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545 :ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] :2007/05/26(土) 12:08:02 ID:OltU+Q9A
さわさわと道の並木が揺れる。
僕が半歩前にいて。
従妹が半歩後にいる。
繰り返し繰り返し続けられる立ち居地。
前へ出ることも無く。
共に並ぶでもない。
けれど見えぬほど後ろにも無く。
唯、静かにそこに在る。
今は綾緒だけが、そこにいる。
5回。
それだけ春を遡ると、僕と綾緒の傍には、もう一人の少女がいた。
僕らの遠い親戚で、名族・楢柴の分家。
充分高貴と云える家柄なのに、良い意味でお嬢様らしさを感じさせない爛漫な女の子。
加持藤夢(かじ ふじめ)。
それが、彼女の名前。
僕らの傍にいた少女の名前。
僕の――初恋の相手の名前だ。
僕の父は5代前の先祖の名前もわからない、まさに一般人だった。
そんな父が愛したのは、名門・楢柴の長女。
どこで知り合ったのかとか、どうやって仲良くなったのかとか、そんなことを教えてくれたことは
無い。話を聞こうとすると、笑って誤魔化すだけだった。
唯、二人が真剣に愛し合っていることだけは子供心に感じられた。
楢柴は名家だ。
『高貴』な娘と『雑種』の雄の婚姻には、当然反対した。
その反対の『手段』は嫌がらせで済むレベルでは無かったようだ。
それでも結婚にこぎつけたのは本人達の意思と、一握りの協力者があったから。
父の友人達と、母の姉代わりだった分家の女性――加持家の当主の協力が。
『雑種』に娘をさらわれた楢柴本家の人間は父を深く憎んだらしい。けれど子供が生まれると、
次第に両家は打ち解けたようで、ついには挨拶程度ならば出来るようになったという話。
そんな縁があるからだろう。
母方の親戚とはあまり面識が無いが、加持家の人々とは長い付き合いになる。
だから僕と藤夢が出会ったのも、記憶に無いくらい昔の話。
当主の娘・藤夢は母親譲りの温厚な人柄と明るさを備えていた。
同い年というのも手伝って、僕と彼女はすぐに仲良くなった。
否。僕はそう思っていた。
加持の家は他県にあるから滅多に会うことは出来なかったが、それでもたまに会える藤夢の姿を
見ることが僕の楽しみだった。
初恋。
自身の感情をそう判断できたのは、歳も二桁になってからだ。
「藤夢ちゃんのことが好きなんだ」
どうしたものかと悩む僕は、綾緒にそう相談した。
「まあ、にいさまが、藤夢のことを?」
従妹は穏やかに驚く。
綾緒はひとつ年上の藤夢を呼び捨てる。対して藤夢は綾緒にさん付けをする。それは主家と分家の差
だったのだろう。
「どうすれば良いかな」
僕が問うと、綾緒はニッコリと笑った。
「勿論、藤夢に想いを伝えるべきです。“そのままにしておく”ことはありません」
「そうかな?」
「はい。綾緒はにいさまを応援致します」
「そうか、ありがとう。なら早速――」
「駄目ですよ、にいさま」
突然の静止に僕は振り返る。
「“今”は駄目です。明日以降。明日以降にして下さいませ。綾緒にも・・・準備がありますから」
「準備?」
「はい。準備です。ですからにいさま、藤夢に想いを伝えるのは、明日以降に」
従妹に念を押され、僕は翌日、藤夢を呼び出した。
子供とはいえなにか察していたのだろうか。
約束の場所に来た藤夢は、酷く暗い顔をしていた。


546 :ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] :2007/05/26(土) 12:10:01 ID:OltU+Q9A
怪我でもしたのだろうか。
彼女は指先に包帯を巻いていた。
僕は一瞬迷う。
なにも云わないほうが良いのではないかと。
「好き」
そう伝えてどうなるかなんて、考えもしない。
交際という概念もない子供だった。
唯、想いを伝えたかったのだ。
僕は意を決して藤夢に想いを告げる。
彼女は僕の言葉を聞くと、目を見開いて泣き出した。
そして消え入るようなこえで、
「・・・・ごめんなさい・・・・」
そう云って泣き崩れた。
ショックだった。
藤夢も僕を好いてくれていると思っていたのだ。
だから勇気を出せたのに。
「藤夢ちゃん、僕のこと・・・嫌いだったのか?」
「ち、違うの!私だって、創ちゃんのことを――」
「にいさまのことを?」
凛とした声が響いた。
「――ひっ」
藤夢は身体を竦ませる。
「綾緒・・・・」
従妹がそこにいた。
綾緒は微笑みながら僕の傍に来る。
「申し訳ありません、にいさま。つい“心配”になって、来てしまいました」
従妹は僕に腰を折り、分家の少女に向き直る。
「ねえ、藤夢、にいさまの想いは聞いたのでしょう?それで、貴女はなんと答えたの?」
「う・・・・ご・・・・ごめん、なさい・・・・って・・・・」
「まあ」
綾緒は口元に手を当てる。
「信じられませんね。にいさまの御心を踏みにじれるなんて」
「・・・・・・」
「どうして?藤夢。にいさまのどこが気に入らないの?」
「そ、それ、は・・・・」
「それは?」
「・・・・・・」
「それは、何?云うのよ、藤夢」
「わ、私・・・・は、創ちゃんのことが・・・・・」
ぎゅうぎゅうと手を握っていた。
包帯の先が赤く滲む。
そして搾り出すように云う。
「創ちゃんのことが・・・・・だいっきらい・・・・・だか・・・ら・・・」
「――」
大嫌い。
そう云われて僕は放心した。
ずっと仲良くしてきた女の子が。
ずっと好きだった女の子が。
こんなに泣き出すほど、僕を嫌っていたなんて。
「藤夢」
綾緒は少女をを睥睨する。
「貴女、最低よ?断るにしても、もっと云い方があるでしょう?こんな人様を傷つけるような云い方を
するなんて、失礼だと思わないの?」
「う・・・・だって・・・・!それは、」
「それは?」
「ひっ・・・・」
少女はあとずさる。
「ごめん・・・・・。ごめんね、創ちゃん・・・・」
そう云って立ち去った。


547 :ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] :2007/05/26(土) 12:11:59 ID:OltU+Q9A
僕は追いかけることが出来なかった。
大嫌い。
そう云われたショックで、頭の中が真っ白だったのだ。
「にいさまぁ」
綾緒は僕に取りすがる。
「辛かったでしょう?悲しかったでしょう?可哀想なにいさま。でも、安心してください。綾緒は、
綾緒だけは、にいさまの傍におりますから」
「綾緒・・・・だけ、は・・・」
「ええ。綾緒“だけ”です。綾緒だけはにいさまの味方です」
僕は泣いた。
膝を屈して泣いた。
従妹は僕の頭を撫でる。
「にいさま、藤夢はにいさまの良さを理解できなかったのです。でも、綾緒は違います。にいさまの
素晴らしさを理解しています。にいさまには綾緒だけなんです。ですからもう、藤夢には逢わないで
下さいませ。そのかわり、綾緒が傍におりますから」
「・・・・・」
「藤夢には後できつく云っておきます。二度と邪な感情を抱かないように、念を押しておきますから」
撫でながら従妹は云う。
そうして、僕の初恋は終わった。
藤夢と逢うことももう無い。
まわりにいる母方の親族も、今は綾緒だけになった。

「卒爾ながら、にいさま」
半歩後ろを往く従妹は、僕を追憶から呼び覚まして問う。
「先ほど、にいさまの学び舎に制服を着た童女がおりましたが、あれは一体何だったのでしょうか?」
「童女?ああ、一ツ橋のことか」
僕は苦笑する。
「部活の後輩だよ。アレでも一応、お前と同い年なんだよ?」
「まあ・・・・」
綾緒は口元に手を当てる。
「彼女は、綾緒と同学年なのですか。てっきり初等部の学生かと・・・・」
「お前の通ってるとこと違って、うちは初等部とかないよ」
従妹の通う名門私立校は、幼稚舎から大学院までを兼ね備える巨大な教育施設である。
幼少時から社会に出るまでの間を総て光陰館で過ごすものも少なくない。かく云う綾緒もその一人だ。
「彼女は、一ツ橋様と云うのですか」
「うん。一ツ橋朝歌。高校一年生」
そう答えると、従妹は考え込むような仕草をみせる。
「にいさまには、そう云った嗜好はないはず・・・。けれど一応は・・・・」
「綾緒?どうかしたのか?」
「いいえ。何でもありません。それよりもにいさま」
従妹は微笑む。
どこか醒めた瞳で。
「今日はきちんと、朝餉を摂って頂けましたか?」
「――」
僕は言葉に詰まる。
朝。
食べたのは先輩のそれ。
従妹の用意した食材は生ゴミとして処理されたのだから。
「あ、えと・・・」
「どうなされました、にいさま?」
綾緒は小首を傾げる。
薄い笑み。
心底の読めぬ貌。
「ご、ごめん・・・・」
「ごめん?何故にいさまは綾緒に謝罪なさるのですか?」
にこにこと。従妹は笑い続ける。
「その、今朝は・・・綾緒の料理を食べられなかった・・・」
「食べられなかった?寝過ごされたのですか?」
「そうじゃなくて・・・・・」


548 :ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] :2007/05/26(土) 12:14:00 ID:OltU+Q9A
なんと云えば良いのだろう。
捨てられたとは云いにくいが、嘘を吐くのも躊躇われる。
「そんなに云い難いですか?綾緒ではなく、織倉由良の食事を選んだとは」
「――!」
僕は慌てて振り返る。
綾緒の顔に笑みは無い。
「ど、どうして」
「どうして?綾緒はにいさまをいつでも見ています。にいさまの事で解らぬことはありません」
「う、ぁ・・・・」
怒っている。
従妹は表情に出さぬ怒りを纏っている。
約束を破ったこと。
食事を摂らなかったこと。
先輩に世話にならぬと云えなかったこと。
その、総てに。
「さあ。帰りましょうにいさま。釈明は家で聞かせて頂きますから」
従妹は笑顔に良く似た――酷く歪な表情を作った。

「矢張り和装のほうが落ち着きますね」
目の前に座る従妹は着物姿。
この家には綾緒に着替えや私物も僅かながら置いてある。
今、綾緒の手に握られている『それ』も、そのひとつだ。
家に着いた綾緒は扉を開け、僕の靴を揃え、制服の埃を払い、私室まで荷物を運び、一礼した。
総てが完璧な、淑女としての所作。
その綾緒の前に正座する僕は、従妹の持つ器具に目を奪われ、動くことが出来ない。
従妹の傍らには白い箱が置いてある。
救急箱。
赤十字のシンボルがついたそれは、家の治療用具容れだった。
「さて、にいさま」
目を細めた綾緒は、僕を見据える。
「にいさまは綾緒との約束を破りましたね。それについて、弁解があれば聞いておきますが」
カチ。
カチ。
カチ。
カチ。
綾緒は手に持った『器具』を鳴らす。
ガチ。
ガチ。
ガチ。
ガチ。
僕は口の中を鳴らした。
「ご、ごめんよ、綾緒。僕が悪かった・・・・!!」
頭を下げる。
体裁もなにもない。唯ひたすらに許しを請う。
朝の一件。その総てを偽り無く話しながら。
「にいさま。それほど自らに非があるとお考えならば、何故綾緒との約束を破りましたか?」
「ごめん、ごめんよ・・・・」
何を云っても云い訳になる。だから頭を下げるしかない。
「嘘偽りなく話したことは評価しましょう。ですが罪は罪。罰は罰です。にいさま。お手を上げて
下さいな」
「う・・・・」
カチ。
カチ。
カチ。
カチ。
綾緒は笑顔で器具を鳴らす。
僕は震えながら右手を差し出した。
「左手で結構ですよ。正直に話せたご褒美に、利き手は勘弁してあげます」
「・・・・・」


549 :ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] :2007/05/26(土) 12:16:01 ID:OltU+Q9A
云われたとおりに左手を出すと、綾緒は『ペンチのようなもの』を中指の爪に宛がう。
「にいさまは綾緒の大切な方です。ですから、手心を加えて差し上げます」
べきり。
嫌な音と、感触が響いた。
「――い」
そして僕は。
「い゛い゛い゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああ!!!!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!!!
左手を押さえてのた打ち回った。
従妹の手にあったもの――爪剥がし用の『拷問具』。
綾緒は剥げた僕の爪を舐める。
「本来ならば、爪を砕いて割れたものを一つ一つ丁寧に剥がすのですが・・・・・にいさまに
そこまでの無道は出来ません。これは綾緒の慈悲と知って下さい」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・!!」
のた打ち回る僕を押さえつける。
そして、左手を取った。
「にいさま」
爪の剥げた中指に、綾緒は爪を立てる。
「い゛っ――!!!!!!!」
痛みで暴れだすが、身体はピクリとも動かない。
柔術の印可を持つ綾緒には、抵抗しても無駄なのだ。
「綾緒のにいさまは“良い子”ですよね?今回は折檻しましたが、次からは約束の守れる“良い子”
になれますよね?」
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ・・・・・っ」
頷いた。
泣きながら何度も頷いた。
「そう。それで良いのですよ。いつもにいさまは綾緒の思うがままにしてくださいますものね」
僕の傷口を舐める。
繊細な舌遣いは、鈍い痛みとなって脳髄に響いた。
『手心を加えた』
その言葉は、恐らく嘘ではない。
今の綾緒はそれほど怒っていないのだ。
僕が素直に謝ったから、たったこれだけで済んだのだ。
「わかって下さい。綾緒はにいさまが大切なのです。なによりも。誰よりも」
ちゅぱちゅぱと。
ぴちゃぴちゃと。
いつまでも従妹は僕の指をしゃぶり続けた。

朝早く目を覚ます。
左手がジンジンと痛い。
あの後――
あの後綾緒は実に甲斐甲斐しく、僕の指の治療をした。
爪を剥いだ本人だというのに、心底心配そうに手当てする。
「にいさま、あまり綾緒を困らせないで下さいませ」
そう云って、僕ともう一度『約束』をした。
「この家にはもう、織倉由良を入れないようにして下さいな。良いですね?」
僕は頷くしかない。
包帯を見る。
指先には、僅かに血が滲んでいた。
昨日のアレは、綾緒の『お仕置き』としては軽いほうだった。
そのことで僕にもまだ恐怖が残っているのだろう。二日続けて早朝に目が覚めるなんて。
身体はだるいが、眠気は無い。食欲も、ある。
だから、まだかなり早い時間ではあるが、朝食を摂った。
今日こそは綾緒の用意した食べ物を。


550 :ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] :2007/05/26(土) 12:17:59 ID:OltU+Q9A
能面・『深井』と目が合う。
「綾緒はにいさまをいつでも見ています」
その言葉を思い出す。
「今日は・・・・今日からは気をつけないと」
身震いしながら後片付けをする。
まだ6時40分。
時間的にはかなりゆとりがある。

ガチャン、バタン。

「え?」
鍵の――そして扉の開く音がした。
家を空けている両親はまだ帰っていない。
従妹ならば呼び鈴を必ず鳴らす。
泥棒ならば、玄関から、しかも音をたてて入るようなことは無いだろう。
「な、なんだ・・・!?」
驚いていると、静かな足音が近づいてくる。
「え?」
音の正体を視認して、僕は目を見開く。
いてはいけない人が。
来てはいけない人が。
入れてはいけない人が、そこにいた。
「ああ、日ノ本くん。もう起きてたんだ」
先輩――
織倉由良は買い物袋を下げたまま、僕に微笑んだ。
「ど、どうして先輩がここに?」
「やだな。日ノ本くんのご飯を作るのは、お姉さんの役割でしょう?だから来たの。折角だから
起こしてあげようと思ったんだけど、もう起きてたのね」
「え、う、でも、鍵・・・」
混乱で上手く喋れない。
それでも意味が通じたのか、織倉由良は片手を持ち上げて見せた。
「これ」
うちの鍵と良く似たものが摘まれていた。けれどそれには見たことのないキーホルダーが
付いている。
「合鍵。この間作っておいたの。こうすれば、いつでもこの家に入れるでしょう?」
(合鍵って・・・・鍵なんて、渡したこと無いのに・・・・)
にこにこ。
にこにこ。
先輩は笑う。
(綾緒はいつでも)
まずい。
(見ていますから)
まずいぞ。
追い返さなければ。
昨日の今日でこんなことになったら、きっともっときつい『お仕置き』をされてしまう・・・!
「今日はパスタにしようと思うんだけど、どうかな。少し軽めにして――」
僕を無視するように喋っていた先輩は、洗い場を見て言葉を止める。
「あら?」
食器に触る。洗い立てのそれは、当然のごとく湿っていた。


551 :ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] :2007/05/26(土) 12:19:13 ID:OltU+Q9A
「日ノ本くん、もうご飯食べたの?」
先輩は振り返った。
「そ、そうです。もう食べて、おなか一杯なんで、今日のところは・・・」
「トイレ往って来て」
「え?」
「トイレに往って、全部吐いて来て。おなかの中を空にすれば、充分食べられるでしょう?」
「そ、そんな・・・」
「なぁに?まさか“食べない”なんて云わないわよね?」
先輩が近づいてくる。
(どうしよう・・・。どうしよう・・・・)
「おはようございます」
「「!?」」
突然の声。
ちいさいのに、良く通る澄んだ声がした。
僕らは慌てて振り返る。
「朝歌ちゃん?」
「ひ、一ツ橋?」
僕らは驚く。
こんな場所で会うことの無い人物。
ちいさな後輩がそこにいた。
なんでここに?
僕の疑問を他所に。
「どうも」
一ツ橋はいつもの調子で感情の無い挨拶。
言葉もないまま。
僕と先輩は顔を見合わせた。