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406 :リッサ [sage] :2007/07/22(日) 19:14:14 ID:6I9RMany
 「ヴァギナ・デンタータ ①時坂 歩」

タタタタタ…深夜、昼間の喧騒とは打って変わり今はもうすっかり一通りの少なくなった
街外の路地を、僕はわき目も降らずに走っていた。
…何故かって?それは勿論僕が「奴ら」に追われてるからさ…冬の寒い中で、だらだらと
汗をかきながら急いで走り出す僕の背後には巨大な化け物が迫ってくる…姿は蜘蛛によく
似ているがその全長は六尺近く、鋼のように黒光りする足とぎらぎら光る目玉が印象的な
生き物だ…やつらの目的はただひとつ、人間を食らうことだ…どてん!!と、慌てて走りす
ぎたせいか、地面に足を取られた僕は大きく転んだ。
「ヴシャアアアア!!」…蜘蛛形の化け物は奇妙な声を上げ、強酸性の涎を垂らしながら僕に
迫ってくる…最近はやりの伝奇ものならばここで刀でも持った小柄な少女が助けにくるんだろう
けど…僕の場合、実はそんな「少女」…後に説明する、まあ僕の知り合いなのだが…に助けを
求める前にまだやるべきことがあったりするのだ。
 「ギシャアア!!」…かちん、バララララララララ!!!!。
 グギャアアアアア…蜘蛛の化け物は絶叫を上げる。無理もない、僕が懐のホルスターに携帯し
ておいたサブマシンガン…TEC9のフルバーストを見事に顔面に食らったからだ。使用弾である
9ミリゴールデンセイバー弾の威力は伊達ではなく、見事に蜘蛛の化け物の眼球および口の部
分の装甲を吹き飛ばした。
 「まだまだああああああ!!!」ババババババババババババ!!!!!…昆虫タイプの弱点は
関節の付け根がもろいことだ、目を潰されて暴れまわる蜘蛛の化け物の顔面周辺及び足の付け根
に容赦なくフルバーストで弾丸を叩き込んでいく。がちん!とTEC9が最後の弾丸を吐き出してホ
ールドオープンするのと同時に、蜘蛛形の化け物の足の一本が吹っ飛んだ…よし、このぐらいで
いいだろう。
「月乃、後は頼んだよ!!!」
 僕がそう叫ぶと同時に、路地に面した三階建て雑居ビルの屋上から…「彼女」…月乃鞠は
一気に飛び降りた!


407 :リッサ [sage] :2007/07/22(日) 19:18:55 ID:6I9RMany
 「ヴァギナ・デンタータ ①時坂 歩」
黒いセーラー服と、それにまとわり付いたように伸びる黒髪、さらに切れ
長の蒼い瞳が印象的な彼女が上空から飛び降りてくる姿は、ある意味とてもシュールだった。
 「ギシャアアアア!」…涎をたらしながらなりふり構わず暴れまわる蜘蛛形の化け物の頭上
に彼女が接近したとき、月野の腰の部分から…ズブリ!という音とともに、まるでアバラ骨の
ように並ぶ牙が生え始めた、牙が一気に伸びると同時に彼女の体はそれこそアジの開きの
ように真っ二つに割れ始め、まるで口だけが空に浮いているような…そんな形容しがたい姿
になった。ばくっ!バリ!グチャ!グチャア!!グシャアアア!!!・・・鞠が変形した巨大な口
は一気に蜘蛛を飲み込むと租借した、時折むなしく蜘蛛が叫び声をあげるが、じきにそれも収ま
るだろう…。
 懸命な方ならもうお気づきだろう、僕こと時坂 歩は彼女…月乃鞠の戦いをサポートする、いわば
おとり件罠として、ここ半年ほど彼女とともに化け物…エスという名前らしい…と日夜戦っていたのだ…。
 どさ、という音とともに、口から人間に戻った彼女が地面に落下する、もともとエスと人間のハーフ
という生まれで、生まれたときからあの口に変身する力を授かって、日夜一人戦っていた彼女だが、
何故か変身直後にはこうして顔から地面に落下してしまう癖を持っている…日によっては受け止めて
あげているのだが、いかんせん今日は相手が相手なので、強酸性の体液を食らったらたまったもので
はないので非難していたのだ…いそいで彼女を抱き上げると、頭を打っていないか確認して、顔をウエ
ットティッシュで拭いてあげることにした…真っ赤に顔を染めた彼女の目は涙ぐんでいた。
 「大丈夫かい?月乃?怪我とかは?」「…うん、平気…それより歩の方こそ大丈夫?指とか溶けてない?」
 透き通るような声、それでいて今にも泣き出しそうな声を上げながら鞠は僕のほうを見た。
大丈夫だよ、という合図をこめながら軽く彼女の背中をぽん、とたたくと彼女は笑顔になった。
 「…ごめんねいつも」 「気にしないでよ、僕が好きでやってるんだから」



408 :リッサ:6I9RMany :2007/07/22(日) 19:21:25 ID:6I9RMany
「ヴァギナ・デンタータ ①時坂 歩」
もともとこの力を持っていたせいで、小さいころから戦いの連続だった月乃は異常なまでに自分
以外の人間が傷つくのを恐れて、自分から心を閉ざしてばかりだった…そうだ、初めて会ったときも
服をボロボロにして血まみれになりながら敵と戦っていたっけ…でも、だからって彼女が傷つきながら
戦うのを眺めているだけなのははおかしい、そう思って僕は銃を手にして彼女を手助けすることをあの
日誓ったんだ…。
「お疲れ様、月乃…そういえば今日はもう遅いし何か食べてから帰ろうか」「…私今…あれを食べたか
ら…」ぐるるるるるううう~…。
 月乃のお腹からかわいい音がした、まああの口の状態で食べたからといってそれが栄養ってことに
はならないのだろう…顔を真っ赤にしておなかを押さえた月乃に僕は笑顔で話しかけた。
 「そういうなって、この先の屋台のラーメンがすごくうまいから、なんだったらおごりでもいいんだよ?」
 月乃はうつむいたまま、顔をこくん、と揺らした。僕は、じゃあいこうか、といって後ろを向く。その瞬間
学生服の服の袖をくいっと引っ張られた。
 「いつも…ありがとう…」「…気にするなって…仲間じゃないか?」 
月乃の顔はうつむいてはいるが、その顔はとても嬉しそうだった。
今までなかなか笑ってくれなかった彼女が、ここ最近になってようやく笑えるようになって来たのが僕に
はうれしくて仕方なかった…出来ることならその笑顔をずっと守ってあげたい、そのためなら何をしても
いいと僕は、この日心のそこからそう思った。



409 :リッサ:6I9RMany :2007/07/22(日) 19:24:25 ID:6I9RMany
「ヴァギナ・デンタータ②月乃 鞠」
 「月乃ってさあ…告白とかされたことある?」
昼休み、ここ最近習慣になっていた彼…時坂くんとの屋上での昼食中、彼は私の作ったお弁当を
食べながらとんでもないことを言い出した。
「わ…私は…その…」
 答えられるはずはない、本当なら今日ここで私は彼に告白をするはずだったのだ…好きです
付き合ってください…と…彼のそんな問いを聞くだけで、自分の心が見透かされているような…
そんな気がして…顔が赤くなって、声が出なくなって…とにかく心がたまらなくなる。
「実は今日さ…後輩の小野さんに告白されちゃって…」
途端、私は手に持った自家製小豆蒸しパンを地面に落とす、その女の事なら知っている…たしか
よく彼の周りにまとわりついている女の名前だ…どうしよう、あの子は見た目はかわいいし、それに
話だってうまい、友達だってたくさんいて…そう、私がないものをすべて持っている…ダメだ、ダメだ
ダメだダメだ、彼はこのままでは絶対に彼女を選んでしまうに違いない、どうせ私なんか友達もいな
ければ綺麗でもない、それに話だって…ああどうする?どうするどうするどうすれば…。
 「あ、月乃、そのリボンつけてくれたんだ」
 彼は急に笑顔になった、そうだ、このリボンは彼が「そんなに髪が長いと邪魔だろう?」といって買って
くれたものだ…本当は汚れるから普段はつけたくないのだが…でも、今日は言わなければならない、
そう…私は彼が…彼が大好きで・・・。
「歩…その、私…歩のことが…す-」
「先輩ー!委員会の時間ですよぉ!!早く行きましょう!」「あ!ごめんゴメン!じゃあね月乃、また
放課後!」
 いきなり小野とか言う子が歩を連れて行ってしまった…私はただ一人、そのまま屋上に取り残さ
れる…目からは涙があふれ出ていた。



410 :リッサ:6I9RMany :2007/07/22(日) 19:25:39 ID:6I9RMany
ヴァギナ・デンタータ②月乃 鞠」
もう駄目なのかもしれない、そうとしか考えられなかった…残りの昼休みの時間はおろか、授業中
でさえ私の思考はマイナスな思いでいっぱいだった…クラスの違う彼から送られてきたメールのはこ
うかいてあったのだ…「少し見回りの集合に遅れます」と…確かに彼はクラス委員だからいそがしいの
だろうし、今日は曜日的にエスはものすごく出現しづらい日だ…でも、それでも、たとえそんなことは今
まで何度かあったとしても…おかしいとしか思えない、だって、だって彼は…。
 急に頭の中に想像が浮かびあがる、あの女と手をつないで遊ぶ彼の姿が…そうだ、あの女だ、あの
女が悪いのだ…あの女が彼を…空想は急転直下する、彼はあの女を家に連れ込み、そしてその清純
な唇をあの汚らしいメス犬の唇に近づけて…。
 「うあああああああああああああああああ!!!!」
 だめだだめだ信用できない、きっと彼は裏切る、だって私は化け物だもの!きっともう愛想が尽きたんだ!だめだもう飽きられたそう父さんや母さんのようにきっと私を捨てる気なんだもうだめだきっと愛して
くれないみんなで私を笑いものにする気だもうそんなのは嫌だ一人は嫌だうああああああああああ…
叫ぶだけ叫ぶと私の意識はそのままどこかに吹っ飛んだ、目の前がブラックアウトする…。
 …そうだ、それなら、あの女が消えればいいんだ、きっと彼は苦しむだろうけど私を見てくれるはずだ
…そのときは私が彼にされたように彼を癒してあげればいいんだ…そうだそうだ、事故に見せかければ
何も問題はないはずだ…ははは、あはははははははははは。
 そのとき月乃の本能が直感した、エスが一体郊外に発生したと。



411 :リッサ:6I9RMany :2007/07/22(日) 19:27:08 ID:6I9RMany
「ヴァギナ・デンタータ③ そして二人」
「エスが現れた、蜘蛛形タイプが1匹、郊外をうろついている、急ぐから逃げて」
小野さんとともに生徒会の買出しにいった帰り道、歩の携帯電話に月乃から打ち込まれたメールにはそ
んなことが書いてあった。しかしそんなことはどうでもいい…何しろ歩は今その蜘蛛から逃げ惑う最中で
急いで裏路地に入ったところなのだ。
「ああもうどうしよう…小野さん!とにかくそこのビルの中に入って!!」
「うあああ!!!は、はいい~」
歩は小野の肩をつかむと叫んだ、そしてその背中を押す、蜘蛛タイプは跳躍力が低い上にパワーも弱い
のでビルなどには登ることができないのだ…ビルの階段を駆け上がった小野さんの背中を見送るとすぐ
に、歩は正面を向いてテック9と、ノズル取り付け式の榴弾砲を構えた…月の画くるまでのじかんは分
からないが、これだけの装備があれば、ある程度まで倒すことは可能だろう。
 「ぎゃああああああああああ!!!!」
 「小野さん!」歩が反応する、今のは小野の悲鳴だ、急いで雑居ビルの入り口に駆けつけると…そこ
には数秒前まで小野さんだった肉の破片と…血液が散らばっていた。そしてその正面には…花の形を
したエスが…中心部分に取り付いた仮面のような顔を真っ赤にして…小野さんの足をクチャクチャ音を
立てながら租借していた。
 「う…あああああああああああああああああああああ!!!!」「ヒュー…ドガアアアアアアアン!!!!」
 何がなんだかわからない、何でここにエスが?月乃はた鹿に一匹だって言っていたのに?そう混乱し
ながらも敵を倒さなければと歩は榴弾を発射した、爆風で一気に自分も後方に吹っ飛んだが構うこと
ではない、急いで受身を取って…ざしゅ!。
 小気味いい音とともに歩の左手が何者かによって斬り取られた、目の前には蜘蛛形のエスがいる
…そう、蜘蛛方のエスのことをすっかり忘れていたのだ



412 :リッサ:6I9RMany :2007/07/22(日) 19:30:45 ID:6I9RMany
「あああああああああああ!!!!!!」バララララララララララララララララ!!!!!
 歩は泣き出しそうになりながらも蜘蛛型のエスの顔面にTEC9の弾丸をぶちまけた、玉が切れると
すぐにTEC9を蜘蛛の顔面に放り投げて、さらに腰のホルスターから取り出したバイジェスターモリナ
の引き金を引いた、片手の分グルービングは狂ったが、蜘蛛の片目をつぶすことには成功した…こう
なれば後はとにかく逃げて…。
 ずるり、と歩は足を滑らせた、いや違う、靴が…いや足のひらが…蜘蛛の体液で溶けてしまったの
だ…。
 「うわあ、うえあああ!あああああ!」
 どうしようもない状態、それでも歩はあきらめまいと腰元に忍ばせてあった手斧を引き抜いたとき…
ばくん!!と、蜘蛛が、例の口によって食われてしまった…今日は租借することなく、蜘蛛は一気に
ごくり、と飲み込まれる。
「月乃…」
そう呼ばれた彼女は、姿を巨大な口から人間の姿に戻すと、いつものようにこけることなく地面から
着地した…。
 その顔は、戦慄を覚えるほどに、まがまがしく笑っていた…。
 「…あはは、かわいそうな歩、でも仕方ないよね、あの娘にだまされてこうなっちゃったんだから…
でももう大丈夫だよ、あのわるいこはおはなのえすがたべちゃったから、…でもそのえすはわたしがた
べたから、もうあゆむはわたしがまもってあげるんだから、てがなくてもあしがなくてもいいんだよ、わた
しはあゆむがそばにいてくれれば、あははははは・・・」 
ぼろぼろと涙を流しながら、それでも笑って語りかけてくる月乃…歩は月乃の行動の理由を、ようやく理
解した。
「あははははは、そうだ、今度はあたしがもっとあゆむをたすけてあげる、きょうからわたしといっしょに
すめばいいんだ、しんぱいはいらないよあゆむ、ごはんのせわもといれのせわもわたしがしてあげる
からね、もうずっとずっと…」
「…ごめんね月乃、僕が…あんなことしたから・・・」「……」
 月乃の口から笑い声が消えた、歩はかすれた声で話しかける。
 「本当は今日、君に告白する予定だったんだ…大好きだ、って…でも君はいつも押し黙っていて、気
持ちがよくわからないから…君の気持ちを確かめたくて…小野さんに協力してもらってカマを掛けた
つもりが…生徒会の呼び出しが入って…本当にごめん、僕が軽率なことをするから・・・」
 「それじゃあ…うそ…うそお!!わたしは!勘違いで…うあああああああああああああああああああ
あああ!!!!ごめんなさい!ごめんなさい!ああああああああ!!!!!」
 月乃は大声を上げて泣き出した、それこそ子供のようにわあわあ泣いて僕に謝った…でももう、薄れ
る意識では、その顔も薄暗くてよく見えなかった。
 「ゴメン鞠…もう、守ってあげられそうにもない…」



413 :リッサ:6I9RMany :2007/07/22(日) 19:31:47 ID:6I9RMany
 「ヴァギナ・デンタータ③ そして二人」
明らかな出血多量と蜘蛛の毒の効果か、僕の意識は薄れて、呼吸も荒くなっていった…それでも
彼女の想いに答えるべく、僕は彼女の名前を呼んだ。
 「いやあ!歩くん!!!もう一人はいやなのお!!!」
 「だったら…そうだな…僕を、食べるとかは、どう?…」「へ?」
「あの口の状態で人を食べるとどうなるのかは知らないけど…食べるほど君がパワーアップしてるって
ことは…きっと、君と一緒に戦えるって事だと思うんだ…」「…そんなあ…」
 自分でも何言ってるのかよくわからないけど、それでも必死に思いついた、彼女の力になれる決断を
…彼女は僕の目が見えなくなるころにようやく了承した。
 「じゃあ最後に…」「…すうう…」
 呼吸が寝息に近くなり、意識がなくなりそうになる瞬間に彼女は僕にキスをした、そしてそのまま、
僕は彼女に飲み込まれていった、暖かくてやわらかい彼女の内部で、租借されて、自分という固体と
意識をうしなっていく感覚は甘美で…僕は意識を失った…。
 「これで…ずうっといっしょだね、歩…ふふふ、あははははははは…」
 月乃鞠は滅茶苦茶になった路地裏で一人涙を流し、ひざをついて笑っていた。

 それから二日後、月乃はエス狩りに復帰した、でももう一人での戦いではない、歩も一緒なのだ。
 「歩!!」月乃が口を開くと同時に、口の中心から飛び出た歩の手が、TEC9の弾丸を放つ。
 「…ありがとう…歩」
そういって、怯んだエスを月のは一気に飲み込んだ、租借を終えてもとの姿に戻ると、ぽん、と肩
を押されて様な気がした、きっと歩が背中をおしてくれたんだろう、何せ月乃と歩は心も体ももう一
緒になれたのだから…。
 「もう、これで一緒にいられるんだ…永遠に」
月乃の顔は、誰もが見たことがないくらいに幸せそうなものだった。                                   FIN