753 :天上の帝国 [sage] :2007/09/13(木) 09:06:44 ID:iqGRGioz
耳鳴りが強くなってきました。位置を調節しなければなりません。
方位は南南西、水平面からの高低角24度……誤差修正、来ました、マイクロウェーブです。
量子通信によるモールス信号を受信します。シ・ナ・ビ・タ・オ・メ・コ・ニ・ム・シャ・ブ・リ・ツ・イ・タ……了解。解読の結果、私ことエテル・シュマッケルと兄さんことオルデネル・グルデンレウ男爵が最終ランデヴーです。
つまり私たちの邪魔をしやがるあの忌々しい魔女ウルリカ・ダーレフェルドを屠殺する許可証が機関から発行されたのです。この殺しのライセンスさえあれば、あの汚らわしい泥棒猫を密殺できるのです。
ああ、また来ました。北斗七星にいる私の従僕、キエーレン山脈のヴィルフリッド・ケンニボール三等兵から電報です。……どうやら魔女ウルリカ・ダーレフェルドが兄さんの部屋に潜入した模様です。
いけません、いけません、逃げてください兄さん。あの厭らしい雌猫は貴方をカツオのタタキにして明日のブランチにするつもりです。
ええい、汚らしい多数者に媚を売る蛮族め。私の兄さんに近づくなんて、鬼畜米英のくせに生意気です。
下賤な植民地人のくせに……ハンバーガーしか伝統料理がないくせに……粗悪な輸入品の劣化金色夜叉のくせに……腐れきりしたんのくせに……。
チーズ臭い体臭を私の伴侶に染みつけないで下さい、この女版ドン・ジュアンめが。
ああ、畜生め。その胸に垂れ下がっている邪悪な脂肪の塊をもぎ取ってやりたい。プロシャ兵どもに輪姦させて、トルケマダおじさんのアウト・ダ・フェでローストしてしまいたい。



754 :天上の帝国 [sage] :2007/09/13(木) 09:09:22 ID:iqGRGioz
左腕の包帯がうずきます。あの女の猫撫で声が聞こえるたびに、どくどくと真っ赤に燃えて、開放を今か今かと待ちわびています。
まだです、まだJAKI-GANを開放してはいけません。この苦しみは持たざる者には解らないでしょうから。
ですが耳の奥でラ・マルセイエーズが鳴り響いています。あの女を倒せと轟き叫んでいます。
――ガンホー!ガンホー!お願い!お願い!しごいて!しごいて!市民らよ、武器をとれ!――
駄目です、まだ市民革命の時期ではありません。自由主義者も、王党派も根絶やしにしなくては今後塩柱で近親相姦逆レイプの勇者ロトになってしまいます。
とりあえずここは一つ、過呼吸でもして落ち着きましょう……。
ひっひっふぅ、ひっひっふぅ、ル・ラーダ・フォルオル!
……落ち着きました。びぃくーるです。くーる、くーる、くーるです。ほっとなとりっきーじゃありません。
とにかく、何とかして魔女ウルリカ・ダーレフェルドから発せられる高周波を中和しなくてはなりません。
大蔵省からプランが二つ送られてきました。
プランA、作戦名エターナル・フォース・ブリザードγ――楽園にはないお茶菓子と紅茶とカルピスをもってお部屋に突撃する作戦です。成功率A、持続性D、スピードC。いいふいんきは死にますが、いまいち効果的ではありません。
プランB、作戦名死魔殺炎烈光弐式<ディアボリック・デスバーストmkⅡ>――略すとおにいちゃんおべんきょうおしえて作戦です。私の美声で兄さんはもうめろめろなのです。
旧式の南極一号なんかほっぽりだして、兄さんは私の生肉にむしゃぶりつくといった寸法です。成功率C、持続性A+、スピードA~E(兄さんの状態によって変化)
一度せいこうしてしまえば兄さんゲットだぜなのですが、もし失敗してしまったら今夜初めてタバコを吸うといった事態になりかねません。
……今回は無難にプランAでいきましょうか。







755 :天上の帝国 [sage] :2007/09/13(木) 09:11:09 ID:iqGRGioz
最近、妹の様子が変だ。
その日、今年で十四になる妹の挙動が日に日におかしくなっていくことについて隆志は幼馴染の沙良に相談を持ちかけた。
食事中に突然左手を押さえて呻きだしたり、自分の名前は影羅だと名乗ったり、反抗期の衝動にしては行き過ぎた行為が目立っている。
何か悩みがあるのではないかということで、妹と同じ女性である沙良に相談したのだった。
「ほら、あれよ。中二病ってやつよ。」
「中二病?」
クォーターの特徴である金色をした長髪をかき上げて沙良が言った。
女らしい仕草に隆志は少し頬を赤らめたが、聞きなれない病名を聞いて首をかしげる。
その様子を見た沙良は隆志にちょっと待っててと言った後、彼のパソコンを起動してインターネット画面を呼び出した。
隆志が沙良に促されて液晶をのぞきこむと、そこには彼女のいう『中二病』とやらの情報が延々と連なっていた。
「黒の教科書?邪気眼?なんなんだよ、これは。」
「見てのとおりよ。十四歳というのは多感な年頃なの。物事を感じ易くなって、ついには現実と空想の違いをはっきり認識できなくなる。
この病に冒された人に待っているのは、例えようもない後悔の念。高校に上がるころに感じる、とても悲しくて、とても切ない自己嫌悪の気持ちよ。
自分がどれだけ狭い世界で生きていたのか実感して、自分自身の愚かさで首を吊ってしまいたくなるほどの羞恥心を受け止めなければいけないの。
そう。中学二年生とは、恐ろしく、とても不安定な時期なのよ。」
窓の外に視線をやり、遠くにある何かを見つめるような目をしながら沙良は言う。自分の左腕を撫でて自嘲するように微笑む彼女を見て、隆志は嫌な予感がした。
「もしかして、沙良もそうだったのか?」
「そ、そんなわけないじゃない!あたしはこんな痛い連中とは違うわよ!」
沙良のポエミーな語りも十分アレだと思うんだけどな、と隆志は思ったが、口にはしない。
見てみぬふりをすることも、円滑な人付き合いには必要なのだ。



756 :天上の帝国 [sage] :2007/09/13(木) 09:14:53 ID:iqGRGioz
ともかく、何か解決策がないものかとネット上を探る。
治療法として見つかったのは自覚症状を促したり、時間によって解決させるなどの穏便なものや、哲学モドキの俗流形而上学に自己啓発といった怪しげなものなど様々だ。
後者はあまりにもアレ過ぎて手を出す気持ちにはなれないし、前者の自覚症状云々の手段もなんだか残酷なようでとりたくない。
時間によって解決できるといっても、大事な妹に沙良のような後悔はさせたくないと隆志は考えていた。
八方塞になってしまい、どうしたものかとこめかみを揉む隆志に向かって、先ほどからベッドに寝転がって漫画を読んでいた沙良が話しかける。
「ていうかさ、別に放っておいてもいいんじゃないかな?」
「だけどこのままにしておくわけにもいかんだろ。」
「ほっとこうよ、中二病なんて。」
「でもメシくらい静かに食いたいし……」
隆志はモニターに顔を向けたまま、沙良に言葉を返した。妹のことについてはいい加減なんとかしろと母からもせっつかれているのだ。
食卓を囲んでいる最中に覚醒されたときなど、空気が気まずすぎて食事が喉を通らなかった。
ベッドのほうからなにやら衣擦れのような音がしたが、沙良が寝返りでも打ったのだろうと考えた隆志は気にしないことにした。
かちかちとマウスを鳴らして、情報を探す。
「どうでもいいじゃない、あんたの妹なんて。」
「いや、どうでもよくないだろ。常識的に考えて。」
間違えて出会い系サイトの広告をクリックしてしまった。慌てて戻るのアイコンを押すが、なにやら細工されているらしく戻れない。
隆志はため息を一つ吐いて、ブックマークを開いた。
「そんなに、妹が大事なの?」
「きめぇこと言うなよ。俺はただアイツを元に戻してやりたくてだな。」
妹は見た目はいいのだが、精神は中二病に汚染されてキモいことになっている。キモい妹がいたら外聞が悪い。兄である自分に根も葉もない噂が立つことだけは避けたかった。
ただでさえ、隆志はクラスメイトにシスコン疑惑を持たれているのだ。これ以上状況が悪化することはなんとしてでも阻止しなくてはいけない。



757 :天上の帝国 [sage] :2007/09/13(木) 09:16:52 ID:iqGRGioz
「じゃあ、さ。荒療治っていうのは、どうかな?」
「荒療治?」
「環境が急に変われば、あんたの妹だって正気に戻るかもしれないわ。」
「環境ってお前。なにをどう変え……」
るのかと続けようとしたが、振り向いた瞬間に声が出せなくなってしまった。
隆志の真後ろには下着姿の沙良が立っていたのだ。
白人特有の透き通るような白さの肌は薄く薔薇色に染まり、彼女の美しさを引き立てていた水色の瞳は艶やかに濡れていた。
身じろぎ出来ずにいる隆志に、裸足の沙良はひたひたと足を進めて近づいていく。
「あんたに彼女が出来れば、妹のヤツだって大人しくなるわ。」
沙良は硬直する隆志の首に腕を回して、彼の耳元で囁くように言葉を続ける。上半身で感じる少女の体温と、耳元にかかる吐息が隆志の脳髄を沸騰させた。
「あたしがあんたの恋人になれば、ぜんぶうまくいくわよ。きっと。」
「わ、わけわかんねーよ。」
「心配しないで。あたし、元々あんたのこと好きだったし。」
「はぁ?」
隆志は混乱していた。沙良の理屈も、なぜ幼馴染の彼女が下着姿なのかも理解できなかった。どうして股間が窮屈になってるのかさえ、解らなかった。
あまりにも唐突な展開に思考が付いていかないのだ。しばらく放心状態のまま、沙良の為すがままにさせていた。
沙良は隆志の手を引いてベッドに横たわり、それに引かれて隆志も倒れ込んだ。隆志はその間じゅう目を見開いていたが、自分が何を見ているのかを認識はしていなかった。
肌着を剥ぎ取られて、直に他人の体温を肌で感じたときにやっと彼は自分の状況を知覚した。彼の視線が自分と重なったことに気が付いた少女は、嬉しそうな様子で隆志の唇に自分のそれを重ねた。
その口付けをきっかけとして、隆志の中からむくむくと情欲が頭をもたげてきた。
そして、隆志の股座を弄る沙良の金色の髪が鼻を掠めたときに、とうとう彼は正気を手放した。
彼は金髪フェチだったのだ。







758 :天上の帝国 [sage] :2007/09/13(木) 09:19:00 ID:iqGRGioz
雑巾汁のお茶を作るのに随分時間がかかってしまいました。短針が六十度ほど動いていますが、宇宙的にみればほんの一瞬です。
私的にみても無問題です。同名の映画とは違って本当に無問題なのです。
私と兄さんの肢体が醸し出す芳しい兄妹愛スメルは特殊な磁界を発生させます。
このラヴラヴフィールドによって私×兄さんというエクリチュールがトポス・ノエトスつまり神の悟性あるいはア・プリオリ的必然性の構造としてのロゴスに組み込まれ超越論的存在者として悟性界に君臨するのです。
もちろん闇属性としてですけれどね。光属性なんて今時流行りません。土属性は論外です。
私としてはヒロイン格の水属性が好ましいのですが、必然的に社会学的起源をもつエクリチュールにとっては画数の多い漢字にしたほうが有利な気分なのです。
そのおかげでたとえ現象界でどれだけの時間が進んだとしても、私的仮想界つまりスピリテユエルっぽい内的時間は一瞬たりとも変化しません。
ですがイルミナードスの場合はいけません。イルミナードスは教会の敵です。イルミニズモは異端の教えなので、汚辱のしるしである黄色い十字のフェルトをつけなければならないのです。
その上羞恥ぷれいをしながら霊地詣を強制します。もちろんカッシーニ軌道上での鞭打ち刑はかかせませんよ。死体発掘は勘弁してあげますがね。
しかし、このお茶を作るのには本当に骨が折れました。例の魔女イサベル・デ・ラ・クルスのためにここまでしなくちゃいけないなんて……ほんとに憎たらしい野蛮人です、ペルフェクトスとかいう連中は。
いつかコンキスタドーレスの恐ろしさを味わわせてやりましょう。
まあ、かまいません。あの脂肪の塊がこの特製ジュウスを口に入れてしまえば全ては終わるのですから。
完全無欠の大団円、私と兄さんが結ばれる最終回なのです。次回予告も、駄作化した続編だってありません。テコ入れのビッチヒロインなんてそもそも必要じゃないのです。
あの淫売が私謹製のブルーアイズ・ホワイト・茶を飲みさえすれば、ずっと私のターンです。ブルーアイズでホワイトな屍肉がきたねえ花火なのです。もちろんGTなんて付きません。
二階に続く階段を上ります。ちょうど十三段あるなんて私的ディスティニィを感じます。縁起が悪いとかいう口出しはのーりっすんです。暗黒面にあこがれるお年頃なのですから。
たしかに光属性はダサいです。ついでにセガもダサいのでプレステをやりましょう。


759 :天上の帝国 [sage] :2007/09/13(木) 09:22:42 ID:iqGRGioz
専務なんてどうでもいいのです。
早く約束の地に到達しなくては、兄さんが異端の偶像崇拝に染められてしまいます。具体的には新世界訳聖書とかです。尊氏のためなら死ねる体にされてしまう前に、私のシャクティパッドでヒートエンドしなくてはいけません。
急ぎましょう急ぎましょう。グラマトロジーをア・ポステリオリに適応して精神的アフターバーナーです。私のあそこもオーバーブーストです。
早く行かなくては、あの身持ちの悪い心理的非処女の雌豚が、兄さんをじっと見詰めてしまう。あいつの眼差しが兄さんの純潔を汚してしまいます。
ああ!兄さん!そう思っただけでも、乙女の私は気が狂いそうになるのです!
今日にでも乙女は卒業するつもりですがね。ええ、もちろん兄さんの手と三本目の足によって。処女性による命中補整は失ってしまいますが、サイズ差無視の合体攻撃追加でソウルメイツの仲間入りです。
そのためには魔女イサベル・デ・ラ・クルスを世俗裁判所の手に渡さねばなりません。あそこは聖庁の場合とはちがって、ほぼ百パー電気椅子ですもの。
ですが一応、万が一を考えてドヴァ本国にも電報を打っておきましょう。
いつ迂闊で残念な白豚にとらっぷかーどおーぷんされるか解りませんからね。
爆乳吸血ギャルの逆襲、想像しただけで身の毛がよだちます。
早く兄さんにミートコンパクションパイル工法で私の肢体を地盤改良してもらいましょう。そうすれば雨の多い日も安心ですので。
ついでに魔女を使ってフォールコーン試験しなくてもよくなって万々歳です。あの女は重力で魂と一緒に乳も引かれてしまっていますから、兄さんが付き合ったらドリルボーイになっちゃう。
……そうこうしてるうちに兄さんの部屋の前に到着しました。
この扉は狭き門です。悪徳にまみれた泥棒猫なんかが通っていいはずないのです。
私のような一片の穢れもない超絶美少女だけが、この神聖な門を通ることを許されているのです。
早速ですが突入作戦を開始します。ここであえてノックをしないのが妹としてのたしなみですね。事後処理などどうとでもなりますし。
SATだかブルースワットだかのように華麗に兄さんを救出して、その後にゆっくりとニャンニャン合体すればいいのですから。
それでは、予備の鍵である私を使って、最後のとびらを開けましょう……。






…………。






…………。






「おにいちゃんどいて!そいつ殺せない!」
最終更新:2008年08月24日 12:55