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126 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/13(月) 18:53:05 ID:DnG/MSwT
キ道戦士ヤンダム~狂戦士

 それから三日後、パプアニューギニア沖における極東アジア軍と北イタリア及び欧州連合軍との戦いは熾烈を極め、
 両軍のロボットの残骸と兵士の死骸で南方の海は覆い尽くされていた。
 しかしそんな中でもくじける慶介ではなかった。慶介は沙紀とともに覇洋で前線を戦い抜き、ようやくヤンダム搭載船
 の確保に成功した。
 「これで…ようやく沙紀が救われるのか」
 手にはさっそくコンテナから取り出したヤンダムのアンプルを握って呟く慶介…しかし残念なことに
船を確保するまでに覇洋は装備と燃料を使いきり、その自慢の右手は完全に破壊されていた。このまま追っ手が迫れば、機体で
逃げ切ることのできない二人はただではすまないだろう。
 「…すまない沙紀、こんなところで…後一歩ってところで俺と心中することになるなんて…」
 「…ううん!希望を捨てないで慶介少尉!ほら、あれを使えば!」
 彼女の指差す先には、カーゴトラックに載せられたロボットが一台あった。
 「…いや、あれは調べてみたんだが…どうやら、ヤンダム常用者専用の機体らしくてな…お前や俺が
飲んでいるような強化薬での反応スピードじゃあ…」
 「…なら、私が飲んでみる!」
 「そんな…使用分量もきちんと量ってないってのに…第一拒否反応が出たら最悪お前が廃人になっちまうぞ!」
 「いいの、それに私…いつも慶介に守られてばかりだったから…」
 そういうと沙紀は慶介の手からアンプルを奪い取って一気飲みし、そのままロボットのコックピットに乗り込んだ。
 「…沙紀…」
 慶介は複雑な気持ちを抑えつつもロボット…後に慶介によってヤンダムと名づけられた白銀の機体…に乗り込んで
操縦用コンピューターを起動させた。
 「…あはははは、こんなシステムで動くのこれ?はっきり言って覇洋のシステム性能がゴミに思えてくるよ!これなら
敵機の百や二百…ははははははは!!!」
 あははあはは…と、テンションの高い沙紀のオペレート操作に不安を感じながらも慶介は必死に追っ手の敵ロボットと
交戦した。結果、敵側の新型機体であるペスカトーレMRB≠003五機は自軍の極秘開発された最強兵器であるヤンダムのビーム
チェーンソーによって海の藻屑にされてしまった。
 後に海中世紀戦争での極東アジア軍の完全優位を決定させる事件…ヴァリアント攻防戦である。
 
 


127 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/13(月) 18:56:27 ID:DnG/MSwT
「ねぇねぇ慶介、こうしてお買い物するのって久々だよね~」
 それから数日後、シンガポールに寄航したヴァリアント号のメンバー
は久々の休日を楽しんでいた。
 「うん、俺もすごく嬉しいよ…でも、さぁ…」
 「へ?どうしたの慶介?…何か…まさか何か不満でもあるのかなあ?」
 ほえほえとした声で答える沙紀、しかしその眼差しはどこか光を失ったような、とろんとした目に
なっていた。
 「手をつなぐなんて…その…恥ずかしいって言うか…」
 「嫌なの!?」
 「嫌違う!嫌じゃない!俺はこのままがいい!」
 すばやい沙紀の反応に慶介は即答した、それを聞いて、よかったよ~と沙紀は表情を綻ばせた。
 …おかしい、この反応は異常だ…慶介はここ数日の間…ヤンダムを服用してからの沙紀の異常
行動に恐怖を感じていた。
 服用薬をヤンダムにしてから、確かに彼女は以前のように発作を起こすことはなくなった…
しかし、普段は災害にあった当時のことを思い出すからやめてほしいといって握らなくなった自分
の手を、彼女は四六時中握り始めるようになったのだ、戦闘場面ではさすがに控えてくれと言って
はいるが、それもなかなか聞き入れないくらいに…彼女は自分をもとめ始めた。
 更にそうなると隊内にもからかいのうわさが流れ始める、…そのことを訂正させようかとたまたま声を
かけてきた女性仕官達に話しかけたところ…。
 「なんで…そんな女と話してるの!!!」
 沙紀は一気に慶介に詰め寄った、もちろん普通には詰め寄らない、軍服の襟部分
をつかんで軽がると慶介を持ち上げたのだ…そして自分の目を見つめること数秒後。
 「…そうだよね、慶介少尉は私しか見てないものね、あの女たちが勝手に少尉に
迫ってきたんだよね…なら、そんなビッチは粛清したほうがいいよね…あは☆」
 そういうなり沙紀は腰元の拳銃を士官達に向けようとした、あわや大惨事になる
ところだったが、慶介の必死の説得でその場は事なきを得たのだ…そして、その後
自室にてある程度落ち着いたところで彼女は…一気に慶介の唇を奪ってこういったのだ…。
 「慶介…もうずーっと私から離れないでね…」
 隣にいる沙紀の笑顔を見るたびに、彼の頭の中にはその記憶が浮かんだ…自分は彼女以外
の人間とは最初から付き合う気はなかったのだが、こうも日々疑われてはたまらない。
 「なあ沙紀…言っておきたいことがあるんだ…俺はお前をー…!?」
 沙紀を見つめようとして振り向いた慶介…その視線の先には信じられないものがあった。
 商店街のショウインドーに…今はこの世にいないはずのあの人物が写っていたからだ。
 「沙紀!こ…こっち来い!!」「うわあ!!何なのいきなり!!」
 「今…あそこに妹が…七海がいたんだ!!」
 「…ナナミチャンガ…ナナミチャン…」
 ぶつぶつとそう繰り返す沙紀を尻目に慶介はショーウィンドーに駆け寄った、災害に
巻き込まれてもう死んだ妹が街中に立っていたのだ…たとえそれが他人の空似であった
としても興奮するのは無理もない。慶介花は妹らしき人物に急いで駆け寄ってこう叫んだ。
 「おいアンタ…ひょっとして…七海じゃあないのか?」
 「…お兄ちゃん?」
 ショーウインドーで物欲しげに服を物色する少女…、彼女のお兄ちゃんと呼ぶその言葉の
先にいるのは間違いなく慶介だった。
 「生きてたのか七海…心配してたんだぞ」


128 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/13(月) 19:00:12 ID:DnG/MSwT
「生きてたのか…七海…七海!!兄ちゃん、ずっとお前を心配してたんだぞ!そうだ、
母さんは!?」
 妹に会えた嬉しさなのか、それとも気が緩んでいたのか…とにかく慶介は気づいて
いなかった、最愛の妹の目が…ヤンダム常用者特有の…死んだ魚のようなとろんとした
目になっていることに…。
「じゃあ行こう、お母さんも待ってるよ」
 ドゴッ!!…慶介に近寄ってきた七海は…慶介に抱きつくと見せかけて一気に鳩尾に拳を打ち込んだ。
 「かはっ!!…なな…み…!?」
 「ゴメンねお兄ちゃん、でも大丈夫だから、基地でお薬をもらえばお兄ちゃんも楽になれるよ…」
 「う…おがぁ…」
 声を上げれずにのた打ち回る慶介…おかしい…こいつはおかしい…何があったんだ七海
…しかも基地って…。
 ぱあん!!「きゃあ!!」
 七海の悲鳴が聞こえる、のた打ち回る慶介の背後に拳銃を持った沙紀が仁王立ちしていた。 
「…何してるの慶介…何でそんな妹なんか相手に何してるの!?」
 恐ろしく低い声で沙紀が静かにしゃべりかけた。 
「沙紀…お姉ちゃん…ふうん、そうなんだ…」
 「や…やめ…」ごん!!、と。
 両者に抵抗の意思を示そうとした慶介の頭部は沙紀の強力な蹴りを食らい、軍人としての
鉄壁の意思はブラックアウトした。 
 
 「おお、お目覚めか少尉…」
 気がつけば慶介はヴァリアントの医務室のベッドの上にいた、松高に聞いてみるとどうやら
ぼろぼろの沙紀が自分をここまで運んでくれたらしく、彼女もここにたどり着いてすぐにダウンしたそうだ。
 「そうですか…しかし一体何が…」
 慶介は混乱する頭を何とか落ち着かせようと松高に一部始終を話してみた、もちろん沙紀の無断発砲
のことは伏せておいたのだが。
 「やはりか…ヤンダムの副作用がそこまで迫っていたとは…」
 「副作用?なんですかそれ…だってヤンダムは!?」
 「あれは普通の人間にはそれほど影響はないんですよ
…普通の精神状態を保った人間が使用すればね…しかし依存心の強い人間が使用した場合…」
 「何だよそれ!それじゃ沙紀はもう…一生あのままだってのか?じゃあ俺は何のためにあんな
大量のヤンダムを…何のために…」
 「戦争に勝つための任務でしょう?それ以外の何者でもない」
 「あんた!!…っつ!!」
 激情に任せてつかみかかる慶介の腕を押さえて、松高医師は続けた。
 「…退役を進めますよ、もうこれ以上貴方がたはここにいるべきじゃあない…
これ以上服用を続けたらあなたまで…いや」
 松高は慶介の腕を振り解くと、医務室のドアを開けた。
 「もう貴方は自分の心の深い穴に飲まれている…それからもうひとつ、多分貴方の妹は
敵国の兵士…スパイかなんかだ…もうこれ以上ここでは戦わないほうがいいかもしれない、それじゃあお大事に…」
 ガチャリと医務室のドアが閉じた…考えをまとめるはずが余計に混乱した慶介は、意味もなく頭を掻き毟り始めた。
 「何だよ俺…俺は沙紀が救いたいだけだったってのに…くそおおお!!」 
 「…うん…慶介」
 慶介が叫んだ声でおきたのか、傍らのベッドで横たわっていた沙紀はむっくりと起き上がり…。
 ドグシャア!!…右ストレートで一撃で慶介をノックアウトさせた、沙紀はそのまま混乱している慶介に
馬乗りになった状態で次々に鉄拳を食らわせた。
 「あははははは!なんで妹なんか見てるの?どうして私を見てくれないのあはははは!!やっぱりお仕置きだよね!!
だっテ慶介悪い子だもん!!あはははははは!!妹だいすきなんてゆるさないもんあははははははは!!!」
 その後、慶介は意識が吹き飛ぶまで沙紀に殴られ続けた、ヤンダムによって強化された筋力での打撃は凄まじいものだった。
 



129 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/13(月) 19:01:54 ID:DnG/MSwT
「うぐ…ひぐ…ごめん…なさい…」
 「いや、お前に悪気があってやったことじゃあないんだ、気にするな…」
 ひとしきり慶介を攻撃した後、薬が切れたのか沙紀は急におとなしくなった
…そして冷静になった沙紀の思考は一気にパニックになり…こうなってしまったのだ。
 「ぐず…でも…慶介が誰かにとられちゃうって考えたら私…」
 「いや、もう何も言うな沙紀…」
 そういって慶介は沙紀を押し倒した。
 「俺がお前を守る、傷ついても、お前に傷つけられてもだ、もう俺はお前
を裏切らない…妹のことは…いざとなれば俺が始末をつける…だから…俺を信じてくれ…沙紀」
 「うん…はあ…」
 沙紀は全てを悟ったように目をつぶり、慶介の唇と、舌を受け入れた。
 
 「大好きだよ、慶介」
 
 数日後、慶介たちはパプアニューギニアからオーストラリア沿岸に攻め入るべく、ヴァリアント号
での上陸作戦を刊行していた…。
 「うおおおお!!これで十機!」
 相変わらず絶好調の慶介と沙紀のヤンダムコンビは、新兵器であるヤンダムのビームチェーンソーで
次々に敵を撃破していった。
 「いけるぞ沙紀!あと少しであの艦隊を!!…」
 「待って慶介!!後ろに敵が!!」
 ザシュ!!…ビームチェーンソーを構えなおそうとしたヤンダの右腕は一気に切り落とされた。
 「くそ!ブースタージャンプだ!!沙紀、ほかに武器は?」
 「待って!今右手にビームクッキングナイフを装着させるから!」
 ジャンプで一気に距離をとったヤンダム、しかし背後の機体はそれを構わずに脚部からミサイル
を連射した。
 「何だあれは…赤い機体、新型か?」
 敵と正対したヤンダムがメインカメラでその姿を確認する、敵機体は赤く、その姿はまるで
鎧武者のような無骨なものだった。
 「くそ!多弾数型の機体に勝てるかよ」
 「慶介!敵が…無線を出してる…っ!!」
 敵の無線回路をキャッチしたラジオシステムが、メインディスプレイに敵の姿を映し出す。
 「お前は…」「うそ…そんな」
 敵パイロットの顔は紛れもない…慶介の妹である南 七海だった。
 「お兄ちゃん…また会えたね、それじゃあまずは…悪い虫を駆除しなきゃ」
 ドゴゴゴゴゴゴーン!!!七海の乗る機体は、次々にミサイルを放った。
 「大好きだよ、お兄ちゃん…だから私のために…怪我して降伏してね」
 慶介は自分の顔から血が引いていくのを感じた、そして沙紀の…顔を見ることすらできずに
操作ハンドルを動かした。