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102 :名無しさん@ピンキー [sage] :2007/02/14(水) 23:27:14 ID:WcOgEC9V
玄関の扉が開閉する音がして、針先のように研ぎ澄まされていたわたしの集中は、やや散ることになってしまった。
といっても、それで都合が悪いわけじゃないんだけれども。
ちょうど味の調整を終えたところだったし、何より、集中したままで兄さんの帰宅に気づかないものなら、妹の沽券に関わるというものだ。
わたしはコンロの火を止めて、玄関まで小走りに移動した。
「お帰りなさい、にいさん」
常々心がけているように、わたしの用意できる最高の笑顔で、世界で一番大切な人をお出迎えする。
もっとも、兄さんの前なら、そう意識するまでもなく自然と笑顔になれるけれど。
「お、いつもより早いんだな」
兄さんもまた、笑顔で応じてくれる。いつものことだけれど、やっぱりうれしい。
ふわりと温かくなるわたしの心はしかし、洗濯物に落ちない染みを発見したときに似た不快さに襲われた。
いつもより少し浮かれた、兄さんの態度。
言うまでも無く、兄さんが浮かれること自体が不愉快なわけじゃない。兄さんがうれしいときは、大概わたしもうれしい。
だけどやはり、何にでも例外はあるもので。
兄さんの明るい態度が、何やらいびつに膨れたカバンの中身にあるとなれば、わたしとしては嬉しがってなんていられない。
というか――切れて、しまいそうだ。

誰の許可を得て、兄さんにチョコレートなんてあげたんだ、淫売どもめ。

例年通りなら、兄さんの消化器官を汚染するこの汚物は、わたしが責任持って闇に葬ったのだけれど、今日は早退したから……。
――ああ、忌々しい。
靴を脱いでいる兄さんの背中を眺めながら、わたしは考える。
いくら今日をもってわたしの永久的勝利が確定するといっても、あのメス豚たちの目論見をかなえてやるのは些か以上に不愉快だ。
ごめんなさい兄さん、ちょっと意地悪をさせてもらいます。
「ねえ兄さん、今日ってバレンタインデイだよね?」
「んー? ああ、そうだな。ふふふ、そうだともさ!」
兄さんの声は弾んでいる。その原因を思うと、わたしの中の深淵から何かが這いずり出てきそうになるけれど、ここは我慢。
「バレンタインデイの豆知識、教えてあげようか」
靴を脱いで、廊下に上がった兄さんの後ろについていきながら、わたしは言う。
軽く首をかしげて、兄さんは、
「豆知識? ふうん、もう節分は終わってるけどな」と言った。
いや――それ上手くないよ、兄さん。
およそ天から必要なものは全て授けられている兄さんだけれど、ギャグセンスはもらえなかったらしい。
「そう豆知識。ジャニーズ事務所にはね、それこそトラック何台って単位のチョコが届くんだけど、誰も食べたりはしないんだって。
……どうしてだと思う?」
リビングに入った兄さんは、いつもより丁寧にカバンをソファに置いて、照明を仰いで慨嘆する。
「もったいねー! 愛情こもったものを無碍にするとは! そりゃ、一人頭でも糖尿病になっちまうくらいの量あるんだろうけどさあ」
どすっ、とソファに腰を下ろし、さも嘆かわしいといった顔でこちらに一言。
「やっぱ、あれかな。ファンの作ったものなんざ食えませんな! フハハ下賎な端女どもめ! みたいなノリなのかね」
わたしは苦笑する。顔も見たことの無い女の子たちの愛情の行き場なんて、心配しなくたっていいのに。そういうところ好きだけれど。
「さあ――そこまで酷いことを思ってるかはわからないよ。では正解を発表するね」


103 :名無しさん@ピンキー [sage] :2007/02/14(水) 23:28:22 ID:WcOgEC9V
台所に戻りつつ、歌うように言う。
「色々入ってるケースが多いから、なんだってさ」
色々……? と、よく分かってない様子の兄さんの声を背に受けながら、わたしは正答を述べる。
「髪の毛、爪はまだ序の口。涎に血液、果ては……えっちな液体までが、チョコに混ぜられてるんだってさ」
自分で振ったネタでアレだけれど、最後はちょっと恥ずかしかった。不覚。
そんな羞恥心はさておき、ここで芸能界という異次元の話題を現実世界に繋げる台詞をいわなくちゃ。
でないと、それこそわたしのかいた恥はただのかきっ放しになってしまう。
「――好きって感情は往々にして自己満足に陥るってこと。きっとわたし達の学校でも、そういうことは確実にあるよ。
ところで兄さん。チョコもらえた?」
わたしはくるりと振り向いて笑顔を向けた。
兄さんは自分のカバンに目をやっている。狙い通り。
「ああ、もらえたよ……3つ。でもまさか、これになんてことは無いだろ」
ここは肯うところだろう。わたしはそう判断した。
「もちろんだよ。兄さんに贈る人だもん、常識くらいあるよ――」

――食べてみないことには、分からないけどね。

そう付け加えることは、忘れなかったけど。
「だよな。心配なんてするまでもないわな……」
わたしは、この急ごしらえの稚拙な策が完璧に奏功したことを悟った。
兄さんの声からは、台詞とは裏腹に、さっきまでの高揚が見事に消えうせていたからだ。
「ごめんね、兄さん」
台所に向き直り、湯煎したチョコを型に流し込みながら、わたしは小声で呟く。
いくらメス豚どもの作った、飼料に等しいチョコでも、やさしい兄さんにとっては嬉しい贈り物だったのだろう。
受け取った高揚を冷ましてしまったのはちょっと心が痛まないでもない。
けれど、全然問題ないんだよ、兄さん。
じきに、どんなものも比較にならない幸せが兄さんのもとに到来するんだから。
だってそうじゃないかな。
兄さんは今晩、わたしを抱くんだから。
わたしのまだ誰にも手をつけられていないカラダを、好きなようにできるんだから。
常識者の兄さんでも我慢できなくなるようなキツい媚薬をたっぷり入れられたチョコだもん、わたしを襲ってくれるよね?
効果はわたしで実証済み。怪しげな通販で買ったものだから不安だったけど、効果はてきめんだった。
……ちょっと、てきめん過ぎたかな。
一時間で20回もイッちゃったの初めてだから、だいぶ焦ったよ。
でも、これくらい強烈なのじゃないと、理性の壁は壊せないから結果オーライ。
チョコの味が壊れないように、こっそり早退してからずっと味の調整を続けてきたけど、ようやくさっき完了したし。
まあ、何度も味見したものだから、わたしのあそこはすっかりぐちゃぐちゃになっちゃったけど……。
「…………」
ちら、と振り返って、兄さんがこちらに意識を向けていないのを確認してから、スカート越しにあそこを触ってみる。
指先が二枚の布越しに、わたしの硬くしこった肉芽にちょこんと触れた。
「――ひっ、――――っ――――――――――――――♪」
がくがくがくっ、と膝が笑った。
「ちょっ、と……出ちゃったじゃないの……っ」
おしっこじゃなくて潮でよかった。というか効果強力すぎ。そしてわたしは浅慮すぎ。
よく考えれば、夜になれば兄さんからたっぷりしてもらうのがほぼ確定してるのだから、ここで浅ましく快楽を貪る意味はない。
たくさんほじってもらえるんだ。奥までぐりぐりしてもらえるんだ。
その想像でまたわたしは達しかかったけど、今度は自制して、チョコを冷蔵庫にしまう。
固まるのを待って、ラッピングして、それで完成だ。
髪や爪をいれるような自己満足ののものとは一味違う、わたしのチョコ。
共利共栄の一品だ。
ひとたび食べれば、わたしも――兄さんも大満足である。


104 :名無しさん@ピンキー [sage] :2007/02/14(水) 23:29:00 ID:WcOgEC9V
リビングに戻り、わたしは兄さんに問いかけた。
「あとでわたし特製のチョコレートを差し上げます。楽しみ?」
兄さんはだいぶげんなりした顔になる。
「お前ね。さっき自分がした話、覚えてるか?」
「あはははは、タイミング悪かったかな。でも大丈夫。いかがわしいものなんて、何にも入ってないからね!
原材料は、砂糖、カカオマス、ココアバター、バニラ。まさにチョコレートそのものだよ」
あとは、隠し味。
「隠し味ぃ?」
訝しげな顔。ちょっとさっきの薬が効きすぎたかな。まあ、食べれば気にならなくなるよ。
「そう。たぁっぷりの、愛情!」

そして、たぁっぷりの、媚薬。