※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

32 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/02/26(月) 01:10:29 ID:Jt4vtuqM
10月12日 19時 竹宮邸 来栖凛(くるす りん)

私の体の中に無数の蟲が注入されていた。それは醜悪なる肉塊を通じて、何度も何度も私
に注がれ、その蟲どもはただ己の下種な本能に従って私の身体の「ある一部分」を目指す

その蟲どもの息吹に、かつて私はある種の歓楽を感じていた。無数の蟲どものただ一つの
欲望を叶えてやりたいとさえ願っていた。
しかし、今では私はこの私の体内で蠢く蟲に嫌悪しか抱かない。そう、私の中に注がれた
蟲はただ一匹を残して全てが息絶えたが、生き残った一匹はこうして今も私の身体の奥深
くで目覚めの時を待っているのだ。私はそのおぞましい感触に耐えられず、それを想像す
る度に込上げてくる嘔吐物を撒き散らした。
我慢出来ない程の屈辱だった。耐え難い陵辱だった。そして私の文字通りの「栄辱」の始
まりであった。
私にこの忌まわしい蟲を植え付けた秋月否命(あきつき いなめ)は、私の身体の事を知
ると、発情した雌犬の如き下卑た眼で私の蟲が宿った身体を舐め回し、物狂いのように甲
高く意味の無い声で唾を吐き散らした。もっとも、その時の私も恐らく否命と同様か、そ
れ以下の醜い喜悦の表情を浮かべていただろう。
蟲の轟きは日増しに強くなる。恐らく今日がその日なのだろう。
私の体の中で唯一生き残った蟲がこの世界に顕現する日だ。この日のために蟲は、私の五
臓六腑を飽く事無く、果てる事無く、貪り喰らい、そのことごとくを自身の血肉としてい
た。全ては今日、私の身体から這い出るためだけに。
その兆候は既に表れていた。
最初の兆候は私が部屋で物思いに耽っている時であった。その蟲がタイナイを駆け巡る痛
みに私は悲鳴を上げそうになった。悲鳴とは、自身の周りの人に自分の状況を伝え、助け
を求めるための信号とされているが、この事実は他に知られてはいけない。自分の状況を
他人に知られてはならないのだ。私の現在の状況が知られたら、すぐさま私は病院に移さ
れてしまうだろう。それを拒否する事も出来るが「何故か?」と問われたら、私は言葉に
詰まってしまうだろう。
私がしようとしている事は病院にいては不可能なことなのだ。しかしながら、その理由を
人様に説明する事がどうして出来よう?
詰まる所、今から私がしようとしている事はそういうことなのだ。


33 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/02/26(月) 01:12:15 ID:Jt4vtuqM
幸いな事に、今まで私は自身の身体のことを否命を除けば誰にも知られずにいられた。そ
の否命だって、こんなに早く「その日」が来る事を予期してはいまい。
だが、竹宮源之助(たけみや げんのすけ)は何か気付いていることだろう。
ちなみに、源之助はこんな厳つい名でありながら女である。そして私の居候先の唯一の住
人にして、私の同級生だ。
彼女には感謝してもし尽くせぬものがある。
源之助は最初の兆候の日、私の腕に深い噛み傷を発見した。私は身体の奥底から湧き上が
ってくる悲鳴を殺すため、咄嗟に私の腕を口に入れたことにより出来た傷である。源之助
は何も言わず、ただ黙って私の傷の治療をしたが、何か感づいたとみて間違いはないだろ
う。
あの時は、私は気が動転していたのでそこまで配慮が回らなかったが、二回目以降はその
兆候の意味と周期を理解し、幾分かは冷静に兆候に対応することが出来た。
それでも、源之助は何か気付いているようだった。
だが、所詮はその程度だろう。源之助は私の現在の状況を今も尚、知らないままだ。故に
、源之助は今から私がしようとしていることは想像もつかないだろう。
そう、今、この時より始まるのだ。
これより否命の栄辱が幕を開けるのだ。
最後の兆候が始まった。


34 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/02/26(月) 01:13:32 ID:Jt4vtuqM
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
次の日の明朝、朝食の支度を終えた源之助は通常どおり、凛を起こしに凛の部屋を開けた

瞬間、源之助は言葉を失った。
源之助の顔を見ると凛は、
「おはよう。フフン、どう、驚いた?私だってたまには早起きするのよ」
とニッコリと微笑みかけた。勿論、源之助が驚いているのは凛が早起きしたからではない
。そして凛のこの言葉は、それを分かっているからこそであった。
凛は待っているのだ、源之助がこの部屋の惨状を問いかけるのを…。
「どうしたの?固まっちゃって。早く、学校に行かないと遅刻するわよ」
説明するのが楽しみで仕方の無い、といった風情である。あまりの事に源之助は返す言葉
を失い、無言で凛の部屋の様子を見ていた。
床に溜まる血の跡、凛の血が付着しているパジャマ、乾いた血がこびり付いている凛の拳
、そして部屋に立ち込める獣臭。そして源之助の目はある一点に…凛の足元に転がってい
る物体に注がれた。
源之助の頭よりも先に身体が反応する。
源之助は凛の足元にゴミ屑みたいに転がるものの正体を理解した時には、既に怒りで凛を
殴り飛ばしていた。
「凛!貴方が!」
少し遅れて言葉が飛び出す。源之助は分かっていた、分かっていたが、叫ばずには言られ
なかった。これはお前のやったことかと。
「そう、私がやったの」
殴られた事も意に介さず、凛が笑って言う。
「殺してやったわ。あの色キチガイの…、否命の子よ」
そうして、凛は可、可、可と笑い声を上げた。