※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

55 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:10:20 ID:dy7nRHr9
ことのはぐるま番外編~女店長・越えられない壁~

 日本のある町にコンビニエンスストアがありました。
 その店は胸の大きな女性が店長を務めています。
 胸がどれぐらい大きいかというと、成人男性の手にも収まらない
くらいの大きさをしています。
 お店にやってくる男性たちは店長の胸元に釘付けになってしまいます。
 ときどき、店員の女の子がその胸を見てため息を吐いています。
 その女の子のバストサイズは日本人の平均以上ありますが、それでも店長の
胸の大きさにはかないません。それほど大きいのです。

 今日は2月14日。
 バレンタインデー当日です。
 コンビニエンスストアの店内にもチョコレートのコーナーが設けられ、
女の子たちはそこで義理、または本命の相手に贈るためのチョコを選んでいます。

 胸の大きい女店長は楽しそうな女の子たちを事務所の監視カメラから観察しています。
 物憂げな眼差しは見る者全てを恋に落としそうな色気を放っています。

「懐かしいわ。わたしもあんな頃があったわよね・・・・・・」

 彼女が物憂げな視線で女の子たちを見つめているのには理由があります。
 遠い昔を懐かしんでいるわけではありません。まだ20代ですから。
 バレンタインデーは彼女にとって特別な日です。
 今でも愛している彼の心を射止めた記念日なのですから。

 あれは三年ほど前のことです・・・・・・







56 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:10:59 ID:dy7nRHr9
 当時の女店長は店長ではなく、コンビニのアルバイト店員でした。
 
 この回想の中では便宜的に裕子と呼ぶことにします。
 本名ではありません。仮名です。

 大学を卒業後、彼女はフリーターとして生計を立てていました。
 就職はできなかったものの、勤労の喜びを味わいながら日々楽しく
暮らしていました。
 
 ある日のことです。
 時刻は夜八時数分前。裕子は退屈そうにバイト終了の時間を待ちながら
レジ当番をしています。

 すると店内にスーツ姿の男性が入ってきました。

「いらっしゃいませこんばんは!」

 裕子は元気良く挨拶します。
 彼女の挨拶はお店に入ってくる人にはっきりと聞こえます。
 その男性にももちろん聞こえました。

 男性は裕子の方を向いて微笑を浮かべながら会釈を返しました。
 優しい微笑みでした。その笑顔を見て裕子はどきっとしてしまいました。

(か・・・・・・かっこいい・・・・・・)

 清潔感のある短い髪に、穏やかな微笑み。
 すらりとしたスーツをかっこよく着こなした男性の姿を見て、
目を離せなくなってしまいました。



57 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:11:43 ID:dy7nRHr9
「これ、温めてください。袋は結構ですので」
「はい! かしこまりました!」

 男性がレジに弁当とお茶を持ってきました。
 レジを挟んで裕子と男性は向かい合っています。

(はああ・・・・・・いい匂い)

 男性を目の前にして、裕子は緊張したり興奮したりと大変です。

(そうだ・・・・・・)

 お弁当とお茶にシールを貼ってから男性に差し出します。その場で彼女は
あることを実行することにしました。
 両手で弁当を差し出して、男性が手を出した瞬間にその手を握ったのです。

「う、うわっ?」
「あ・・・・・・ごめんなさい!」

 裕子は謝りながら男性を上目遣いで見つめました。
 ぶりっ子全開、おとす気満々の瞳です。
 男性は軽いパニックになって慌てています。

「ええっとあの、その・・・・・・」
「ごめんなさい! 間違って握っちゃいました。
 ほんと、ごめんなさい! う・・・・・・ぐす」

 今度は下を向いて嗚咽を漏らしました。
 もちろんうそ泣きです。

「いいえ! 全然怒ってませんから! 気にしないでください!
 そ、それじゃ、失礼しますっ!」

 男性は弁当とお茶を持って慌てて店から出て行きました。

(やった! これで顔を覚えてもらえたわ!)

 その時点でバイトが終了する時間になったので、事務所へと入っていきました。



58 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:12:20 ID:dy7nRHr9
 かつてないほどの速さで着替えを終えた裕子は外へ飛び出しました。
 何故かと言うと、先ほどの男性と会って話をしたかったからです。

(まだそんなに時間は経ってないから、その辺にいるはずよ)

 目を鋭くして、周囲をきょろきょろと見渡しています。
 男性はすぐに見つかりました。コンビニの外に設置してあるベンチに座って
弁当を食べています。
 裕子ははやる気持ちを抑えてゆっくりと男性に近寄っていきます。

「こんばんは」
「むぐ? ・・・・・・さっきの店員さん?」

 男性は箸を止めて裕子の方に振り向きました。

「隣に座ってもいいですか?」
「ええ。構いませんけど」

 男性は腰を浮かせて左側に空間を空けました。そこに裕子は座ります。
 二人の太ももが密着するかどうかという距離を空けて。

「う・・・・・・」

 裕子の行動に男性は戸惑ってしまい、弁当を食べる動きが緩慢になりました。
 それを見て取った裕子は、すかさず男性に話しかけます。

「私、裕子っていいます。お名前教えてもらっていいですか?」
「荒川修二です」
「私ここでバイトしてるんです。荒川さんはなんのお仕事をしてるんですか?」
「そこの高校に今年から教師として赴任しました。今日は残業していたら
 いつもより遅くなってしまってこんな時間になっちゃったんですよ」
「高校の先生ってやっぱり大変なんですね」

 あっさりと男性の名前・おおよその年齢・職業を聞き出しました。
 たたみかけるように裕子は次の行動を開始します。



59 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:13:02 ID:dy7nRHr9
「あ。動かないでくださいね。ご飯粒が・・・・・・」
「うわっ!」

 裕子がご飯粒をとろうと体をくっつけてきたので、修二はまた慌てました。
 豊満なバストの谷間に左腕が埋まってしまったからです。
 ご飯粒を取ろうとして動くたびに大きな胸が形を変えます。

「ああん、動かないで。取れないですよ」
「いや、どこについてるか言ってくれたら自分で・・・・・・」
「いあ・・・・・・ん。むぁ・・・・・・そんなに抵抗しないで。私・・・・・・」
「へ。あ! すいません!」
「あ、取れました」

 今度はご飯粒を指に取り、修二の目を色っぽく見つめながら口に含みます。
 ぺろり、と。
 
 裕子はここまでの一連の行動で修二を完全に手玉に取ってしまいました。
 しかし続けて攻勢にでることなく・・・・・・

「それじゃあ隣、ありがとうございました。
 またお店に来てくださいね! バイバイ修二さん!」
「え・・・・・・あ、はい。さようなら・・・・・・」

 修二の隣から立ち上がり、その場を立ち去りました。
 修二はおあずけを食らった犬のように物足りない顔をしています。

「・・・・・・なんだったんだあの人・・・・・・」

 ちょっと興奮してしまった自分を恥ずかしく思いながら、修二は弁当の残りを
食べ始めました。



60 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:13:44 ID:dy7nRHr9
 その夜、修二が電車に乗って家に帰り着く頃には十時を回っていました。
 部屋に入った修二はすぐにシャワーを浴びにいきました。

「・・・・・・ふう」

 シャワーを浴びながら修二は今日あったことを思い出していました。

(今日はいつもより長く残っちゃったけど・・・・・・いいことがあったな。
 裕子さん・・・・・・結構美人で、なにより胸が・・・・・・)

 左腕に胸を押し付けられたときの感覚を思い出すと気分が昂ぶってきました。
 
 そのとき。

 がたん

(―――っ!)

 部屋の方から音がしました。
 まさか泥棒?鍵はかけたはず。いやしかし開けようと思えば本職の強盗であれば
簡単に開けられる。忍び込まれたかもしれない。嫌な想像が頭をよぎります。
 シャワーを止めて、入り口から見えない場所に隠れながら耳を澄まします。
 
 ですが、一向に音が聞こえてきません。それどころか人の気配すらも感じられ
ません。
 静かに浴室から出て、バスタオルを体に巻いたまま部屋を覗きますが、何も
変わった様子はありませんでした。

「なんだ。音がしただけか。びっくりさせないでくれよ」

 そう呟いてから体を拭き、寝巻きに着替えると歯磨きをせずにベッドに
倒れ込みました。

「今日はいつもと違うことばっかり起こったなあ・・・・・・」

 そしてそのまま胸の大きなコンビニ店員の女性のことを最後に思い出してから
眠りにつきました。



61 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:14:33 ID:dy7nRHr9
 深夜。修二はなんとはなしに目を覚ましました。
 枕元の時計を見ると夜の二時。まだ眠り始めて三時間しか経っていません。
 もう一度目を閉じました。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ごそ ごそ する する

(・・・・・・ん?)

 ベッドの下からかすかに音がしました。衣擦れのような音が。
 そういえば以前『ベッドの下に殺人鬼が潜む』という都市伝説を聞いたことが
ありました。もしや・・・・・・と思って耳を澄ましますが、しばらく待っても何の音も
聞こえてきません。
 自分が動いたときに布団が衣擦れの音をさせたのだろう。都市伝説なんか
所詮作り話だよ。そう納得して眠りにつきました。

――

『修二さん。私、私ね・・・・・・今日、一目あなたを見たときに恋に落ちちゃった
 みたいなの。こんなの初めて』

 修二は巨乳の女店員が出てくる夢を見ていました。

『信じてもらえないかもしれないけどね・・・・・・私、今まで男の人と付き合ったこと、
 一度も無いの。
 だから、ちょっとだけ不器用なアプローチしちゃうかもしれないけど許してね』

 そう言うと女の子は修二の唇に顔を寄せてきました。
 その唇と修二の唇が近づいていきます。

『修二さん・・・・・・』

――

「ちょ、ちょっと! 裕子さん待って!」

 修二は叫びながら飛び起きました。

 ・・・・・・・・・・・・。
 自分が見た夢の内容を思い出して、頭を抱えています。まさか昨日初めて会った
女性の夢を見てしまうとは。しかもいきなりキスを迫られるなんて・・・・・・。

「大学卒業してから彼女なんかいないけど、いくらなんでもこれはなあ。
 ・・・・・・・・・・・・はあ。仕事行くか」

 すでに時刻は朝六時。
 修二は気分を入れ替えて学校へ向かうことにしました。



62 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:15:29 ID:dy7nRHr9
 その日の満員電車の中にて。
 修二は勤務先の学校へ行くために今日もいつも通りの電車に乗り込んでいました。
 去年の春から毎日のように乗り込んでいるので、すっかり我慢も覚えました。
 
 そう。今のように女性と間違われて痴漢されてしまっても、我慢できるのです。

 すり すり すり

「(うええ)・・・・・・」

 痴漢がお尻を触っています。両手で太ももと臀部を揉んだり、さすったり。時々
痴漢が下半身を擦りつけて来たりします。
 やめてくれよ・・・・・・俺は男なんだから。そう思っても痴漢は察してはくれません。

 今度は前のほうに手が回ってきました。股間を探るように執拗に触ってきます。
今まで触っていた相手が男だということを確認しているようです。今までに女性と
間違われたときはこの時点で終わっていました。

 ジィィィィィ

(は!?)

 しかし、今回の相手は違いました。なんとスラックスのチャックを下ろしたのです。
そのまま下着の上からペニスを撫でてきます。
 この時点で修二にも限界が来ました。ペニスを撫でている痴漢の手を掴み、その手を
見て――最初に浮かんだのは疑問でした。その手は男にしてはやけに細かったのです。

(女の人の手?)

 ということは痴漢ではなくて――痴女?そういえばさっきから背中に柔らかい二つの
感触がある。ああ、至福・・・・・・いや、それどころじゃない!
 修二は混乱しています。男であれば駅に着いたときに駅員に痴漢として突き出せば
いいのですが、今回の相手は女性です。それにそのまま握っていれば自分が痴漢扱い
されかねません。
 修二がその手を離したとき。

 ぷしゅーーーーーーー

 電車が駅に到着し、ドアが開きました。そしてそのまま人の流れに押されてホームに
投げ出されました。
 辺りを見回してもすでに誰が同じ電車に乗っていたのか分からないほどごったがえして
いたので、修二は痴女探しを諦めました。

 ふと気がつくと、数人の女子高生が自分の方を見てくすくすと笑っています。なにやら
下半身に目がいっているような――

(いいっ!?)

 さっき痴女にチャックを下ろされていたことを忘れていました。修二は慌ててチャック
を上げて、下を向きながら恥ずかしそうに早足で歩き出しました。



63 :越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/02/14(水) 00:16:14 ID:dy7nRHr9
 時刻は変わって、夜八時。
 アルバイトを終えた裕子はコンビニの外に設置してあるベンチに座って修二を待って
いました。今日は修二がお店に来なかったので、昨日より遅い時間にやってくると思い
待ち伏せているのです。

(早く来ないかな修二さん。たくさん話したいことがあるんだから)
 
 それに今日は渡したいものがありました。バレンタインデーのチョコレートです。
なんと彼女は会って二日目で修二に愛の告白をしようと考えていたのです。

「(もしOKをもらえたら家に連れ込んで・・・・・・)うふふふふふふふふ」

 何を想像しているのかはわかりませんが、不埒な想像をしているのは間違いありません。
身悶えしながら笑い声をあげているということはきっとそういうことなのでしょう。

 
 しかし10分、30分待っても修二は現れません。これはもしかしたら今日は会えないかも。
そう裕子が考えたとき――口論しているような声が聞こえてきました。

 その声が聞こえてくる場所へ向かうと、修二と数人の男が向かい合っていました。しかも
男の一人は修二の胸倉を掴んでいます。

(あのアホザルども! よくも修二さんに!)

 頭に血が上ってそのまま乱入しようと思いましたが、思い留まりました。
 相手は男三人。彼女一人が加勢したところで状況は変わりません。しかし。

(このまま見過ごすなんてできないわ! 待ってて修二さん! すぐ戻るから!)
 
 裕子はひとまずその場に背を向けて立ち去りました。