595 :慎太郎の受難第2話1/5 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 21:47:32 ID:x7y5aExW
電話を取ってみると、幼馴染の高畠絵里からだった。
幼馴染。幼稚園から中学まで同じ。中学のときは、同じく吹奏楽をやっていた。
高校は彼女の方が俺の行く高校に落ちてしまい、別々になってしまった。
そう幼馴染・・・。そろそろその先に行きたいのだが。
「やぁ、しん君」
「なんだ・・・絵里かよ」
「なんだってなによなんだって」
「いや、うん、まぁいろいろあってな。それでどうした?」
「うん、最近さ、一緒に遊んでないじゃん。だからさ、街に遊びに行かない?」
「いつ?」
「今週の日曜」
「練習後の昼なら良いよ」
「じゃあ3時に橋のところで!」
橋・・・街の中心部にあるでかい橋のことだな。
「OK。でどこか行きたい所はあるのか?」
「おいしいパスタの店があるの。そこに行きたいなぁ、なんて。」
「昼を三時に取るのは遅いなぁ。夕飯にしてもいいか?」
「もちろん!あ、服とかも買いたいなぁ」
「付き合うよ」
「本当!?ありがとう~。じゃ、明後日ねぇ」
がちゃ。
久々に会える。
絵里に会える。
嬉しい。
このときの俺の顔はとんでもなくにやけてただろう。
それほど嬉しかった。とりあえず私服選びから。
どんな服が良いだろう。
いや待てよ、あんまり着飾ると、逆に意識させてしまうか。
いやでもやっぱり(ry
そんなことを考えているとあっという間に日曜が来た。





596 :慎太郎の受難第2話2/5 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 21:48:11 ID:x7y5aExW
「すまん今日は早く帰るよ」
「どうした、奈津子ちゃんとデートか?」
「違うよ」
「別の子か。もてる男はいいねぇ」
鈴木に早く帰ると告げ、俺は私服に着替えに一度家に帰った。
鈴木はチャラけたように言っていたがなんか寂しそうな目をしていた。
お前だってもてるじゃないか、と突っ込みたくなったが、早く帰りたかったので、
スルーして帰った。というかデートじゃねぇよ。
昼飯をかきこみ、私服に着替え、
大慌てで出たせいか、待ち合わせ場所には30分前に着いた。
絵里は・・・15分前に来た。ショートカットで黒髪。
顔は奈津子ほどではないが、普通に可愛い。
さっぱりした性格ではあるが、感情の起伏が激しい。
いつも笑ってればいいのだが、涙もろい
「なんであんたそんなに早いのよ」
いきなり文句かよ。
「家にいたってすることないしな。ところで・・・お前その格好・・・」
プリーツのミニスカ。そんなの着ていた姿はあまり見かけない。
というより、今日はいつもと違い女の子らしい格好だった。
いつもはGパンにTシャツとか男らしい格好なのに。
そういったことから出た疑問だった。
「別に、今日たまたまこれしかなかったのよ。・・・何よ」
「いや、そういう格好も似合うな。」
「あんた今日熱でもあるの?」
「ひどいなぁ。素直にほめただけだ。」
「あんたが言うとなんか下心があるように聞こえるのよね。」
「ひどいなぁ。おれは変態か?」
そんな会話をしながら歩き出した。
買い物はすさまじい量だった。
俺がいるからって無茶すんなよ・・・
荷物もちの気持ちも考えてくれ・・・
まぁ絵里の荷物ならどれだけでも持つが。


597 :慎太郎の受難第2話2/5 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 21:48:43 ID:x7y5aExW
「ここ、ここ!美味しいって評判のパスタ屋さん」
絵里が来たかったのはここらしい。
しゃれた感じの・・・パスタ専門店?いやピザも出すようだ。
早速注文をとる。俺はピザを、絵里はパスタを頼んだ。
「ピザは時間がかかるんだよ~」
と、絵里は不満があるようだが。
「ところでさぁ」
絵里が切り出してきた。
「小牧さんってどんな人?」
・・・なんですと?
「だから、小牧奈津子さんってどんな人?」
「あーあー聞こえなーい(∩゚д゚) 」
「ぼけないで!」
「そんないきりたたんでも。気になるのか?」
「別に・・・ただあんたに付きまとうなんてどんな変人かと思って。」
「その通り、まさに変人だ。」
「可愛い?」
「あぁ」
「その・・・どうなの」
「なにがだ」
「仲・・・良いの?」
「向こうからの一方通行だ。もっともはたから見ていると、漫才に見えるそうだが」
「仲いいじゃん」
「良くねぇよ!それよりどうなんだ?彼氏できたか?」
「あたしにできるわけないじゃん!」
「無理だったら俺が引き取ってやるぜ」
「誰があんたなんかと!」
・・・この前は
「彼女できなかったらあたしが引き取ってあげる」
なんていってたのに・・・(´・ω・`)
楽しい時間はあっという間に過ぎていく・・・


598 :慎太郎の受難第2話4/5 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 21:49:45 ID:x7y5aExW
そして地獄はやってくる。
おのおの注文したものを食べ終わり、店を出た。
6月とはいえ、外はもう暗かった。
俺は絵里を送っていくことにした。
夜に女の一人歩きは危険だしな、うん。
帰り道も楽しく会話、んで近くの公園で・・・
なんてこと考えてたら不意に後ろから、
「慎太郎くーん」
という声が聞こえた。
振り返るとそこには恵と・・・
奈津子がいた。
何故?何故ここに奈津子がいる?
「ねぇあれ誰?」
絵里が尋ねる。
「同じ部の恵と・・・奈津子だ。」
「へぇ。それで・・・どっちが奈津子さん?」
「右」
「ふーん」
すこし冷たい感じの声がする。
「あ、邪魔しちゃった?」
恵が明るく言う。
「うんうん、2人は仲よさそうだね。彼女さん?」
おい、隣に奈津子いるんだぞ恵!
絵里も反論してくれ・・・といおうと思ったが、
様子を見ると絵里は赤面してうつむいている。
いや、誤解されちゃうじゃん。
ほかの人の前でなら嬉しいけど今はまずい!
あわてて奈津子の様子を見てみると、いつもと違っていた。
いつもなら、目に見えるような殺気を出すのだが、
今回は何も出していない。むしろ空っぽ、放心状態というほうが正しいだろう。
俺は、驚いた。
しかし、ある意味ほっとしていた。


599 :慎太郎の受難第2話4/5 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 21:50:51 ID:x7y5aExW
下手すると自分の命がなくなる事態。
しかし、肝心の奈津子はいつもと違いおとなしい。
このまま何事もなく終わればいい。
明日の学校で奈津子がぎゃーぎゃー言うかもしれないが、
それはそれで対処すればいい。
そんなことを考えているうちに、、
「お邪魔しっちゃったねぇ。奈津子、行こう!」
恵はそういって奈津子をつれて去ってしまった。
その後は気まずくて絵里と何もしゃべれなかった。
くそっ俺の華麗なる計画が!
しかし、奈津子がおとなしかったことで、
修羅場を乗り切った俺は、十分満足だった。
ところで帰る途中で鈴木に会ってしまった。
嫉妬の炎を燃やしているように見えたのは気のせいだろう。
悪いが、絵里は渡さないぜ。

彼は満足していた。
そのため気づくことができなかった。
崩壊の芽が育ち始めていたことに。
しかし気づけたからといって、彼にそれを摘み取ることはできただろうか。
その答えは誰にも分からない。




運命という歯車は急速にその回転を速める
そして仕掛けは動き始める
静かに
速やかに
最終更新:2008年07月29日 22:21