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192 :夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] :2007/03/31(土) 00:42:47 ID:nMJNDJ0F
第6章

ドアを開けると真奈美はしばらくその場から動けなかった。
急に世界が色づいてくる。
2年前から止まったままだった真奈美の中の時間が動き出す。
目の前に2年前と変わらない夫の・・・誠一の姿があった。

「せ・・・せい・・いち・・・さん?」

そう呟くと
頭の中が真っ白になり真奈美は目の前の男性に飛びついていた。
「せいいちさぁぁぁぁぁん!!」
抱きつきながらその名を叫ぶ。

一方健一の方はと言えばいきなり知らない名前を呼び、泣きながら自分のことを抱きしめてくる美女を見て真奈美とはまったく違う理由で頭の中が真っ白になっていた。
『え?ええぇぇぇ???』
と、何が今、起きているのか脳が理解できる範疇を軽く超えている。
素数を数えてみて落ち着こうともしたが無駄だった。
だがこのままで良いわけでもない。とりあえず真奈美を引き離すと
「えぇと神坂さん・・・?ちょっと・・・ええと・・・」
とこれから紡ぐべき言葉を捜す。が、その言葉が見つかるより早く
「なんで他人行儀なの?誠一さん?」
と真奈美のほうが返してきた。その言葉でさらに混乱し言うべき台詞が見つからない。
それを見て真奈美は
「アハハ変な誠一さーん。それよりご飯出来てるよ♪今日は誠一さんの好きなすき焼き作ったんだ。」
と嬉しそうにはしゃいだ。

真奈美はあの日以来毎晩すき焼きを作り続けていた。
まるでそうしていれば誠一が帰ってくるとでも言うように。

真奈美はさらに言葉を続ける。
「ずっと出張だったんでしょ?寂しかったんだから!でもいいのちゃんと帰ってきてくれたしね♪
それにみんなが変なこと言うんだよ?もう誠一さんが死んじゃったとか。誠一さんはちゃんと帰ってきたのにね♪」
一息にまくし立てると、今度は固まっている健一を家内に押し入れようとする。
その動きでようやく止まっていた健一の脳も活動を始めた。
「いやいやいやいや!俺はそのセイイチさん?じゃないですから!俺は今日、隣に越してきた白坂健一という者です!」
とかなり慌てて真奈美の動きを止めようとする。だが真奈美は何を言っているのか分からないといった表情で健一のことを見返すばかりだ。
「とにかくコレ引越しのご挨拶です!つまらないものですが!じゃ!」
と強引に粗品のタオルを渡すと回れ右をし、走って自分の家に入っていった。

その場に残された真奈美はしばらくポカンとしていたが、手に握られたタオルの感触で我を取り戻すと
「せい・・・いち・・さ・・ん?・・・せいいちさん・・・せいいちさぁぁぁんっっ!!!!!!!!」
と泣き叫んでいた。

第6章終