”はしてくれない、いいムードになった事も何度かあるけど、
大抵はそこで終わってしまう。
それはあたしを想っての事だって思う、友達に聞いたら男の人って”そういう事”に関してはかなり慎重なみたいだから。
少し残念には思うけど、それがあたしを想っての事だとは分かってるから嬉しかったりもするんだよね。

327 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:55:00 ID:+Tw/UoDg
でも今のこの感じなら絶対………誠人くんだって”したい”って思ってると思う。
こういう時になると自分の貧相な体に落胆する。
牛乳飲んだりエクササイズしたりして色々と試したりはしたんだけど成長はほとんどしなくて、自分の体が恨めしくなる。
そんなあたしでも誠人くんは愛してくれるだろう、だから見栄えのない分誠人くんの為に少しでも尽くさないと。
あたしは頭の中で脳内イメージを膨らまそうとした、その瞬間突然何か音がした。
それがバイブ音だと分かるのに数秒かかった。
雰囲気が雰囲気なだけに一瞬その音に不埒な妄想をしてしまったのは誠人くんには内緒ね。
それは置いといて、あたしはバイブ音の発信源である誠人くんの机の上に置かれている携帯電話を手に取る。
ボタンを押しとりあえずバイブ音を止める、そして見てみるとメールが一通来ていた。
誠人くんには悪いなとは思いながら、好奇心という小悪魔に勝てなかったあたしは携帯を操作する。
ロックもかけていないところに自分への信頼を感じつつ、メールボックスを開き、そのメールの内容を確認した…。

―――――――――――――――――――――――――――――     

「加奈、もういいぞ」
俺が部屋の扉を開けると、加奈は体育座りをしながら黙り込んでいた。
その傍らには何故か俺の携帯電話が置かれている、何があったのか確認しようとした瞬間、加奈がすくっと立ち上がった。
下を向き俺と目線を合わせないまま俺に近付いてくる。
そして静かに口を開いた。
「誠人くん…”ちょっと”外行って来ていい?」
下を向いたままだから表情は読み取れない、しかし、声色からして何となく嫌な予感がした。
昨日の夕方、加奈に保健室での事を訊かれた時のような緊迫感を全身全霊で感じる。
こんな加奈の様子を前にして、俺は………


1・すぐに携帯電話を確認する
2・そのまま行かせる
3・止める



328 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 05:57:33 ID:+Tw/UoDg
投下終了です。最後の最後で連続投稿にひっかかって…orz
そして予告通りもう一回だけ選択肢をつけました。
後前の投下で次が最後と言いましたが、本ルートだけはもう少しだけ続けます。

329 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 09:04:40 ID:whD8sD7W
>>328
いよいよクライマックスですかGJ!
加奈タンと誠人には幸せになってほしい
……と言いつつ島村さんとの決戦にもwktkしている俺w
( ´∀`)σ1

330 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 09:56:25 ID:IrR26brh
今まで暴走していた二人の愛も、紆余曲折を経て幸せへと向かう。
これ、普通の純愛小説としても意外といけそうなところがいい。

331 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 11:02:42 ID:RkX+whuf
GJ!
この後もっとグチャグチャになる展開を
予想して2で



332 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 11:45:42 ID:slVcKCdO
いよいよクライマックスですか!
楽しみでもあり、寂しくもあり。何にしてもGJ!

情報が命。1で。

333 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 12:27:17 ID:4Nvtt4ck
もちろん 2・そのまま行かせる 以外に選択肢はなーい!

334 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 12:52:54 ID:TXAO3X6Q
>>327
3・止める

止めたらどうなるかなー?

335 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 17:00:28 ID:3f2K9cdf
メールの内容が気になってしょうがない!!
だから1で!!

336 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 19:34:00 ID:ymj/Q6Tj
2だろ!そして最終決戦。

337 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 19:48:43 ID:c6GNu5Dn
みんなよく考えろ。ここは1.2.3の票数を同率一位にして3つ書いていただくべきだ!
それとも票数関係なしに3つとも書いてもらえるのかな?

まぁ、とゆーわけで3で

338 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:21:10 ID:Ttj8iv5s
まて、ただ止めるだけでは「面白くない」。
というわけで1だ。

339 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:35:22 ID:3EkMifA6
トリップつけますた。
間あきましたが第2話。


鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

にばんめのおはなし
======================================

「そういえば、昼間儀介君が来ていた様だね」

夕餉を終えた父が、御膳を下げに来たあたしに不意にそんなことを言い出した。

「ええ。あいもかわらずのその日暮らしのようです。
もう…もう少ししっかりして欲しいと常々思っているんですが…」

はぁ、とあたしは大きく嘆息する。
結局、あの後あたしはいくばくかの小遣いを儀介に包んでやった。
こういった甘やかしが良くないのだとはわかっているのだが…。

「はっはっは、確かにそこはいけないところでは在るけれど…儀介君は好人物だ。
なかなか好感の持てる青年だよ」

苦笑しながらも儀介の肩を持つ父に、あたしは少しだけむすっとした顔をしてみせる。

「そんな事ありません。くだらない悪戯はするし、屁理屈ばかりいいますし、まるで子供です!」

思わず声を荒げるあたし。だが、父は小さく苦笑するだけだ。

「いやいや、男というのはいくつになっても子供のようなものだからねえ」

そして、そう言っておどけて見せる。


340 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:35:53 ID:3EkMifA6
「…随分とあいつの肩を持つんですね」

あたしは、そんな父の言葉にむすっとしながら、呟いた。
けれどそんなあたしを見て、父は優しく微笑むと優しく諭すような口調で続ける。

「彼は決して悪行には手を貸さない。
天道に背を向けるような行動をしないということは、今の世の中なかなかできることじゃあないさ。

確かにここのところ、どこそこに盗人が入っただの、刃傷騒ぎがあっただのと、良くない話を聞く機会が増えた。
何かに、追い立てられるかのように生きていく人。それに押しつぶされてしまう人。
――あるいは、人という生き物は平穏に耐えられないのかもしれない。
だから、長く平穏が続くとそれを壊したくなるのかもしれない。

「…彼を信用してあげなさい。
たとえ全ての人が彼を見捨てても、お前だけでも、彼を信じてやりなさい。…いいね?」

父は、最後の言葉は笑わずに、真面目な顔であたしに向かって諭す。
そんな父の姿に毒気を抜かれたあたしは、思わずはい、と答えていた。

======================================

341 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:37:03 ID:3EkMifA6
あたしは、小さく欠伸をしながら寝所へ続く廊下を歩いていた。
初夏の夜風が、青い草木の香をかすかに運んでくる。
つ、と見上げた空には、新円の月。
雲もなく、きっと明日もいい天気になるだろう。

「儀介…か」

父とあんな会話をした後のせいだろうか。
何故か儀介の顔が、声が思い返される。
月を見あげながら、あたしはあいつと始めて出会った日の事を思い返していた。

それは、昔まだあたしが小さかった頃の話だ。
小さい頃のあたしは、人見知りが激しいほうだった。
いつもいつも、人が来ると父の陰に隠れていた記憶がある。
そんなあたしにとって、祭事の日は、とても嫌なものだったのだ。

小さな神社ゆえ、父一人で祭事の全てをこなす事はどうしてもできない。
今でこそあたしという人手があるが、当時は知人や友人の手を借りて切り盛りをしていた。
祭事の日が近づけば近づくほど、普段はあたしと父しかいない神社に、人があふれてくる。
見知らぬ大人。
知らない顔、顔、顔、顔。
…その頃のあたしにとって、祭事の日ほど恐ろしいものはなかった。

ある時の事。
とうとう私はその環境に耐えられず、神社から泣きながら逃げ出した事があった。
怖くて泣いていたのか、一人ぼっちである事が寂しくて泣いていたのか…。
今となっては、良く思い出せない。
逃げだしたあたしは、社の近くの大樹の下で一人泣いていた。
泣いても泣いても、いや、泣けば泣くだけ悲しくなってしまう。
まるで、体中の全ての水を出し切ってしまうかのように、あたしは泣いていた。
そんな時の事。

『何泣いてんだよ、お前』

突然木の上から声がして、あたしは思わず泣き止んだ。

342 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:38:30 ID:3EkMifA6
顔をあげると、そこには木にぶら下がっている健康的に肌の焼けたやんちゃそうな男の子。
その男の子が、むすっとしながらあたしの顔を見下ろしていた。
あたしが、突然の出来事に泣く事も止め目を白黒させていると、その男の子はぴょいっと
あたしの隣へと飛び降りてきた。

『お前、ここは俺の隠れ家なんだぞ、みんなにばれたらどうするんだ』

詰め寄られ、どうしたものだろうかとおどおどしているあたしに向かって、
男の子はずいと手ぬぐいに包んだ飴をいくつか突き出した。

『一人で食べようと思ってたけど、お前が泣いてると美味くない。
だから半分やる。その代わりにここの隠れ家の事、秘密にしろよ』

―――その時食べた飴が、甘く美味しかった事だけは、良く覚えている。


それが、あたしと儀介の出会い。
一人っ子で引っ込み思案だったあたしの手をとって、儀介はいろんな所へ連れて行ってくれた。
川で釣りを教えてもらった。
…暴れる魚に驚いて、思わず泣いてしまった。
木登りを教えてもらった。
…登ったきり降りれなくなって父に迷惑をかけた。
あたしが風邪をこじらした時、お見舞いといって花を持って来た。
…毒花で父が気付かなければ酷いことになるところだった。

儀介やその友達と遊ぶうちに、人見知りな性格も少しずつ良くなってきた。
…生来のおっちょこちょいの儀介と付き合ううちに、かわりにしっかりせねばと思い、
引っ込み思案だったあたしの性格も大分矯正された。

「…まったく、助けてもらってるのか、迷惑かけられてるんだか…」

苦笑しながらも、何故だか心の中があったかくなって頬が緩む。
その日あたしは、子供の頃儀介と遊んでいた頃の事を夢に見た。

======================================
あいも変わらずデレ描写が長いのは申し訳ないッス…


343 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:02:18 ID:jXgGt8Oy
ここはやはり2を期待します

投下します 注意 フタナリものです

否命はその少女の笑顔に、鼓動の高鳴りを覚えていた。その少女の笑顔は深山に咲いた一輪の華の如き幽玄の美を持って、否命の心臓にまで迫る。
しかし少女の顔は圧倒的美を誇りながらも、瞳がその美を何処か歪なものに変えていた。まるで悠久の自然が作り上げた光景を、愚かな神が手を加えてしまったが故に、その無為の輝きを壊してしまったかのような…一言で言えば「不自然さ」があった。
「聞こえなかったの?財布よ」
その声に否命は現実に引き戻され、慌てて自分が手に持っているものを確認する。
「財布って……これのことだよね?」
少女は頷いた。
「そう、それよ。返して頂戴」
「返すって……あの男の人達に返すんだよね?」
「面白い子ね…」
言って、少女はスッと否命と顔が触れ合いそうな位置まで足を進めた。
「なッ、何?」
戸惑う否命に、少女は更に自分の顔を近づけるとニィーっと笑った。否命もつられて、口元がニィーっと歪む。
次の瞬間、少女は否命の額を指で弾いた。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
声にならぬ悲鳴をあげ、否命は地面に蹲った。
少女のした行為は所謂デコピンというやつであった。それは単純に指で額を弾くという、暴行とは言えぬ、ある種の「戯れ」であるが、否命はそれによって額が爆発したような痛みに襲われていた。


344 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:03:31 ID:jXgGt8Oy
「いい、良く聞きなさい!それは私が身体を張って、汗水流して、神経をすり減らして手に入れたもの。いうならば、私の努力の報酬なのよ!だから、私のもの…分かる?」
分かる筈ない。否命は地面に蹲ったまま、首を横に振った。
「さぁ、私に財布を…」
「駄目・・・だよ。それは、あの男の人のだから…、ちゃんと…返さないと」
「もう、返して済む問題じゃないんだよ、お嬢さん方」
その声に二人が振り向いた先には例の男二人組みと、その二人組みの仲間と思われる、これまた堅気の風体とは思えない一人の男が立っていた。
少女は咄嗟に逃げようとしたが、いつのまにかもう二人別の男が少女の前に回りこんでいた。
「チッ!」
計5人の男に囲まれ、少女は思わず舌打ちをする。しかし、それでいながら少女の顔はあくまで涼しげなままであった。
「さっ、俺の金を返して貰おうか。お嬢さん」
先ほどの事件がよほど金を盗まれた男にとって屈辱だったらしい。少女を追い詰めた男は嬉しくて、嬉しくてたまらない様である。
「もう、返して済む問題じゃないのでしょう?貴方の頭には、実は真っ赤なトサカが生えているようね」
「相変わらずの減らず口で…」
「貴方も相変わらずの臭い口で…」
少女の態度に男は苦笑を漏らす。余裕の笑みであった。
「で、そっちのお嬢さんは?」
「そう、私の「仲間」よ」
「ほぅ…」
「貴方たちは、運がいいわね。丁度今、「仲間」割れを起こしていたところよ」
「それは、それは」
そう言って、男は否命のほうに顔を向ける。
「成るほど。そいつが俺から盗んだ財布を、あんたが預かるっていう寸法だったんだな」
否命はしばらく、自分が何を言われているのか分からなかった。この状況に頭が追いついていないのだ。否命はこの男が自分に向けてくるプレッシャーに、ただ怯えていた。
「どうなんだ!えっ、そこの餓鬼とグルなんだろ!?」
「えっ?」
「その餓鬼と二人して、俺を嵌めやがったな!」


345 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:05:05 ID:MpTr3WJD
そう言われてようやく否命は自分がこの男達に、少女と共謀したと思われていることを理解した。
「………、ちっ、違ッ、違いまっ、わッ、わッ、私は…そッ、その…あのの…」
緊張からか、否命の口調は滑稽な程たどたどしい。ここで動揺したり、焦ったりしたら、この男達に怪しまれるのではないか…そんな思いが逆に否命の口を不自由にしていた。
「私は…ポポポ、ポケッ、ケトに、その…さっ、財布を、いいい、入れられただけで…」
「哀しいわ。所詮、悪党同士の結びつきなんてこんなものだったのね」
否命とは違い、少女は声も顔も平常そのものであった。
少女はたとえ、否命のようなひ弱な女の子であっても、利用できるものは全て利用するつもりらしい。
しかし、その少女に目を付けられた否命は…。
「小便ちびりそうな顔しているぜ、嬢さん」
「漏らしちまいな。嬢ちゃんのなら、呑んでやるぜ」
口々に勝手な事をいいながら、前方の男は懐からナイフを取り出した。それは刃を折りたためば掌に収まるほどの大きさであった。不必要に殺さずに、相手を傷つけることを目的
としたものである。
少女は咄嗟に後方を振り向く。たとえ相手が三人でも、ナイフを持っていないのならば、逃げ道は後方にしようという魂胆である。
だが、後方の二人も懐から同様にナイフを取り出した。前方の三人と同じく、ナイフそのものは小さい。
「使うよ…、お嬢さん方」
最後に、少女に金を盗まれた男は懐から大きな登山ナイフを取り出した。
「最後通告だ。俺達にさんざんいたぶられた末に財布を渡すのと、財布を渡した後にいたぶられるのと、どっちがいい」
否命は力の限り首を横に振った。
哺乳類は刃物の光沢を見ると、本能的に恐怖する。それは本能的な故に例外のない事実である。しかし、少女の顔には未だに怯えの色はなかった。
恐らく、胆力で恐怖を顔に出さないようにしているのだろう…と男達は、少女の胆力に意外にも感心してしまった。
「なかなか、立派な面構えしてるな。だが、虚勢を張るだけで…」
「警察…」
少女がボソッと呟く。
「あっ?」
「集団で囲み、脅迫し、挙句に刃物…、もう警察は呼べないわね」
「ほぅ…」
前方の三人の内の一人が小さなナイフをちらつかせながら、少女に掴みかかる。
「触らないで頂戴」
っと、少女はその男の手をバシッと払いのけた。


346 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:20:09 ID:bHNY5Ni5
「この餓鬼ッ!!」
叫ぶと同時に、男は少女の腹部を殴る。恐らく男は殴りなれているのだろう…男の拳はものの見事に少女の鳩尾に入っていた。
「~~~~~~~~~!」
少女は腹部を押さえ、息を吸おうと口を死に掛けの金魚の如くパクパクと動かす。だが、激痛のあまり少女は息を吸えず、苦悶の表情を浮かべながら倒れるほうに男に近づいていった。遠目でも分かるほど、足元がふらついている。
「もう一発だ」
再び、少女の鳩尾に男の拳が抉りこまれた。少女の瞳の焦点が合わなくなっていく。少女は自分を殴った男に何かを求めるように、男の裾を掴んだ。
「さっきまでの威勢はどうしたのかな?」
と、男の口から嗜虐の笑みがこぼれた。同時に、周りで事の成り行きを見守っていた男達が一斉にその少女の無様な姿を見て笑い声を上げる。
っと、次の瞬間であった。
少女を殴った男の顔にベチャッと、何かが張り付いた。男はその物体に視界を遮られて、慌ててその物体を両手で払い落とそうとする。だが、ナイフを持った右手の手首は少女に捕まれ止まってしまった。
男の力ならば、少女の手を振り払うことは十分可能である。だが、視界を塞がれた男にとって自分の右手が動かない事態は、実際以上の脅威を持って男に迫った。咄嗟の事態で、男は軽く混乱しているのだ。
「こいつ…ゲロ吐きやがった」
誰かが呆然と呟いた。
その言葉が合図であったように、男の鼻孔に甘酸っぱいゲロ独特の匂いが広がる。そして、ようやく男は自分が顔にゲロを吐きかけられた事を理解した。
「こいつッ!!」
怒りに駆られ、男は全霊で持って少女を殴ろうとする。しかし、男は少女に右手首を掴まれているせいか、視界がゲロによって遮られているせいか、勢い余って体勢を崩しそのまま地面に倒れてしまった。
ぺきん!
という、枯れ枝を折るような音がした。
その音に、周りの全ての人間が呼吸を止める。男の顔はゲロにまみれても尚分かるほど、苦悶に顔を歪ませていた。
男の手首から先が消えていた。
切れたのではない。
男の右手は綺麗なアーチを描くように内側に折れ曲がっていた。掌が腕の腹にピッタリと張り付いている。何処か、冗談じみた奇妙な光景であった。


347 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:21:47 ID:bHNY5Ni5
「ゴッ・・・・・・・・・アアアアアアアアアアアアァァァァァ~~~~!!」
男は倒れたまま、地面を転がる。
視界の遮られていた男には分からなかったが、男が少女を殴ろうとした時、少女は男の足
を払っていたのである。そして男が倒れるのと合わせるように、握っていた男の右手首を
内側に折り曲げたのだ。結果、男の手首は自分の体重分の衝撃を受け、ありえないぐらいに曲がってしまっていた。
確信犯であった。
少女は倒れた男の手からナイフを捥ぎ取ると、それを持って財布を盗すまれた男のほうへ近づいていく。
「おぃおぃ、俺達とやろうっていうのかい?」
男達は心臓が飛び出るほど驚いたものの、戦闘意欲を失うような人種ではなかった。既に、
咄嗟の事態に頭が追いついているらしく、ナイフを片手に少女を威嚇する。
しかし、少女はそれでも顔色一つ変えることなく無言で財布を盗まれた男に迫った。
「そんなチッポケなもので、これとやりあうってか?」
男は自分の大きな登山ナイフを振り回しながら、少女の持っている小さいナイフを笑う。
「………」
少女は既に財布を盗まれた男の眼前まで来ていた。その少女の首筋に財布を盗まれた男は、
登山ナイフをあてる。ツゥーっと、少女の首筋から赤い血が細く流れた。少女はそこで動きを止める。
「餓鬼、もう歩いて帰れな…」
次の瞬間、なんの躊躇いもなく、少女は財布を盗まれた男の顔をナイフで切りつけた。
周りが水を打ったように静かになる。それから、一拍おいて男の顔から血が噴出した。
「これで、トサカの生えている貴方の汚い顔も大分マシになったわ」
いつも変わらない調子で、いつもと変わらない顔で少女は言った。


348 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:22:58 ID:bHNY5Ni5
「やってくれたな!もはや生きて帰さんぞ!!」
それでも、この男は戦意を失うことも、取り乱すことも無く、少女に登山ナイフを振るおうとする。
だが、財布を盗まれた男が少女にナ登山イフを振るうよりも早く、少女は男の登山ナイフを持っている右手の甲をナイフで突き刺していた。
「~~~ッ!」
思わず、財布を盗まれた男は登山ナイフを取り落としてしまう。その登山ナイフを少女は驚くほどの素早さで拾い上げた。
「お前ッ、アアアアアアアアアアア!!」
男の顔が驚愕で見開かれる。少女は、まるでマウンドに立つピッチャーの如くその大きな登山ナイフを大きく振りかぶっていた。
脳天から顎まで一直線。まさか…と思う財布を盗まれた男の脳裏に、自分の頭が西瓜の如
く真っ二つになっている光景と、直前の何の躊躇いもなく自分の顔を切りつけた少女の顔が浮かんだ。
「ヒィッ…」
流石の男も限界であった。恥も外聞も無く、財布を盗まれた男は両手で頭をガードした。
少女の登山ナイフが半円を描いて男に迫る。
「―――――――――!!!!」
少女の登山ナイフは男の両手ギリギリのところで止まっていた。
目を閉じていた男は、自分が無事なのを確認すると安堵のあまり地面にヘナヘナと座り込
んだ。その男の股間を少女は蹴飛した。「ウッ」と短い呻き声を発して財布を盗んだ男はとうとう気絶する。
あまりの事に、少女の回りで声を発するものは誰もいなかった。


349 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:24:04 ID:bHNY5Ni5
「クリーニング代……」
静寂を破るように少女が呟く。
「聞こえなかったの?クリーニング代よ」
「えっ?」
前方の三人組の残った一人に少女は声を掛けた。男はあまりの事に目を白黒させている。
「貴方達が汚したのよ。クリーニング代出してくれるわよね?」
そういって、少女は自分のシャツを摘んでみせる。
「あっ…ああ、はい」
男は少女の上着が返り血で紅くなっているのを見ると、これまた分厚い財布から一万円札を一枚取り出し少女に渡した。
「………」
少女は無言で男の手から財布をかっぱらうと、その中に入っていた札束を無造作に掴
み取る。その札束をポケットにしまうと、少女は半ば放心している男に薄くなった財布を投げて返した。
「それと、上着も貸して頂戴。このままじゃ、家に帰れないわ」
後ろで呆然としていた二人組みと、前方の残った一人が無言で目を交わす。そして、後方の男の一人が自分の上着を脱いで少女に渡した。
否命はもはや気が動転して歩くこともままなかなかったが、それでもフラフラと帰路を急ぐ。しばらくは何も考えられそうになかった。
「ありがとう。じゃあ私はこれで失礼するわ。あと、救急車ぐらい呼んであげなさい」
そういって、少女は否命の後を追った。
少女はまだ、否命に財布を渡したままであった。

投下終わります


350 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:26:25 ID:bHNY5Ni5
>>51 ごめんなさい!!
書き込み、気付きませんでした。これからは、新着レスを確認してから
書き込むようにします。
本当に失礼しました!