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142 : ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:32:33 ID:PjZaIhi7

瞳に突き刺したナイフを、抉る様に捻り引き抜くと、又も夏月は振り上げ、
今はまだ無事な左目に、突き立てようとした。

頭は真っ白なのに、自然と身体が反応していた。
二度目の、左目に突き刺そうとしたナイフを、僕は止める事が出来た。

「だ、だめ… にい、さ… よご、よご、れ… 汚れ… ちゃ…
 ごめ、ご、ごめ、さい… ごめ、な、さい… ごめ、な、さ……」
左目からは透明な涙を零し、右目からは涙のように真っ赤な血を流し、
夏月は僕に謝り続けている。

堪らなくなって、僕は夏月を抱き締めた。

「夏月、ごめん! ごめんっ!」

もっと早くこうしていれば、よかったんだ。
後悔に苛まれながら、今はそんな場合じゃないと気付く。

このままじゃ、夏月が、失明… いや、死んでしまう!
どうすれば…!?

咄嗟に思い出したのは湖杜さんと射蔵さんで、慌てて携帯とメモを引っ張り出すと
夢中で連絡を取っていた。
助けてとか、夏月がとか、混乱した事ばかり口走っていたような気がする。
そしてその後の事は、よく覚えていない。
謝り続ける夏月を、ただ抱き締める事しか出来なかった事しか。





テレビや映画でしか見た事がないような、立派な庭園を眺めていた僕の隣に、
何時の間にか、射蔵さんが並んで立っていた。
「また眺めていたのか… いい加減飽きただろう?」
「いえ、まだまだ飽きませんよ」
静かだった。
改めてこの広い敷地では、外の雑音など全く関係がない事を思い知らされる。

「今日… これから、行って来ようかと思います」
庭園に目を向けたまま、僕はそう言った。
「そうか、決心がついたのか」
射蔵さんもまた、見飽きているであろう庭園を向いて、煙草を燻らせている。

夕陽に照らされていた庭園にも、そろそろ夜が来る。
「いい加減、けじめをつけなきゃいけないと……」
「けじめ?」

「ちゃんと別れを言うのが、けじめだと思いました。
 けじめをつけないと、先には進めないんです」


143 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:34:02 ID:PjZaIhi7

これから僕がしようとしている事を考えると、辛い。
自分で考えて出した結論だけれど、やっぱり辛い。

けど、決別しなくては、僕は、先には進めない。

「そうか。では、車を手配しよう」
「ありがとうございます」

「お花は、どうなさいますの?」
いつから聞いていたんだろう? 湖杜さんが廊下の先からこちらへ、そう言いながら
ゆったりと近付いて来た。
「花、ですか?」
「お持ちになるのが、定番ではなくて? 用意致しましょうか?」
「…いえ、花はいいです。すぐに済みますから」
湖杜さんの気遣いは嬉しかったが、元より長居をするつもりはなかった。
別れの挨拶をするだけなのだから。

「陽太さん、私もご一緒してよろしいかしら?」
「え?」
真っ直ぐこちらを見る湖杜さんの意図は解らないが、正直迷う。
最後の別れは誰にも邪魔されたくなかったから。
「大丈夫です。陽太さんの邪魔はいたしませんわ。私は、車に居りますから」
「あ、いえ、は、はぃ…」
うわ、バレバレだよ…
恥かしさに吃ってしまった僕に、にっこりと微笑む湖杜さんは気にもしていない
様子で、それがまた余計に恥かしさを煽った。

「では、正面に車を回すよう手配するから、二人とも仕度を済ませたらどうだ?」
「そうですわね。それでは陽太さん、また後ほど」
「は、はい」
射蔵さんの助け船にのって、僕は湖杜さんの後姿をほっとした気持ちで見送った。


重厚な黒塗りの車の後部座席に、湖杜さんと並んで座っていたが、終始無言だった。
その間僕は、これまでの事、これからの事をずっと考えていた。

あの時こうしていたら… すぐにその考えに至ってしまい、またすぐ打ち消す。
起きてしまった事を、今更悔やんでも遅い。
考えなくてはいけないのは、これからの事だ。

これからの事。思い出すのは、楽しかった事。

思い出に浸りながら、それと決別しようとしている事に、痛みを感じていた。

今だけ、この車の中で、最後にしよう。
三人でいた、あの輝いていた、楽しかった日々を思い出すのは。


144 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:35:11 ID:PjZaIhi7

「陽太さん、私はここでお待ちしておりますわ」
車はすでに目的地についていた。
湖杜さんに声を掛けられてその事に漸く気付いた僕は、返事に代わりに小さく頷くと、
一人車を降りた。

思った以上に、人の出入りは疎らで、閑散としている。
本家を出た頃はまだ仄かに明るかった空も闇に包まれ、すっかり夜になっていた。

歩きながら、落ち付いていくのが解る。
車内であれほど感じていた躊いや痛みは、今ではもう感じない。

そして、凪いだ気持ちのまま、目的のドアをノックした。


「…はい」
最後にその声を聞いたのは、いつだっただろう?
酷く遠く昔のように感じられ、その懐かしさに一瞬引き込まれそうになるが、
目を閉じその思いを振り切ると、白いドアを開けた。

「久しぶりだね… 怪我の具合はどう?」
いつも通りに話しかけると、滅多に見られない驚いた表情でこちらを凝視したまま
固まってしまっている。

無理もないと思う。
しばらくドア傍に立ったまま、落ちつくのを待った。

しかしすぐにその驚きの表情は安堵の顔に変わり、軽く息を吐くといつもの見慣れた
表情に戻った。
「大丈夫だ。それより、お前、今までどこにいたんだ?
 学校の連中に聞いても、お前も夏月も伊藤も、学校にはあれ以来姿を見せてないって
 言うし、お前の家や携帯に電話しても繋がらないし…
 あれから何があったんだ? 陽太」

「巻き込んで怪我までさせて、ごめん。
 東尉には感謝してもしきれないくらい、感謝してる。ありがとう」
きっちりと頭を下げ、謝罪と感謝を告げた。

「馬鹿、頭上げろって。俺が勝手に巻き込まれたんだし、お前が怪我させた訳でも
 ないだろうが。それより、何があった?」

「それは言えない。東尉は知らない方がいい」


145 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:36:40 ID:PjZaIhi7

「……それは、どういう意味だ?」
訝しげに眉を寄せた東尉の顔を、静かに見続ける。

「今日は感謝と謝罪、そして別れを言いに来たんだ」
感謝と謝罪は終った。残るは―――

「今まで、ホントにありがとう。東尉が親友でよかった。
 もう会う事もないけど、元気で」

「お前何言ってるんだ? ちゃんと説明しろ、陽太!」

「―――さよなら」
「陽太っ!!」

呼び止める東尉の言葉を振り切り、病室を出て足早に出口に向かう。
脚を怪我している東尉が、僕を追ってくるのは無理だと解ってはいたが、
一刻も早くこの場を去りたかった。


闇に溶け込む様にひっそりと駐まっている車に安堵する。
車から降りてきた湖杜さんはドアを開けたまま佇んで、僕を待っている。

一歩一歩、ゆっくりと車に近付くと、無言のまま湖杜さんをそのままに
車に乗り込もうとした。
しかしその前に、もう一度病院を振り返り、これが最後だと目に焼き付ける。

「陽太ぁっ!!」

驚いた。驚いた事に、病院の入り口には、肩で息をする東尉の姿があった。
ギプスで固められた脚を引き摺って、ここまで追いかけてくれた事に胸が痛んだが、
すぐに消えてなくなるだろう。
迷わず車に乗り込み、シートに深く座る。

「陽太っ、待て! ――っ!」
どさりと鈍い音がして、東尉が倒れ込んだんだと解ったが、敢えて何もしない。
視界の端で湖杜さんが東尉に駆け寄って、手を貸しているのが見えた。

東尉はまだ追ってこようとしていたが、それより早く湖杜さんが戻ってきて、
車は何事も無かったかのように滑り出した。


これで、お別れだ―――


バックミラーに映る東尉の姿に、最後の別れを告げ、目を閉じた。


146 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:37:44 ID:PjZaIhi7

すっかり見慣れたが見飽きない庭園を、何時の間にか居た射蔵さんと並んで眺める。
「煙草… 身体に悪いですよ?」
一体一日に何本、いや何箱吸っているのかと思うほど、いつでも射蔵さんは
煙草を吸っている。

一度ゆっくり深く吸い込むと、射蔵さんは紫煙と共に吐き出す様に呟いた。
「吸うと思考が鈍るんだ… 苛つきが少し治まるしな。
 見つからないもどかしさに、おかしくなりそうだ…
 生まれる前から運命の相手と一緒のお前が羨ましいよ」

そう言って笑った射蔵さんの言葉は、既に狂人のものだった。
けれどその狂人の言葉に、笑顔で頷いた僕もまた、狂人なのだろう。


離れの中に入ると、楽しげに話す声が聞こえる。
「――それで、兄さんの事を兄さんって呼ぶようになったんです」
「そう」
「…………。十年くらい前の本家の集まりに、湖杜さん来てましたか?」
「ええ、居ましたわ」
「お兄さんも一緒でしたよね?」
「ええ、お兄様も一緒でしたわ」
「湖杜さんが、きっかけなんですよ」
「そうですの… 夏月さん、その話はまた今度聞かせて下さいね。
 今日はこれで帰らなくてはいけませんの」
「はい、湖杜さん」
「ご機嫌よう、夏月さん」

「同じ話を何度もすいません…」
「確かに、空で言えるほど聞きましたわね」
玄関にやってきた湖杜さんにそう謝ると、笑いながら少し僕を責める。
「でも、今日で最後ですから」
「あら… そうですの」

そう、今日で最後だ。夏月に寂しい思いをさせるのは。

僕の決心を悟ったのか、湖杜さんはにこりと微笑むとそのまま離れを出ていき、
僕は玄関のドアに鍵をかけると、迷わず夏月の元に向かった。
ノックもせずに部屋に入ると、ベッドの上で上半身を起した夏月がいた。

こうして二人きりで向き合うのは、久しぶりだった。
夏月はどこかぼんやりとした表情で、僕の事を気にも留めていない。

いや、実際見えていないのだろう。

「夏月、戻っておいで」
向かい合う様ベッドに座ると、無事な左目を覗き込んで呼びかける。

夏月、夏月、寂しいよ、夏月。
夏月は、寂しくない? 僕は寂しい。独りきりは、寂しいよ。
でも、一緒なら寂しくないよね? ね、僕も一緒だから、

だから、戻っておいで―――



147 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:38:56 ID:PjZaIhi7

「夏月、夏月、夏月、夏月、夏月…」
何度も何度も名を呼びながら、何度も何度も触れるだけの口付けをする。

投げ出された細く小さな手を握り、口付けの合間に柔らかい唇を舐め、
薄く開いたそこに舌を潜り込ませた。
滑らかな歯や歯肉を舌先でなぞると、誘う様に更に口が開く。

「……んっ…」
舌先が奥に隠されていた舌を掠める様に撫でると、小さかったが反応があった。
その夏月の漏れた声と、震えた身体に、あの時と同じ感覚が背筋を駆け上がる。

夏月のこの舌に、傷口を舐められた時と同じ感覚。

それは、肉欲――

その衝動に突き動かされるまま、深く唇を重ねると舌を絡めた。
思うまま存分に夏月の口内を貪っていると、息も荒く僅かだった反応も徐々に多くなり、
その事が僕の欲を益々煽り、夢中で味わい続けた。

強く握り返された手に、名残惜しく唇を離すと、夏月を覗き込む。
「夏月?」
「兄さん…」

戻ってきた。戻ってきてくれた。
嬉しさに夏月を抱き締めようとすると、やんわりと拒絶されるが、それは予想済みだ。

「だめ… 汚れる、よ… 汚… わ、わたし… きたな…」
「汚れないよ。夏月は、汚くない」
「ちが… きたな…」
「大丈夫。僕と夏月は一緒だから、大丈夫」
「い… しょ?」
「そう、一緒。同じだよ。だって、双子だろ?」
「ふた、ご… おなじ…?」
「そうだよ。一緒。同じ。だからね、大丈夫」
「わたし… わたし…」

「好きだよ、夏月。好きは、夏月と同じ好き。僕も夏月が好きなんだ」

信じるまで、何度でも言うから。
「夏月、好きだよ」

「わたし… 兄さんを、好きで、いいの?」

夏月の左目から溢れる涙を、そっと拭ってやり、そのまま頬を包み込む。

「いいよ。僕も夏月が好きなんだから」

「兄さん… 好き… 兄さんが、好きなの」

僕もだよ。返事の代わりに、口付けた。


148 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:40:02 ID:PjZaIhi7

そっと抱き締め、口付けを深くし舌を絡めると、今度はしっかりと答えてくる。
ぬるぬると蠢く舌が絡まり、じわりと腹の底から熱が沸き上がって、堪らずに夏月を
押し倒すと覆い被さる様にして、また貪る。
獣染みた互いの息遣いと、にちゃつく水音、そして口内での繋がりが欲を掻きたて、
夏月の寝巻きの合わせ目から手を滑り込ませた。

寝巻きの下には何も着けておらず、掌に夏月の滑らかな肌の感触が伝わってくる。
そのまま掌を滑らし、一層柔らかく膨らんだ場所、乳房に辿り着く。
初めて触れた吸い付くような肌と弾力。
確かめる様に優しく触れていたのは最初だけで、夏月の身体がびくりと震えたのを
合図に、持ち上げる様に押し付ける様に揉み拉く。

そして掌を押し上げる様に硬く凝った頂きを摘むと、夏月は甘く高い声を上げて身体を
仰け反らせた。
その反動で唇が離れてしまったので、飲みきれず顎を伝わって零れる雫を舌で辿り
腰紐を解きはだけると、首筋、鎖骨を舐め、尖ったそれに吸いついた。

「あぁっ… にぃ、さんっ… 好き、好きなのっ」
甘い声が僕を呼び想いを告げる。

もっとその声が聞きたくて、吸いついたそれを舌で転がし甘噛みし、空いた手を
脇腹からのなだらかな線に沿って滑らす。
「ひぁんっ! …あっ!」
辿りついた秘所は既に濡れていて、指を滑らせるとより一層甘い声で鳴いた。

ぬるりと指に絡みつく蜜を擦り付ける様に、何度も陰唇をなぞり、溢れてくる
蜜の助けを借り、徐々に沈み込ませていく。
「んんっ! っ… ああっ!」
淫口に指をゆっくりと押し進めると、やはり痛かったようで夏月の身体が強張る。
しょうがない事とはいえ、これから更に夏月には痛い思いをさせてしまう。
僕に出来る事といえば、少しでも痛みを軽くする事ぐらい。
そんな思いと、もっと気持ち良くなって欲しいという思い、そして自分自身の欲から
身体をずらすと、夏月の秘所に舌を這わせた。

「ひあぁぁん! …あぁん! にぃ、さっ… 兄さんっ!」
次々溢れる蜜を舐め取り、指と舌とで淫口を解すように刺激していると、漂ってくる
女の雌の匂いが色濃くなり、頭の芯が甘く痺れ、もっともっとと駆り立てる。
そしてさっきよりは柔らかくなった淫口に、なんとか指を沈み込ませると、
ぷくっと膨らんだ淫核に吸い付き吸い上げた。
「ひぁぁぁぁぁっ!!」
その淫核の刺激に、ぎゅっと肉襞は指を締め付け、身体を仰け反らせると、
一際高い嬌声を上げた。どうやら、いってしまったらしい。
しかしその事で、ひくつく肉襞は柔らかくなり、指の動きを受け入れるようになった。

丁寧に確実に追い詰めながら、指を増やし解してゆく。
嬌声にすすり泣くようなものが混じり、夏月が身をくねらす。

「にっ… さぁん! も、もう… ダメぇ! ひあんっ!」
その言葉に身を起こし指を緩やかに引き抜き、着ている物全てを脱ぎ捨て、
夏月の脚を開くと、身体を滑り込ませた。


149 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:41:08 ID:PjZaIhi7

「夏月… このまま挿れて、中に出すからね」
コンドームを付ける気は無かった。
それが僕の、夏月に対しての答え。
「うん。兄さんの、わたしの中に… 全部ちょうだい…」
うっとりと微笑んだ夏月の、汗で貼りついた前髪を梳いてやり、露になったおでこ、
包帯に隠れた右目、赤く熟れた唇に口付けた。

「夏月… 力、抜いて」
「ぅん…」
その言葉に従って夏月が息を吐いた瞬間、怒張を一気に最奥まで突き立てた。
「―――っ!!」
ぎゅっとしがみ付いてくる夏月を愛おしく感じながら、眩暈がするほどの快感を
抱き返しながら、ぐっと耐える。
痛みに浅い息を繰り返す夏月に口付けながら、じっと動かず落ち着くのを待つ。

「夏月、好きだ… 夏月、夏月、好きだ」
「…わた、しも… すき、好きなの… 兄さん、大好き…
 ね、兄さん… わたしに、ちょうだい… 全部、全部、ぜんぶ
 兄さんの、全部、わたしに、ちょうだい…」

ああ、もう少し待つつもりだったのに。
優しくするつもりだったのに。

「全部あげるよ、僕の全部をあげる…
 だから、夏月の全部、…僕が貰うよ」
夏月の返事を待たずに、激しく腰を打ち付ける。
「ひあっ!! あっ! んぅ! あぁっ!! んんっ!」
痛みを耐えるような声に、僅かに快楽の色が見え隠れするのがせめてもの救いだったが
それでももう止まれなかった。

本能の赴くまま、快楽だけを追い求める。
「…兄さんっ! にっ、さん! …あぁっ!」
「夏月っ! 夏月っ…!」
名を呼びながら、ただひたすら貪り尽くす。
そして全てを、夏月の中に放った。


荒い息を吐いたまま、腕の中にいる夏月の重みを感じ、ぼんやりと天井を見ていた。
「にぃ… さん…」
掠れた声で囁いた夏月の吐息が、鎖骨を擽りふわりと消える。
「わたしの中で、たくさん、出してくれたんだね… 嬉しい…
 ね、兄さん… 兄さんはわたしのだよね?」
摺り寄せる夏月の柔らかい髪や肌を擽ったく感じながら、そっとお腹に手をやった。

「夏月の中、凄く気持ち良かったからね。沢山、出たよ…
 夏月は僕のものだし、僕は夏月のものだよ」

「うん、嬉しい… わたし、幸せ… すっごく幸せだよ…
 これからもいっぱい、いっぱい出してね… だって―――」

「うん。僕も、幸せだよ。そうだね、沢山夏月の中に出すよ…
 僕も、欲しいから―――」


150 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/03/29(木) 01:42:17 ID:PjZaIhi7

  ***************************

「ふぁぁぁぁ… おはよー夏月」
「おはよう、兄さん。今出来るから座って」
「んー」
リビングに入るなり、大きな欠伸をして朝の挨拶をした僕に、朝食作りの手を止め
笑顔で挨拶をしてくれる、愛しい双子の片割れで妹の夏月。
白いエプロンを付け、くるくると手際よく朝食を作るその姿は、ホント可愛い。
朝から僕のためだけに甲斐甲斐しく働く姿が見られるのは、兄である僕の特権だ。

「ごめんねー、夏月ぃ… 朝ご飯の仕度、全部任せっきりで」
離れに二人で生活し始めて三ヶ月、ほぼ毎日ほぼ同じ台詞で謝っている。
炊き立てのつやつやふっくらご飯をよそりながら、夏月はぷっと頬を可愛らしく
膨らませた。怒っている顔をしているようだが、ちっとも怖くなく逆に愛らしい。

「もう! 気にしてないって言ってるでしょ? 兄さんは朝弱いんだから、いいの!」
そうは言っても、任せっきりっていうのは、どうだろう。
夏月も大事な時期に差し掛かった訳だし、朝もちゃんと起きて手伝わなくちゃな。

「うーん… じゃあ、今日の夕飯は僕が作るからさ」

「え!? ホント!?」
「ホントにホント。今からレパートリー増やしておかないとね。
 ただし、リクエストは僕が作れるものにしてくれよー」
「うん! ありがと、兄さん!」
「お礼言うのは僕の方だってば。
 あ、夏月の美味しいご飯冷めちゃうよ、早く食べよう。いただきます!」
「いただきます」
もぐもぐと美味しい夏月の朝ご飯を食べつつ、目の前で笑顔でご飯を食べている
夏月を見ながら、僕は幸せに浸っていた。

「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
日課になっているのに、いまだに照れるのか、ほんのりと頬を桜色に染め、
目を瞑ってその時を待つ夏月の可愛らしい唇に、触れるだけの口付けを落とすと、
まだ何の変化も見えない夏月のお腹を、そっと撫でる。

手を振って見送ってくれる夏月に手を振り返しつつ、僕らの家である離れから、
仕事仲間の射蔵さんらが居る母屋までの道程を歩きながら、庭園に目をやる。
残暑も過ぎ、秋の気配が色濃くなって、また違った風情がある。
この庭園で四季を繰り返し感じながら、これからの日々を過ごしていくんだろう。
そして一日の仕事が終ると、我が家、夏月の元へと帰る。


巡り巡って、帰ってきた――――

僕の帰る場所は、夏月。
夏月の帰る場所は、僕。


「ただいま」「おかえり」


-了-