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156 :すりこみ [sage] :2007/06/04(月) 16:48:19 ID:APrSEPmV
目が覚めると俺は自分の部屋の天井を見つめていた。
「…あれは…夢…だったのか…」
枕を触れば寝汗でぐっしょりと濡れていた。
服はいつの間にかパジャマに着替えられており、
制服はいつものようにきちんとハンガーに綺麗な状態で掛けられていた。
「あれ…俺は…昨日……菊池が…ぅっ!!?」
頭がずきりと痛む。喉がかすれている。関節が痛い。
ずきん…ずきん…ずきん…
この感覚に覚えがある。
記憶の欠落。
あの後俺はどうした…?思い出せ…思い出せ…思い出せ…!!
親父の書庫で本を片付けながら、つい読みふけってしまった俺。
汚れた台所には誰も居らず、焦燥感に駆られた俺。
予想通りの場所に佇む夏海。
そして壊れた人形…
そうだ…なにがおかしいことがあるんだ?壊れた人形はゴミ捨て場にあるべきなんだ。
なのに、俺は何かがおかしいと感じている。
そう、夏海は壊れた人形を捨てに来ただけじゃないか。
俺がそうしたように。
夏海もごみを捨てにきたんだ。

………………………………………?
いや、よそう。
もう、考えるのはやめよう。
夢だ。夢に違いない。ふぅ…まいったな…
そんなふうにベッドの上でうだうだしていると、微かに階段を駆け上がってくる音が聞こえる。
きっと、夏海だ。
「お兄ちゃん!?いつまで寝てるの?もぅ…アルバイトに遅れちゃうよ?
早くご飯食べて…って…お兄ちゃん?どうしたの…なんだか…顔色悪いよ?具合悪いの?」
心配そうに俺の顔を覗き込む夏海の顔。
そうだ、こいつがあんなことできるわけ無いじゃないか…
「あ…ああ…いや、ちょっと悪い夢を見たせいかな…」
「本当に大丈夫?アルバイト…お休みする?」
「いや、大丈夫。直ぐに降りるから。先に行っててくれ。」
「うん…でも、無理しないでね?あ、お母さん、さっき寝たところだから静かに下りてきてね?」
「ああ…すまないな夏海…あ、そうだ…ちょっと馬鹿なことを聞くけどいいか?」
「?なぁに?お兄ちゃん。」
「昨日…誰か家に遊びに来てたっけ?なんか昨日のことがよく思い出せなくって…」
夏海は本当に不思議そうな表情で、しかしはっきりと俺に言った。
「?昨日は誰も遊びになんて来てないよ?お兄ちゃん…もう、惚けるにはまだ早いよ♪」
そんなふうにあいつはくすくす笑いながら階段を静かに下りていった。
そうか…やっぱり俺の勘違いか…
ふぅ…とため息をつくと俺は素早く着替えて一階に下りていった。
夏海の作った朝食をかき込むと、弁当箱を引っつかんで家を飛び出した。
出掛けにちらりとゴミ捨て場を覗くとそこには何も残っていなかった。
「ったく…夢に決まってるだろ…しっかりしやがれ…」
後ろを振り返らず自転車に跨りバイト先まで全力で漕ぎ出す。
くだらない夢で遅れてしまった時間を取り戻すように。
流れる景色と額に触れる早朝の空気の冷たさが気持ちよかった。
また、今日も変わらない日常が続くはずだった。

学校で菊池が行方不明になっていることを聞くまでは…



157 :すりこみ [sage] :2007/06/04(月) 16:51:58 ID:APrSEPmV
小泉八雲は考え込んでいた。
珍しく彼の周囲には彼の取り巻きの六人が揃っており、
皆楽しげに談笑していたのだが,彼は一人自分の世界で誰かと対話しているようだった。
そんな様子を見かねた一之瀬京子が恐る恐る口を開いた。
「あの…八雲様。何かお悩み事でしょうか…」
「ああ、少し妹のことでね…」
「香住様…のことですか。」
それだけで総て心得たと言ったように、
二階堂愛、三鷹梓、四谷楓、五代瑞樹、六道洋子はそれぞれに口火を切った。
「それで…八雲様はどのように考えておられるのですか?」
「香住様に諦めていただくか…藤岡様に告白していただくか…でしょうか…」
「ですが、藤岡様も香住様のことは憎からず想って居られるように見受けられましたが…」
「では、なぜ香住様の告白を袖になさったのでしょうか」
「藤岡様にはよく懐かれている妹君が居られます。おそらくそこに何かの原因が…」
「藤岡様は香住様よりも、その妹さんを愛しておられると?」
「いえ、その逆でしょう。その妹さん…夏海さんでしたわね。
お姿を幾度か拝見いたしましたがとても可愛らしい方でしたが…
ただ、私の調べたところによれば既に数人の殿方の告白をお断りされているそうです。」
「その理由が兄への偏愛だと?」
「確証はありませんが…ですが、同じクラスにいる私の妹からの情報によれば、
藤岡様への好意を示す言葉を口にした女子に対して釘を刺してきた…そうです。」
「釘?…要するに脅しですか?」
「仔細までは不明ですが、取らないで欲しい旨を告げられたそうですが、
どうもその際に夏海さんの眼が怖かった…というよりも、殺されると感じた…のだそうです。」
「殺される?それは穏やかではありませんわね。どうします?」
「普段の素行に関しては問題なく、寧ろ優等生といってよい方ですが…
どうも藤岡様のこととなると壊れておられる…そういった方なのですね?その夏海さんは…」
「ええ…ですから、藤岡様が香住様の告白をお断りになられたのは、その辺りのことを懸念してではないかと…」
「藤岡様では夏海さんを抑えられないのでしょうか?」
「普段から壊れている方ならいざ知らず、普通に接している限りではとても可愛い妹さんだそうですので…
邪険にもしにくいのでしょう。」
「それでは、私たちで夏海さんに対して何らかの措置を講じますか?」
「それこそ、藤岡様が黙っておられないでしょう。大事な妹さんであることに代わりはないのですから…」
「結論から言えば、夏海さんが藤岡様以外の方とお付き合いいただくことが最良の解決策ですが、
早瀬さんも袖になさったと聞いておりますし、それ以上の素材となると…」
「それは無理でしょう。そういった程度の方に靡くようであればここまで悩みはいたしません。
簡単に考えれば私たちに八雲様を諦めさせる手段と考えてもよいでしょうね。」


158 :すりこみ [sage] :2007/06/04(月) 16:53:07 ID:APrSEPmV
ふぅ…と、八雲はため息をついた。
そうだ。夏海ちゃんはこの子達と同じ…いや、僕と同じく壊れた人間だ。
この子達や夏海ちゃんが諦めるとすれば…
それは僕や春樹の死か、或いは自身の死によってか…
理想であれば僕や春樹の手にかかって死にたいと思うのだろう。
僕だってそうなんだから…。
そんな彼女たちだからこそ、僕が
「夏海ちゃんを殺してくれないか?」
と頼めば躊躇うどころか喜んで殺しに行くだろう。
だが、それでは春樹が悲しんでしまう。
それは出来れば避けたいことだ。
なら僕はどういう結末を望む?
それは春樹と香住が幸せになることだ。
それ以外の結末は望めない。
春樹と香住が同時に幸せになるにはあの二人が付き合わなければならない。
僕が愛する春樹と、僕の魂の分身である香住が付き合うことで僕は満たされる。
僕が春樹と付き合っても、香住と付き合っても駄目だ…
香住には春樹の子供を産んでもらわなくてはならない。
僕には春樹の子供を産んであげることはできないのだから…
そうだ僕が幸せになるには春樹と香住が笑っていられる世界が必要なんだ。
春樹は香住が好き。香住も春樹が好き。
であれば、やはり邪魔なのは夏海ちゃんだけか…
誰がやる?僕か?彼女たちか?…いずれにせよ上手にやらないとね…
でないと、僕が春樹に殺されてしまうよ…
いや…まてよ?それも悪くないな…ふふ…僕が春樹に殺されるのか…
それもいいな…
その場面を思い描くだけで…

小泉八雲は勃起していた。