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474 :名無しさん@ピンキー [sage] :2007/08/30(木) 07:27:25 ID:yALAyH53
>>469 すいません。前回は重なってしまったのでもう一回、
最初から、投稿しなおします。
第1話
僕が勤め先の病院に車で向う途中、窓越しで彼女を見た。
それが桂言葉と僕の出会いだった。桂言葉はまだ、中学生
だった。
 ほんのちょっと視界に入っただけの彼女を、僕は忘れら
れなかった。彼女をもっと見ていたい、彼女のことをもっ
としりたい、僕はそう思うようになった、それだけ、彼女
は僕にとってかけがいのない存在だったんだ。
 僕はまた、翌日、車の窓越しで彼女に会った。僕は携帯
で彼女の写真をすばやくとった。中学と顔、あと金に糸目
をつけなければ、個人情報など簡単に調べることができる
からだ。
僕の実家は大手製薬会社のオーナー一族だったから、金に
ついてはまったく困らない。
 その筋では結構有名な大手興信所はすぐに彼女について
教えてくれた。彼女の名前、趣味、誕生日、好きな食べ物、
色々なことがすぐにわかった。それだけで、何故だか僕は
彼女に近づけた、そんな思いがした。実際には一度も会っ
ていないのにも関わらず。


475 :言葉と・・・・ [sage] :2007/08/30(木) 07:29:00 ID:yALAyH53
僕は興信所に頼んで、彼女の行動について、定期的に調
べてくれないかと頼んだ。興信所は訝しがっていたが、金
はいくらでも払うといったら、快く依頼を受けてくれた。
 それから、毎日が楽しかった。興信所から、送られてく
る、彼女の些細な日常を聞くだけで、幸せな気分になった。
彼女の写真を見るだけで、心が満たされた。僕にとっては
彼女が全てだった。彼女のことを、夢で思わなかったこと
はなかった。お稽古事が大変そうだな、今日も体育を休ん
だんだ、とか、そういうことを知ることで、彼女のことを
全て知ったような気持ちになった。
僕はそんな生活を一年半続けていた。彼女は高校一年にな
っていた。僕はその日も彼女についての報告を読んでいた。
今日はどんなことが書いているんだろう、そんなわくわく
した気持ちは、報告書の内容を読んでふっとんだ。彼女に
彼ができたのだ。名前は、伊藤誠というらしい。デートと
いっても、まだサカキノヒルズに行ったくらいだ。普通の
女の子なら、なんでもないことかも知れない。だけど、男
性恐怖症の彼女には、それがどういう意味を持つのか、
僕にはよく分かった。僕はそのまま、報告書をやぶり捨て
た。伊藤誠という男に対する殺意がわいた、人の命って、
僕のマンションの部屋(一億円)の値段の十分の一の価値し
かないんだよな、そんな風に考えた。だけど、同封されて
いた、彼女が伊藤とデートしている写真を見ると、そんな
気もうせた。それは、僕が見たなかで、一番いい、彼女の
笑顔だったからだ。殺すのはやめよう、そう僕は思った。
彼女が他の男に微笑む顔はみたくない。けど、その男が死
んで、彼女を悲しませることはしたくない。だから、僕は、
もう彼女を見ることをやめようと思った。興信所には、も
う報告はいいといった。


476 :言葉と・・・・ [sage] :2007/08/30(木) 07:31:10 ID:yALAyH53
それから数ヶ月がたったある日のことだ。僕はその日、
部下の看護婦に呼び止められた。
「先生、今日、措置入院の患者さんが入ります」
「措置入院で入るのって厄介のが、多くてこまるんだよね」
 僕は病院では精神科に勤めている。措置入院とは、精神保
健福祉法第二十九条に基づいて、他人、もしくは自分を傷つ
ける恐れのある精神異常者を、行政が強制的に入院させるも
のだ。刑事事件で、責任能力がないとされた、精神異常者も、
措置入院という形をとる。
 「先生、そんなこといったら問題になりますよ。でも、今
回は殺人犯らしいので、ちょっと怖いですね。」
 「殺人犯か。ちょっとしんどいな。」
 「なんでも、男女関係のもつれとか、いじめとかが原因ら
しいですが。あ、これが指定医(措置入院をするかどうか決
める人)のカルテです。」
 「わかった。・・・・・え」
 そこには、僕にとって、かけがいのない人の名があった。
患者は、桂言葉だった。


477 :言葉と・・・・ [sage] :2007/08/30(木) 07:32:32 ID:yALAyH53
数時間立って、手錠をされた痛々しい彼女が閉鎖病棟に
運ばれた。僕は、なんの因果か彼女の担当医になるのが決
まっていた。
「えっと、桂言葉さんな。」
僕は彼女に声をかけた。正直いって、すごくつらかった。
「どうして、ですか。どうして、そんなによそよそしいん
ですか。言葉って呼んでくれないんですか。私が。西園寺
さんのことを殺したから、私のこと嫌いになったんですか。
誠君。」
 彼女は僕にそう言った。僕はちょっと混乱した。西園寺
って女のことはよく知らないし、僕の名前は誠じゃない。
だけど、すぐに分かった。言葉の彼が、誠という名前だったこと。
言葉が僕と誠を間違っていること。言葉は、自分の愛しい人が誰
なのか分からないほど、心がボロボロに傷ついている。伊藤誠が
、彼女をこんな風にしたんだ。ごめん、言葉、助けてあげられな
くて、僕はそう心で泣いた。僕は彼女のためをおもって伊藤誠を
殺さなかった。でも、あの時、そうしていたら、彼女はこんな風
にはならなかった。
 「誠君・・・・・・」
 彼女はとても悲しそうな顔をしていた。
彼女が悲しんでいる顔はみたくない。だから。
 「そんなこと、気にしてない。俺は言葉のことが好きだから。」
 僕はそう微笑んで言った。
  その日から、僕は彼女の前では伊藤誠のふりをすることになった。