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363 :もう何も信じない 第2話 [sage] :2008/09/22(月) 13:30:20 ID:HdjnMexj
―――ああ、変わってないな。光、お前はいつも俺のことなんかお構いなしに喋
る。
こんな風に、俺が周りの奴らから刺すように白く、また、生暖かい目で見られて
いても、だ。

「言ったはずだ。俺は何も信じられない。だからお前の言葉も信じない、と。」
「変わってないね…君は。ううん、昔よりも口数は多くなった。これは喜ぶべき
かな?」
「そういうお前はどうなんだ? 昔から口の締まりが悪いやつだとは思ってた、が3
年経ってなおこれか!」
「うれしいよ…昔から僕のことを思ってくれてたのかい。」

そう言ってこいつは顔をさらに紅潮させ、もじもじした。なんなんだ一体……。

「ああ。3年前は筋金入りの馬鹿だと思っていた。もしくは物好き。中学になって
からは存在を忘れてたくらいだが。」

これは本当だ。むしろ声をかけられてもわからなかった。仕方ないだろう、見違
えるくらい…綺麗になってんだから。

小学生のときの光は、ショートカットにシャツにジーンズといった、男みたいな
格好をしていた。さらに男口調。たしかそのせいで女にも男にも友達はできなか
ったはずだ。
だが今はどうだ。女らしい格好…まあ制服だからな。それに長い髪。3年でここま
で伸びるだろうか?と思ったのは言うまでもない。
顔立ちも整っている。そこらのアイドルなんかより全然美人だ。胸は…まあ変わ
りないな。(悪い意味でだが)

「失礼だね。これでも少しは大きくなったんだよ?」
…何で俺の考えたことがわかるんだ。

「ほー。そうか。俺には関係ないが。」

そう言い残して俺は昇降口を出ようとした。周りの奴らの視線が痛いがどうでも
いい。さっさと帰って寝よう―――――

……俺は今、街中をただ歩いている。
何でかというと…、俺の隣に光がいるからだ。こいつこのままだと俺の家までつ
いて来かねない。だから適当に撒いて帰ろうとチャンスをうかがっているのだ。
光に自宅の場所を知られでもしたら……ああ恐ろしい。考えたくもない。

「ねぇ、帰るんじゃなかったのかい?」
「ああ帰る。お前がこの手を放してくれたらな。」
「つれない事言わないでくれよ。好きな人と一緒にいたいと思うのは当たり前だ
ろう?」
「生憎だが俺はお前を好きになった覚えはない。うっとおしいから放せ。」

まったく、どうしてこんな事になったんだか…。
そう思っていると、突然頭の中に、鮮明なイメージが湧き出てきた。否、叩き込
まれた。…またか。

俺が見たイメージは、赤信号を無視してふらふらと突っ込む深緑色の車。どうや
ら居眠りしてるようだ。その矛先にはには人がいる―――俺たちだ。


364 :もう何も信じない 第2話 [sage] :2008/09/22(月) 13:31:08 ID:HdjnMexj
「おい、ちょっといいか。」
と、俺は光の手を引き、信号を離れる。

「? どうし―――」

キキ――――ッ ガシャン!!

激しい衝突音が響いた。今俺たちの目の前には、折れ曲がった信号機の柱と、ひ
しゃげた深緑の車。そこは、ついさっきまで俺たちがいた場所だ。

――――俺は、自分に降りかかる危険を、直前になって予知できる力を持ってい
る。人々はこの力をどう思うだろうか。
便利? すごい? とんでもない。たしかに聞こえはいいが、わかるのは"俺自身"に
来る危険だ。それに、自分一人逃げるのがやっとだ。頭にイメージが来るのは、
本当に"直前"なんだ。
たしか、2分後の未来が見える男の映画があったな。あっちの方が便利だし、何よ
り人の役に立つ。

そもそもこんな力がなければ俺はこんなヒネた性格にはならなかったろう。親戚
どもはこの力を気味悪がり、伯父には「化け物!」とすら言われ虐げられた。

まあ、この力のおかげで中学時代はケンカでは負けたことがない。殴ろうとする
動きを、文字通り見切ってしまうからだ。もっとも、好き好んでケンカした訳じ
ゃない。あくまで"売られたケンカ"を"買って"ただけだ。
ちなみに不良グループを一人で全員病院にノシつけて送った次の日からは、俺に
恐れをなしてか話しかける奴は誰もいなくなった。
この力が役に立ったのは、その時くらいか。そう、俺は一人でいいんだ。誰もい
らない。そう思ってたのに―――

「…は~びっくりした。助けてくれたんだね? ありがとう。」

どうしてこいつは俺につきまとう? 普通避けるだろう!

「…助けたつもりはない。ただ、見知ったやつに目の前で死なれちゃ寝覚めが悪
くなると思っただけだ。」
「相変わらず素直じゃないねえ。ま、僕は君のそういうところ、大好きだよ?」

何でだ。もう誰も信じない。そう固く誓った筈なのに―――――

「…勝手にしろ。」

こいつの前では、その決意が揺らぐ。