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475 :一週間 月曜日 ◆oEsZ2QR/bg [sage] :2007/07/26(木) 23:08:07 ID:JEMYQm8M
 ふぅ。まさか一日仕事になるとは思わなかったな。日曜日は一日中大阪で仕事だったよ。
 僕はぼさぼさの頭を掻きながら家路に着く。アパートの階段をカンカンと昇り、僕は部屋の前までやってくる。
 そういえば、先輩は……。
「居ない……」
 部屋の前に先輩の姿は無かった。
 まぁ確かに、僕が出てからほぼ二日経ってるんだ。帰ったのかも知れないな。
 郵便受けにささっている二日分の新聞紙を掴むと、僕はカバンから家の鍵を出した。鍵穴に差し込んで軽くひねりガチャリと開ける。
「さてと……明日は臨時休日だし……なにしようかな」
 玄関の扉を閉めて、鍵をかける。革靴を脱いでカバンを玄関先に置くと、僕はのびをしながらリビングの簾を開けた。
 次の瞬間目に入ったのは。
「な、なんだこれ……」
 荒らされまくった我が家だった。
 部屋の至る所に散らばっている僕の服、服、服。普段着ているポロシャツや仕事の時のカッターシャツ、さらには下着に至るまでリビングに散乱している。
 特にベッドの周りに散乱しているのが気になる。手持ちのパンツやTシャツ類のほとんどがベッド近くに密集していた。
「なんだ、この染みみたいなの……」
 ちょうどそこにあったパンツを掴む。妙に湿っている……。青いトランクスの股の部分が水分を吸って変色している。なんだか粘りとしていて気持ち悪いな。
「甘いにおいがする」
 匂いをかいで見ると、蜂蜜のようだ。甘ったるい蜂蜜とそれ以外の何かによって汚された下着。僕はトランクスをゴミ箱に突っ込もうとして、
そのゴミ箱の中身も荒らされていることに驚いた。
 ゴミ箱はひっくり返され、捨てられていたティッシュやガス料金の明細の紙、菓子のクズが乱雑に広げられている。ゴミ箱なんてあさってどうするんだ。
ゴミしか入ってないぐらいわかるだろうに。それなのにティッシュの一枚一枚に至るまで、いくつも中身を点検したようにくしゃくしゃのまま開かれていた。いくら僕でもゴミ箱の捨てたティッシュの中に貴重品は隠さないぞ。
「泥棒に入られたか……」
 ベランダから入ったのだろうか。僕はベランダに手をかけてみるが、鍵は閉まっている。ガラスを破った後も見られない。ベランダからじゃないのか。じゃあ玄関かな? いや、玄関も鍵はかかっていた。ピッキング?
 タンスを見ると全ての引き出しが乱雑に開かれている。
「あ、そういえば!」
僕は慌てて上から二番目の引き出しを覗く。
 中を大きく開けて、一緒に入れていた大量のミニアルバムの中を探る。ミニアルバムの束に挟まれて僕の全財産が記された預金通帳と判子があるのだ。
「あ。よかったっ。あった……」
 大量の写真の束の中に埋もれた中に、幸いにも預金通帳と判子があった。取り出してみるが、どうやら無傷のようだ。通帳も印鑑も無事とはなんたる幸運だろう。
 ぱさり、
 安堵していると、乱雑に詰まれたミニアルバムから一枚の写真が落ちた。ひらりと宙を舞い僕の足元へ。
 何気なくひろう。
「うわっ」
 その写真は僕が一年前、家族と一緒に宮島に行ったときに撮った写真だ。
 僕と妹が、瀬戸内海に浮かぶ厳島神社をバックに撮った女子高生の妹とのツーショット写真。撮影者は母。どこにでもある普通の家族旅行写真である。
「……なんでこんなことを」
 しかし、今手に持っている写真には、僕の隣でにこやかに笑ってピースしている妹の顔部分が、その部分だけ焼け落ちている。正確にはそこだけ火で燃やしたような穴が開いているのだ。
 そのせいで、隣に居る妹の首は無い。写真の向こうが覗ける。ちくわと同じだね。
 慌てて、僕は他のミニアルバムも開いてみる。
「顔が……」


476 :一週間 月曜日 ◆oEsZ2QR/bg [sage] :2007/07/26(木) 23:08:49 ID:JEMYQm8M
 黒線。ミニアルバム中の写真に移された人間の顔が、油性マジックで潰されていた。特に僕の母親から高校生の修学旅行のときのクラスメイトまで、全員ぶちゅぶちゅと塗りつぶされていた。
 潰されているのは全員女性だ。僕や男友達は顔は潰されておらず、女性の頭だけが消滅。
特に酷いのは妹だ。妹の写真だけは何故か黒線だけでは治まらず、宮島の写真のようにすべて顔だけ燃やされている。
 ……異常。異常すぎる。
「これは、泥棒じゃない……?」
 全ての写真に写る女の子の顔が丁寧に消されている。それなのに、貯金通帳は一切手をつけていない。
 そんな泥棒。いるか? いるわけない。金品目当てじゃないんだ。
 一気に背筋が凍る。
「……まさか、せんぱ……」
 そのとき。

 シャァァァァー……。

 ……水音!?
 音が。聞こえる。
 惨状に気をとられて気がつかなかったけど。
 バスルームから、シャワーの音が聞こえるっ!

 キュッキュッ。

 止まった。
 誰か居る?
「だ、誰か居るのか!?」
 僕はちらばった衣服に足をとられながら、バスルームに振り向く。
 ……人の気配。明らかに、バスルームの中から。
「……ごくり」
 まてよ。僕は今日帰って普通に家に入ったが、僕は一昨日この家から出るとき、ベランダから出たんだ。だから、玄関にはチェーンが掛かっているハズだ。
 それなのに、普通に入れた。
 もっと言えば。ベランダから出たんだから。出たはずのベランダは鍵などかかっておらず開いたままのハズだ。
 なのに。閉まっていた。
 僕の脳内名探偵、夢水清志郎がめんどくさりがりながら答えを導いている。
「…………」

 がちゃり……。

 バスルームから出てきたのは。
「うふ。おかえりぃ。みぃーくん」
 先輩だった。
 濡れた長い髪の毛を体に絡ませ、ぽたりぽたりと雫をたらしたまま、小さなバスタオル一枚を胸に当てて、この嵐が過ぎた直後のような部屋の中を平然と歩いてくる。
 左手には僕のトランクス。右手にはキッチンにあった厚手のフライパン。
「遅いよ。みぃーくん。ずっと私を我慢させただけでも酷いのに。一人で出かけちゃうんだもん」
 先輩はくすんだ笑顔で僕に話しかける。
「せ、先輩……」
 先輩はベランダから入ったんだ。僕が中に居ないことに気付いて……。
「待ってる間、ちょっと模様替えしてみたの。えへへ、みぃーくんが浮気してないかと思っていろいろと漁ったけど、合格。写真しか見つからなかったものね」
 じゃあ、やっぱり。この惨状は先輩が……。
「あ、う、あ……」
 声が出ない。僕はただ口をパクパクあけて、裸で近づいてくる先輩に恐れて動けない。
 先輩が淀んだ瞳で僕を見ている。そして情欲に溺れたように口からつつつーと唾液をたらしている。
そして、待ち望んでいた欲望を満たす期待で、体を艶やかに震わしていた。
「せ、せんぱぃっ お、落ち着いて……」
「みぃーくんっ!!」
 先輩は右手に持ったフライパンを大きく振りかぶった。

 耳元で何かがはじけた。

(続く)