575 :シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/10(土) 19:00:38 ID:+Ky50rQJ
~シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー~
ある夜の、都心部に在るマンションの一室。
一人の男がPCと向かい合ってうんうん唸っている。
男は逡巡してから顔を上げて、
『このゲームをアンインストールしますか?』
「はい。・・・・・・っと」
マウスを操作してゲームのアンインストールを実行する。
PCがアンインストールの作業を実行し、一分も経たないうちに
ゲームは真也のPCから削除された。
エロゲーのヒロインが同じゲーム内のヒロインを殺害し、さらにキーボードを
勝手にタイピングしたという現実を目の当たりにしてこのゲームをまたプレイ
しようと真也は思わなかった。
とはいえ、アンインストールしようとしたらまた何か奇妙な出来事が
起こるのではないかと真也は戦々恐々としていたが、数秒、数分待っても
何も起こらなかった。
「よかった。これで安心だ・・・・・・」
あのスペシャルステージと、自動的にテキストエディタが
立ち上がったのはゲームに組み込まれていたもの。
キーボードが勝手にタイピングを始めたのは、自分の気のせい。
真也はそう納得することにした。
「もう夜の二時だもんな。知らないうちにちょっと寝てたんだろう。きっと」
立ち上がり、ベッドに身を投げる。
ぼすっ、という音と共にベッドが真也の体重を受け止めた。
そしてそのまま目を閉じて彼は眠りについた。
576 :シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/10(土) 19:01:37 ID:+Ky50rQJ
翌日。
今日は燃えないごみの日だったので、あるものをゴミ袋に入れて
ゴミ収集所に出しておいた。
『あるもの』とは、昨日プレイしたゲームを購入したときに特典として
ついてきたヒロインのフィギュアだ。
今朝目が覚めたときに、部屋に飾っていたフィギュアを見たら
悪寒がしたのだ。
もしかしたら、フィギュアが動き出すかもしれない・・・・・・
実際にはしばらく見つめていても何も起こらなかったし、
ゴミ袋に放り込んだときに暴れだす、ということも無かった。
「ま、当たり前だよな。昨日のはやっぱり夢だよ」
そうひとりごちてから会社へ向かうことにした。
仕事中にメールをチェックしていたら、迷惑メールが一通
届いていることに気づいた。
メールサーバで迷惑メールは削除するように設定されている
というのに・・・・・・
不審に思った真也はそのメールの送信者を確認した。
「あれ? これって俺のアドレス・・・・・・?」
自宅のパソコンから会社のパソコンにメールを送った覚えはなかった。
ウイルスにでも感染していたのだろうか?
しかし、そのメールの件名を見て真也は目を見開いた。
「『アンインストールしたこととゴミ袋に入れたことについて』・・・・・・」
おそらく、昨晩のエロゲーのことを言っているのだろう。
ウイルスメールにしても昨日の今日ではタイミングが良すぎる。
それにゴミ袋。まさかあのフィギュアのことを言っているのか?
真也はしばらく逡巡したが、決心してそのメールを開いた。
577 :シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/10(土) 19:02:23 ID:+Ky50rQJ
『真也くん。お仕事お疲れ様。
ねえ。どうして昨日私が出てくるゲームを削除しちゃったの?
あのゲームが無いと私に会えないじゃない。
もしかして焦らしてるの? だめよ。そんなの我慢できないわ。
だから私がまたインストールしちゃったから。
あと、私をゴミ袋に入れたことについてなんだけど、
これについてはゆっくりお話がしたいな。
だから今日は早めに帰ってきてね。』
『私が出てくるゲーム』。
『私をゴミ袋に入れた』。
もう疑う余地は無い。
このメールを送ったのは朝に捨てたヒロインのフィギュアだ。
「どうなってんだよ・・・・・・これ・・・・・・」
真也は頭を抱えた。
まさかナニのネタを替えただけでこんなことになるとは。
家に帰ったらまさかあのフィギュアが待っていたりするのか?
嫌だ。そんな家には帰りたくない。
しかし、逃げても無駄なように思える。何せ相手は都市伝説そのものなのだ。
考えた末、真也は決心した。
「やられる前に・・・・・・やってやる。
家に帰ってあのフィギュアを見たらすぐ粉々にして、
PCのハードディスクも叩き壊してやる・・・・・・」
真也は会社の帰り道で100円ショップに寄りかなづちを購入した。
人外の相手をするには心許ないが、無いよりは幾分かマシだろう。
いつもよりも激しく鼓動する心臓を深呼吸で落ち着けながら
自宅へ向けて歩き出した。
最終更新:2011年10月24日 15:40