399 :ホワイトD ◆5PfWpKIZI. [sage] :2007/03/13(火) 23:37:02 ID:HKxmrjwt

 ストーカー女、姫野亜弓から妹を通じて「チョコレート」を受け取ってから
1ヶ月と少しが過ぎた。結局俺は箱を開ける勇気などなく、朝ゴミ回収車が来るのを
見計らって直接清掃員に渡すと言う方法をとった。
 チョコレートの一件以来姫野亜弓からは接触が一切無かった。あれで満足したのだろうか。
俺に飽きたのだろうか。その2つの内のどちらかだと俺は結論づけた。
否、そう信じたかった。俺は心の隅で鳴る警鐘を無視して平和に過ごしていた。

 何も無い、何の変哲もない日常に俺がようやく慣れてきた頃そいつらは唐突に現れた。

 そう、今俺の目の前にいるこいつらが今日突然現れた。俺に無関係だと言い聞かせて
見なかったことにして立ち去ることは出来る。ごく普通のカップルが何故だか
知らないが俺のアパートの辺りを見上げて話しているだけだ。そう思って
とりあえず友達の家にでも逃げれば良い。
 だが、そんなことは出来そうに無かった。俺の中で鳴り続けた警鐘が強く反応していた。




400 :ホワイトD ◆5PfWpKIZI. [sage] :2007/03/13(火) 23:38:00 ID:HKxmrjwt

 ごく普通のカップルは多分お揃いの首輪を鎖で繋いだりしない。手を繋ぐ以上に
手錠でも繋いだりしない。少なくとも制服の少女と普通の高校生に見える服装の
少年のすることでは無い。明らかに――明らかに異質な何かだ。上手くは言えないが
外見以上に異質な。そして、危険な。更に右側に立っている少女を俺は多分知っている。
薄茶色のツインテール、薄い肩、青っぽいブレザーとスカート……
振り返ればおそらく、ひまわりのように明るく無垢な笑顔。

 鼓動が早くなる。逃げたいのに身じろぎすら出来ない。そうだ。姫野亜弓は満足などしていない。手首まで差し出すような女が
突然満足して手を引くはずが無い。俺の世界のものさしで考えればそうだ。
では彼女らの世界では――?


A;同じだろう。姫野亜弓だって同じ人間だ。
  少なくともよりあきらめが良いなんてことは無いハズだ。


B;わからない。わからないわからないわからない。姫野真弓を見ればわかる。
  彼女らは……異質なモノだ。こちらの常識が通じるハズは無い。
最終更新:2019年01月15日 10:00