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143 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/15(水) 15:33:03 ID:Pb+pi7en

化け物屋敷と僕
 ジジジジジ…音だけで蒸し暑さを象徴させるセミの声が響く中、僕は愛車であるトヨタの古い
 クーペのドアを開け、車を降りた。
 「暑いなあ…」
 大学二年生の夏、せっかく尋ねた自分の故郷…T県南部の奥地にある八幡村は、田舎ののどかな村
 というかつての面影すら残らないくらいに荒れ果てていた。
 見渡す限り山ばかりの平地に聳え立つ茅葺の集落は今にも崩れそうな状態になり、かっての農道は
 歩く余裕さえないような獣道と化していた。
 「こんなことで研究なんかできるのかなあ…」
 もちろん僕がかつての故郷とはいえ、こんな田舎の廃村に来たのには訳がある。僕は大学で民俗学を 専攻しているのだが、その研究の上でどうしてもこの村に来なくてはいけない理由があったのだ…。
 八幡村…かつてここは関東随一の「化け物ミイラ職人の里」として栄えていた村だった、わかりやす
く言うとこの村は偽者の人魚のミイラなんかを製造して都会で売り払い生計を立てていたらしいのだ。
 …なぜ「らしい」と描いたのかというと、実は僕はこの村に両親と住んでいたころの記憶が全くない
のだ…十二歳のときに僕の両親はこの村で火事にあい、僕は遠縁の叔父に引き取られたのだが…どうし
てもこの村での事と…最後の化け物職人だった両親の事を思い出せないのだ…。
 大学での研究のためと、自分の過去を探るため…取り合えず僕は叔父にもらった村の地図を手に、廃
村してから一回も手を付けていないという父の仕事場に向かおうとした…。
 「おう、あんちゃん、どこ行くんでや?こんなとこでよ?」
 いきなり背後から声をかけられた、ここ特有の方言がきついようだが、声は明らかに子供のものだ。
 「うわあ!!…って、君こそなんでこんな所に?」 
 僕の背後にいたのは、ひどい訛りにもかかわらず見た目の可愛らしいおかっぱの少女だった、服装は白いキャミソールにサンダルと麦藁帽子…夏らしく日焼けした表情は実に可愛らしくて…。
 「あれ…君どこかで…?」
 「へ?兄ちゃんどっかであったっけ?」
 「いや…たぶん気のせいだろう」
 彼女の顔はどこかで見たことがある…僕の記憶がそう訴えていた。


144 :リッサ ◆TKvIZfGFpk [sage ] :2007/08/15(水) 15:35:20 ID:Pb+pi7en
化け物屋敷と僕 ②
「へえ、君もこの村の生まれなんだ」
 それから数時間後、僕は勝手に父の仕事場まで着いてきた彼女…名前は海晴というらしい…と、父の
仕事場である廃墟で色々な資料などをあさっていた…廃墟とはいえ村人たちは定期的に村に戻って管理
を行っているらしく、小屋が荒らされた様子はなかった。
 「まあそう言ってもちっちぇえころのことだからよく覚えてねえけどよ、兄ちゃんはどんぐらいまで
ここにいたんでや?」
 「まあ、十二歳くらいまでだけど…どうもよくは覚えてないんだけどね…おっと、これは凄い」
 うっすらと積もった埃をどけて僕は文机に乗っていた資料を手に取った。本の様子からいって年代も
のの本だ…内容はどうやら剥製の作り方らしい。
 「そうけ…なーんにも覚えてねえんけ…お、こりゃあ良さげなもんだな」
 彼女は悲しそうにそう言うと、近くに落ちていた執刀用の刃物を手に取った…鋭利かつ複雑な形をし
たそれは、なぜか錆びひとつついていなかった…。
 「これでミイラとかの材料を切ってたんかなあ…どんな気持ちだったんかなあ…」
 ぞくり…と、背中に悪寒が走った。刃物を持った彼女の視線はあまりにも鋭い…。
 「と、ところで海晴ちゃんは何でこんな所に?」
 「ん?爺ちゃんがここの守役なんだけどよぉ、どおも最近足腰弱ってるらしくって、おらっちさが代
わりにきてんさぁ」
 「へえ、偉いねえ」
 「へ?そうかい?…いやあ照れんなあ」
 そんな感じで彼女の視線を刃物からそらしつつ、僕は彼女と他愛のない話をしつつも小屋の整理と資料あさりに没頭していった。
 
「本当にいいんけ?家に泊まってってもいいんだぜ?」
 夕方、彼女にそろそろ家に帰るようにと進めると、彼女はそういった、僕がテントでここに泊まると言い出したので心配してのことらしい。
 「大丈夫、君の家には迷惑かけられないし、それに僕は未だやることもあるからね。」
 「遠慮しなくてもいいんだぜ、どうせこの村のモンはみいんな家族みてえなモンなんだしよぉ…」
 「そう言うなって、じゃあここで」
 僕は彼女の家だというふもとの家の前に車を止めた…しかし彼女は車から降りようとせずにこう呟い
た。
 「…明日もまた遊びに行ってもいいけ?」
 「うん、別に構わないよ?」
 「ありがとうねお兄ちゃん…じゃ!!」
 そう言うと彼女は元気よく僕の車から降りていった…。
 「うーん…」僕の頭の中で今朝のデジャビュ感覚が蘇る…一体あの子は誰なんだろうか?もしかした
ら遊んでいるうちに思い出すかもしれない…よし、なら明日から彼女に少しづつこの村のことを聞いて
みよう。そう考えて僕はまた村まで車を走らせた。
 
 夕暮れ時、家の前にたたずんでいた海晴は…突然その場で笑い出した。
 「あはははははははは!みいつけた!みいつけた!あはははははははは!」
 ひとしきり笑った後、彼女はこう呟いた。
 「愛してっかんね…お兄ちゃん…」
 そしてまた笑い出す、それに釣られるかのように夕暮れ時のセミの大合唱が始まった。



145 :リッサ ◆TKvIZfGFpk [sage ] :2007/08/15(水) 15:37:49 ID:Pb+pi7en
 化け物屋敷と僕 ③
 それから一週間が過ぎた、もともと夏休みを利用しての研究だったこともあって、僕は半分遊び気分
でこの村での資料あさりと研究をしていた。レポートをまとめ終わり、資料の整理が終わるころには彼
女…毎日やってくるようになった美晴ちゃんとも遊びすぎて肌が真っ黒になっているくらいだった。
 
 そんなある日の夕暮れ時、彼女は僕にこんなことを聞いてきた。
 「あんちゃんってさあ、彼女とかいるんけ?」
 「ん?…いないけどそれがどうしたの?」
 僕は彼女の持ってきてくれたスイカをほおばりつつ、そう答えた。
 「オラっちさ…兄ちゃんのこと大好きだよ…もちろんラブのほうでな」
 ぶっ!!とあわてるあまりに僕はスイカをはいてしまった…おいおいおい、何だか毎日来ていて妹みたいに感じていたけど…ん…妹…。
 「お兄ちゃん、愛してっかんね…」
 思い出せないはずの記憶がいきなり蘇る…確かマエにもこんなことを…僕は…このことよく似たあの
子に…。
 「ん…むう!!」
 いきなり僕は彼女に唇を奪われた、もちろんただの唇だけではない、彼女は一気に自分の舌を僕の口腔にねじ込むと、僕の舌と自分の舌を絡ませた。
 「んちゅ…んむ…はあ…」「ん…むう」
 いきなりこうされてはかなわない、僕は彼女から唇を離すと、興奮を抑えきれずに、そのまま彼女を
押し倒した。
 「こうして…いいのかい?」
 「うん、お兄ちゃんと…ずっとこうしたかったから…」
 そういって目を閉じる彼女の髪をなでると、僕は彼女のワンピースを脱がした。
 
 「はぁぁ…お兄ちゃん…大好き…」
 行為の後、そういって眠る彼女を置いて僕は、嫌な予感を抑えつつも父の作業小屋に戻った。間違いない、彼女を僕は知っている…どうも自分の記憶が戻りそうなのだ。
 多分彼女は…そう考えながら急いで作業小屋の扉を開けて、父の仮眠部屋である地下室に向かった…そしてそこに置かれた本棚の…昨日偶然発見した本の間に挟まった一枚の写真…それを取り出した。
 「やっぱり…そうだったのか…」 
 その写真には幼い僕らしき人物と、それを囲む家族らしき人物と…海晴ちゃんが写っていた。
 「あーらーらー、やっぱり思い出しちったんけ…お兄ちゃん」
  その後ろには、空ろな笑顔を浮かべた海晴ちゃんが立っていた。


146 :リッサ ◆TKvIZfGFpk [sage ] :2007/08/15(水) 15:39:41 ID:Pb+pi7en
「ああ…思い出したよ海晴…僕はあの日、火事の当日に…君を犯して両親に殺されかけたんだ。」
 八年前のあの夏の日、僕は妹を犯してしまったんだ。理由?…もちろん妹を愛していたからさ、それこそ狂おしいくらいに…彼女が生理が
始まってから色ずいて、隣町の男の子の家によく遊びに行き始めたのに嫉妬したのが原因だったと思う…でも妹はこういったんだ。
 「お兄ちゃん嬉しいよ…私も大好きだよ、って…」
 相思相愛ならと当然僕らは駆け落ちしようとしたが両親に捕まり、このことが村にばれるのを恐れた親父は僕を殺そうとしてバットで
僕の頭を…。
 「そう、だから家に火をつけてお父さんとお母さんを殺したんだよ、お兄ちゃん。」こうすればもう一緒にいられるでしょ…あははは
はははははは」
 家に灯油をまいて、自殺しようとしたにもかかわらず奇跡的に助かった妹は、病院に入院していた僕に会いにきてくれたが…その心は
完全に壊れていた。もちろんこのことを知った親戚連中はこのことが世間にばれるのを恐れて証拠品を破壊、そして僕と妹を引き離し…
僕は記憶を薬か何かによって奪われていた…。
 「でも、なんでお前は…成長してないんだ…それにあの、行為のときの血は…」
 「…未だきずかねーんけや…パパ」
 …僕は全てを悟った、そうか、そういうことだったのか…。
 「ママはおらっちが生まれたころに体壊して死んじまったよ…でもよお、パパを恨まないでって、
ずっと言い聞かせておらっちを育ててくれたんさ」
 「…僕を、恨むかい?」
 「いんやぁ、パパとママは状況が悪すぎたし、恨むことはねえょお…むしろ…」
  そういって間を空けると、彼女はこういった。
 「もうどこにも返したくねえぐれえ、パパのことが大好きだからよぉ…あははははは!」
 彼女はがちゃり、と地下室のドアの鍵を閉めた。それと同時に僕の目は回り始め、呼吸
が寝息に近くなり始めた。
 「愛してっかんね…もうどこにもかえさねえよ…だから」
 遅効性の眠り薬でも盛られたのか、僕の体はだんだん動かなくなり始めた。
 彼女は…僕の娘の手にはのこぎりが握られていた。
 「手足は切らせてもらって…ここで二人でくらすべね…あははははは…あ
はははは…」
 彼女の笑い声が、大きく大きく地下室に響いていた。
 FIN