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417 :ヒマ潰しネタ [sage] :2008/08/03(日) 01:00:38 ID:52fdLHrs
 祐美の三度目の監禁から奇跡の大脱出を果たし、三日ぶりの我が家に辿り着いた。
 築15年の我が家の玄関が愛しく感じる。将来は玄関職人になろうと思ったのは祐美と付き合ってからだ。
 鍵を開け、薬で重く感じる身体を滑り込ませるようにして家の中に入る。
 後ろ手でドアを閉め、ふと足元を見ると、玄関には三足の見知らぬ女性用の靴が並んでいる。
 おやおや珍しい。滅多に友達を連れてこない栞が三人も連れてくるなんて。
 これは兄として一言挨拶でもしに行かなければと玄関に座って靴を脱いでいると、階段をバタバタと下りてくる
足音が聞こえてきた。
 おやおや、愛しい兄が心配でお出迎えですか。これは兄として喜ばしいですなあと振り返ると、来月16歳
になる栞(しおり)が慌てた顔でやってきた。

「おう栞、ただいま。珍しいな、栞が友達を連れてく」

「お、お兄ぃ! どうしたの? 祐美(ゆみ)さんに監き……デートしてたんじゃなかったの?」

 ……おかしいなあ。どうして監禁されてたって知ってるような口ぶりなんだ?
 確かに栞には祐美とデートに行くって言ったけどさ。そういえば、今回は珍しく栞の方から
祐美とのデートを勧めてきたな。
『映画のチケットが偶然二枚あるから祐美さんと行ってきたら?』
 そんな裏がありそうな誘いを断る理由もなく二人で行ってきたのだが、普段なら栞の方が
自分と一緒に行こうと言ってくるのに。

「ん? ああ、祐美に殺されかけてさ、命からがら逃げ帰ってきたわけだよ」

 いや~まいったまいった。まさかあそこで鉈を持ち出すとは思わなかった。あれほど死を覚悟したのは
初めてだった。今度からは俺も何か用意していかなければな。

「チッ! 祐美さんも役立たずね……」

 んんん? どういうことだ? どうして不満そうな顔をしているんだ?
 もしかして祐美は俺にずっと監禁されていてほしかったのか? ゆっくりしていってね!! なのか?

「……まあいいや。お兄ぃ、今日はあたしの友達が来てるから部屋から出ないでね」

「まあいいやって……兄として挨拶の一つくらいしておかないと失礼なんじゃないか?」

「いいから! お兄ぃは部屋で静かにしていてよ。あの子たちに見られたら――」

 焦った表情で捲し立てるように言う栞。これは珍しい。しかし一体何をそんなに慌てているのだろうか?

「しかしだな、俺もシャワーを浴びてスッキリしたいし……」

「栞ちゃん、もしかしてその人が栞ちゃんのお兄さんなの?」



418 :ヒマ潰しネタ [sage] :2008/08/03(日) 01:02:18 ID:52fdLHrs
 声が聞こえた階段の方を見上げると、二人の少女が興味深そうにこちらを見ている。

「ああっ! 部屋から出てこないでって言っていたのに!」

 栞がしまった! とでも言いそうな表情で二人の少女に向かって怒鳴る。

「え~、だって栞が必死になって隠すからさ~。なんか私達に見られないようにしてるっぽいから
気になるでしょ?」

「へぇ~、思ったよりもカッコイイよね~。栞ちゃんと全然似てないけど」

 少女達が動物園のパンダを見るかのようにじろじろと俺を見る。これはなかなかに気恥ずかしい。 

「はじめまして、栞の兄です。いつも栞が世話になってありがとうね」

 ドブ川が一瞬できれいな川に生まれ変わりそうなスマイルで二人に挨拶をする。
 せめて栞の兄らしい姿だけは見せておかなければならない。幻滅させて「栞のお兄さんってダサいよね」
なんて言われたりしてイジメに発展するかもしれない。それだけはなんとしても防がねばならない。

「はじめまして~、わたしは栞のクラスメイトの藤川彩音(ふじかわあやね)です~。彩音って呼んで下さいね」

「はじめまして、高崎理緒(たかさきりお)です。 理緒って呼んでください」

 まばゆい笑顔で挨拶をしてくる二人の少女。礼儀正しいし可愛いし、さすが自慢の妹の友人達だ。
 彩音ちゃんは試写会の挨拶で不機嫌そうにしていたアイドルに似ているし、理緒ちゃんは
弟が犯罪者になったアイドルに似ている。かなり可愛いではないか。
 どうして栞は俺を会わせたくない様な口ぶりだったのだろうか?

「ああ、彩音ちゃんに理緒ちゃんね。よろしく。これからも栞と仲良くしてあげてね」

 にっこりと笑って挨拶を返し、栞への配慮も忘れない。ゆっくりしていってね!!

「そういえば靴は三足だったけど、もう一人は栞の部屋にいるのか? その子にも挨拶を……」

「ほらほら、二人とも部屋に戻って。兄さんも疲れてるんでしょ? お風呂なら私が準備しておくから
兄さんは部屋に戻ってて」

 に、兄さん? 呼び方がいつもと違うぞ? なんか心なしかいつもと態度が違うぞ?
 これはアレか? 人前では仮面を被っているわけか? ガラスの仮面か? 栞…恐ろしい子……ッ!!
 彩音ちゃんと理緒ちゃんの背中を押し、階段を上って部屋に戻っていく栞の背中を眺めながら、
どうしたもんかと考える。いや、別に普通に風呂に入ってさっさと寝たいだけなんだけど。




419 :ヒマ潰しネタ [sage] :2008/08/03(日) 01:03:35 ID:52fdLHrs
 シャワーを浴びるだけで済まそうと思っていたが、予想外にも栞が風呂を入れてくれたのでゆっくりと
体の疲れを汗と一緒に流すことができた。薬もどうやら抜けてくれたらしい。
 風呂から上がり、冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り出してパックごと一気飲みをする。やはりビンでないと
風呂上りの一杯としてはもの足りない。たまに勢い余って鼻の穴に入るのが困るのだ。
 来客が居ることもあって、ジーンズとシャツを着ている。ジャージの方が落ち着くのだが、
部屋に居るとき以外は我慢しよう。格好悪い兄を栞の友人達に見せて幻滅させるわけにはいかない。
 もし俺が原因で栞がイジメられることになったら申し訳がない。栞のことだ、イジメを苦に自殺は
しないだろう。むしろ、教室内で釘バットを振り回し、ガソリンを撒いて火をつけかねない。見た目とは違って
意外とデンジャーな性格をしているのだ。申し訳ないのはイジメの加害者達に対してだ。

 ふと、栞に監禁された時のことを思い出す。
 あの時は大変だった。祐美よりも丁寧に縛られて逃げることができず、バットで脚を折られそうになるは
変な薬を打たれるは。祐美が助けに来てくれなかったらどうなっていたことやら。まあ、祐美も俺を襲いに
家に侵入してきただけなんだが。その後のことはあまり思い出したくない。とにかく大変だったのだ。

 あの子達は栞のそんな危うい一面なんか知る由もないだろう。『YanYam』なんて雑誌で新作の斧を
うっとりと眺めたり、今月の呪術占いで一喜一憂しているなんて知っているはずがない。
 しかし、どうやら今回の流れがなんとなくだが読めてきた。
 多分だが、栞は友人達が家に来ることを断りきれなかったのだろう。
 そして、どうしてかは知らないが(うすうすは気づいているが)栞は俺を友人達に合わせたくないのだ。
 そこで、俺に映画のチケットを渡して祐美とデートに行かせ、しばらく帰って来れないように仕向けたのだ。
 思い出すと、祐美との会話の節々に変なところがあった。なにやら嬉しそうに「私、これからは栞ちゃんの
良い義姉になれるように努力するわ」とか言っていた。
 今になって思うと、なんとなくだが二人の会話が想像できる。

 小さく溜息を吐いて、これからのことを考える。
 とりあえずは部屋に戻って寝ていれば問題はないだろう。栞もそれを望んでいるんだし、俺も監禁から
逃げるためあれこれとしていたから疲れているのだ。
 自室に戻ろうと階段を上がりかけ、その前にトイレに向かう。我が家は二階にトイレがないから困る。
 そそくさと済ませ、さっさと部屋に戻ろうとトイレのドアを開けると―― 

 便座に頭を挟まれて、便器に頭を突っ込んでいる少女がいた。

 ドアを閉める。
 もう一度開ける。
 やはり便器に頭を突っ込んでいる少女が一名。

 ………う~ん。とりあえず助けておこう。このままだと小便ができないしな。
 便座を開けて頭を持ち上げて顔を見る。鼻血を垂らして白目を剥いている彩音ちゃんだった。 
 どうして彩音ちゃんがトイレに頭から突っ込んで白目を剥いているのだろうか?
 もしかして我が家のトイレの前世はミミックだったのか? 来客の頭を食べるのが好きなのか?
 様々な疑問が脳裏をよぎるが、とりあえずはトイレから出て廊下に寝かせておこう。事件解決は
トイレの後でも間に合うだろう。ゆっくり寝ていてね!!



420 :ヒマ潰しネタ [sage] :2008/08/03(日) 01:05:27 ID:52fdLHrs
 小便を済ませ、彩音ちゃんを放置したまま階段を上る。栞に報告しておく必要があるし、担いで階段を
上るのは危険だからだ。あとちょっと汚いし。
 階段を上ると、妙な物が目に入る。栞の部屋の前で誰かが倒れているのだ。
 そろりと近づいて見てみると、何故か大鍋に頭を突っ込んでうつ伏せに転がっている少女が一名。
 服装を見ると、先ほど挨拶をした理緒ちゃんであることが分かる。手が後ろに回されて縛られている。
 スカートがめくれ上がって、ずり下げられたパンツ。尻の穴にきゅうりが深々と刺さっている。

 ………SM?

 最近の高校生は女の子同士でSMをするのだろうか? それにしてもシチュエーションが分からない。
 そもそも自分の部屋でするのならともかく、廊下に放置するとはどういうことだろうか。放置プレイ?
 いったい何が起きているというのだ? どうして肛門にきゅうりなのだ? 痔になるぞ。
 どうしたものか……。痛々しい姿で転がっている理緒ちゃん(故)を眺めながら考える。
 とりあえずきゅうりは抜いてやるべきなのだろうか。でも汚いからやだな。
 このまま放っておくと風邪を引くのではなかろうか。布団でも掛けておこうか。
 しかしどうして鍋を頭に被っているのだろうか。『私を召し上がれ』って意味か?
 唸りながら首を捻って考えていると、栞の部屋のドアが開いた。

「あっ、もうお風呂から上がってきちゃったの?」
 
 俺を見て少し驚いた表情の栞。運動後の後のように少し肩で息をしている。

「ああ、長風呂だと寝ちゃいそうだったからな。それよりも」

 彩音ちゃんと理緒ちゃんが大変なんだが、と言いかけて言葉がつまる。

「栞よ、その手に持っているのはなんなんだね?」

 右手に持っているものを見て、分かっているけれど、とりあえず質問をする。

「ああ、これ? さっき挨拶しなかった友だ……メス豚よ」

 右手には、靴下を履いた右足が抱えられている。まさか女の子を足の裏から紹介されるとは思わなかった。
 そもそもどうして友達の足を抱えているのだろうか。なんで友達と言いかけてメス豚と言いかえたのだろう。

「ホント、これだから嫌だったのよ。お兄ぃを見るとメス豚が寄ってくるから。始末するの大変なのよ」

 げんなりとした顔で栞が溜息を吐く。友達にメス豚はないだろう。

「……彩音ちゃんと理緒ちゃんは栞がやったのか?」

「ええ、だってしょうがないじゃない。「お兄ぃを紹介して」だとか「犯してぇ~」とか言うのよ。
 私のお兄ぃってことを知らないのは仕方ないけど、屠殺されても文句は言えない暴言よね」

 そう言って、手に持っていた足をずるりと廊下に引きずり出す。
 目の前に現れたのは、やはり白目を剥いて口から泡を出している見知らぬ少女。額には「豚」と書かれている。

「この豚なんて最悪よ。お兄ぃの部屋に勝手に入ってたのよ。おまけにお兄ぃのアルバムを勝手に持ち出して
私しか知らないお兄ぃの昔の写真を……」

 ブルブルと栞の肩が震え出す。両手は強く握り締められ、表情は般若の如き形相である。スカウターで
今の栞の戦闘力を測ったら多分壊れるんだろうな。多分俺の戦闘力は5くらいだろう。ゴミである。
 こめかみに青筋を立てている栞が、右足を上げる。足元には見知らぬ白目の少女ことカニ子ちゃん(命名)
の顔が転がっている。



421 :ヒマ潰しネタ [sage] :2008/08/03(日) 01:07:18 ID:52fdLHrs
 いかん。これはいかんですよ。踏み潰す気マンマンやないですか!?
 慌てて栞を止めに入る。我が家で殺人事件なんて起こされたらたまったもんじゃありませんよ。

「待て! 落ち着け栞!」

「どいてお兄ぃ! そいつ殺せない!!」

 栞……恐ろしい子ッ!!
 普段の愛らしい栞からは想像もつかない。鬼の所業を必死になって止め、栞を部屋に押し込む。
 ベッドに押し倒し、近くにあった荒縄でがんじがらめに縛り上げる。どうして荒縄があるのだろうか。

「ムキーッ! ムキャーッ! ムッキョ、あんっ! そこはもっときつく……もしかしてこんな状況で?」

 ジタバタと暴れながら奇声を叫んでいた栞がとたんにおとなしくなる。色っぽい声をだすな。
 何を期待しているのかは知らないが俺は猛獣を捕獲しているだけだ。妹を縛る趣味はない。
 ぐるぐると全身を荒縄で簀巻きにして、ついでにベッドに縛る。これなら抜け出すこともできないだろう。

「ふぅ……。これでもう大丈夫だろう」

「お兄ぃ? もしかしてこれって愛情表現? 私を縛って監禁プレイ?」

 頬を赤らめるな。嬉しそうな顔をするな。期待した目で見るな。

「ああ、そうだ。俺も最近縛られ慣れてきてな。こういうプレイは嫌か?」

「ううん。わたし、お兄ぃがどんな変態プレイをしてきても受け入れるよ。だって、わたしの身体は
お兄ぃのものだから……」

 栞が目を潤ませて恥ずかしそうに言う。言っておくが、俺は変態ではない。少し変態なだけだ。

「そうか、栞は本当に良い子だな。よし、それじゃちょっといいかな?」

 そう言って、栞に目隠しをして、口の中に近くにあったハンカチを押し込む。
 ヘッドホンを耳に掛けて音楽を大きめにして流す。これで栞は何もすることは出来なくなった。
 仕方がなかったんだ。だってこうでもしないと殺しかねなかったんだから。誰が好き好んで愛しい
妹を縛ることなんてしようか。誰だって妹を殺人者にするわけにはいかないだろう。
 そう、これは愛ゆえの行動なのだ。けっしていやらしい気持ちなんて微塵もないのだ。人を縛るときの
手に残る荒縄の感覚が良いとか、そんなことは断じてないのだ。

 目の前には未だに頬を赤らめてむーむーと唸っている妹が一名。
 部屋の入り口には気絶した少女が二名。一階のトイレの前に一名。ゆっくりしていってね!!
 倒れている少女達を踏まないようにして部屋から出て、自室に入る。三日ぶりの我が聖域は主人の帰り
を待っていたかのように温かく迎え入れてくれた。
 ベッドに倒れこみ、大きく息を吐く。急速に全身から疲れが出てくる。それと同時に、眠気がやってきて
目蓋が重くなる。

 栞の友人達はどうしようか。起きたらそのまま帰ってくれていることを願いたい。
 祐美はどうしようか。今回も三日間くらい放っておこうか。食事くらいは食べさせに行くべきだな。
 栞はどうしよう。さすがに妹をこのまま放っておくのは忍びない。明後日くらいには解いてやろう。
 うつらうつらと重たくなった思考で考える。
 良かった。今回は縛られることも監禁される心配もなく眠ることができる。
 久しぶりの安心感を味わい、夢の世界に旅立つ。今日はぐっすりと眠れそうだ。

 夢の中、顔まんじゅうになった栞と祐美が、なにやら叫んでいた。