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414 :I had love.Ⅰ [sage] :2007/02/20(火) 09:32:34 ID:cwHHHjY1
≪I had love.≫

■■故に、すべてが終わる。
■故に、全手が墜ちる。


いつの頃からか、ある特定の『誰か』ではなく、全ての異性が同等の存在だと思っていた。
全ての異性が等価。
誰も彼もが等価。
そして、彼は醜く儚いヒトの業は平等に愛を持つことで赦されると信じていた。



415 :I had love.Ⅰ [sage] :2007/02/20(火) 09:33:20 ID:cwHHHjY1
「あー圭次、ご飯食べにいこー」
「悪い、今日は先約があるからパスだな」
夕食の誘いをかけに来たのは伊能〈いのう〉海七〈うみな〉。
俺よりふたつ年上 なのだが留年一回と浪人一年を経験して俺と同じ大学・学年に在籍している人物だ。
何故か現役で入った俺より遥かに成績はいいんだが、性格と姿形が…まあ、なんというか、<クールな天然のスレンダー>、みたいな感じの女性だ。
意味不明だって? 当たり前だ、二十年近く隣人やってても、理解なんかできないんだから…。ああ、やっぱ説明するだけ無駄だな。
「えーなんでー? バイト代入ったら食事奢ってくれるんじゃなかったっけー?」
「奢る約束をしたのはお前だし、その日付は明後日だろうが」
「あれーそうだっけ?」
「そうなんだ! 毎日俺に弁当作らせといてまだたかる気かよ…」
「そこは突いちゃイヤー、だよ。お姉さん困っちゃう」
「誰がお姉さんだ、誰が」
下ネタはヤメテクダサイ、周囲の視線が痛いから。
「むー。圭次よりもふたつも年上なんだぞ?」
と無表情でいじけた声をだす海七。
「だからな、その喋り方だと色々な誤解といらぬ羨望と、筋違いな要望が俺に集中するんだよ、やめてくれ。まだ、アッチの方がましだ」

「そうか、なら今日はここまでにしておこう」
いきなり低く落ち着いた声をだす海七。そうなのだ、コイツは実はオト…
「失礼だな」
「な、なんで分か……はい、スミマセン貴女様は紛れもなく女性です」
「よろしい」
…ふぅ。流石幼馴染み、何考えてるかまでバレるとはな。
「で、誰との予定だ? 私を刺し置いて誰が圭次とのディナーを楽しむのだろうな?」
「さ、刺しって…アクセントわざと変えるなよ。大体、俺はお前と付き合ってるわけでもないはずだが?」
「どうでもいいだろうそんなことは…。で?相手は誰、いや誰が相手なんだ?」
…どうでもいいって…え?…どっちも? ん~、やっぱ何を考えているのか全然さっぱり分からない。
「……分からない」
「なにがだ」
「お前の頭のな……あ、いや待ち合わせの相手だよ、今日匿名の手紙で呼び出された」
「ふむ、ではいつもの場所で待つ。話が終わるなり事が済むなりしたあとで来い」
「分かったよ、ならまた後でな」

海七と別れて、今朝方家のポストに投函されていた手紙を取り出す。
『はじめまして、いえ、会った事はありますが、恐らく貴方は私のことも覚えて
いないでしょうから。
実はひとつかふたつ申し上げたいことがありまして、できれば今日の午後、いつ
でもよろしいのでF棟第3講堂においでください。』
「……怪しい。絶対怪しいですよコレ」
と呟きながら歩き続ける俺がもっと怪しいですね、はい。



416 :I had love.Ⅰ [sage] :2007/02/20(火) 09:37:18 ID:cwHHHjY1
「貴方に愛されるのは実に簡単なことです」
「いや、愛は持つモノで、するモノじゃないぜ」
とっさに無駄に意味深な受け答えしか出来ないぐらいには、俺は動揺していた。
今この場を照らす光が果たして朝日だったか夕日だったか、もしかして月光だったか、と思考が飛びかけて、
そこへ追い討ち。
「私が貴方を嫌いになればよいのです」



「と、ここがF棟だな」
指定の場所であるF棟まで歩いてきて、何となく回りを見渡す。場所は伝えていないとはいえ海七に関しては俺を尾行していてもおかしくはない。
というか、二つも年上の癖して、さん付けしたり先輩呼ばわりするとキレ始めるような人間にまともな行動は期待するだけ無駄なのかもしれないが…。
第一、あいつは俺の恋人ではないし、あいつも恋愛感情を否定しているのに、何故俺の行動を監視するんだろうな? 
この前は、バイトしてる店で知り合った友達と食事してるところへ思わせぶりに乱入してくるし、毎日俺の最後の講義が終わると出入口で待っているし…。
恋愛感情があるなら悪質なストーカーといっても差し支えないような行動を繰り返しているのだ。ヤンデレ一歩手前? 
いやまあ、あいつなりの姉代わりとしての行動なのかもしれないのだが、あの<クールな表情と天然の物言い>か、<クールな表情とクールな物言い>で毎日追いつめられるとなんとも…。
「ま、いいか」
別に俺があいつ個人とつきあうわけじゃなし、あいつが俺とつきあいたがってるわけでもなし。これから会う相手に何を言われようと俺は揺るがないさ。
世は何事もなく、夜はまた月影のみ。
なんだそりゃってか? 悪いな、俺は時々自分でもよく分からないことを呟いちまうのさ。

F棟3階中央、逃亡を拒むように丁度建物の真ん真ん中に位置する第3講堂。
軽く息を吸って、吐く。
身長の倍ぐらい有る無駄にでかい引き戸を開け、目の前に、少女といって差し支えない容姿の女性が立っていることに気づいた。
彼女は一礼すると、こちらをしっかりと見て口を開く。

「貴方に愛されるのは実に簡単なことです」
「いや、愛は持つモノで、するモノじゃないぜ」
とっさに無駄に意味深な受け答えしか出来ないぐらいには、俺は動揺していた。
今この場を照らす光が果たして朝日だったか夕日だったか、もしかして月光だったか、と思考が飛びかけて、
そこへ追い討ち。
「私が貴方を嫌いになればよいのです」