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368 :溶けない雪 [sage] :2007/10/09(火) 18:47:25 ID:QQ61Wk/i
5
水無月 雪梨視点より


「それじゃあ、僕はこっちだから」
そう言い、彼は私と反対方向に向かい、帰っていきました。


私は帰りながら、今日の彼との会話を思い出していました。
それなりに、話をする事は出来たけれど、
内容が内容なので会話というのも少し首をかしげるけど。
その内容とは、 私が彼に興味を持ったという事。
会話の内容を思いだし、私は苦笑しました。
我ながら、意味が分からない事を言ってしまった。
大体、興味を持たれた人が、興味を持ったなどと言われても、
どうすればいいのか分からないだろう。
全く、いくら彼に話掛けられて動揺していたとしても、
微妙な雰囲気にするのは頂けないと思う。
でも、普通じゃない会話をしていたから、
彼も私に少なからず興味を持ったはず。
それはそれで結果オーライだろう。

私は彼に興味を持ったと言ったが、それには少し語弊がある。
つまる所、私が興味を持ったというのは




想い人に対する興味だった。









彼と初めて会った日を思い出す。
その日、私は入学した高校の初めての登校だった。
高校受験頃に、こちらに引っ越してきたので、高校に友達は1人として居なかった。
だけど、中学の時も、ほとんど同じ条件から始まったようなものだったから、



369 :溶けない雪 [sage] :2007/10/09(火) 18:48:21 ID:QQ61Wk/i
また普通に友達位作れる、そう楽観していた。
しかし、そんなに簡単な話ではなかった。
中学の時はまだ、私の白い髪を見て、
皆はなんでだろうと、思いはしても、
珍しい物見たさで私に話掛けてきたお陰で、友達もそれなりに出来た。
友達がたくさんできたても、私は増長とかする性格でもないので、
髪を理由にいじめられる事も無かった。

高校に着き、教室に入った瞬間に突き刺さる、視線。
好奇の目を全く隠さずに、教室中から視線を向けられた。
さっきまで、頑張ろうと思っていたのが嘘みたいに、頭が真っ白になった。
ほんの少しで、私を見ていた目は、私が入る前に戻ったが、
私にはその少しが、何時間にも感じられた。
視線に晒されている間は固まっていた私だったが、
視線が外れた今、固まっていても、
恥ずかしいだけなので、前の黒板を見て、自分の席に着いた。

自分の席に着いても、思った通りというか、私は浮いていた。
教室中の人達はまるで、私が見えていないんじゃないか?と思ってしまう位だった。
独り



そう、孤独だ。
この、教室という名の世界で私は孤独だった。
周りに知り合いはいない、話掛けてももらえない、話掛けたくても心が折れた。
私はその時震えていた。
身体的にではなく、心の底で震えていた。
いや、もしかしたら体も震えていたかもしれない。
そんな孤独に震えている時でした。
「綺麗な髪だな、こんなに綺麗な髪は初めて見たよ」
背後から声が聞こえてきました。



370 :溶けない雪 [sage] :2007/10/09(火) 18:49:23 ID:QQ61Wk/i
最初は、私に声を掛ける人なんていない、と思っていたから
自分に言ってるとは思いませんでしたが、言葉の、「髪」
の部分を思い出し、振りかえりました。
そこには、男の人が立っていました。
その事に驚くと同時に、声を掛けられて安心しました。
彼と話をして、一人ではなくなると思ったから。
単なる好奇心からでもなんでもよかった、
独りじゃなくなるのなら。
でも、振り向くだけでは会話にならない
ちゃんと返事をしないと、無愛想に感じてしまうだろう。
「そう、ありがとう。
そんな事言われたのは初めてだよ」
そう、彼は髪を綺麗だと言ってくれたが、そんな事は初めてだった
普通の人と違う髪なんて、興味の対象にこそなっても、
綺麗だとかを考える人はそんなにいないだろう。
「そうなの?あまりの美しさに見惚れて位だよ」
「あなたは冗談が上手いんですね」
本当に上手いと思う。
さらりと言われなければ私は真に受けて赤面してしまっただろう
「君は女子の方に声を掛けないの?かなりお節介だと思うけどさ」
その事を言われて、思わず私は、自分の下を見てしまいました。
声を掛けられない事を彼に相談してもいいのだろうか?
初対面の、しかも男の人に。
でも、相談しなかったらきっと、このまま時間がすぎるだけだと思う。
それに、少し話をしただけだけど、彼ならきっと
ちゃんと相談に乗ってくれると思う。
結局、私はほんの少し間を置いて、相談する事にしました。
「声掛けたいけたいんだけどさ、
私って髪の色が普通じゃないじゃない?
だから声掛けるのが正直な話恐いんだよね。
君みたいに掛けてくるならそういう心配しなくてもいいんだろうけどさ」
内心を話し、彼の返事を待つ。
しかし、別に答えを気にしているわけではない。
どう言われても、結局は自分が解決させるかさせないかなのだから……。
「大丈夫だよ。
今日なんかは皆心をオープンにして友人を作ってるからね。
声を掛ければ大丈夫だから自信を持てばいいよ」
彼が、私の相談を聞いて、
答えてくれたのは、そんな言葉だった。
私はその言葉を聞いて、
頑張って声を掛けてみようと思えた。
別に、言葉でそう思えたわけではない。
只、彼の真剣さを感じた。
それだけだった。
最初は、興味を持ったから声を掛けてきたと思っていたけれど、
話をして分かった。
彼はきっと、私を心配していたのだろう。
皆が話をしているなか、ただ一人だけ席に居る私を。
きっと、髪の色が普通でも彼は私に話掛けただろう。
彼は凄く優しい。
それに気付けたから、私は頑張れると思った。



371 :溶けない雪 [sage] :2007/10/09(火) 18:50:27 ID:QQ61Wk/i
「・・・・・・・・・うん、そうだね。
ありがとう、頑張って声掛けてみるよ」
素っ気ない言葉で言ってしまったけれど、
本当に感謝してる。
あなたのお陰で、私は頑張れると思えたのだから。
私の返事を聞いて、彼は安心した様な顔をした。
「じゃあ、頑張ってね」
そう言って、彼は黒板の方向に歩いていきました。
元々、心配になる人が居たから、
私に声を掛けたので、仕方がない事でしょう。
話掛ける理由が解消されて、その事以外に、
私に用がないのだから当然だ。
彼が、心配だから、という理由だけで声を掛けたという事が
再確認させられるが、同時にひどいなぁーとも思う。
そんな優しさにふれてしまったら、
もう手放したくなくなるではないか。
多分、無自覚な優しさなのだろう。
自覚がない優しさは時として残酷だけれど、偽善とか、
上辺だけの優しさよりかは遥かにましだ。
何故なら、無自覚だからこそ、
心の中にまで踏み込んできてくれるから。
彼から声を掛けてきてくれたんだ、今度は私から声を掛けよう
そう思ったと同時に私は彼の背中に言う。
「あのさ、名前を聞いていいかな?」
親しくなるための、初めの一歩の言葉を。