74 :実験的作品 [sage] :2007/07/01(日) 00:18:28 ID:llysDH3v
投下します。

「ねぇ、P君はどういうのが好きかな?」
そのお店の中には、なんともいえない雰囲気が漂っていた。
一言で言えば特殊な衣装や特殊な用途に使う物品が並んでいるお店。
コスプレ……と言ってしまえばそうなんだろうけど、どうして黒や赤系統が多いのだろうかと、思ってしまう。
なんというか、普通のオタク系のコスプレ衣装を売っている店とは毛色が違うというか…
革やエナメルの質感がなんとも言えずにエロティックで、壁に並んでいる手錠をはじめとする拘束具や多種多様な鞭の数々がどうも本物っぽいといいますか……
もしかしてここは本物のSMグッズのお店なんでしょうか。
しかも、千鶴さんはまるでオタク系の店での俺のように、ボンテージなどを手に取り身体に併せ
「どうかなぁ……似合う?」
などと返答に困る質問をしてくれたりするのだ。
いや、似合いますとも、似合いすぎてまるで本職の女王様っぽいといいますか。
いえ、可愛いんですよ?可愛いのですけど、可愛い前になんと言いますか黒いオーラといいますか、
彼女食べる人、俺食べられる人って立場を自覚させられるんですけど……
「P君ってこういうのは嫌いだった?」
いや、嫌いじゃないです。寧ろ好きなほうだとは思うんです。
ただ、二次元で妄想しているのと実際に目の当たりにするのは違うんです。
なんといいますか、縛ったり鞭を打ってみたり、拘束してみたいと思いますけど、スキルも度胸も甲斐性も場所もないですし。
第一、千鶴さんにそんなことできっこないす。
 緊張のあまり押し黙る俺。いや、人間緊張すると喋れないといいますか、
「嫌いじゃないけど……」
けど、なんだ!けどって。
素直に好きと言えなくて、といいますか俺Mじゃないと思うんです。
いや、そりゃいつも襲われてばっかりのヘタレな俺ですからMと間違えられるのも仕方がないのはわかるんですけど、妄想世界では何度も千鶴さんにあんなことや(以下文部省検閲につき削除)をしているんです。
 と、気がつけば千鶴さんは手に黒い袋を手に持って俺の傍に佇み、
「じゃぁ、お昼御飯でも食べにいこっか。」
俺の手をとると、店の外に引っ張っていく。
えっと、その袋の中にはなにが入っているんですか?千鶴さん。


75 :実験的作品 [sage] :2007/07/01(日) 00:20:35 ID:llysDH3v
気がつけばいつものオタク系店舗にいる俺と千鶴さん。
って、どうして千鶴さんがこの店を知ってるんですかっ!!
俺はこの店の痕跡物を家に残したことはないはずだし、この店の話をしたことだってないはずなのに。
そんな俺の思いを知ってか知らずか店内を見て回る千鶴さんの姿。
おもわずその姿に驚き、そそくさとその場を立ち去り何事かと遠方から千鶴さんを窺う野郎に、動かざること山の如しとエロマンガを物色する猛者たち。
そんな中に立ち入り、おもむろに一冊のエロマンガを手に取り
「P君、こういうの好きでしょ?」
ええ、好きですけど周囲の視線が死ぬほど痛いです。なんというか、空気が悪いっす。
「この人の本持ってたよね?」
ええ、持ってますっていうか、どうしてそんなこと知ってるんですか?
「これまだ持ってないよね。買うの?」
買いたいですけど、今日はなんというか買えるような雰囲気じゃないですっす。
「こういう人形はP君興味ないの?」
いえ、あるんですけど、家に飾れないんです。ほら、俺覚悟が足りない人ですし。
というか落ち着いて買い物をする雰囲気じゃないというか、千鶴さんはどういう店舗なのか見学するために来たようで特に何を買うわけでもなく
一通り見終わると店を出てしまった。その際に言われた言葉が俺をどきりとさせた。
「今日は何も買わないの?」
今日はって……


76 :実験的作品 [sage] :2007/07/01(日) 00:22:12 ID:llysDH3v
次に向かったのは所謂ビデオレンタル……なんだが、どうして千鶴さんがそのコーナーにいるんですか?
「ねぇ、P君。どういうのが面白いの?」
おもいっきりアニメのコーナーの前でにっこり微笑む千鶴さん。
 なんなんでしょう……この、死刑直前に刑務官が見せる
「何か最期に言い残すことはないか?」
ちっくな優しさというか違和感は。
しかし、無言でいるわけにも行かない。無難にアンパンマンをお勧めするべきだろうか。いやいや、ここはヅブリの映画を……
「あ、これ確かP君、これのゲームもってたよね?」
はい、よりによってそれですかぃ。
絶対にオススメしてはいけない上位ランキングぶっちぎりで1位のそれを選びますか。
って、待て。うえいとあみぬぃっと。
どーして千鶴さんがそのゲームを持っていることを知っているんでしょ?
あれはデスノートばりに厳重に秘密の机の奥にしまいこんだはずだし、侵入者の形跡もなかったはずだが……。
いや、まて。
待つんだ。
落ち着け。
ここは無難に否定してみるのはどうだろう……
いやまて19話や20話を避ければ単なるハーレムアニメに過ぎないのだから、1話だけ見せてみるのはどうだろうか?
いやいや、キャラクター物のアニメは避けるべきだろう。せっかくあの千鶴さんがアニメに興味を持ってくれているんだ。
内容のあるアニメを見せてみるのがいいのだろうか?ならなにがお勧めだ。お髭のモビルスーツ?いや、ルパンルパーン?或いは努力と根性?
 と、とりあえず無難なものを4本選ぶと、素直に微笑む千鶴さん。
「へぇ、楽しみ♪」
……あの、あなた本当に千鶴さん?


77 :実験的作品 [sage] :2007/07/01(日) 00:25:12 ID:llysDH3v
家に帰り、ビールを片手に千鶴さんとDVD鑑賞。
夢のような光景のはずなのだが、どうにもこうにも千鶴さんの顔は真剣そのもので、まるで教育番組を見る留学生のように画面を凝視し続けている。
なにを考えているんだろうなぁ、などと推測するが微妙にわからない。急にオタク文化というか俺の趣味に理解を示してくれた背景に一体なにがあったんだろうか。
いや、仮にそうだとしても、人には見られたくない暗部ってものがある。
俺はこっそり隠れて独りこそこそとオナニーしたい性質だし、見られて恥ずかしい部分ていうのはある。
そりゃ千鶴さんとオタク系の会話ができるようになることはある意味歓迎するべきことなんだと思う。
だが、何かが違う気がする。
千鶴さんがこのことがきっかけで腐女子化してしまうのも俺のエゴなのかもしれないが千鶴さんにはこのままでいて欲しいと思っていた。
そりゃ確かに俺も男なんだから都合のいいことを思ったりもするさ。
だが、なんというか千鶴さんは高く気高い尊い存在であって欲しかった。
ある意味、俺なんかと付き合ってくれているだけで贅沢な話なのだが、それが原因で千鶴さんが駄目になってしまうのはいやだった。
だからといって千鶴さんと別れることなんてことも当然できない俺なのだ。
そうだ、認めよう。俺はこんなに駄目な奴なのにどうして千鶴さんは俺なんかと付き合ったりしてくれるんだ。
金も顔も名声も甲斐性も将来性もない俺なのにどうして千鶴さんはこうまでしてくれるんだ。
千鶴さんにいったいなんのメリットがあるんだろう。

その夜、千鶴さんはあの店で買ってきたあの衣装を着てくれた。
俺は初めて千鶴さんに命令をした。
いや、千鶴さんが命令して欲しいとお願いしてきたのだ。
わけがわからない。
でも、そうしないといけない不安に駆られた。
そうしなと千鶴さんがどこかに行ってしまうような気がした。
恐怖と背徳感。
いつもは見上げる千鶴さんの顔を俺が見下ろしている。
ぞくりとする。
そしてたった一言がきっかけで何かが弾けた。
「咥えてよ。」
その夜、初めて俺は無我夢中で千鶴さんを自分の物にした。
最終更新:2008年08月23日 14:51