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366 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:16:39 ID:1SfiEejc
「やっぱり、こういうのが好きなの?」
にっこり微笑む彼女の目はどうして…こう…笑っていないんだろう。
「いやいや、別に好きってわけじゃぁ…」
「もう、なんでそこで隠すの?どうして好きって言わないの?それとも嫌いなものを買っているって言うの?」
「…いや、そういう訳じゃないけど…」
彼女の手にあるのは『涼宮ハルヒの憂鬱、5。孤島症候群・前編・後編』のDVDだった。
ジャケットイラストは雨に濡れて胸元で腕を組んでいるハルヒの絵。
わっちゃぁ……しまったなぁ…昨日の夜、見たままテレビのとこに置いたままだった。
いつもなら彼女の目が届かない保管場所に持っていくのに…しくじった。
俺が彼女からそういう類のものを隠すのには理由がある。
といっても、そんなに複雑な理由じゃない。

事の発端というか、まぁ、僕がそうなってしまった理由というのは単純な話。
彼女に『涼宮ハルヒの憂鬱、1~3』のDVDを見せたのが発端になる。
なんでそんなことをしたのかは今となっては思い出せないのだが、単純に面白いと思ったことと、
自分の趣味の一端を彼女に知って欲しかった…そんな程度の動機だったと思う。
彼女は笑うでもなく、退屈そうにするでもなくじっとテレビ画面を凝視していた。
時間にして約2時間が経過し、何事もなく鑑賞終了。
期待…僕は一体どんな回答を彼女がすることを期待していたのだろう。
「このハルヒって子…なんかむかつく。」
…えっと、第一声がそれですか。しかし、会話を繋ぐべく必死でその打球を拾い上げる。
「あの…どのあたりがむかついた?」
「ん~…全部かな?」
全部かよ!でも、ここで「あ、そうなんだ。」と言おうものなら会話終了。さらになんとか打ち返してみる。
「えっと…例えば?」
「自分勝手で我が侭で、世界の中心は自分だって思っていそうなところ。」
…それはお前のことじゃないのか?…そう思った俺は思わず口がすべり
「…同属嫌悪?」
などと暴言を吐いてしまう。しまったぁぁぁ!今のなし。カットォォ!
しかしというか、当然と言うか時間は戻らなかった…のだが、案外というか、意外なことに彼女はなにやら考え込み
「…ん~…そうかもね…でも、私はここまでエキセントリックじゃないけどね。」
怒るかと思いきや、それほど怒っていない様子に安堵したのも、つかの間。
「で?この話のどこが面白いの?要するに変な女の子が神様で、
宇宙人とか未来人とか超能力者が実は傍に居て、
それが全員可愛い女の子でナイフを持った可愛い女の子とかと戦ったりする話でしょ?
これってあれ?ツンデレって奴?」
…そういっちゃうと、見も蓋もないんだが。
「で、あなたはどれが好きなの?胸の大きいの?あの無口な子?それともナイフ?」
…いや、強いて言えばナイフと無口とハルヒだが、やっぱりそっちに話がいきますか。
「やっぱり、こういうのが好きなのね?」
「こういうのって?」
「女子高生とかロリっぽいのとか」
「いや、誤解がある!そうじゃないって!」
「じゃぁ、巨乳が好きなの?」
「…えっと、なんと言っていいんでしょうか…」
「別にいいよ?こういうのが好きでも。」
そういって彼女は手元のPSPを取り出すと電源を入れ、MHP2を始めたのであった。


367 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:18:03 ID:1SfiEejc
まぁ、要するにそういうことがあってから大っぴらに彼女の前でオタク系のDVDや漫画、小説、エロゲなんかは
控えるようにしているというわけだ。いや、別に見られてまずいというわけじゃない。
そもそも、そういう物品を所持しているということは彼女だって知っている。
ただ、それを俺が鑑賞している時の彼女の冷ややかな視線とか電波がそうさせるのだ。
例えばある時…『Fate』をプレイ中に突如背後に現れ
「ふ~ん…やっぱりこういうのが好きなの?」
…画面にはセイバーとイリアの姿が…って、いや、敢えて言えばアーチャーなんだが…
また、ある時は『マブラブ・あんりみてっど』をプレイ中…
「やっぱり…胸の大きいのが好きなの?」
と、気がつけば背後から画面 ― 御剣冥夜の立ち姿 ― を覗き込んでいる彼女の姿が…
別にオナニーをしていたわけじゃないのだが、
あの冷ややかな視線&セリフの後に継続できるほど俺は漢(おとこ)ではなかった。
そりゃ開き直って
「そうだよ?俺はこういうのが好きなんですよ…」
と、高倉の健さんみたく渋く言い放ってみたい!
…だが、そんなことはできない。
え?…なんでかって?
そんなのは決まってるじゃないか。
怖いからだ。

彼女だってゲームはするのだが、好きなゲームはバイオハザードにサイレントヒル。
彼女の家に遊びに行って、どんなゲームをしているのかな?と思って覗いてみると、
『それ系』しかなかった。その理由を聞くと
「ロケットランチャーとか、マシンガンでゾンビとか殺すと楽しいじゃない?」
との完結明瞭な回答。
…まぁ、ゲームの話しだしね…と思うことにし、そのことは気にしないようにしていた。
俺が勧めたゲームで受容してくれたのはMH2くらいで、今ではMHP2を一緒にプレイするほどになっていた。
…わかりやすい傾向だなぁ…というか、要するにオタクっぽいのは駄目らしかった。
いや、別にこのエピソードは彼女を怖いと思う理由とはあんまり関係ない。
要するに、趣味関係で彼女と出会ったわけじゃないんだよ?と、いうことを強調したいだけなのだ。
じゃぁ、どんな関係なんだ?と問われれば友達関係と答えるしかない。
友達の友達は皆友達だ♪…その言葉どおりにお互いを知っている程度の関係。
それが当初の俺と彼女の関係だったはずだ。
なのに、俺は何故か彼女と付き合うことになったのだ。


368 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:19:31 ID:1SfiEejc
そのエピソードを人に話せば
「それなんてエロゲ?」
と茶化されるのだが、事実なんだからしょうがない。
ここで俺のスペックを簡単に箇条書きすると。
身長:183センチ 体重105キロ 体型はプロレスラー体型。
学生時代は日本拳法部に所属し段位は3段。
職業は普通のリーマン。
趣味はドライブと中途半端なオタク
外見的特長はアメリカ系チャイニーズマフィアのボディーガードっぽい…らしい(彼女談)
で、肝心の彼女のスペックは
身長:152センチ 体重:不明だが確か40キロ程度。 体型はスレンダー系。
スリーサイズはシラネ。が、貧乳属性や巨乳属性ではない…のだが、傾向としては前者。
学生時代に剣道部に所属し段位は3段。
職業は看護婦。
趣味は…俺?とか言っているが…おそらく手芸関係。意外と言うかなんというか、よくマフラーやセーターを作ってくれる。
外見イメージを敢えて言えば
『鬼になった柏木千鶴(Leaf)が髪を肩の辺りまでの長さに切った感じ。』
…判りにくいことこの上ないのだが、要するにそんな感じだ。
そんな二人なのだが、付き合い始めたきっかけを率直に言えば意見が分かれる。
…ここから俺のことを仮に『P』、彼女のことを『千鶴』としよう。
彼女…千鶴が言うには
「きっかけ?ん…Pから『好きですオーラ』が出てたからかな?」
…好きですオーラってなんだよ…と突っ込むと『好きですビーム?』
いや、どっちでも一緒だ。
で、俺が主張する彼女と付き合い始めたきっかけ…といえば…
そこに至るまでの二人の関係といえば先述の通り、俺は彼女を知っている。彼女も俺を知っている…そんな程度の関係だったのだ。
まぁ、なんと言うか俺自身、彼女のことをどう思っていたか?と聞かれれば『高嶺の花』という表現がしっくりくる。それぐらいに
「あ、無理だな。これは」
と戦う前から付き合うなんて目標どころか「どうすれば友達になれるんだ?」と言うレベルで悩んでいたわけだ。
だから俺自身から怪しげな『好きですオーラ』或いは『好きですビーム』が出ていたと言われれば、それを否定することはできなかった。
いや、色々な意味で。
…だからこそ、もし本当に怪しげなオーラやビームがきっかけだとすれば俺は無自覚の内に超能力にでも目覚めたんじゃないだろうな?と錯覚しそうになる。
もっとも、それが超能力だとすれば随分と効果範囲の限定されている超能力だな、おい…と言いたいのだが。
 で、平たく結論を言おう。
「きっかけですか?…彼女に押し倒されて…そのまま…食べられちゃったんです。(プライバシー保護のため、音声は変えております)」
…なんか突き刺さるような視線が痛いのだが、彼女の視線に比べればまるでハワイの日差しなので気にもならない。
まぁ、実際のところ俺自身『なんで、俺?』って部分が全くわかっていない。
自分で言うのもなんなんだが、決して美形とかイケメンなんかではない。
さらにはっきりいえば人生26年生きてきて初めての彼女が彼女なのだ。
さすがに童貞ってわけではなかったが、それでも女性に押し倒されるのは人生で二度目だ。
一度目は中学生のときに家庭教師のお姉さん(大学生)に部屋に連れ込まれ、上に跨られ…
って、この話は本編には関係ないので割愛するのだが…その時の様子をダイジェスト版で説明するとこんな感じになる。


369 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:23:53 ID:1SfiEejc
その当時の俺は彼女に憧れていた有象無象の一人だった。
付き合う?そんな贅沢というか夢を見るほど子供でもなく「当たって砕けろ!」と、告白できるほど勇気もなかった。
まぁ、そんな俺と彼女が携帯電話の番号を交換する機会を得たのはまさに偶然だった。
ご近所に住む『コードギアス・反逆のルルーシュ』に登場する『コーネリア』にそっくりなお姉さん(以下、こーねりあさん)
とは近所ということもあり、ほどほどには親しかった。まぁ、近所だしね。
そのときの俺は迷惑メールにうんざりしており、偶々メールのアクセス制限をしていたのだ。
にもかかわらず、俺はそのことをすっかり忘れてこーねりあさんにメルアドを教えていたのだった。
ぶっちゃければこーねりあさんも高嶺の華だったのだが語学関係の話題で盛り上がり、それがきっかけで…と言うわけなのだ。
「ねぇ、こーねりあさんがPさんにメール送っているんだけど届かないみたいって言ってるんだけど?」
そんな風に話しかけてきたのは千鶴さんだった。すぐさまメールの設定を確認すると思いっきりアクセス制限。
うわぁっちゃぁ~…やってもぉた…と焦りながら制限を解除する。
「ねぇ、ついでに私にもPさんのアドレス教えてよ。私のアドレスも教えるしさ。」
そんな突拍子もない提案が突如真後ろから聞こえる。え?なんで?と思いながらも快諾し、彼女のメルアドをゲット。
「これで、もし、こーねりあさんに連絡がつかなくても私経由で連絡できるでしょ?」
とは彼女の言だが、よく考えなくても制限を解除した今となってはその必要ないんじゃぁ…などと思いはしたものの、
『断る理由?はて南蛮渡来の飛び道具でござるか?』
と素直に友達への道を一歩前進したことを喜んでいたわけだ。
 で、まぁそこからは別段『今、どこで何してるの?』とか『どうしてメールくれないの?どうして?どうして?どうして?』
と、ヤンデレ的な展開があるわけでもなく、まぁ、適当に日常的などうでもいい内容でメールのやり取りをしていた。
内容は『こんど飯でも食べにいかね?』とかそういう類のものだったと思う。もちろんこーねりあさんを交えて…のつもりだった。
 が、ある日のメールのやり取りのどこにそういう要素があったのかは皆目見当がつかない。だが、結果的にとんでもないことになった。
会社も終わって家に帰る途中、何気なく、彼女宛にメールを打ったのだが、その内容は
『今日は寒いね~♪こんな寒い日は鍋なんかいいよなぁ。最近は一人鍋とかあるしジャスコで買い物して鍋でも食べて温まるに限るね。』
こんな程度の他愛もないメールだったと思う。
『鍋いいねぇ♪そーいや、私も最近鍋なんて食べてないかも…こんな話をしていたらおなかすいたかも…』
と、結構迅速に返信メールが届く。別段深く考えず
『じゃぁ、一緒に鍋食う?』
と短いメールを送信。はっきりと断言できるが期待なんてしていなかった。むしろ
『あはは、また今度。みんなで一緒に鍋でも食べようね♪』
これが俺の予想した最上級の返信だったはずだった。しかし、実際の返信メールは俺の予想の斜め上を行っていた。


370 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:24:38 ID:1SfiEejc
『食う、食う(゜ワ゜)ノはらぺこり~にょだから鍋食べるよ~♪』
……え~!…っていや、まて。これは策略だよ。『げぇっ、関羽!』と驚いては負けだ…
ごしごしと目を擦り、もう一度画面をみるとそこには間違いなく、
『食う、食う(゜ワ゜)ノはらぺこり~にょだから鍋食べるよ~♪』
の文字が見える。冷静に考えれば『はらぺこり~にょってなんだ?』
と突っ込みを入れたいところだが、まぁその当時の俺にはそんな余裕はなかったわけだ。
…どうする?どーするよ!とりあえず、鍋は鍋でも居酒屋か『さと(和食レストラン)』あたりで鍋でも突くか?
家に呼ぶ?ちょっとまて、そんな選択肢は常識的に考えてないだろう…
と、ここまでの思考に費やした所要時間はおおよそ5秒。神速の速さで返信だ!
『えっと、どこか居酒屋か「さと」あたりでいい?それとも別の店でも行く?』
…我ながら微妙な返信だが、まぁこのあたりが無難な線だろうと思っていた。
ぴろ~ん♪ 
をっ、もう返信か。
『外で食べるのは嫌だなぁ~。君の家で食べよ?』
えっと…この人は男の家に一人で乗り込んで鍋を食うと仰っているのですか?
ってマジで?いや、冷静に考えるんだ。be cool…be cool…
ふむ、読めたわ…もし万が一俺が千鶴さんに手を出すとする。
…するってぇと間違いなくこーねりあさんに通報される
…俺死亡(byこーねりあさん)の図式が読めておられるから安心しておられるのだな?
ふむふむ、しかし、これは友達になる千載一遇のチャンス!逃す手はない!と、喜び勇んで返信する俺。
『おっけぇ、じゃぁどうしよ?俺の家知ってたっけ?』
『んっと、メールめんどくさいから後は電話で話しよ?』
って電話番号ですか!早速メールに添付されていた電話番号を『ぴぽぱ』と押せば聞きなれた千鶴さんの声。
まぁ、ちょいと端折ると千鶴さんの家の近所に迎えに行き、
一緒にジャスコでお買い物♪
その時点で鍋の具材&鍋&コンロ&器を購入…
いや、一人身の家に大きい土鍋はないんだってば。


371 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:26:09 ID:1SfiEejc
買い物を済ませ一路自宅へ。走らせる車はマツダのデミオ君。道中の会話は
「今日は寒いね」「そだねぇ」「鍋なんて久しぶりだから楽しみ」「そだねぇ」
緊張しすぎだ…俺。それもそのはず、助手席の千鶴さんはやっぱりというか可愛い。その上、二人だけの空間。
まるで外から見たら所謂(いわゆる)「かっぽぉ」って奴ですか?
な状態なわけだ。緊張しないほうがどうかしていると言うものだ。
ほどなく自宅に到着し千鶴さんをエスコートし、自宅に招きいれる。
ああ、日頃からこういうこともあろうかと部屋を掃除していてよかったなぁ…と思う瞬間だった。

こつ…こつ…こつ…
時計の針の音だけが静かに部屋の中に響いている。時刻は既に12時を5分程回っている。
楽しい鍋タイムは3時間前に終了し、コーヒー片手に雑談タイムに突入して既に2時間が経過していた。
俺と千鶴さんはその居場所をテーブルからシットアップベンチ(俺)と、椅子(千鶴さん)に移し、向かい合って座っていた。
正直にそのときの俺の心境を表現するなら。
「えっと…いつになったら『そろそろ帰るね。送ってくれるかな?』と言い出してくれるんだろう?…いや、ここは
『もう、遅い時間だから、そろそろ送るよ』
とでも言えばいいのだろうか?いや、千鶴さんと過ごす時間が嫌とか言うわけじゃない。むしろ、嬉しいし楽しい…のだが、
なんで俺は理由もわからずに緊張しているんだろうか…」
こんな感じだった。イメージで言えば蛇に睨まれた蛙。要するに『唐突過ぎて何がなんだかさっぱりわからん。』という状況なのだ。
なんで?Why?と言った単語が頭の中で踊りだす。思わず、『もしかして千鶴さんも俺のことが?…』とあり得ないことを想像してしまいそうになる。
落ち着け…落ち着け…それは妄想だ。俺が千鶴さんをいいなと思うのは当然だとして、千鶴さんが俺に興味を抱く要素がどこにあった?ないだろ?ないはずだ。
ということで、その可能性は却下。あり得ない。
 そんな出口のない問題が頭の中で無限回廊を形成し始めたとき、突然目の前の彼女は立ち上がり


「あなた…私のことが好きなんでしょ?」


千鶴さんは深く静かだが力ある落ち着いた声で俺を見下ろしていた。


372 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:28:58 ID:1SfiEejc
えっと…え?…あ、まぁ、そうなんですけど…え?なんでそんなこと聞くんですか?
…パニックと言うのはこういう状況を指すんだろうなぁと思うのだが、
そのときの俺にできた行動は彼女から目を逸らし「え…」と呟くことだけだった。


「私にはわかるのよ。あなた私のことが好きなんでしょ?」


曇りのない目でじっと見つめられる。


「目を逸らさないで…」


駄目だ…目を逸らしてはいけない。嘘を言ってもいけない。
嘘…なぜ嘘をつく必要がある?彼女のことが嫌いなのか?そんなわけはない。
だが心の準備ができていないだけだ。
誰だってそう思うだろ?この場で『うん。君のことが好きだったんだ』と言ってその後どうなる?
『私もあなたのことが…』そんな展開があると思うのか?
『じゃぁ、なぜ彼女はそんなことを俺に聞くんだ?』
『もう、二度と誘わないで。迷惑だから』か?
いや、今はそういう話じゃないはずだ。先ほどまでの和やかな時間はなんだったんだ…
ああ、もう、訳がわからない!
 人間パニックになったり、追い詰められたりすると、開き直るか、或いは更に閉じこもるしかないのだが、
私のこの時にとった行動は後者だった。
少しでも彼女から好意を感じていれば多少の自惚れをもって希望的な観測に身を委ねられたのかもしれないが、
残念ながら、そういう予兆も前兆もなかったのだ。


「あなた…私のことが好きなんでしょ?」


もう一度、同じ口調で彼女が尋ねる。
なんというか、こういうシーンには見覚えがある。
イメージするのは、

『耕一さん…あなたを、殺します』

と告げる柏木さんちの千鶴さんの姿。
夜とはいえ、電気はちゃんと点灯しているはずなのに、どうしてこんなに部屋の中が暗いんだろう…
いや、別に殺すもなにも言っていないのにそういう風に感じるってどうよ?
いや、違う。これは最後通牒?振り絞るんだ…勇気を…
逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だっ!

「…うん」

…これの何処に振り絞られた勇気っていうのが存在しているのか夜通し聞かせてもらいたいもんだ。
しかし奇跡が起きたのか、想像していた千鶴さんによるファイナルヘブンの発動はなんとか避けることができたようだった。


373 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:31:41 ID:1SfiEejc
千鶴さんはその言葉を聞くと私に歩み寄り、ネクタイをぐいっと引っ張り、
「そっか…じゃぁ…私としたいの?」
にやっと邪悪な(そう見えたんだから仕方がない)笑みを浮かべると、再び私の瞳の奥を覗き込んでいた。
…死体?…いや、したい?何を?えっと、
ここってば回答を間違うと一気に死亡フラグ発生のヘブンズフィール?いや、まて。彼女はなんていった?
『私としたいの?』…これは間号ことなく、『あれ?』いや『それか?』…いや…もしかして…

A キス B 肌に触れる。 C えっち D ゲーム

さてどれを選ぶ?間違えれば包丁で『超究武神覇斬』が飛んでくるかもしれない…そんな恐怖に負けた俺は勝手に答えていた。
「えっと…なにを?」
…やってしまった…タイムオーバーにこそならなかったもののこれ最悪の回答じゃないか!
思わずドラえもんがいれば過去の俺を抹殺して欲しいと真剣に思ったものだ。
「なにって…えっち、セックス、メイクラブ、性交…要するにそういうことがしたいの?…って聞いたんだけど?」
…ど真ん中直球ストライクですか!
…いや、千鶴さんはそういう意味での恥じらいと言う部分ではちょっと感覚がほかの人とずれているなぁと感じることは多々あったけど、
ここまで直球に言われたのは初めてだった。
したいか?したくないか?決まっている!
したいに決まってるじゃないですか。しかし、これが何かの罠だとしたら?
『Pさんは私の身体が目当てなんですか?』
いえいえ、そんなわけはないです。
千鶴さんのキャラクターというか性格と外面全部がいいなぁ…と想い憧れていたのです
…なんてこっぱずかしいことを言えるわけもなく、かといって「したくないです」なんて言えるわけがない。
「…うん…」
「うんって…どういうことなの?したいの?したくないの?」
「…それは…したい…です。」
「じゃぁ、しよっか?」
えっと…どういう話の展開があればそういう結論に達するんですか?
…え?あ…戸惑う俺を無視し、押し倒し、ネクタイを剥ぎ取り、手首を縛り、ワイシャツのボタンを外し……

…気がつけば朝の5時。
いや、悪いのだがエロシーンは皆の心の中で想像してくれ。
そしてその想像はきっとそう間違っていないはずだ。

…夢か?と一瞬思ったのだが、俺の隣で可愛い寝息を立てて眠っている千鶴さんの姿に
「夢じゃなかったんだ…」
これまた陳腐な台詞を吐き、さらに陳腐なことだが自分の頬をつねる。
…痛い…やっぱり夢じゃねぇ!えっと…えっと…どうする?もうすぐ俺は会社に行かなきゃならない。
えっと…えっと…えっとぉ!と俺が相変わらず混乱していると、
「あ…おはよ♪」
可愛くシーツから顔を出している彼女の姿。
「おはよ」と挨拶を返す俺。うっわぁ、顔はおそらく真っ赤だ。
「会社…行くの?」
「ああ」と、ぎこちない返事をし、「君はどうするの?」と、尋ねる。
「今日は仕事お休みだから…このまま寝てていい?」
くわぁっ!可愛い…とゆーか、いいのか?俺。こんな幸せで…まさかこれって死亡フラグじゃないだろうな?
…いや、まぁ、まて。まずは彼女に返事をせねば!
「うん、どうする?鍵…渡そうか?」
「え?…鍵…もらっていいの?」
…え?それってもしかして「一緒に住まないか?って意味でのいいの?」
いや、俺的にはおっけぇ過ぎる位におっけぇなんだが、なんか話が早くない?と、思うものの。
「…うん」
と短く返事をする俺。嬉しそうに微笑む千鶴さん。千鶴さんは身体にシーツを巻きつけベッドから降りると、
「行ってらっしゃい…お仕事頑張ってね?」
そういうと唇に『ちゅっ♪』と可愛いキスをしてくれたのだった。
…えっと、このまま押し倒したい!そう思った俺を誰が責められようか…
「じゃぁ、行ってきます」
軽く手を振り、千鶴さんに見送られながら家を後にする。
世界が変わって見えるとはこういうことか!…そんな人生最良の朝を俺は迎えたのだった。



374 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:32:41 ID:1SfiEejc
以上、回想終了…その後は冒頭に書いてあるように、彼女は仕事の時間以外は
家に遊びに来たり、
ご飯を作ったり、
掃除をしたり、
一緒に寝たり、
えっちしたり
…半同棲のような関係になったわけなんだが…
『本当に俺でいいのか?』
そう聞くたびに
『嫌だったらとっくに傍にいないし、こういうこともしないと思わない?』
千鶴さんはそう笑って答えるのだが、しっくりこない。
『ねぇ…俺なんかのどこがいいの?』
『どこって言われると困るかも…全部?』
そんな風に言われて嬉しくないわけはないのだが、心の中の疑問符はなかなか消えてくれないのだ。
そんな千鶴さんとの関係なのだが、基本的には良好だといっていいと思う。
「そっか」と笑って受け流せばそんな疑問符なんて気にならないと思っていた。


375 :実験的作品 [sage] :2007/06/14(木) 09:34:27 ID:1SfiEejc
さて、話を戻そう。
例のDVD(涼宮ハルヒ)の件は
「ま、いいんだけどね」
絶対にどうでもよくなさそうな雰囲気を漂わしながら千鶴さんがそのDVDを俺に渡すと、何事もなかったように掃除機をかけ始めるのだった。
どういうわけだか、千鶴さんは妙にオタク系の物品に対する嫌悪感というか、忌避感が強かった。
「浮気?できるのならしてもいいし、できれば私にわからないようにしてね?」
とか
「別にオナニーをしちゃ駄目なんて言わないわよ?おしっこするのと一緒で生理現象でしょ?」
…いや、まぁ…なんというか浮気に関しては甲斐性もその気もないので出来ないしする気もないのだが、オナニーに関しても「理解のある彼女でよかった」と安直に喜べなかった。
俺は性癖的に見られて悦ぶ属性っていうのは皆無な性質(たち)で、要するに一人せっせと自家発電をしたい!と主張するわけです。
で、ある日、TUTAYAでAVを借りたわけですよ。及川奈央の『裏・及川奈央』だったと思う。まぁ、若者なら誰でも経験のある行動だと思うのだが、急いで家に帰りレッツ・セットアップ! 
そして画面上で繰り広げられる痴態。ズボンをずらす俺。速度を上げるピストン。…ぅっ…行きそうだ…


『へぇ…いきそうなんだ…手伝ってあげよっか?』


…ぇぇぇぇぇ!心臓がどっきゅんと奇妙な音を立てて跳ね上がる。椅子から飛び上がり振り替えると、見慣れた千鶴さんの姿が…
「え…え…ぁ…」
浮気の現場を押さえられた間男の気持ちってどんなんだろ…いやいや、まずは言い訳だ…
ってここまで決定的な証拠(現行犯逮捕)があってなんの言い訳ができるっていうんだ…

「別に?…P君の射精までコントロールしようとは思ってないし…いいよ?続けて」
…いやいや、続けてってそんな千鶴さんに見られながらオナニーできるわけないだろ!…
とは言えずに、あうあう言っている俺の隣にちょこんと座り、
「あれ?ちっちゃくなっちゃった…・・・えぃ!えい」
って、千鶴さん!何やってるんですか!指先でつんつんと俺の愚息を突き、指先でつつぃとなぞる。
すると愚息は正直にまたむくむくと大きくなって…って、駄目ですよ!
「うふふ…大きくなってきちゃったね?ねぇ…P君…どうして欲しい?」
…どうしてって…え?…どうして?…え…
「このまま指でして欲しい?それとも口?それとも足?…それとも…私に入れたい?」
…えっと…大変嬉しい申し出なのですが、こう、なんというかそういう問題なんでしょうか?

とまぁ、このように色々な意味で理解ある彼女なのだが、何故だか二次元系に関しては冷たい視線と、僅かな殺意を感じる。
それとは対照的に、及川奈央であろうと笠木忍であろうが三次元エロDVDに関しては別に怒ったりしないのだ。

なんでなんだろ…

本人に恐る恐る尋ねても
「別に?」
どう見ても不機嫌そうな顔でぴこぴことMHP2をプレイするばかりだった。